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大学・研究所にある論文を検索できる 「上咽頭癌に対する放射線治療後に生じた二次性甲状腺機能低下症の予測因子に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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上咽頭癌に対する放射線治療後に生じた二次性甲状腺機能低下症の予測因子に関する研究

尾股 聡 東北大学

2022.03.25

概要

上咽頭癌に対する放射線治療では、甲状腺周囲の頸部リンパ節領域を含めた照射範囲が設定されることが多い。放射線治療に伴う甲状腺の有害事象として甲状腺機能低下症が知られているが、照射線量と甲状腺機能低下症発症に関する知見は十分に確立されていない。本研究では、甲状腺への照射線量と甲状腺機能低下症の関連性、照射後の甲状腺の体積変化、甲状腺機能低下症発症の予測因子を探求した。東北大学病院および宮城県立がんセンターにおいて、上咽頭癌に対して強度変調放射線治療(Intensity-Modulated Radiation Therapy:IMRT)を用いた治療を施行した患者を対象とし、治療後のフォローアップ検査で行われた CT 検査結果を放射線治療計画装置へ取り込み、甲状腺の輪郭を描出した。得られた甲状腺の体積や線量分布図から、以下のように後ろ向きに解析を行った。最終観察日の時点で、正常群と甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)を発症した群(以下、HT 群)に分類し、2 群間で患者背景や線量体積ヒストグラム(DVH)解析結果に差があるかを検討した。また放射線治療前後の CT 検査結果から、甲状腺体積の経時的変化を評価した。46 例が適格条件を満たし、23 例(50%)が HT を発症した。正常群と比較して HT 群は年齢が低かった(Wilcoxonの順位和検定;p=0.0161)。放射線治療前後で行われた化学療法の施行数が 0-3 コースの症例と比較し、4-5コースの症例では HT 発症率が高い傾向がみられた(Fisher の正確検定、p=0.0758)。その他の患者背景は 2群間で有意差を認めなかった。

DVH 解析では Dmax、Dmean、D50%、V40(%)、V45(%)、V50 (%)、V40(cc)、VS10(cc)、VS20(cc)、VS40(cc)について、HT 群で有意に甲状腺に照射された線量や体積が大きかった(Wilcoxon の順位和検定、それぞれ p=0.0280、p=0.0265、p=0.0369、p=0.0314、p=0.0338、p=0.0307、p=0.0433、p=0.0205、p=0.0049、p=0.0184)。VS10=0cc、VS20=0cc、VS40=0.15cc をカットオフ値として 2 群に分類し、カプランマイヤー法を用いて HT 発症率を評価したところ、VS10Gy=0cc、VS20Gy=0cc、VS40Gy≦0.15cc の症例で有意に発症率が増加した(ログランク検定、p=0.0309、p=0.0128、p=0.0073)。治療開始前の甲状腺の体積は女性で有意に小さかった(Wilcoxon 順位和検定、p=0.0415)。甲状腺の標準化体積は放射線治療後に有意に減少し、両群とも治療終了後 6 ヶ月以内に最も大きく減少した(Steel-Dwass 検定; p<0.0001)。多変量解析では、年齢と VS20 を用いたロジスティック回帰分析と比較して、治療終了後 6 ヶ月以内の甲状腺体積減少率を加えた解析の方がモデルの当てはまりが向上した(それぞれ AUC=0.82083、0.92222)。年齢、 6 ヶ月以内の体積減少率のパラメータ推定値を用いて HT 発症リスクを算出し、発症リスクの中央値で 2 群に分類し、カプランマイヤー法を用いて HT の累積発症率を比較したところ、2 群間に有意な差がみられた(ログランク検定、p<0.0001)。また、本研究の年齢中央値である 59 歳をカットオフ値として、解析対象を 2 群に分類し、6 ヶ月以内の体積減少率と HT 発症率の関連性を比較したところ、60 歳以上の症例では 6 ヶ月以内の体積減少率が 30.9%で HT の発症率が 50%となる一方で、60 歳未満の症例では体積減少率が 12.5%であり、若年者では高齢者より体積減少率が小さい場合でも、HT 発症に注意が必要であることが示された。

本研究は、上咽頭癌に対して IMRT を用いた根治的治療後の甲状腺体積を検討し、正常群と HT 群の間で体積減少率に差があること、さらに、体積減少率が HT 発症率の予測に有用であることを示した初めての報告である。

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