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書き出し

Morphological and chemical analyses of the "chi-chi" of Ginkgo biloba L.

樋口, 晴一 名古屋大学

2023.11.27

概要

報告番号



















Morphological and chemical analyses of the “chi-chi” of

論文題目




Ginkgo biloba L.
イ チ ョ ウ "chi-chi"の 形 態 学 的 お よ び 化 学 的 分 析

樋口

晴一

論 文 内 容 の 要 旨
イ チ ョ ウ ( Ginkgo biloba L.) の 葉 は 特 徴 的 な 形 を し て お り 、 植 物 に
詳しくない人でも一目でイチョウとわかる。葉を除けば、イチョウの木は針
葉 樹 の そ れ に 似 て お り 、1 8 9 6 年 に 平 瀬 作 五 郎 が イ チ ョ ウ の 泳 ぐ 精 細 胞 を 発 見
するまでは、イチョウは針葉樹の近縁種だと考えられていた。種子植物は、
花粉粒から伸びる管を通して精細胞を卵に送り込むが、遊泳精子によって受
精するイチョウは、現生植物種の系統関係において明らかに孤立した位置に
あり、針葉樹よりも遊泳精子を持つシダ類やコケ類に近いことを意味してい
る 。1 億 2 1 0 0 万 年 以 上 前 の 地 層 か ら イ チ ョ ウ の 化 石 が 発 掘 さ れ 、 イ チ ョ ウ の
組織がほとんど変化してないことが示された。これらの理由から、イチョウ
は「生きた化石」と考えられている。
生物多様性の維持や地球環境保全の重要性が高まる現代において、現
生人類が出現するはるか以前、2 億年前に地球上に出現したイチョウは、他
種保存のための参考として、純粋な科学的研究対象として、また薬用成分な
どの研究対象として研究する意義は大きい。1 属 1 種という特徴を生かして
モデル植物としても興味深い対象である。
樹 齢 が 高 く 大 き な イ チ ョ ウ の 木 は 、 幹 に 近 い 枝 か ら 「 aerial chi-chi」
と 呼 ば れ る 下 方 に 伸 び る 木 質 組 織 を 生 み 出 す 。こ の a e r i a l c h i - c h i が 地 面 に
到達すると、根およびシュートを生じ、新たな生育点になるとされている。
ま た 、 イ チ ョ ウ の 木 が 幹 の 傾 き に 脅 か さ れ る と 、 地 中 に 「 basal chi-chi」 と
呼 ば れ る 木 質 組 織 が 生 じ る 。 こ れ ま で 、 こ れ ら の イ チ ョ ウ 特 有 の 組 織 は 、 G.

b i l o b a の 長 寿 だ け で な く 、白 亜 紀 以 降 の 種 の 存 続 に も 大 き な 役 割 を 果 た し て
い る だ ろ う と 考 え ら れ て お り 、 aerial と basal は 同 一 と み な さ れ て い た 。
本 論 文 は 、 こ の イ チ ョ ウ 中 に お け る 特 異 な 組 織 で あ る chi-chi を 対 象
としたものであり、4 章から構成されている。本研究は以下の目的で行われ

た。
(a) 地 上 部 に 生 じ る aerial chi-chi の 形 態 学 的 特 徴 を 明 ら か に す る 。
(b) 地 下 部 に 生 じ る basal chi-chi の 形 態 学 的 特 徴 を 明 ら か に す る 。
(c) aerial お よ び basal chi-chi の 違 い を 明 ら か に す る 。
ま ず 、 解 剖 学 的 お よ び 化 学 的 観 点 か ら aerial chi-chi に つ い て 検 討 し
た。樹皮を剥いだ後、多くの木質組織からなる膨らみと潜在芽があった。樹
皮 の 内 側 に は こ れ ら の 潜 在 芽 に 対 応 す る く ぼ み が あ っ た 。 aerial chi-chi 試
料の先端部分から得られた横断面では、仮道管が水平面内で湾曲しており、
柔組織状の潜在芽組織が渦巻きの中心であることがわかった。顕微鏡観察と
X 線マイクロコンピューター断層撮影から、複数の渦巻きが連続して生じて
いることが示唆された。これらの観察から、形成層帯の細胞分裂から始まる
aerial chi-chi の 下 方 へ の 成 長 は 、 潜 在 芽 を 持 つ 木 質 組 織 か ら な る 膨 ら み に
よって駆動されている可能性がある。湾曲した仮道管では細胞壁の肥厚、円
形 化 、細 胞 間 隙 の 形 成 が 見 ら れ な か っ た が 、細 胞 壁 S 3 層 は 消 失 し て い た 。さ
ら に 、 チ オ ア シ ド リ シ ス と ア セ チ ル ブ ロ マ イ ド 分 析 の 結 果 、 p-ヒ ド ロ キ シ フ
ェ ニ ル 核 を 有 し 、特 に a e r i a l c h i - c h i 先 端 部 分 で は リ グ ニ ン を 多 く 含 ん で い
た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 aerial chi-chi の 湾 曲 し た 仮 道 管 が 、 あ る 程 度 圧 縮 木
材のような化学的特徴を持っていることを示している。
次 に 、 basal chi-chi の 誘 導 実 験 を 行 い 、 得 ら れ た basal chi-chi の 形
態 的 特 徴 を 観 察 し た 。 basal chi-chi は 、 幹 を 傾 け る と 地 下 の 主 根 の 側 面 に
生じたが、幹を傾けてアルミホイルで遮光すると生じなかった。最近、細胞
内における重力方向の検出メカニズムが報告されている。しかしながら
basal chi-chi 形 成 ト リ ガ ー と な る 刺 激 応 答 に は 、 傾 斜 だ け で は な く 、 地 上
部であること、すなわち光刺激が関わっている可能性が示唆された。イチョ
ウ を 傾 斜 し て 育 成 し た 場 合 、 土 中 で 重 力 方 向 に 対 し て basal chi-chi は 、 根
の よ う な 形 態 を し て い た が 、 根 冠 は な か っ た 。 こ の basal chi-chi 自 体 は 根
の機能を持たないが、芽および根がともに生じるという報告があり、姿勢制
御 に 関 わ る 何 ら か の 応 答 で あ る 可 能 性 が あ る 。 ま た 、 aerial chi-chi と 類 似
し た 木 化 組 織 で あ る と 考 え ら れ る が 、 basal chi-chi の リ グ ニ ン に は H 核 は
含まれていなかった。このことより遮光環境下において、イチョウあて材形
成に関わる何らかの機能発現が影響を受けており、それが地上部木部および
basal chi-chi の ど ち ら に 対 し て も 働 く の で は な い か と 考 え ら れ る 。
以 上 よ り 、そ の 化 学 的 特 徴 の 不 明 で あ っ た イ チ ョ ウ c h i - c h i に つ い て 、
形成過程および化学構造に関する詳細な知見を得た。同一とみなされてきた
aerial と basal chi-chi が 異 な っ た メ カ ニ ズ ム に よ る も の で あ る 可 能 性 を 示
した。

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