ビシクロヒドロキシルアミン型アルコール酸化触媒の開発および酸化的オキサゾール構築法の開発を鍵とする海洋天然物Bengazole Aの全合成
概要
博士論文
ビシクロヒドロキシルアミン型アルコール酸化触媒
の開発および
酸化的オキサゾール構築法の開発を鍵とする
海洋天然物 Bengazole A の全合成
令和 4 年度
東北大学大学院薬学研究科
分子薬科学専攻
戸田 正輝
略語
Ac
acetyl
AD
asymmetric dihydroxylation
AIBN
azobis(isobutyronitrile)
aq.
aqueous
BAIB
diacetoxyiodobenzene
BDA
butane-1,2-diacetal
Bn
benzyl
Boc
tert-butoxycarbonyl
bpy
2,2'-bipyridyl
br
broad (spectral)
Bu
butyl
°C
degree Celsius
cat.
catalytic amount or catalyzed
Cbz
benzyloxycarbonyl
conv.
Conversion
CSA
10-camphorsulfonic acid
d
doublet
DABCO
1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane
DBU
1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene
DCE
1,2-dichloroethane
DEAD
diethyl azodicarboxylate
DFT
density functional theory
(DHQD)2PHAL
hydroquinidine 1,4-phthalazinediyl diether
DIBAL-H
diisobutylaluminum hydride
DIBAL
N,N-diisopropylethylamine
DMAP
p-(dimethylamino)pyridine
DME
1,2-dimethoxyethane
DMF
N,N-dimethylformamide
DMP
Dess-Martin periodinane
DMSO
dimethyl sulfoxide
dr
diastereomeric ratio
DTBMP
2,6-di-tert-butyl-4-methylpyridine
EDCI
1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide
ee
enantiomeric excess
EI
electron ionization
eq.
equivalent
ESI
electrospray ionization
Et
ethyl
Fc
ferrocene
h
hour (s)
HMDS
hexamethyldisiloxane
HMTA
hexamethylenetetramine
Hz
hertz
i
iso
imid.
imidazole
IR
infrared spectroscopy
J
coupling constant
LED
light-emitting diode
M
molar
m
meta
m
multiplet
m.p.
melting point
m/z
mass to charge ratio
Me
methyl
MHz
mega hertz
min
minute (s)
mol
mole(s)
MOM
methoxymethyl
Ms
methanesulfonyl
MS
molecular sieves
Ms-DENEB
4-methylphenylmethoxyethylamino-1,2diphenylethylmethanesulfonamidato ruthenium(II)
n
normal
NBS
N-bromosuccinimide
NCS
N-chlorosuccinimide
NMI
1-methylimidazole
NMR
nuclear magnetic resonance
NOx
nitrogen oxides
N.R.
no reaction
Nu
nucleophile
p
para
Ph
phenyl
pH
power of hydrogen
Piv
pivaloyl
PPTS
pyridinium p-toluenesulfonate
Pr
propyl
PTSA
p-toluenesulfonic acid
Py
pyridine
quant.
quantitative yield
rt
room temperature
sat.
saturated
TBAB
tetrabutylammonium bromide
TBAF
tetrabutylammonium fluoride
TBDPS
tert-butyl-di-phenylsilyl
TBS
tert-butyl dimethylsilyl
TBTU
1-[bis(dimethylamino)methylene]-1H-benzotriazolium
3-oxide tetrafluoroborate
temp.
temperature
tert (t)
tertiary
tet
tetrahedral
TES
triethylsilane
Tf
trifluoromethanesulfonic
TFA
trifluoroacetic acid
THF
tetrahydrofuran
TIPS
triisopropylsilyl
TLC
thin layer chromatography
TMS
trimethylsilyl
TMS
tetramethylsilane
TosMIC
p-toluenesulfonylmethyl isocyanide
Ts
p-toluenesulfonyl
TS
transition state
UV-Vis
ultraviolet-visible
V-40
1,1'-azobis(cyclohexane-1-carbonitrile)
V-70
2,2'-azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile)
目次
序論………………………………………………………...……………………………1
本論
第1章
ビシクロヒドロキシルアミン型アルコール酸化触媒の開発
第 1 節………………………………………………………………………………..43
第 2 節……………………………………………………………………………..…46
第 3 節……………………………………………………………………………..…56
第2章
酸化的オキサゾール構築法の開発を鍵とする海洋天然物 Bengazole A の
全合成
第 1 節………………………………………………………………………………..60
第 2 節……………………………………………………………………..…………74
結論………………………………………………………………………………….…80
実験項…………………………………………………………….……………………83
参考文献……………………………………………...………………………………128
発表論文リスト………………………………………….…………….…………….135
謝辞………………………………………………………………………….……..…136
序論
酸化反応は,対象とする物質が電子を失う化学反応と定義され,酸素との化合
や脱水素反応を例とし,有機分子変換を駆動する基本反応の一つとして位置づ
けられている.一般に医薬品や生物活性天然物,機能性分子などの合成は,糖,
アミノ酸,テルペンなど天然から入手容易な光学活性源を利用する場合と,原油
を蒸留して得られたナフサをさらに精製して得られるエチレン,プロピレン,ベ
ンゼンなどを利用する場合がある.特に石油化学製品を使用する後者はさらに
炭素骨格が高度に官能基化された化合物(高酸化度化合物)へと変換されること
を必要としており,優れた効率性と選択性を有する酸化反応手法の開発が望ま
れている.
多様な有機化合物の酸化反応のなかで,アルコールのカルボニル化合物への
酸化反応は,生成するカルボニル基が天然有機化合物や生物活性化合物に含ま
れる構造単位であるだけでなく,炭素-炭素結合形成や官能基変換の拠点にな
ることから,合成化学上基本的,かつ重要な変換反応の一つである.
一方で生物活性物質中にしばしば見い出されるオキサゾール環は,窒素と酸
素を含む 5 員環の芳香環であり,水素結合,配位結合,イオン-双極子,カチオ
ン-π,π-π スタッキング,疎水性効果,ファンデルワールス力など多様な弱い相
互作用を発現する構造モチーフとして,医薬,農業,化学,超分子,材料科学な
ど幅広い分野で利活用されてきた.1 またオキサゾール化合物は創薬化学的観点
では,生体内の様々な酵素や受容体と容易に結合し,抗菌,抗真菌,抗ウイルス,
抗結核,抗がん,抗炎症などの幅広い生物活性を発揮していることが報告されて
いる.2 例えばベンゾオキサゾール(1)を有する flunoxaprofen(2)は非ステロイド性
抗炎症薬として用いられており,一方でパラフェニレンベンゾビスオキサゾー
ル(3)はザイロン(Zylon®)とも呼ばれ,防弾チョッキやコンクリート補強材などに
1
使用される合成繊維として幅広く用いられている(Figure 0-1).
Figure 0-1. オキサゾールの応用例
上述の通り「アルコールの酸化」および「オキサゾール構築法の開発」は精密
有機合成化学と創薬化学において重要なテーマであることから,著者はこの 2 つ
に着目しその新規方法論の開発に着手した.以下にその詳細についてそれぞれ
説明する.
1.ビシクロヒドロキシルアミン型アルコール酸化触媒の開発
先に述べたようにアルコールのカルボニル化合物への酸化反応は,合成化学
上基本的,かつ重要な変換反応であるため,これまでに数多くの手法が開発され
てきた.汎用されているアルコールの酸化方法として Jones 酸化,3 Sarett-Collins
酸化 4 など酸化クロムを利用する酸化法(Scheme 0-1)や活性化した DMSO を用い
る方法,超原子価ヨウ素化合物を用いる方法などが開発されてきた.クロム酸酸
化は六価クロム化合物を利用した酸化反応のことで,酸化に使用されるのは無
水クロム酸,クロム酸,二クロム酸といった化合物の塩や錯体である.歴史的に
は,第 1 級アルコールからアルデヒドまたはカルボン酸,第 2 級アルコールか
らケトンへの酸化反応に利用されることが多く,その他,ベンジル位メチル基の
カルボン酸への酸化,アリル位,ベンジル位のメチレン基のカルボニル基への酸
化などにも使用される.これまでに望みの官能基だけを選択的に酸化し,目的と
する化合物を収率良く得るために,pH をコントロールしたり塩基を共存させた
りする様々な反応条件の工夫をした酸化方法が開発されているが,六価クロム
2
化合物は強い毒性を持ち,土壌汚染や水質汚染の原因となるために排出が厳し
く規制されているなどの問題がある.
Scheme 0-1. Jones 酸化,Sarett-Collins 酸化
DMSO をオキサリルジクロリドで活性化する方法は Swern 酸化,5 SO3・Py を
用いる方法は Parikh-Doering 酸化 6 と呼ばれ,安価に試薬を入手することができ
大規模な酸化にも使用可能な実用的酸化法の一つとして,実験室的には今なお
広く利用されている(Scheme 0-2).しかしながら,Swern 酸化は DMSO とオキサ
リルジクロリドの活性中間体が熱的に不安定なため,反応温度の厳密な制御を
必要としている.またスルホニウムイリドを活性種と使用しているため,副生す
るジメチルスルフィドが強い悪臭を放ち,大量合成への適応を困難なものとし
ている.
Scheme 0-2. Swern 酸化,Parikh-Doering 酸化
超原子価ヨウ素化合物を用いるアルコール酸化手法の中で 1,1,1-トリアセト
キシ-1,1-ジヒドロ-1,2-ベンゾヨードキソール-3-(1H)-オン(4)を用いる酸化方法は
3
Dess-Martin 酸化,7 2-ヨードキシ安息香酸(IBX, 5)を用いる方法は IBX 酸化 8 と
呼ばれている(Scheme 0-3).Dess-Martin 酸化は官能基受容性が高く,温和な条件
で使用ができることから多くの医薬品や天然物合成に使用されている.9 しかし
ながら化学量論量以上の酸化剤を必要としており,また比較的高価な試薬であ
ることから,大規模な反応には不向きである.また IBX は加熱や衝撃によって
爆発が誘発されることが懸念されていることから,こちらも大規模な反応には
不向きである.
Scheme 0-3. Dess-Martin 酸化,IBX 酸化
一方,触媒的にアルコールをアルデヒドまたはケトンに酸化する手法も盛ん
に研究されている.過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP, nPr4N+RuO4–)を用いる手法は Ley-Griffith 酸化と呼ばれ,触媒量の TPAP (5–10
mol%)と共酸化剤として N-メチルモルホリン N-オキシド(NMO)を使用してアル
コールを酸化する方法である(Scheme 0-4).10 反応後の後処理が容易であり(ろ過),
反応条件が穏和で官能基許容性も高いことを特長としている.しかしながら試
薬が高価である点や重金属であるルテニウムを含んでいることが欠点である.
ベンゼンスルフェンアミドを用いる手法は向山酸化と呼ばれ,共酸化剤として
NCS などを使用し,厳密な温度管理を必要とせず,第 1 級あるいは第 2 級アル
コールからそれぞれ対応したカルボニル化合物を得ることができる方法である
(Scheme 0-4).11 ベンゼンスルフェンアミド(6)を酸化して得られる塩化スルフィ
ンイミドイルは熱的に安定な活性種なため,安全かつ簡便なアルコールの酸化
を実現している.
4
Scheme 0-4. Ley-Griffith 酸化,向山酸化
これまでに開発されてきた多くのアルコール酸化反応手法の中で,2,2,6,6-テ
トラメチルピペリジン N-オキシル(TEMPO, 7)に代表される安定なニトロキシ
ルラジカルを触媒として用いる手法は,安全性や環境調和性に優れた方法とし
て注目されている(Scheme 0-5).
Scheme 0-5. TEMPO による触媒的アルコール酸化
ニトロキシルラジカルはユニークな性質と反応性を持つ有機ラジカルの一種
である.ニトロキシルラジカルの多様な化学的性質は,電子スピン共鳴研究にお
けるスピンラベルとしての利用,生物学における抗酸化剤,エネルギー貯蔵にお
ける電荷キャリア,重合反応におけるメディエーター,化学および電気化学酸化
反応における触媒など,多岐にわたる分野において応用されている.12 文献上に
最初に報告された(1845 年)ニトロキシルラジカルは Fremy 塩( (SO3K)2NO‧, 8)と
呼ばれる無機ニトロキシルラジカルで,有機合成における酸化剤として広く用
いられてきた(Figure 0-2).13 その後 1901 年に Piloty と Schwerin によって 14 最初
の有機ニトロキシルラジカルとして porphyrexide(9)が発見され,1914 年に
Wieland と Offenbӓcher によってジアリールニトロキシルラジカル類 10 が研究さ
5
れた.15 ニトロキシルラジカル研究に対する非常に重要な貢献として,1959,1960
年に Lebedev と Kazarnovsky によって 4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン
N-オキシル(4-oxo-TEMPO, 11) と TEMPO が容易に調製できるアミノキシルラジ
カルとして開発され,これを契機にニトロキシルラジカル化学は大きく発展し,
多くのニトロキシルラジカルが合成され研究されてきた.16
Figure 0-2. 代表的なニトロキシルラジカル
ニトロキシルラジカルにはアミノキシル型(R2N-O‧ (R=アルキル))とイミドキ
シル型(R2N-O‧ (R=アシル))の 2 種類があり,最も広く用いられているのはそれぞ
れ TEMPO とフタルイミド N-オキシル(PINO, 12)17 である(Figure 0-2).TEMPO は
常温で安定であるのに対し,PINO は安定な前駆体である N-ヒドロキシフタルイ
ミドを酸化して生成する.18 ニトロキシルラジカルに隣接する部位が完全に置換
されている場合や,2 環式または多環式骨格の橋頭位に位置する場合,アミノキ
シルラジカルの安定性は向上する.これらの構造的特徴により,アミノキシル基
から対応するニトロンおよびヒドロキシルアミンへの容易な不均化を防ぐこと
ができる(Scheme 0-6).19
6
Scheme 0-6. アミノキシルラジカルの不均化
また TEMPO などの超安定アミノキシルラジカルはユニークな酸化還元特性
を示し,その反応性に大きな影響を与えている(Scheme 0-7).アミノキシルラジ
カルは準可逆的な 1 電子/H+還元を受け,ヒドロキシルアミンに変化する.また
アミノキシルラジカルは可逆的に 1 電子酸化され,対応するオキソアンモニウ
ム種となり,後者は比較的強い酸化剤となる(約 0.7-0.8 V vs NHE).20
Scheme 0-7. アミノキシルラジカルの酸化還元特性
オキソアンモニウム種は多くの有機酸化反応において 2 電子酸化剤としての
役割を担っており,1965 年,Golubev によってオキソアンモニウム塩の様々な反
応が調査され,オキソアンモニウム種を介したアルコールからケトンへの化学
量論的酸化反応が初めて観測された.21 また 1975 年に TEMPO を触媒として,
mCPBA を酸化剤とする触媒的アルコール酸化反応が報告されて以来,安全性,
経済性,環境調和性などが追究され,NaOCl,臭素,NOx/O2,超原子価ヨウ素化
合物などの化学量論量の酸化剤を用いる手法が開発されてきた.22 例えば触媒量
の TEMPO と臭化物,化学量論量の NaOCl を使用する Anelli-Montanari プロト
コルは,工業規模のアルコール酸化反応に広く実施され,医薬品のプロセス化学
にも応用可能な数少ない方法である(Scheme 0-8).23
7
Scheme 0-8.Anelli-Montanari プロトコルによるアルコールの酸化
以上のような理由から TEMPO によるアルコール酸化は環境調和性、安全性
に優れかつ経済的方法であるといえる.またそのような「環境調和的」な特徴に
加えて 2 級アルコール存在下に 1 級アルコールを選択的に酸化できる点で他の
酸化方法とは異なっている(Scheme 0-9).24
Scheme 0-9.
TEMPO による 1 級アルコール選択的な酸化の例
8
なぜ TEMPO 触媒によって 1 級アルコール選択的に酸化できるのかはその構
造と反応メカニズムによって説明されている. 25 Scheme 0-7 でも述べたが,
TEMPO に酸化剤を作用させると,1 電子が奪われてオキソアンモニウムイオン
が生じ,これが酸化活性種として機能する(Scheme 0-10).その後アルコールと反
応し,オキシ-Cope 型脱離,もしくはヒドリド転位機構によりアルコールの α 位
から水素を奪い,カルボニル化合物へ酸化する.その際に触媒活性中心のオキソ
アンモニウムイオンに隣接する 4 つのメチル基が,嵩高い 2 級アルコールから
の中間体形成を防ぐ役割を果たしているため 1 級アルコール選択的な酸化が進
行する.この際に生じたヒドロキシルアミンは酸化剤によって再びオキソアン
モニウムイオンへと戻り,次のアルコール分子を酸化する.
Scheme 0-10. TEMPO によるアルコール酸化メカニズム
TEMPO はオキソアンモニウムイオンに隣接する 4 つのメチル基の存在によ
り,1 級アルコール選択的な酸化を可能にする一方で,立体的に混み入ったアル
9
コールの酸化を不得意としていた.当研究室では,活性中心近傍の立体障害が緩
和された 2-アザアダマンタン N-オキシル (AZADO, 21),26 9-アザノルアダマン
タン N-オキシル(Nor-AZADO, 22),27 9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン N-オキシル
(ABNO, 20)28 などのニトロキシルラジカル触媒の開発が行われ,これらの触媒が
TEMPO を遥かに上回る触媒活性を示し,TEMPO では酸化困難な立体障害の大
きいアルコールを効率的に酸化することを報告してきた(Figure 0-3, Table 0-1).
例えば Nor-AZADO は,これまでに当研究室で開発されたニトロキシルラジカル
触媒の中で最も嵩高さが軽減されたニトロキシルラジカル部位を持ち,AZADO
より高いアルコール酸化触媒活性を示す.また,ABNO は,ビシクロ骨格を有す
るニトロキシルラジカル触媒の一つである.
Figure 0-3.当研究室によって開発されたニトロキシルラジカル触媒
Table 0-1.嵩高さが軽減されたニトロキシルラジカル触媒による立体的に込み入
ったアルコールの酸化
10
ここで著者は,次のような科学的な疑問を抱いた.すなわち,より嵩高さが軽
減されたニトロキシルラジカルがより高い触媒活性を示すのか?そして,最も
高い活性を示すニト ロキシルラジカル触媒の構造は何か? Nor-AZADO や
ABNO よりもコンパクトな骨格を持つニトロキシルラジカルとして,8-アザビ
シクロ[3.2.1]オクタン N-オキシル(ABOO, 25),7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン
N-オキシル(ABHO, 26),6-アザビシクロ[2.1.1]ヘキサン N-オキシル(ABXO, 27)
および 5-アザビシクロ[1.1.1]ペンタン N-オキシル(ABPO, 28)等が想定される
(Figure 0-4).これまでの知見からこれらの触媒は,AZADO と ABNO に比べ,ニ
トロキシラジカル部位周辺の立体障害が軽減されていることが分子モデリング
や計算化学から予想されるため,アルコールの酸化に対して高い触媒活性を示
すと期待される.
Figure 0-4. ...