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大学・研究所にある論文を検索できる 「The impact of chronic Epstein–Barr virus infection on the liver graft of pediatric liver transplant recipients: A retrospective observational study」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The impact of chronic Epstein–Barr virus infection on the liver graft of pediatric liver transplant recipients: A retrospective observational study

雫, 真人 名古屋大学

2022.07.01

概要

【緒言】
Epstein-Barr virus(EBV)は肝炎や移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorders, PTLD)を起こすウイルスの1つであり、また、固形臓器移植後にはEBV感染が持続感染することがしばしば観察される。小児肝移植後の持続高EBV血症(chronic high EBV loads, CHEBV)は、ほとんどの患者が無症状で時間とともに自然に改善していくとされるが、EBV感染はPLTD発症のrisk factorであることから、EBV感染を認めた場合はPTLD発症を避けるために免疫抑制剤を減量することが推奨されている。一方で、免疫抑制剤の減量はグラフト肝の線維化を進行させることが知られている。このようにEBV感染とPTLD発症の関連性、免疫抑制剤の管理については多くのことがわかってきているが、これまでにCHEBVがグラフト肝にどのような影響があるかということはわかっていない。CHEBVによるグラフト肝への影響を解明できれば、免疫抑制剤の調整や管理の方針、肝生検の是非の判断、EBVのmonitoringの方針などに有用な情報となる可能性がある。

本研究では、CHEBVがグラフト肝に臨床的、病理組織学的にどうような影響があるのかを解明することを目的に、以下の2点について検討した。(1).持続EBV感染による血液生化学的検査への影響、(2).持続EBV感染によるグラフト肝への病理組織学的影響。

【対象および方法】
2012年1月から2019年12月までの間に当院で肝移植を行った16歳以下の患者46名を対象とした。なお、肝移植後6か月以内の期間から得られたデータは、EBV感染よりも周術期の影響(胆管炎や術後合併症、免疫抑制剤の調整不足による拒絶反応など)の方が大きいと考えられるため、本研究では、肝移植後6か月以降に得られた検体を評価対象とした。

EBVの測定については、肝移植後から退院するまでは毎週、退院から術後6か月までは2-4週間毎、その後は4-6週毎にEBV-DNAloadを測定した。EBV-DNA>5,000IU/mlとなった患者に対してはタクロリムスのトラフ値を3.0ng/ml程度と低く設定して管理した。本研究では、EBV-DNA>10,000IU/mlが6か月以上持続した患者群をCHEBV群、CHEBV群の条件を満たさない症例をNCHEBV群とし、2群にわけて検討した。

グラフト肝への影響の評価として、肝胆道系酵素の上昇など緊急で組織診断が必要な際に行うepisodic biopsyに加えて、我々は無症状の症例に対しても1年毎のprotocol biopsyを行っている。これらの肝生検の際に得られた検体を用いてCHEBVによる血液生化学的影響[WBC,Lymph、Plt、AST、ALT、LDH、Alb、T-bil、PT-INR、PT(秒)]、病理組織学的影響[病理組織診断、late-onset rejection(LAR)の程度(rejection activity index, RAI)と頻度、線維化の進行]の評価を行った。

【結果】
評価対象46例のうち、CHEBV群は28例、NCHEBV群は18例であった(Table1)。移植時の年齢、体重はNCHEBV群で有意に高かった。NCHEBV群の3例がgraft failureで死亡していたが両群に有意差はなかった。Graft-to-recipient weight ratio、follow-up期間はCHEBV群で有意に大きかった。タクロリムスの血中濃度はCHEBV群で有意に低かった。また、CHEBV群の1例に直腸周囲にPTLDの発症を認めたがリツキシマブの投与で速やかに改善した。

CHEBV群のEBV-DNA数の推移をFigure1に示した。EBV-DNA≧10,000IU/mlを呈する中央値は移植後88.0日(26-596日)で、28例中24例(85.7%)が180日以内にEBVDNA≧10,000IU/mlを呈していた。

血液生化学検査の比較結果をTable2に結果を示した。Protocol biopsy時においては、CHEBV群とNCHEBV群の間ではいずれの項目も有意な違いは認めなかった。Episodic biopsy時において、NCHEBV群にgraft failureで死亡した1例があり、死亡直前に行った肝生検時のT-bil値(T-bil:48.0mg/dL)は除外した。その結果、episodic biopsy時も有意な違いは認めなかった。

病理組織学的所見の比較結果をTable3に示した。Protocol biopsyにおいては、CHEBV群で25例中11例(44.0%)が、NCHEBV群では9例中3例(33.3%)が正常所見であった。LARについては、CHEBV群で28例中8例(32.0%)、NCHEBV群で9例中3例(33.3%)がRAI≧3(mild)のLARを認めた。Episodic biopsyについては、CHEBV群で10例中3例にRAI≧3(mild)、3例にRAI≧5(moderate)のLARを認めた。一方、NCHEBV群では、4例中1例(25.0%)にRAI≧5(moderate)のLARを認めた。全体的にCHEBV群においてLARが多い傾向にはあったが、両群に有意差は認めなかった。線維化においては、F≧2の累積発生率はCHEBV群で高い傾向にはあったものの、両群で有意差は認めなかった(Figure2)。

【考察】
固形臓器移植後のEBVの定期的なモニタリングは、PTLD発症の早期発見と治療に重要である。さらに、小児の固形臓器移植後には持続EBV感染がしばしば観察される。EBVは肝炎を起こすウイルスの1つとして知られているにかかわらず、CHEBVがグラフト肝にどのような影響を与えるかについてはこれまでわかっていなかった。本研究結果から、肝移植後のCHEBVは血液生化学検査的にも病理組織学的にもグラフト肝への影響は少ないことがわかった。また、免疫抑制剤の適切な調整は、線維化を進行させずに持続EBV感染の管理に貢献しうる可能性も示唆された。

CHEBV群における肝移植後のEBV-DNAは、時間とともに緩徐に低下していく傾向にあった(Figure1)。この傾向とタクロリムスの血中濃度低値との関連については検討していないが、我々は成長とともに免疫機能が発達していくことが関与しているのではないかと推察している。

血液生化学検査において、protocol biopsy/episodic biopsy時に得られたデータのいずれもCHEBV群とNCHEBV群の間で有意差は認めず(Table2)、臨床的にもCHEBVはグラフト肝に影響が少なかった。ただし、本研究では肝移植後6か月以降の安定した時期でのデータを対象としており、また、特にepisodic biopsy時のサンプル数・症例数は少なく、解釈には注意が必要である。

病理組織学的影響についても、CHEBV群とNCHEBV群の間で病理組織学的所見、LARの頻度と程度に有意な違いは認めなかった(Table3)。線維化については、肝移植直後からの肝生検により得られた検体を用いて評価した。CHEBV群のタクロリムスの血中濃度は有意に低いこと(Table1)、また、これまでの報告で免疫抑制剤の減量や中止はグラフト肝の線維化の進行に関与すると報告があることから、CHEBV群では線維化がより進行することを予想していた。しかしながら、CHEBV群で線維化は進行しやすい傾向にはあったが、両群で有意差は認めなかった(Figure2)。この結果から、これまでに報告されているような厳格な免疫抑制剤の管理(免疫製剤の中止や1/2や1/4への減量など)は、線維化の進行の観点からは不要であるかもしれない可能性が示唆された。

本研究ではEBV-DNA≧10,000IU/mlを呈したタイミングで肝生検により採取した検体(10検体以上)に対して、Epstein-Barr encoding region in situ hybridizationを施行しEBVが肝組織に存在するかを検討したが、いずれも陰性であった。この結果はCHEBVがグラフト肝へ影響していないという結果を支持するものであった。

Limitationとして、症例数、特にepisodic biopsyでは症例数が少ないため、正確な結論を導き出すには難しい可能性がある。また、対象が小児であるにもかかわらずfollow-up期間が短いため、今後も継続的なmonitoringが必要である。

【結論】
今回の研究で、小児肝移植後のCHEBVがグラフト肝に与える影響は少ないことを示した。また、免疫抑制剤の適切な調整が、線維化を進行させることなく、CHEBVの管理に寄与する可能性も示唆された。

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