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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of genome editing technology of mitochondrial DNA in Saccharomyces cerevisiae」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of genome editing technology of mitochondrial DNA in Saccharomyces cerevisiae

Amai, Takamitsu 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23246

2021.03.23

概要

ミトコンドリアは植物、動物および酵母など真核生物に存在する細胞小器官であり、酸化的リン酸化によるエネルギー(ATP)の合成やカルシウムイオンの保持、アポトーシスなどにおいて重要な役割を担っている。ミトコンドリアの特徴的な性質は、核ゲノムとは異なるミトコンドリアDNA(mtDNA)を保有することである。mtDNAは核ゲノムのような線状ではなく、閉じた環状の構造を示し、ヒトでは塩基配列の全長は約16.5kb、出芽酵母では約85.8kbであることが報告されている。
 ミトコンドリアの機能不全はヒトでは重篤な病気に関わり、ミトコンドリアの機能不全により引き起こされる病状の総称である「ミトコンドリア病」を発症することが知られている。ミトコンドリア病の病因の多くは、核ゲノム及びmtDNAの塩基変異にあることが知られているが、特に、mtDNAは核ゲノムとは異なり、ヒストンなどと複合体を形成していないことやATP合成経路で発生する活性酸素種(ROS:reactiveoxygenspecies)が多く存在することにより、塩基変異が核ゲノムと比較して数倍の頻度で引き起こされる。これらの変異を修復するためには、mtDNAを編集する技術が必要となるが、CRISPR/Cas9システムやCRISPR-baseeditorシステムなどのゲノム編集技術は核ゲノムを標的としており、現在までにmtDNAを標的としたゲノム編集技術として確立しているものは少ない。
 本研究では、酵母においてmtDNAを標的とすることが可能な「mito-CRISPR」システムを開発し、mtDNAの特異的切断を試みた。次に、mtDNAの狙ったところを標的とした「mito-baseeditor」システムを新規に構築し、二本鎖切断を行うことなく標的のmtDNAの塩基を編集することに成功した。さらに、「mito-baseeditor」システムを利用することで新規mtDNA機能変異の獲得に成功した。

1. mito-CRISPRシステムを用いた出芽酵母mtDNA欠失株(ρ0株)作製方法の確立
 CRISPR/Cas9システムをミトコンドリアへ輸送し、機能させることでmtDNAを標的として切断する「mito-CRISPR」システムを構築した。本システムを用いて、mtDNAの二本鎖切断により得られる出芽酵母mtDNA欠失株(ρ0株)の作製を試みた。まず、CRISPR/Cas9システムをミトコンドリア内で機能させるために、Cas9タンパク質のN末端側にミトコンドリア輸送配列であるMTSを付加させることで、ミトコンドリアへの輸送を試みた。その結果、MTSを付加させたCas9(MTS-Cas9)複合タンパク質は、付加させていないCas9タンパク質とは異なりミトコンドリアに局在化することを確認した。さらに、mtDNAにコードされている遺伝子ATP8を標的として、gRNAと MTS-Cas9複合タンパク質による、mtDNAの切断を試みた。一般にmtDNAは二本鎖切断後、修復機構が行われないと速やかに分解することが報告されている。そのため、MTS-Cas9複合タンパク質とgRNAを導入した出芽酵母ミトコンドリア内においてqPCRにより酵母内mtDNA量を測定することで、mtDNAの切断が行われたことを確認した。その結果、MTS-Cas9複合タンパク質とgRNAを導入した酵母では、mtDNA量が他と比較して著しく減少し、出芽酵母mtDNA欠失株(ρ0株)が多数出現していることが示された。
 これらの結果から、MTSをCas9タンパク質に付加することでmtDNAを標的と-2-した「mito-CRISPR」システムが稼働することを確かめた。

2. mito-base editorシステムを用いた出芽酵母mtDNA塩基編集技術の開発
 CRISPR-base editorシステムでは、二本鎖切断活性を欠失し一本鎖のみを切断できるニッカーゼCas9(nCas9)を用いる。末端部位に「塩基編集酵素」と呼ばれるタンパク質を付加することで、標的とする一塩基が修復可能であり、編集の際にdonorDNAを必要としないゲノム編集技術となる。そこで、標的とするmtDNAに対して二本鎖切断を行わずに一塩基編集を行うmtDNA編集技術である「mito-base editor」システムの開発を試みた。
 まず、nCas9タンパク質のN末端にMTS、C末端にSea lamprey由来のシチジンデアミナーゼであるPmCDA1を融合させたタンパク質を発現するプラスミドを構築し、ミトコンドリアへの輸送を試みた。その結果、MTSを結合させていないnCas9-PmCDA1は細胞質に、MTSを結合したnCas9-PmCDA1ではミトコンドリアに局在することを観察した。さらにmtDNAのG-C塩基対が多く存在する配列を標的としたgRNAを発現するプラスミドを作製し、そのプラスミドを同時に出芽酵母に導入することで目的のmtDNA塩基編集を試みたところ、gRNAが標的としたmtDNAの一塩基がCからTへ編集されていることを観察した。これにより、標的mtDNAを一塩基編集する「mito-base editor」システムの稼働を確かめた。
 さらに、gRNAライブラリーを作製し、mtDNA新規機能変異を獲得することで、「mito-base editor」システムがmtDNAエンジニアリングツールとして働くことを実証した。mtDNAにコードされている21SrRNAを標的として、マクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンへの新規耐性変異の獲得を試みた。まず、21SrRNA領域のうち、gRNA作製可能な領域内にシチジン塩基を持つ部位を探索し57種類のgRNAを作製した。ライブラリーが導入された形質転換体に「mito-base editor」システムを導入してエリスロマイシン耐性となる新規mtDNA変異の探索を試みた。その結果、複数のコロニーを獲得することができた。獲得したコロニーの21SrRNA配列を解析した結果、1950番目のグアニンがアデニンに変換されていることが見い出された。この変異は、出芽酵母において、これまでの研究で発見されていないエリスロマイシンに対する耐性変異であることから、「mito-base editor」システムによる新規mtDNA機能変異の獲得を示唆した。

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