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書き出し

経腟分娩後女性の産後1か月までの会陰部痛、日常生活動作の支障、母親役割の自信および母親であることの満足感との関連

山田, 安希子 名古屋大学

2023.08.24

概要

学位報告4

別紙4
報告番号



















論文題目
経腟分娩後女性の産後1か月までの会陰部痛、日常生活動作の支障、
母親役割の自信および母親であることの満足感との関連


名 山田 安希子

論 文 内 容 の 要 旨
背景
わが国における女性を取り巻く近年の社会・医療背景により、産後の身体部痛や身体回
復に問題を抱える母親、育児不安、子育てのしにくさを抱える母親が増加している。
第一に、経腟分娩後女性の身体面の健康問題の一つとして、産後の会陰部痛とそれに伴
う日常生活動作の支障に着目した。これらは、時間経過とともに軽減していくが、会陰部
痛の増悪因子となる器械分娩や会陰切開などの産科学的要因は、分娩時に必要な処置でも
ある。そこで、助産師が介入可能な妊娠期の要因も含めた会陰部痛に関連する要因を検討
することとした。会陰部痛に伴う日常生活動作の支障が時間経過とともに軽減することは
既に報告されているが、近年は日常生活動作の支障そのものに関する研究はほとんど報告
されていない。しかし、出産時の医療介入の割合は、国内外共に急速に増加し、女性の会
陰部痛や日常生活動作の支障の有症率や程度は増大している可能性がある。そのため、現
在の産後女性の日常生活動作の支障の程度や経時的変化、
関連要因を検討する必要がある。
第二に、本研究では、会陰部痛および日常生活動作の支障と母親役割の自信および母親
であることの満足感との関連に着目した。これらに関連する要因は子育て期にある女性を
取り巻く社会的・心理的要因、および疲労が要因として明らかにされているが、助産師が
支援可能な会陰部痛や日常生活動作の支障が、どのように産後 1 か月までの母親の自信構
築や満足感に関連しているかを検討した研究は国内外を通じてほとんどない。そこで、母
親となる女性が、健康的な産後の生活、および、母親役割への適応が円滑にすすむような
妊娠・分娩・産褥期の助産実践は何か模索したいと考え、本論文をまとめた。
目的
目的は以下の 3 つである。
[目的 1] 産後 1 日目の会陰部痛の程度と関連要因を初経産別に検討すること、[目的 2]

学位関係

産後 1 か月までの会陰部痛と日常生活動作の支障の経時的変化と関連要因を検討する
こと、[目的 3] 産後 1 か月までの母親役割の自信および母親であることの満足感の経
時的変化と関連要因を検討することである。
方法
研究デザインは、産後 1 か月までの縦断調査による量的記述研究である。研究対象
は、単胎児を正期産で経腟分娩した母子ともに妊娠・分娩・産褥経過に異常がない 20
歳以上の日本語で質問紙の回答が可能な女性とした。除外基準は、精神疾患、重篤な
既往疾患、妊娠合併症がある、緊急帝王切開、児の出生後 1 分、5 分値のアプガース
コアが 8 点未満、分娩後の経過で母子分離となり母子同室できなかった女性とした。
調査方法は、産後 1 日目、5 日目、産後 1 か月健診で質問紙を配布し回答を得た。
質問紙の構成は、会陰部痛は Visual Analog Scale、日常生活への支障を示す尺度(竹
内, 2014)、母親役割の自信尺度、母親であることの満足感尺度(前原 & 森, 2005)
を用いた。属性、産科学的・新生児要因は診療録より情報を得た。統計分析は、記述
統計のほか、連続変数の関連はピアソンの相関係数またはスピアマンの相関係数、質
的変数の 2 群の比較には、スチューデントの t 検定またはマンホイットニーの U 検定、
3 群の比較には、一元配置分散分析またはクラスカル・ウォリス検定を用いた。従属
変数を産後 1 日目の会陰部痛とした重回帰分析、日常生活動作の支障、母親役割の自
信および母親であることの満足感を従属変数とした線形混合モデルを用いて、関連要
因を検討した。有意水準は 5%未満の両側検定とし、統計ソフト SPSS ver. 27.0 を用
いた。名古屋大学大学院医学系研究科生命倫理審査委員会の承認後、研究協力施設の
倫理委員会または施設長の許可を得て実施した。
結果
分析対象は、184 名(初産婦 92 名、経産婦 92 名)であった。産後 1 日目の会陰部痛
は、経産婦 27.5[9.0-55.5]mm に比して、初産婦 54.0[37.3-77.8]mm が強く自覚し
ていた(P<0.01)。初産婦は、産後 1 日目の会陰部痛を強く自覚することに、妊娠中の
体重増加が推奨範囲以上であることが関連していた。経産婦は、産後 1 日目の会陰部
痛を強く自覚することに、会陰裂傷の程度がⅡ度以上であることが関連していた。
会陰部痛、日常生活動作の支障(座位への支障、動静への支障、排泄と清潔への支
障)は、産後 1 日目から産後 5 日目、産後 5 日目から産後 1 か月にかけて軽減された
(座位 P<0.01, P<0.01; 動静 P<0.01, P<0.01; 排泄と清潔 P<0.01, P<0.01)。座位
への支障には、会陰部痛が強いこと、会陰切開を施行したことが関連していた。動静
への支障には、会陰部痛が強いこと、会陰に損傷があることが関連していた。排泄と
清潔への支障には、会陰部痛が強いこと、会陰に損傷があること、初産婦であること
が関連していた。
母親役割の自信および母親であることの満足感は、産後 5 日目から産後 1 か月にか
けて高まった(P<0.01, P<0.01)
。母親役割の自信の高さには、経産婦であること、会

陰切開を施行していないこと、産後 1 か月の栄養方法が母乳のみであること、日常生
活への支障がないことが関連していた。母親であることの満足感の高さには、産後 1
か月の栄養方法が母乳のみであることが関連していた。
考察
目的1に対して、初産婦において、分娩期の要因である会陰切開を調整した上でも、
妊娠中の体重増加が推奨範囲以上の場合、産後の会陰部痛が強く自覚されることが示
された。その機序として、創傷治癒過程に影響を与えるアディポネクチンが妊娠中の
体重増加が多いことで減少し、創傷治癒過程の遅延から会陰部痛を強く自覚したと考
察された。次に、経産婦においては、会陰裂傷の程度が大きいほど、会陰部痛の自覚
は強いことを示し、この結果は、先行研究と同様の結果であった。
目的 2 に対して、会陰部痛を調整しても、日常生活動作の支障(座位への支障、動
静への支障、排泄と清潔への支障)は、会陰切開や会陰損傷がそれぞれ関連している
ことを明かにした。これらの結果は、会陰切開や会陰損傷がないほど、産後の日常生
活動作の支障を減じ、産後の QOL 向上に寄与する可能性を示唆した。
目的3に対して、母親役割の自信の高さには、経産婦であること、会陰切開を施行
していないこと、産後 1 か月時の栄養方法が母乳のみであること、日常生活への支障
がないことが関連していた。母親役割の自信は、子どもの世話や子どもとの相互作用
の経験を通して獲得されるものであり、初産婦は育児に不慣れなものが多く、母親役
割の自信構築につながる「わが子の合図のよみとり」と「要求への応答」そのものが
困難な傾向にあるため、初産婦は母親役割の自信が低いと考えられた。また、日常生
活への支障があることが、母親役割の自信構築につながる「(わが子の)要求への応答」
に必要な動作を困難にし、影響を与えた可能性が考えられた。また、日常生活への支
障には、
「排泄と清潔への支障」も含まれ、人間としての基本的欲求が満たされにくい
ことや羞恥心が高い健康問題を有している場合には、母親役割の自信は高まらない可
能性が示唆された。産後 1 か月時の栄養方法が母乳のみであることは、母乳哺育が上
手くいくことを通して、産後の女性が、母親としての自分を肯定し、相互作用を楽し
んでいることが、母親の自信および満足につながっていると考えられた。
結論
助産師は、産後の会陰部痛や日常生活への支障を軽減するため、妊娠期には、体重
増加を推奨範囲内にするための指導、分娩期には、会陰損傷をできるだけ小さくする
分娩管理、分娩介助を行うこと、産褥期には、生じた会陰損傷に伴う会陰部痛や日常
生活への支障ができるだけ軽減されるよう援助し、母親役割の自信および母親である
ことの満足感を高め、母親となる女性が心身ともに健康的な産後の生活および母親役
割への適応が円滑にすすめるよう支援する必要がある。

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