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書き出し

黄檗 No.58

京都大学化学研究所 京都大学

2023.02

概要

黄檗
News Letter OBAKU

by Institute for Chemical Research, Kyoto University

京 都 大 学 化 学 研 究 所

NEWS

国際共同利用・共同研究拠点 2022年活動報告
国際共同研究ステーション長 小野 輝男
化研らしい融合的・開拓的研究
2021年度採択課題の評価と2022年度新規採択課題
副所長 栗原 達夫

研究ハイライト

分子レベルのモノづくり「有機合成」
教授 大宮 寛久

58

NO.
2 0 2 3 年 2月

NO.58
February 2023
01



化研邁進

「国立大学法人化第4期における更なる発展へ」
所長 青山 卓史

02

NEWS





化研らしい融合的・開拓的研究
2021年度採択課題の評価と2022年度新規採択課題
副所長 栗原 達夫

05

研究ハイライト




国際共同利用・共同研究拠点 2022年活動報告
国際共同研究ステーション長 小野 輝男

国立大学法人化第4期における
更なる発展へ
第35代所長 青山

卓史

COVID -19によるパ ンデミックが 発 生して3年が 経ち、欧米では

分子レベルのモノづくり「有機合成」
教授 大宮 寛久

以 前 の 生 活を取り戻しつつあるもの の、 我 が 国で は 未 だ 明 確 な 出

07

研究TOPICS

口を見出せない状 況と言えます。この間我々はこれまでに経 験した





ミクロとマクロを繋ぐ流体科学を目指して











若手研究ルポ
非ニュートン/非一様/非平衡系の新しい流体科学
助教 佐藤 健

大 切なものを失いました。一方で、社 会システムの脆 弱性、階層間

遺伝子発現データに基づく
三次元生体組織in silico再構築

の 格 差、 国 家 間 の 軋 轢 などが 浮き彫りになり、 それらへ の 問 題 意

助教 森 智弥

識 が 高まったことも注目すべき変 化です。翻って教 育・研 究の現 場

新任教員紹介

においても多くの犠 牲が 払われた一方で、これまで見 過ごされてき

碧水会

た価 値 観や問 題 点を再 認 識する機 会を得ました。 身 近な例として、

コンピュータで細胞の自己組織化に迫る

08
09







定期役員会・涼飲会
秋季スポーツ大会

授 業や 会 合におけるオンラインの 利 便 性と対 面 の 意 義 の 両 方へ の

会員のひろば
三島 絵里、宮本 眞理子

11
12
13
14
15






ことのない混 乱に見 舞われ、多くの人が 本来ならば失うことのない

認識が深まったことが 挙げられます。さらに大学での感 染 対 策を通

受賞者

して、集 団としての規律遵守だけでなく、表に現れない個 人の事情

報道記録

への配 慮にも意 識が 向かうようになったと感じます。これらの 例は

化学研究所のアウトリーチ

一見 相反するものの 価値を認めるという点で共 通していますが、今

第27回 京大化研奨励賞・京大化研学生研究賞
掲示板

回 我々は、それらのバランスを図るというよりも、共に成り立 たせ
ることの重要性を学んだのではないでしょうか。

学生受賞
研究費
異動者一覧
事務部だより

大 学を取り巻く環 境は今 大きく変わろうとしています。旧 国立 大
学では 法 人化 以 降3期18年 を 経て、 過 渡 期 の 混 乱 が一 段 落したと

編集後記

は言え、その間に残されてきた多くの課 題が 教育・研究の質の低下

裏 化研点描
表 電顕に魅せられて
紙 倉田 博基

につながる問 題として顕 在 化してきました。 女 性 教 員 比 率 の 向 上、
次 世代 若 手 研 究 者 の育成、 時 宜に応じた 組 織 再 編 など、 これら京
都 大 学における課 題 はまさに化 学 研 究 所 が今 後 取り組むべきもの
と言えます。それとは別に、化学研究 所の本来の責 務として、個々
の 研究の先 鋭 化、分野横 断的な研究の融 合、創 造 的 新 分野の開拓
など を 加 速させるともに、 大 学 院を 中 心とした 教 育 活 動 を 充 実 さ
せて行かなければ なりません。そのためには、第3期までに構 築さ
れた化学関連 分野を深 耕する国 際的ハブとなる「国 際 共同利用・共
同研究拠 点 」
(化学関連 分 野の深 化・連 携を基 軸とする先 端・学 際
グローバル研究拠 点 )や京都大学研究連 携 基盤のもとで展開される
「未踏科学研究ユニット」
( 持続可能社会創造ユニット)などの様々な
学 術ネットワークを活用するとともに、所属する大 学 院 研 究 科・専
攻との連 携を一層強化することが 重要になると考えます。化学研究

「黄檗

01

所の第4期における課題はこれまで以 上に山積しています。しかし、

高速液体クロマトグラフ

それら全てを 達 成 することは中 長 期 的 に大きな 相 乗 効 果 を 産み 出

研究ハイライト「分子レベルのモノづくり「有機合成」」より

表紙の
ことば

」 OBAKU

57

COVER

『僕らは目に見えないもので「ものづくり」をして
います。たとえば車をつくるようなイメージです。』
取材の際に聞いた大宮教授の言葉から、小さなもの
をくっつけたり分解して、人の手で「ものづくり」
をしているイメージで制作しました。
(化研広報企画室)

すものと確信します。

NEWS

国際共同利用

共同研究拠点

2022年活動報告
国際共同研究ステーション長

小野 輝男

化学研究所は、
「化学関連 分野の深化・連 携を基 軸とする先

充 実 、 国 際 的 視 野 をもつ 若 手 研 究 者 の 育 成 に 取り組 んで い

端・学際グローバル研究拠 点 」として、平成30年11月13日よ

ます。2022年 度 は国 際 共 同 利 用・共 同 研 究を引き 続 き推 進

り国 際 共同 利 用・共同 研 究 拠 点 活 動を推 進しています。拠 点

するため、2021年度と同程 度の63件
(国際率46%)の研究課

活動として、第Ⅰ期・第Ⅱ期共同利用・共同研究拠 点活動で培っ

題を 国 際 枠として採 択しました。 また、 多くの 研 究 者に議 論

てきました。 研 究 分 野 の広がりと深さならびに国 内 外で の 連

の場を提 供する国 際 会 議・シンポジウム/研 究 会 開 催 や、 グ

携実績を基盤とし、その国際的ハブ 機能を活用し、国 際 共 同

ローバルな最 先 端 研 究・教 育と国 際 連 携を支える研 究者の育

利 用・ 共 同 研 究 の 一 層 の 促 進 、 国 際 学 術 ネット ワ ー ク の

成・開拓をめざした若手海外派 遣・受 入事 業を行っています。

国際会議

セミナー
07

07
10

08
15

24th International Colloquium on
Magnetic Films and Surfaces (ICMFS2022)
主催

化研の世話人
参加人数

11
05

化学研究所国際共共拠点・
分子材料化学セミナー

ICMFS2022実行委員会

主催

沖縄科学技術大学院大学



(ハイブリッド開催)

小野 輝男(実行委員長)

世話人
参加人数

289名

04

京都大学化学研究所
京都大学宇治キャンパス

共同研究棟大セミナー室(CL-110)

梶 弘典
35名(8/5、11/4の合計)

コ ロ ナ 渦 で の ハ イ ブ リ ッ ド 会 議 と な り ま し た が、
総勢289名の参加者のうち215名が現地参加でした。
ま た 海 外 か ら の 参 加 者116名 の う ち 現 地 参 加 者 は
66名 に 上 り、 学 生 の 参 加 も118名( 国 内76名、 海
外42名 ) と 学 生 参 加 費 を 格 安 と し た 効 果 が あ り ま
した。これも京都大学化学研究所国際共同利用・共同
研究拠点をはじめとする各所の援助によるものです。
感謝申し上げます。

国際共同利用

共同研究拠点

若手研究者国際短期派遣事業・若手研究者国際短期受入事業
国際共同研究ステーション長

小野 輝男

国際共同利用・共同研究拠点では、グローバルな最先端研究・
教育と国際連携を支える研究者の育成・開拓をめざし、化学研
究所に所属する若手研究者の国際短期派遣、ならびに、化学研

大のため2020年度および2021年度は派遣・受入ができません
でしたが、今年度は既に4名の海外若手研究者の国際短期受入を
支援しました。

Björn Goldenbogen

(生命知識工学)

Kinga Gecse

(生命知識工学)

Mujin You

(ナノスピントロニクス)

Anucha Koedtruad

(先端無機固体化学)

2022年1月~12月

所属
ドイツ ベルリン・フンボルト大学
ハンガリー センメルヴェイス大学

58

韓国 韓国科学技術院
中国 中国科学院高能物理研究所

」 OBAKU

機動的に支援しています。世界的な新型コロナウィルス感染拡

申請者(受入研究領域)

「黄檗

究所教員をホストとする海外若手研究者の短期受入を柔軟かつ

若手研究者国際短期受入事業

02

化研らしい

融合的・開拓的研究

2021年度採択課題の評価と2022年度新規採択課題
副所長

栗原 達夫

化学研究所では毎年、研究分野の多様性を活かした「化研ら

題を採択しました。有機化学と無機化学を基盤とした生体機能化

しい融合的・開拓的研究」を募集して、若手研究者の支援と所

学研究など、まさに化研らしい異分野融合的で挑戦的な多くの課

内の先端的異分野融合を積極的に進めています。2021年度に

題が若手研究者から提案されました。面接審査会には化研将来

採択した3件の課題では、高度分光技術と有機・無機材料精密

問題・研究活性化委員会委員に加えて、学術研究支援室 (KURA)

合成の融合などにより、化研ならではのユニークな研究成果が

の方々にもご参加いただき、学術的な観点のみならず、発表技術

得られました。これらは2022年12月に開催された化研研究発

等の観点からも多くのコメントや助言が申請者に寄せられました。

表会で報告されました。

今後もこのような取り組みを通して、若手研究者が新しい発想

2022年度は、外国人研究者との共同研究1件を含む計5件の課

で化学の新分野を切り開く支援を続けていければと思います。

2022年7月 採択

01

インパルシブ誘導ラマン散乱を用いたフォノン角運動量の研究
研究代表者:材料機能化学研究系 ナノスピントロニクス


助教 久富

隆佑(写真右)

本研究では、光とフォノン間での角運動量転写の実証に挑んで
います。具体的には、超短パルスレーザー光によって引き起こさ
れるフォノン 生成過程における軌道角運動量転写の 観測を目指
しています。
共同研究者:元素科学国際研究センター 光ナノ量子物性科学


特定助教 関口

文哉(写真左)

超短パルスレーザーによる物質の 強励起と、フォノンの高感度
検出という2つの 技術の 融合により、 分野横断的な新しい 手法
で光と固体物質の間での角運動量の 結合を探索していきたいと
思います。

02

生体分子の磁気的時空間制御を可能とする化学ツールの開発
研究代表者:生体機能化学研究系 ケミカルバイオロジー


特定助教 安保

真裕(写真左)

本研究テーマでは、生体高分子の 一種であるメラニンを人工的
に修飾する手法を確立します。修飾によってメラニンに磁気応答
性を付与することにより、細胞やオルガネラなどの外部磁場によ
る空間的操作を可能にします。
共同研究者:元素科学国際研究センター 先端無機固体化学


助教 後藤

真人(写真右)

本 研究では、 生体 高分 子の 一種であるメラニン に 適切な 磁 性
「黄檗
」 OBAKU

58

03

ユ ニットを付与することにより、 細胞やオルガネラ内での自在
な磁気的操作が 可能な有 機・無 機ハイブリッド化合 物の創生を
試みます。

NEWS

03

ナノ粒子の接合数制御手法の開発
研究代表者:物質創製化学研究系 精密無機合成化学


助教 高畑

遼(写真右)

 本研究では、無機的なコアと有機的な表面をもつナノ材料を、
無機・有機両面の 技術を駆使し、未踏のナノ材料接合手法の開
発を目指します。緊密に連携の取れる
「化研ならでは」を活かした
“濃い”研究を推進してまいります。
共同研究者:元素科学国際研究センター 有機分子変換化学


助教 磯﨑

勝弘(写真左)

 本研究では、動的共有結合による選択的な金属ナノ粒子間接
合を基盤として、 金属ナノ粒子の 接合数制御を実現するために
必要な末端官能基 、リンカー鎖長、アンカー分子を有する配位
子を設 計・合成します。

04

非モデル生物におけるウイルス感染時トランスクリプトーム解析手法の開拓
研究代表者:バイオインフォマティクスセンター 化学生命科学


助教 疋田

弘之(写真左)

近年の生命 科学において、遺伝情報の大規模解 析は強力なツー
ルです。一方、先行研究の不足から、得られた情報を十分に活
かせない例も多々あります。本研究はこの課題に、生物情報学
と実験生物学のタッグを組んで取り組みます。
共同研究者:バイオインフォマティクスセンター 数理生物情報


助教 森

智弥(写真右)

非モデル生物におけるウイルス感染時の遺伝子 発現変化を情報
学の立場から網羅的に解 析します。非モデル 生物を扱う点に 本
研究課題の難しさがありますが、統計解 析や 機 械学習を駆使し
て新たな知見の獲得を目指します。

05

単分子膜の構造解明によるペロブスカイト太陽電池の高性能化
研究代表者:複合基盤化学研究系 分子集合解析


助教 TRUONG,

Minh Anh(写真右)

本研究では、ペロブスカイト太陽電池の高性能化に向けて電荷
回収単分子膜材料の 開発を 目指す。 ま た、 平坦な 金属酸化物
薄膜の 製膜技術と 表面観察技術と 合わ せ て、 導電性基板に 吸
着させた有機分子の形や配向を明確に評 価することも目指す。
共同研究者:元素科学国際研究センター 先端無機固体化学


准教授 菅

大介(写真左)

原子レベルで平坦な酸化物と有機単分子膜とで高品質界面を形
で蓄積してきた酸化物エピタキシャル 薄膜の 知見を活かし、 有

58

」 OBAKU

機/無機 物質界面という経験のない研究課題に挑戦します。

「黄檗

成し、ペロブスカイト太陽電池の高性能化を目指します。これま

04

分子レベルのモノづくり

光エネルギーと有機触媒を活用した化学 反 応 の 例

「有機 合成」
ラジカル反応を制御する
人類が豊かに生存し続けるために必要不可欠な物質である医
薬品や機能性材料の多くは、有機分子から成り立っている。
環境負荷の少ない反応試薬やエネルギーを活用して、価値
のある有機分子を、レゴブロックのように思い通りに組み
立てていく。分子レベルのモノづくり「有機合成」を魅力ある
学問分野として次世代に繋いでいく。

物質創製化学研究系 精密有機合成化学 教授
「黄檗
」 OBAKU

58

大宮 寛久

2022年4月1日、「化学研究所」に着任。15年

サイエンスの無限の可能性を伝えることで、
「化学」

源とした多様な「科学」の真理を追い求めてきた

を志す若者、今まさに「化学」を学ぶ若者に大き

「化学研究所」。胸が高鳴る、新しい場所。私たち

05

の 研 究・ 教 育 を 通 じ て、 サ イ エ ン ス の 面 白 さ や

ぶ り の「 京 都 大 学 」。 そ の 場 所 は、「 化 学 」 を 根

な夢を与えたい。

人類が豊かに生存し続けるために必要不可欠な物質である医

ラジカル反応を制御する技術が必要となります。このような

薬品や機能性材料の多くは、有機分子から成り立っています。

背景から、入手容易な化学原料から価値のある有機分子への

これら日常生活と密接に関わっている「価値のある有機分子」は、

有機合成プロセスに利用される化学反応において、扱いやす

さまざまな形・大きさ・性質の分子をレゴブロックのように

いイオン反応が、主流となっていました。裏を返せば、ラジ

組み立てていく、分子レベルのモノづくり「有機合成」によって、

カル反応は、分子の形・大きさ・性質に影響されないともいえ、

生み出されてきました。しかし、現状では、さまざまな種類

「有機合成をより単純に」することに繋がります。私たちは、

の反応試薬や反応技術を使用し、組み立てやすいように、多く

ラジカル反応を環境負荷の少ない反応試薬やエネルギーを

のプロセスを経ながら、分子の形・大きさ・性質を次々と変

活用して、思い通りに制御し、有機合成を持続可能な開発目標

化させ、価値のある有機分子をつくりだしています。その結果、

(SDGs)に則した姿に進化させていきます。

途轍もないコストや研究時間を要し、さらには環境に大きな
負荷を与えることになっています。私たちの目標は、有機合

触媒とは、化学反応の際、それ自身は変化せず、化学結合の

成をより単純にし、持続可能な開発目標(SDGs)に則した

組み替えを起こしやすくする物質のことです。その触媒の中で、

姿に進化させていくことです。

金属元素を含まず、炭素・水素・酸素・窒素・硫黄などの元素
から構成される、触媒作用をもつ小さな分子を有機触媒といい

化学反応は、分子と分子が近づき、これら分子の間で化学

ます。有機触媒は、環境調和・省資源・省エネルギーを目指す

結合の組み替えが起こるプロセスです。化学反応は、電子の

現代社会の要請に応える有機合成技術であり、2021年ノーベ

動き方に基づき、イオン反応とラジカル反応に大きく分けら

ル化学賞(List 教授・MacMillan 教授:不斉有機触媒の開発)

れます。イオン反応は2電子(イオン)が動き、ラジカル反応

の評価によって社会に広く認知されています。しかし、有機触

は1電子( ラジカル)が動きます。イオン反応は、分子 の 形

媒を用いる反応の多くはイオン反応であり、ラジカル反応は殆

や性質に大きく依存するため、前もって分子の形・大きさ・

ど知られていません。これは、有機触媒の機能開発の遅れから、

性質を組み立てやすいように変化させてから、化学結合の組

「化学反応を起こすための強い力」をもつラジカルを制御する

み替えに用いる必要があります。一方で、ラジカル反応は、

ことが難しかったからです。私たちは、「有機触媒を分子レベ

ラ ジ カ ル が「 化 学 反 応 を 起 こ す た め の 強 い 力 」 を も つ た め、

ルで設計・操作することでラジカル反応を制御する技術」を発

分子の形・大きさ・性質を変えずに、化学結合の組み替えに

見しています。そして、この技術を用いた化学反応を数多く開

利用できます。しかし、その「化学反応を起こすための強い力」

発しています。私たちの「ラジカル反応を制御する技術」は、

が原因となり、数多くの望まない化学反応を競合させ、目標

創薬現場において、医薬品候補化合物の有機合成に積極的に使

と す る 価 値 の あ る 有 機 分 子 は 得 ら れ て き ま せ ん。 つ ま り、

用され、産学共同研究に発展しています。

「黄檗
」 OBAKU

57

06

研究 TOPICS

若手研究ルポ
JST

戦略的創造研究推進事業(さきがけ)採択課題

非ニュートン/非一様/非平衡系の新しい流体科学
ミクロとマクロを繋ぐ流体科学を目指して

複合基盤化学研究系 分子レオロジー 助教

佐藤 健

非 ニ ュ ー ト ン 流 体 は、 そ の 構 成 要 素 が 時 空 間 的 な 階 層

生成した多様なデータから、構成則モデルを得ることを目指

性を有することが特徴であり、複雑流体とも呼ばれます。

します。以上の方法論の構築を通して、ミクロとマクロを繋

非 ニ ュ ー ト ン 流 体 系 で は、 階 層 性 に 由 来 す る 遅 い ダ イ ナ ミ

ぐ非ニュートン流体の流体科学を切り拓くことを目指します。

ク ス の 存 在 に よ り、 非 平 衡 / 非 一 様 な 複 雑 流 動 が 容 易 に 顕
在化します。この非平衡/非一様な流動は、化学プロセスに
おける流体輸送のエネルギー問題と直結する重要な問題です。
流 体 科 学 の 観 点 か ら、 非 ニ ュ ー ト ン 流 体 の 個 性 は 変 形 と 力
の 関 係 を 表 す 構 成 則 を 通 し て 現 れ ま す が、 階 層 性 を 考 慮 し
た構成則モデルを構築する試みは未だに十分な成功を収め
ていません。
本研究では、複雑流体の階層性を扱うために、ミクロとマ
ク ロ の 中 間 に あ た る メ ソ ス ケ ー ル に 着 目 し ま す。 ま ず、 ミ
ク ロ ス ケ ー ル(~nm程 度 ) の 分 子 の 状 態 を、 メ ソ ス ケ ー ル
(nm~μm程度)に適切に反映することで、実験で不可能な
変形をカバーするメソスケールモデルを構築します。さらに、

非ニュートン流体系における階層構造

近年発達してきたデータ科学的手法を活用し、レオロジー測
定などの実験・メソスケールモデルによる擬似実験によって

遺伝子発現データに基づく三次元生体組織 in silico 再構築
コンピュータで細胞の自己組織化に迫る

バイオインフォマティクスセンター 数理生物情報 助教

森 智弥

個別化医療の実現と難病の創薬開発を実現するためには、

て い ま す。 今 後 は 本 研 究 を さ ら に 進 展 さ せ、 組 織 お よ び 臓

組織レベルでのヒト生体材料の提供が必要です。そのため、

器の形態形成への理解そして再生医療への応用に繋げてい

再 生 医 療 の 分 野 で はiPS細 胞 を 目 的 の 細 胞 に 分 化 さ せ た 後、

きたいと考えています。

各細胞種の三次元位置情報に基づいて人工組織を再構築す
る た め に 必 要 と さ れ る 様 々 な 技 術 が 開 発 さ れ て き ま し た。
これまでは細胞シートや3Dプリンターを用いて立体的に細
胞 組 織 を 造 形 す る 工 学 的 ア プ ロ ー チ が 主 流 で し た が、 機 能
面も含めた完全な意味での再構築には至っていません。 ...

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