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大学・研究所にある論文を検索できる 「大腸憩室近接病変に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の実現可能性及び安全性」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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大腸憩室近接病変に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の実現可能性及び安全性

池澤, 伸明 神戸大学

2022.03.25

概要

背景:大腸憩室は筋層が欠損している仮性憩室であることが多く、病変内および近傍に憩室が存在する大腸腫瘍(以下憩室合併症例)に対する内視鏡治療は穿孔の危険性が高いため、内視鏡治療で治癒が可能な病変に対しても外科手術が選択されることが多い。これまでに憩室合併症例に対 する 内 視 鏡 的 粘 膜 下 層 剥 離 術 (Endoscopic submucosal dissection: ESD)(以下 D-ESD)の報告は少なく、D-ESD の実現可能性及び安全性は十分に明らかでない。

方法:2010 年 1 月から 2020 年 4 月に当院及び岸和田徳洲会病院で D-ESD を施行した 26 症例 26 病変を対象とした。憩室合併症例の定義は(1)病変内に憩室が存在するもの及び(2)病変の辺縁から 3mm 以内に憩室が存在するものとした。4 名の熟練医により行われ、憩室部の切除が必要な症例では、切除後に憩室部をクリップにより閉創した。憩室との位置関係により病変を Type0:病変と憩室の間に正常粘膜が介在するもの、 Tyep1:病変が憩室辺縁に接するもの、Type2:病変の一部が憩室内に進展するもの、Type3:憩室が完全に病変で覆われるものの 4Type に分類した。病変 Type 別の治療戦略として憩室部の粘膜下層剥離が必要でないものを Strategy A、憩室部を含めた粘膜下層剥離が必要なものを strategy B とした。Strategy B では良好なカウンタートラクションを得るため pocket creation method (PCM)を用いた。患者及び病変の臨床病理学的特徴、D-ESD の治療成績について後ろ向きに検討を行った。

結果:患者背景は性別が男/女:11/15、年齢は中央値で 70 歳であった。病変の局在は盲腸/上行結腸/S 状結腸がそれぞれ 8/15/3 例であった。腫瘍径および憩室の大きさはそれぞれ中央値で 33mm、4mm、肉眼型は側方発育型腫瘍結節顆粒型/側方発育型腫瘍非顆粒型がそれぞれ 18/8 例であった。切除方法は strategy A/ B がそれぞれ 17/9 例であり、strategy B の 1 例で術中に切除困難のため途中中止となった。治療成績は一括切除率/ R0 切除率/ 治癒切除率が全体では 96.2/80.8/73.1(%)、 strategy 別 (strategy A/ B)ではそれぞれ 100/ 84.6/ 70.6(%)、88.9/88.9/ 77.8(%)であった。合併症は strategy A で術中穿孔 2 例、遅発性穿孔を 1 例認め、遅発性穿孔例は緊急手術を要した。Strategy B では穿孔は 1 例も認めなかったが、post -ESD coagulation syndrome (PECS)を 2 例認めた。観察期中央値 24 ヵ月で再発例は認めなかった。

考察:本研究における D-ESD の治療成績は良好であった。本研究では病変と憩室の位置関係により病変を 4Type に分類し、憩室部を含めた粘膜下層剥離の必要性の有無により strategy A/B を使い分けた。Strategy Bは strategy A と比較し、憩室部を含めた切除が必要であるため難易度が高い。既報の憩室に進展する病変に対する R0 切除率は 33%と低かったが、本研究の strategy B では 88.9%で R0 切除が得られていた。この違いはstrategy B では PCM を用いることで憩室部に良好なカウンタートラクションを得ることができたためと考えられた。Type3 には術前に病変下の憩室を認識できない症例があり、本研究でも 3 例で術前に認識困難であった。このような症例でも strategy A から B へ変更することでいずれも R0 切除が可能であった。しかしながら、本研究の strategy を用いても憩室と病変の間に剥離可能な粘膜下層が認識できず、切除困難な病変も存在する。そのような症例では、治療の中止や外科手術などを検討すべきである。D-ESD の最も注意すべき合併症は穿孔である。特に strategy B では切除後、憩室部の筋層が欠損しているため穿孔のリスクが高い。本研究では strategy A に憩室とは関係なく3 例の穿孔を認めたが、strategy B では穿孔は1 例も認めなかった。一方で PECS を 22.2%と高率に認め、strategy B では術後に遅発性穿孔と PECS を区別することが重要である。本研究結果は病変 Type 別に基づいた治療戦略を用いた D-ESD の実現可能性を支持するものと考えられる。

結語:熟練医による D-ESD は実現可能な治療法と考えられる。しかし、非常に高度な内視鏡操作を要するため、経験が豊富な施設で実施するべきである。

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