書き出し
怒りの強いターミナル期患者の看護をする看護師の体験:難治性褥瘡により全身状態が悪化した患者の看護を通して (第137回成医会総会一般演題)
概要
【目的】
本研究では,終末期の身体的・精神的苦痛からスタッフに怒りをあらわにし,対応に苦慮した事例において,看護師の体験を明らかにし看護の示唆を得ることを目的とした.
【方法】
当該病棟の看護師16名を対象としたアンケート調査を実施した.得られたデータをコード化し類似する要因毎にカテゴリ化を行なった.
【結果】
終末期に怒りを表出した看護師の体験として,「本人の望みを実現できた」「本人の生活や背景に合わせたケア」「本人との関係構築に取り組んだ」の三つの肯定的感情のカテゴリと,「感情労働の辛さ」「患者-医療者間の認識の相違」の二つの否定的感情のカテゴリが抽出された.
【考察】
当該事例において,看護師は患者との関わりの中で,怒りの表現や医療者との認識の差を埋めることの難しさに対し様々な感情を抱きながらも粘り強く介入を続け,学びを得る体験をしていた.一方で,ただ感情労働の辛さを感じる体験があったことも明らかになった.看護師のそれぞれの体験を話し合う場を設け,感情労働の辛さの表出や学びを共有すること,また怒りや苦痛の表出の意味について,繰り返し話し合うことが必要であると考えられる.
【結論】
怒りの強いターミナル期患者の看護において,怒りや苦痛の表出の意味について看護師間で繰り返し話し合うことが重要である