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ベージュ脂肪細胞の誘導におけるG12共役型GPCRの機能解析

小野, 雄基 東北大学

2023.03.24

概要

博⼠論⽂

ベージュ脂肪細胞の誘導における
G12 共役型 GPCR の機能解析

令和 4 年度
東北⼤学⼤学院薬学研究科
⽣命薬科学専攻
⼩野 雄基

⽬次
第⼀章

ベージュ脂肪細胞の誘導における G12 共役型 GPCR の機能解析 ............................. 3

1-1. 序論 .................................................................................................................................. 3
1-2. 材料と⽅法 ....................................................................................................................... 9
・化合物 .............................................................................................................................. 9
・実験動物 ........................................................................................................................... 9
・ウェスタンブロット ........................................................................................................ 9
・定量 RT-PCR ................................................................................................................. 10
・組織染⾊ ......................................................................................................................... 11
・糖代謝能の評価 .............................................................................................................. 11
・脂肪組織のベージュ化の誘導 ........................................................................................ 12
・RNA-sequencing ............................................................................................................ 12
・体温測定 ......................................................................................................................... 13
・前駆脂肪細胞の初代培養と分化 .................................................................................... 13
・脂肪細胞に発現する GPCR の探索 ............................................................................... 14
1-3. 結果 ................................................................................................................................ 15
・脂肪組織特異的な G12D 発現マウスの作製 ................................................................. 15
・G12D 活性化が中性脂質の分解と全⾝の糖代謝に与える影響の解析.......................... 19
・G12D 活性化による脂肪組織ベージュ化誘導と褐⾊脂肪活性化の評価 ...................... 22
・β3 アドレナリン受容体刺激誘導性のベージュ化に対する G12D 活性化の影響 ....... 24
・G12D の活性化は β3AR アゴニストによる脂肪分解を抑制する ............................... 28
・G12D の活性化は β3AR アゴニストの抗肥満作⽤を増強する ................................... 30
・G12D による UCP1 発現誘導機構の解析 ..................................................................... 33
・脂肪細胞に内在性に発現する G12 共役型 GPCR の探索............................................. 35

1

・G12D の活性化は前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への成熟を抑制しない .................. 37
1-4. 考察 ................................................................................................................................ 39
第⼆章

Gαi ⽋損細胞を⽤いた GPCR-Gαi 共役選択性の解析 ............................................. 48

2-1. 序論 ................................................................................................................................ 48
2-2. 材料と⽅法 ..................................................................................................................... 52
・化合物 ............................................................................................................................ 52
・プラスミド ..................................................................................................................... 52
・細胞培養 ......................................................................................................................... 52
・トランスフェクション ................................................................................................... 52
・Glosensor cAMP assay ................................................................................................... 53
・TGFα 切断アッセイ ..................................................................................................... 53
・フローサイトメトリー ................................................................................................... 54
2-3. 結果 ................................................................................................................................ 55
・Gαi サブファミリーの⽋失の機能的確認 ...................................................................... 55
・∆Gαi 細胞における他三量体 G タンパク質経路の評価 ................................................ 57
・Gi 共役型 GPCR の Gαi サブユニット選択性の解析 .................................................. 61
2-4. 考察 ................................................................................................................................ 69
引⽤⽂献 .................................................................................................................................... 72
発表論⽂リスト ......................................................................................................................... 81

2

第⼀章

ベージュ脂肪細胞の誘導における G12 共役型 GPCR の機能解析

1-1. 序論
エネルギーの摂取と消費のバランス崩壊とそれによる脂肪の蓄積は肥満を引き起こす。
肥満は⾼⾎圧、脂質異常症、動脈硬化症、⼼筋梗塞などの重⼤な疾患に繋がることから、そ
の根本的な予防法や治療法の確⽴が求められている 1。エネルギーバランスの調整に中⼼的
な役割を担う脂肪組織には、⽩⾊と褐⾊の2種類の脂肪組織が存在する。⽩⾊脂肪組織を構
成する⽩⾊脂肪細胞は細胞内に単⼀の脂肪滴を持ち、飢餓時に中性脂質を分解して脂肪酸
を⾎中に放出することでエネルギーの貯蔵と放出を担っている。⼀⽅で、褐⾊脂肪組織は主
に⼩型げっ⻭類で発達しており、その構成細胞である褐⾊脂肪細胞は豊富なミトコンドリ
アと複数の⼩さい脂肪滴を持ち、寒冷曝露などの外界刺激に応じて活性化してミトコンド
リア内膜に存在する脱共役タンパク質(uncoupling protein 1, UCP1)が酸化的リン酸化を脱
共役することで⾮ふるえ熱産⽣を⾏い体温維持に寄与する。また、寒冷刺激が⻑期間持続す
ると、⽩⾊脂肪組織中に褐⾊脂肪細胞に類似した形態を持つ UCP1 陽性の細胞が出現する。
この細胞はベージュ脂肪細胞と呼ばれ、褐⾊脂肪細胞と同様に熱産⽣能を有する(Table 1)
2,3

。これらの熱産⽣能を有する脂肪細胞は脂質を消費しエネルギー消費を⾼めることから、

肥満の予防・治療標的として有望であると考えられている 4。ヒトにおいては、褐⾊脂肪組
織は新⽣児には存在するものの成⻑につれて退縮し、成⼈には存在しないと考えられてき
た。しかし近年、PET スキャンによりヒト成⼈にも寒冷暴露時に活性化する褐⾊脂肪組織
が存在することが報告され

5‒7

、さらにその構成細胞はマウスにおける褐⾊脂肪細胞ではな

くベージュ脂肪細胞に⾮常に類似した遺伝⼦発現プロファイルを⽰すことが明らかにされ
た 8,9。このことから、ヒトの肥満治療への応⽤を考えると、特にベージュ脂肪細胞の誘導・
活性化が重要であると考えられる。
脂肪細胞には、他の細胞と同様に多くの G タンパク質共役型受容体(GPCR)が発現す

3

る 10,11。GPCR は細胞膜上に存在する受容体タンパク質で、細胞外部分へのリガンドの結合
によって構造変化し、細胞内の三量体 G タンパク質を活性化することで細胞外から細胞内
へと情報を伝達するセンサーのような役割を担っている。GPCR はほぼすべての⽣理現象
に関与し 12、2017 年時点で FDA に承認されている薬の 34%が GPCR を作⽤標的としてい
ることから

13,14

、GPCR は創薬標的としても有⽤であることが分かる。GPCR からの細胞

内シグナル伝達を担う三量体 G タンパク質には下流シグナル伝達機構の異なる Gs, Gi, Gq,
G12 の4種が存在する(Figure 1)
。脂肪細胞においては特にβアドレナリン受容体に代表
される Gs 共役型 GPCR の機能についての理解が進んでおり、その活性化は UCP1 を含む
熱産⽣遺伝⼦の発現上昇やミトコンドリア⽣合成の亢進を介して脂肪組織のベージュ化を
誘導する 15,16。また近年、Gi 共役型 GPCR が脂肪分解の抑制を、Gq 共役型 GPCR が脂肪
前駆細胞の成熟を抑制することや脂肪分解の抑制とグルコース取り込みの亢進を介して全
⾝の糖代謝を向上させることが報告されている 17‒19 (Figure 1)。⼀⽅で、脂肪細胞における
G12 共役型 GPCR の機能については、その解析⼿法の乏しさからほとんど解析されていな
い。
近年、DREADD (Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)と呼ばれ
る⼈⼯ GPCR が GPCR の機能解析ツールとして着⽬されている。
最も汎⽤される DREADD
はムスカリン性アセチルコリン受容体の改変体で、リガンド結合部位に導⼊された2つの
アミノ酸変異によって内因性リガンドのアセチルコリンではなく薬理的に不活性な化合物
であるクロザピン N-oxide (CNO)やその誘導体によって活性化される 20‒22。はじめに開発
された M3 受容体改変体の Gq 共役型 DREADD、M4 受容体改変体の Gi 共役型 DREADD
に加え、Gq 共役型 DREADD の細胞内部分を Gs 共役型 GPCR であるβ1 アドレナリン受
容体に置換した Gs 共役型 DREADD が開発されており 23(Figure 2)、特に神経科学の領域
において Gq 共役型 DREADD が神経細胞の活性化を、Gi 共役型 DREADD が神経細胞の
不活性化を引き起こす研究ツールとして広く利⽤されてきた 24。⼀⽅で、DREADD は特定
の三量体 G タンパク質経路を任意のタイミングで活性化できることから様々な細胞種にお
4

ける各三量体 G タンパク質の機能解析ツールとしても利⽤されており、特に肝細胞、脂肪
細胞、β細胞、⾻格筋細胞などの代謝機能に関与する細胞での利⽤が進んでいる 25,26。私の
所属研究室では、先⾏研究において Gq 共役型 DREADD の細胞内部分を改変することで
新たに G12 に選択的に共役する DREADD(以下、G12D)が開発された 27(Figure 2)
。そ
こで私は G12D を利⽤することで、これまで解析が進んでいない様々な細胞における G12
シグナル経路の解析が可能であると考え、G12D を Cre リコンビナーゼ依存的に発現する
マウスを修⼠課程において作成した。以上のような背景から本研究では、G12D を⽤いて脂
肪細胞における G12 シグナル経路の機能解析を特に脂肪細胞のベージュ化に着⽬して⾏っ
た。

5

Table 1. ⽩⾊・ベージュ・褐⾊脂肪細胞の特⾊
⽩⾊脂肪組織中に出現するベージュ脂肪細胞は褐⾊脂肪細胞と類似した機能を持つが、そ
の起源はむしろ⽩⾊脂肪細胞と共通している。

6

PLCβ

RhoA

cAMP

Ca2+

ROCK

ベージュ化誘導
脂肪分解促進

脂肪分解抑制
グルコース取込亢進
分化成熟抑制



アデニル酸シクラーゼ

Figure 1. 脂肪細胞における各三量体 G タンパク質シグナル経路の既知の機能
Gs 経路の機能が最もよく解析されており、近年 Gi, Gq 経路の機能についても報告が増
えている。⼀⽅で G12 経路の脂肪細胞における機能はほとんど報告されていない。

3

7

M3アセチルコリン受容体
M4アセチルコリン受容体
β1アドレナリン受容体
GPR183

Figure 2. 各三量体 G タンパク質共役型 DREADD の概略図
各 DREADD に導⼊されている変異を概略図として⽰した。☓印で⽰したリガンド結合部
位周辺の点変異はそれぞれ Y149C, A239G に対応する。Gs 共役型 DREADD は Gq 共役型
DREADD の細胞内ループ 2 と 3 がβ1 アドレナリン受容体のものに置換され、G12 共役型
DREADD は細胞内ループ 3 が GPR183 のものに置換されている。

8

1-2. 材料と⽅法
・化合物
CNO dihydrochloride は筑波⼤学国際睡眠医科学研究機構の⻫藤毅助教授に合成・供与し
ていただいた。CL316,243 dihydrochloride は Tocris 社より購⼊した。YM-254890 と(-)blebbistatin は Fujifilm Wako Pure Chemical 社より購⼊した。Y-27632 dihydrochloride は
Enzo Life Sciences 社より購⼊した。

・実験動物
マウスは SPF 環境下、⾃由飲⽔、気温 23℃、9:00-21:00 明期、21:00-翌 9:00 暗期の明暗
周期下で飼育し、動物実験はすべて東北⼤学薬学研究科動物実験委員会が作成した「実験動
物の取り扱いに関する指針」に基づいて動物実験委員会の承認の上実施した。マウスは通常
⾷(CE-2, CLEA Japan)で飼育し、⾼脂肪⾷(High Fat Diet32, CLEA Japan, 60% kcal fat,
5.1 kcal/gram)で飼育する場合は 6 週齢の段階で餌を切り替えた。すべての実験は 8-14 週
齢の雄マウスを使⽤して⾏った。

・ウェスタンブロット
⿇酔下で PBS 還流を⾏ったマウスから各臓器を摘出し、約 100 mg を 600 µl の RIPA バ
ッファー(50 mM Tris-HCl (pH7.4), 150 mM NaCl, 1% Triton X-100, 0.5% sodium
deoxycholate, 0.1% SDS, 1 mM EDTA, and 1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride)中でビーズ
式ホモジナイザーを⽤いてホモジナイズ(4,000 rpm, 1 min)した。ホモジネートを遠⼼し
(6,000 rpm, 4 ℃, 15 min)
、上清を分取したのちに Pierce BCA Protein Assay Kit (Thermo
Fisher Scientific)を⽤いてタンパク質濃度を測定した。RIPA buffer を⽤いて各サンプルの
タンパク質濃度を 200 µg protein/150 µl に調整し、4x SDS-PAGE sample buffer (12 % SDS,
25% Glycerol, 150 mM Tris-HCl pH6.8, 0.05% BPB)を 50 µl 加え、95℃で 5 分間の熱処理

9

を⾏った。上記のサンプルを 20 µL/well ずつ polyacrylamide gel (stacking gel 4% (w/v) ,
separating gel 12.5% (w/v) )にアプライし、running buffer 中で電気泳動を stacking gel を
25mA/枚、separating gel を 50mA/枚の定電流で⾏った。泳動終了後、ゲルを transfer buffer
に 10 分浸した後、セミドライ型 blotting 装置 (BIO CRAFT , BE-331) を⽤いてニトロセ
ルロース膜 (Whatman , 10401396) に転写した(12 V, 1 hr)
。転写終了後、ニトロセルロー
ス膜をブロッキング液(0.05% TTBS containing 5% (w/v) skim milk)に浸して 30 分間室
温で振盪して blocking した。次いで、0.05% (v/v) TTBS で 5 分間ずつ 3 回洗浄したのち、
1 次抗体溶液(1/1000 dilution in 0.05 % TTBS containing 3% BSA and 0.1 % sodium azide)
に浸して室温で 2 時間反応させた。反応終了後、0.05% (v/v) TTBS で 5 分間ずつ 3 回洗浄
した。この膜をブロッキング液で 2000 倍希釈した 2 次抗体溶液(anti-Rabbit IgG, HRPLinked F(abʼ)2 Fragment Donkey (GE Healthcare, NA9340, lot 17041889))に浸し、室温で
1 時間反応させた後、0.05% (v/v) TTBS で 5 分間ずつ 3 回洗浄した。洗浄後、ECL 発⾊液
(100 mM Tris-HCl pH 8.5, 50 mg/mL Luminol Sodium Salt HG (FujiFilm Wako Pure
Chemical), 0.2 mM p-Coumaric acid, 0.03% (v/v) of H2O2)に浸し、Amersham Imager 680
(Cytiva)で化学発光を検出した。 ...

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