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大学・研究所にある論文を検索できる 「食品のおいしさを制御するペプチド分子の構造活性相関および網羅的探索技術の開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

食品のおいしさを制御するペプチド分子の構造活性相関および網羅的探索技術の開発

松本, 凌 名古屋大学

2023.06.15

概要

報告番号





論文題目
















食品のおいしさを制御するペプチド分子の
構造活性相関および網羅的探索技術の開発



松本



論 文 内 容 の 要 旨
1960 年 代 か ら 2010 年 代 ま で 、食 事 か ら 摂 取 さ れ る カ ロ リ ー 量 は 増 加 し て お り 、多
くの国で肥満や糖尿病人口が増えている。肥満や糖尿病は心疾患など様々な合併症を
誘 発 す る こ と で 人 々 の 生 活 の 質 ( Quality of Life) を 下 げ る だ け で な く 、 少 子 高 齢 化
社会を迎える我が国において医療費増加の原因となるため、「未病」の段階で生活習
慣を改善することが重要である。
カロリーは主に 3 大栄 養素である炭水化 物・脂質・タンパ ク質から 構成され、炭 水
化物、特に砂糖の過剰摂取は肥満・糖尿病の原因となる。食事中の砂糖使用量の削減
は、肥満や糖尿病の発症リスク低減に繋がるため、食品・飲料メーカーは砂糖の一部
ま た は 全 部 を 高 甘 味 度 甘 味 料 ( HIS: High Intensity Sweetener) で 置 き 換 え た 製 品
(焼き菓子、ソフトドリンク、乳製品、缶詰食品、ジャムなど)を販売している。
し か し な が ら 、 HIS は 砂 糖 の 味 を 完 全 に 再 現 で き な い の が 課 題 で あ る 。 た と え ば
HIS は ( 1) 高 濃 度 で 使 用 す る と 苦 味 ・ 金 属 味 ・ 渋 味 な ど の 異 味 を 生 じ る 、( 2) 砂 糖
に は な い 後 甘 味 が 残 る 、 ( 3) 短 時 間 で 繰 り 返 し 摂 取 す る と 甘 味 が 減 弱 す る な ど の 課
題がある。これらの課題を解決するために他の呈味・香気成分(酸味料などの食品添
加物や香料)を活用して食品の味バランスを調整しているものの、それら呈味・香気
成分自体が持つ味や匂いが付与される、食品の開発コストが上がるといった別の課題
が 生 じ て し ま う 。そ れ ゆ え 、上 記 課 題 を 克 服 す る 新 た な HIS も し く は そ れ 単 体 で は 食
品の味を邪魔しない甘味増強成分が求められている。
現 在 、新 た な HIS・甘 味 増 強 成 分 を 探 索 す る た め に 、甘 味 受 容 体( T1R2/T1R3)タ
ン パ ク 質 を 用 い た ス ク リ ー ニ ン グ が 盛 ん で あ る 。 た と え ば 計 算 科 学 的 ( in silico ) ア

プ ロ ー チ や 細 胞 生 物 学 的 ア プ ロ ー チ ( in vitro ) に よ っ て 、 2010 年 に は T1R2/T1R3
Positive Allosteric Modulators( PAMs) が 世 界 で 初 め て 報 告 さ れ た 。 こ れ ら PAMs
はスクラロースやスクロースの甘味強度を増強しつつ、使用濃度では苦味などの異味
を呈さず、かつこれら 2 つの甘味料の甘 味質 にも悪影響を及ぼ さな かった。それゆえ
T1R2/T1R3 PAMs は 、 HIS が 抱 え る 課 題 を 解 決 し 得 る ツ ー ル と し て 期 待 が 集 ま っ て
い る 。 し か し な が ら 、 な ぜ T1R2/T1R3 PAMs が 甘 味 を 増 強 で き る の か 、 構 造 的 ・ 機
能的知見は未解明な部分が多い。
本 論 文 で は 、よ り 強 力 な T1R2/T1R3 PAMs の 開 発 お よ び T1R2/T1R3 と 相 互 作 用 し
や す い PAMs の 化 学 構 造 解 明 を 目 的 に 、 我 々 が 過 去 に 見 出 し た 2 種 類 の ペ プ チ ド 型
T1R2/T1R3 PAMs( IN4260 お よ び IN4150)を 元 に 構 造 活 性 相 関 の 検 証 を 行 っ た 。ま
た、ペプチド型の構造類縁体をより効率良く合成して構造活性相関の検証スピードを
向上させる網羅的探索技術の開発も実施した。
本 論 文 は 、 高 甘 味 度 甘 味 料 と 甘 味 増 強 成 分 ( 第 1 章 ) 、 IN4260 の 構 造 活 性 相 関 と
新 規 テ ト ラ ペ プ チ ド の 同 定 ( 第 2 章 ) 、 IN4150 の 構 造 活 性 相 関 と 各 種 HIS に 対 す る
T1R2/T1R3 刺 激 活 性 の 促 進 効 果 検 討( 第 3 章 )、遊 離 型 ペ プ チ ド ア レ イ に よ る 新 規 呈
味ペプチドスクリーニングシステムの開発(第 4 章)、甘味増強成分・呈味ペプチド
探索の今後の展望と解決課題(第 5 章)、で構成されている。以下に各章の詳細につ
いて述べる。
第 1 章 で は 、 カ ロ リ ー 過 剰 摂 取 が も た ら す 社 会 課 題 、 HIS の 産 業 応 用 と 課 題 、
T1R2/T1R3 と PAMs、 ペ プ チ ド 型 T1R2/T1R3 PAMs に つ い て ま と め た 。
第 2 章 で は 、IN4260 の 化 合 物 構 造 を Head、Linker、Tail と い う 3 部 位 に 分 割 し 、
そ れ を 元 に 38 種 類 の 構 造 類 縁 体 を 合 成 し て 構 造 活 性 相 関 を 検 証 し た 。 38 種 類 の 構 造
類 縁 体 が ス ク ロ ー ス の T1R2/T1R3 刺 激 活 性 を ど の 程 度 促 進 す る か 評 価 し 、 Tail 部 分
の 疎 水 性 構 造 が ス ク ロ ー ス の T1R2/T1R3 刺 激 活 性 の 促 進 に 寄 与 し て い る こ と を 見 出
し た 。 ま た IN4260 と 同 等 の 促 進 効 果 を 有 す る 新 規 テ ト ラ ペ プ チ ド の 同 定 に も 成 功 し
た。
第 3 章 で は 、IN4260 と Linker 構 造 が 異 な る IN4150 の 構 造 活 性 相 関 の 検 証 を 、19
種 類 の 構 造 類 縁 体 を 新 た に 用 い て 実 施 し た 。 Linker, Tail 構 造 の 寄 与 度 を 考 察 す る と
共 に 、 IN4260 お よ び IN4150 に 匹 敵 も し く は 凌 駕 す る 新 規 化 合 物 が 取 得 で き る か 検
証 し た 。 IN4150 の Tail 部 分 の 疎 水 性 が 増 強 効 果 に 寄 与 し て い る こ と を 再 確 認 し 、
IN4150 に よ る ス ク ロ ー ス の T1R2/T1R3 刺 激 活 性 の 促 進 効 果 に お け る 重 要 構 造 を 明 ら
か に し た 。 ま た IN4260 お よ び IN4150 が 、 ス ク ロ ー ス 以 外 の 甘 味 成 分 11 種 類 の
T1R2/T1R3 刺 激 活 性 を 促 進 す る か 検 討 し 、 Linker 構 造 の 差 異 で 促 進 で き る 甘 味 成 分

に違いがあることを見出した。
第 4 章 で は 、ペ プ チ ド 型 T1R2/T1R3 PAMs の よ う な 呈 味 ペ プ チ ド /呈 味 修 飾 ペ プ チ
ド の ペ プ チ ド - 細 胞 相 互 作 用 や 、食 品 添 加 物 と し て の ペ プ チ ド の 細 胞 内 へ の 送 達 機 構 、
呈味ペプチドの安全性評価などをより効率的に実施するために、フォトリンカーペプ
チドアレイを活用したスクリーニングシステムの開発を行った。本章では、フォトリ
ンカーペプチドアレイ 1 スポットからペプチド-細胞相互作用アッセイに充分なペプ
チ ド 量 が 合 成 で き る こ と 、呈 味 ペ プ チ ド /呈 味 修 飾 ペ プ チ ド の 細 胞 内 導 入 機 序 な ど を 検
証できることを実証し、新規技術として確立した。
第 5 章 で は 、 第 2 章 か ら 第 4 章 を 通 じ て 得 た 結 果 ・ 考 察 を 踏 ま え て 、 T1R2/T1R3
PAMs の 現 状 と 課 題 を 明 確 に す る と 同 時 に 、 今 後 の 展 望 に つ い て ま と め た 。
本 研 究 で は 、 ペ プ チ ド 型 T1R2/T1R3 PAMs の Tail 部 位 構 造 が ス ク ロ ー ス の
T1R2//T1R3 刺 激 活 性 の 促 進 効 果 に 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る こ と を 明 ら か に し た 。 さ
ら に 、 構 造 活 性 相 関 の 検 証 過 程 か ら ス ク ロ ー ス の T1R2/T1R3 刺 激 活 性 を 強 く 促 進 す
る 新 た な テ ト ラ ペ プ チ ド を 同 定 し 、 ペ プ チ ド 型 T1R2/T1R3 PAMs の 新 た な 構 造 的 知
見 を 見 出 し た 。 ま た 、 ペ プ チ ド 型 T1R2/T1R3 PAMs を 効 率 よ く 合 成 で き 、 か つ ペ プ
チド-細胞相互作用を幅広く評価できる新規ペプチドスクリーニングシステムも確立
し た 。我 々 が 見 出 し た T1R2/T1R3 PAMs の 構 造 的 知 見 と ス ク リ ー ニ ン グ シ ス テ ム は 、
食品分野の開発に留まらず、未病を志向した創薬探索・開発の研究においても応用さ
れることが期待される。

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