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大学・研究所にある論文を検索できる 「膵・胆管合流異常における膵液逆流の機序:流体力学モデル実験」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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膵・胆管合流異常における膵液逆流の機序:流体力学モデル実験

Fukuzawa, Hiroaki 神戸大学

2021.03.25

概要

【はじめに】先天性胆道拡張症には膵・胆管合流異常という胆管・膵管の奇形を伴うことは良く知られている。通常、ヒトの膵管と胆管は十二指腸壁内で合流し、その合流部をOddi括約筋が包み、膵液と胆汁は混じることなく十二指腸に排出されている。しかし、膵・胆管合流異常では膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し、そこにはOddi括約筋作用は及ばない。その結果、膵液が胆管・胆囊内に逆流し、胆道癌を引き起こす原因のひとつとされている。また膵・胆管合流異常には胆管拡張を伴わないものもあり(非拡張膵・胆管合流異常)、その場合発癌は高率に胆囊におこるため、発癌予防の意味から胆囊摘出のみでよいという意見と、胆囊摘出後にも膵液逆流による胆管癌の発生リスクが残ることから胆管切除もするべきであるという意見がある。膵・胆管合流異常において膵液が胆道内に逆流しているという事実は、胆囊内・胆管内の膵酵素の上昇で証明はされているが、どの様に膵液が肝臓から十二指腸への胆汁の流れに逆らって、胆囊内へ逆流しているのか検討した報告はない。今回我々は、流体力学の視点から膵管・胆管のモデルを非生体材料で作成し、非拡張膵・胆管合流異常における膝液逆流の機序を検証した。

【方法】シリコンなどの管を用いて非拡張膵・胆管合流異常モデルを作成し、その中に膵液・胆汁を模した液体を流し、膵液逆流現象を観察した。また実験モデルには胆囊の機能(収縮・拡張・胆囊壁の水の吸収)を持たせた装置を併設した。モデルの大きさ、膵液・胆汁の生成量、胆囊の大きさ、胆囊の収縮率、Oddi筋内圧などは、ヒト成人のデータを集めてきて用いた。総胆管の長さは70mm、径は6mm、胆汁の生成量は30ml/H、膵液の生成量は60ml/Hと設定した。oddi筋内圧はヒト成人の基準圧である14mmHgとし、チューブ端を持ち上げることにより発生させた。胆囊は薄いゴムで作成し、それを空気の抜ける穴をあけたシリンジ内に入れ、能動的な収縮と受動的な拡張の機能を持たせた。胆囊の大きさは50ml、胆囊の収縮率もヒト成人のデータから、1時間で80%の収縮率とし再現させた。胆囊からの水分の吸収量のデータはなかったため、肝内胆管胆汁と胆囊内で濃縮された胆汁中の胆汁酸濃度のデータの差から計算した。その結果、胆囊壁からの水の吸収量は23ml/Hとした。
 この実験系で胆囊の拡張状態(静止)、能動的な収縮時、受動的な拡張時の3つのPhaseで膵液の逆流を観察した。また、各Phaseにおける胆管内圧を測定し膵液が逆流する条件を検証した。さらに非拡張膵・胆管合流異常の胆囊摘出モデルでも、膵液の流量を変化させて(60mVHから150ml/Hまで)膵液の逆流の有無と胆管内圧を検証した。

【結果】胆囊拡張状態(静止)では胆管内圧はoddi筋内圧とほぼ同圧となり、膵液の逆流は見られなかった。しかし、胆囊からの水の吸収量を2倍(46ml/H)に増加させた場合、胆囊拡張状態(静止)でも膵液は胆囊内へ逆流した。胆囊の能動的な収縮時には総胆管内圧はoddi筋内圧よりやや高い圧に上昇し、膵液の逆流は見られなかった。胆囊の受動的な拡張時には総月巨管内圧はOddi筋内圧より低い値となり、膵液の胆囊内への逆流が見られた。またそのphaseで胆囊管を閉鎖させると(胆囊摘出状態に変化させる)、膵液逆流は止まり肝臓からの胆汁の流れで胆管内へ逆流していた膵液は十二指腸へ排出された。
 非拡張膵・胆管合流異常の胆囊摘出モデルでは、胆管内圧はoddi筋内圧よりやや高い値を維持し続け、肝臓から生成された胆汁は胆管内を一定方向に流れ続け、膵液の流蛩をどのように変化させても膵液逆流は見られなかった。

【考察】管の中を流れる液体の向きは、その2点間の圧勾配によって決定される。その理論は、胆管・膵管内の液体の流れにも当てはめることが出来る。そのため総胆管内の流体の流れの向きは、総胆管内圧(胆囊管分岐部付近)とoddi筋内圧の圧格差で決定される。すなわち膵・胆管合流異常において、総胆管内圧がoddi筋内圧より低い時にのみに膵液逆流が発生する。胆管内圧に影響を与える因子として、oddi筋内圧と胆囊の働きが考えられる。
 胆囊の働きは、能動的な収縮・受動的な拡張・胆汁濃縮があり、このうち能動的な収縮は胆嚢内胆汁を髙流量で胆管内に排出するため、胆管内圧を上昇させる働きをする。一方、受動的な拡張は、胆管内から胆汁を引き込むため胆管内圧を低下させる。また胆嚢の胆汁濃縮機能においては、胆囊壁からの水の吸収が行われており、その為胆管内圧を低下させる働きをする。今回の検証では胆逛壁からの水の吸収量を増加させ、肝臓からの胆汁の生成量を上回る状態となれば、胆囊の静止状態においても脾液は総胆管を逆流し胆囊内へ流れ込む結果となった。
 非拡張膵・胆管合流異常において、一般的に胆囊癌の予防目的に胆囊摘出のみ行われることが多いが、胆囊摘出後の膵液逆流について今まで検討されることはなかった。胆囊摘出後は、胆管内圧を減じる要素が消失する為、胆管内圧はoddi筋内圧よりやや高い値を維持されることになる。よって、胆菠摘出後の非拡張膵・胆管合流異常においては、総胆管内の胆汁の流れの向きは肝臓から十二指腸への一方向となり、膵液の逆流は発生しないと考えられる。
 今回の検討は、胆管非拡張の場合のみを検証した。胆管拡張のある膵・胆管合流異常では、拡張した胆管自体がリザーバーの働きをするため、胆囊摘出のみで膵液の逆流が止まるかどうかは不明である。しかし胆囊摘出により、胆管内圧を減少させる因子がなくなるので、少なくとも膵液の逆流量は少なくなることが推測される。

【結語】膵・胆管合流異常における膵液の逆流機序を、流体モデルを用いて検証した報告はこれが初めてである。非拡張膵・胆管合流異常にける膵液の逆流現象は胆囊の働きが関与していると思われる。よって、非拡張膵・胆管合流異常において、胆囊摘出を行うことにより、膵液逆流が消失すると考えられる。

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