眼炎症疾患のスコアリングシステムの臨床的検証と応用
概要
【別紙 2】
審査の結果の要旨
氏名 田中 理恵
本研究は、2 つのぶどう膜炎の評価方法、Behçet's disease ocular attack score 24(以下、BOS24)と
Angiography Scoring for Uveitis Working Group (以下、ASUWG)によるフルオレセイン蛍光眼底造影
検査所見のスコアリングシステムについて臨床的意義の検証を行い、下記の結果を得ている。
1.
BOS24 はベーチェット病ぶどう膜炎の眼炎症発作を臨床所見からスコアリングする方法である。
ベーチェット病ぶどう膜炎患者の視力増悪に有意な因子を同定するために線形混合モデルを用いて解析
した。その結果、5 年間の視力増悪に有意な因子は、BOS24 スコアの 5 年間の合計である BOS245Y(p=0.001)、治療初期の非発作時最高矯正視力(p=0.002)、初診時年齢(p=0.009)であった。5 年間の総
眼炎症発作回数は線形混合モデルでは視力増悪に有意な因子ではなかった。さらに、どの部位の眼炎症
が視力増悪にもっとも影響するのかを検討するために、BOS24-5Y の 6 項目を前房細胞-5Y、硝子体混
濁-5Y、眼底病変-5Y の 3 項目に分類し、解析した。その結果、眼底病変-5Y は視力増悪に有意な因子で
あった(p=0.002)が、前房細胞-5Y、硝子体混濁-5Y は有意な因子ではなかった。
2. ASUWG のスコアリングシステムは蛍光眼底造影所見からぶどう膜炎の活動性をスコアリングする方
法である。このスコアリングシステムを用い、従来の眼底カメラと超広角眼底カメラによるサルコイド
ーシスぶどう膜炎患者の蛍光眼底造影結果を評価し、比較検討した。トータルスコアは従来の眼底カメ
ラでは 12. 0 ± 0.95、超広角眼底カメラでは 14.6 ± 0.95 で超広角眼底カメラの方が有意に高値であ
った(p<0.001)。超広角眼底カメラのほうが従来の眼底カメラよりも有意差をもって高値であった項目
は、視神経乳頭過蛍光(p<0.001) 、後極の網膜血管染色(p=0.012)、周辺部の毛細血管漏出(p<0.001)で
あった。
以上、本論文はベーチェット病ぶどう膜炎患者において、BOS24-5Y のほうが 5 年間の眼炎症発作回数
と比較し、より視力変化に影響を及ぼすことがわかった。また、BOS24 の中でも眼底病変のスコアが
もっとも視力増悪に関連していることを明らかにした。また、2 種類の眼底カメラでの蛍光眼底所見を
比較するにあたり、ASUWG のスコアリングシステムを使用したことで、蛍光眼底造影所見ごとのスコ
ア化や後極・周辺部に分けたスコア化が可能であった。本研究はこの 2 つのぶどう膜炎の評価方法は臨
床的意義があることを示した。
よって本論文は博士(医学)の学位請求論文として合格と認められる。