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大学・研究所にある論文を検索できる 「Visualization analysis of extracellular ATP in the brain in vivo with a hybrid-type fluorescent sensor」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Visualization analysis of extracellular ATP in the brain in vivo with a hybrid-type fluorescent sensor

北島, 奈美 東京大学 DOI:10.15083/0002006939

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 北島 奈美
本研究は、脳の様々な生理現象、病態現象において重要な役割を担う細胞外 ATP シグナ
ルの機能を解明するため、新規開発したハイブリッド型蛍光 ATP センサーを用いて、生体
内における脳の細胞外 ATP イメージングを実現し、偏頭痛や脳梗塞の病態における細胞外
ATP 動態の可視化解析を試みたものであり、下記の結果を得ている。
1. ハイブリッド型蛍光 ATP センサーの開発
ATP 認識ドメインとして FoF1-ATP 合成酵素の ε サブユニットを用い、蛍光発色団と
して低分子蛍光色素を用いることで、ATP 結合たんぱくと低分子蛍光色素とのハイブ
リッド型蛍光 ATP センサーを設計した。生体内での細胞外 ATP 検出を可能とする高感
度 ATP センサーを開発するため、4 種類の蛍光色素について、ATP 結合たんぱくにお
ける色素標識位置の網羅的なスクリーニングを行った。その結果、ATP 結合たんぱくの
105 番目のアミノ酸位置に Cy3 を結合させた蛍光センサーが、細胞外 ATP シグナルの
作用濃度域において十分な蛍光強度変化を示した。こうして、ATP 認識能、蛍光強度変
化率および pH 安定性に優れ、生体内での細胞外 ATP 測定に適した蛍光 ATP センサー
(ATPOS)を開発した。
2. 生きたマウス大脳皮質における細胞外 ATP イメージング法の確立
神経細胞膜に結合するガングリオシド結合たんぱくと ATPOS を、Alexa Fluor 488 に
より標識されたストレプトアビジンを介して、結合させた。これによって形成される
ATPOS 複合体は、培養神経細胞において、神経細胞膜上へ結合することで細胞外に固
定され、Alexa Fluor 488 をリファレンスとした 2 波長型レシオメトリック ATP セン
サーとして機能した。さらに、この ATPOS 複合体を、生きたマウスの大脳皮質へ導入
することにより、生体内における細胞外 ATP 動態の可視化を実現した。
3. 偏頭痛・脳梗塞の病態モデルにおける細胞外 ATP の時空間動態の可視化
偏頭痛において観察される波状の神経活動を電気刺激により誘発し、ATPOS を用いて
このときの細胞外 ATP 動態を可視化した。これにより、一過性の細胞外 ATP 濃度上昇
が大脳皮質を波状に伝播することを示した。また、脳内へ血栓注入を行うことにより脳
梗塞を誘発し、このときの細胞外 ATP 動態を観察することで、細胞外 ATP 濃度上昇が
波状に繰り返し伝播することを明らかにした。さらに、これらの病態モデルで観察され
た ATP シグナルは、神経細胞やグリア細胞の細胞内 Ca2+活動と一致した時空間動態を
示し、神経細胞やグリア細胞からの ATP 放出が波状に伝播することが示唆された。

4. 細胞外 ATP シグナルと血管動態の比較解析
偏頭痛・脳梗塞の病態モデルにおける細胞外 ATP 動態と、脳表の血管動態を比較解析
し、波状の細胞外 ATP 濃度上昇に対応して血管収縮が伝播することを示した。さらに、
これらの病態における細胞外 ATP シグナルが血管収縮に関与する可能性を検証するた
め、ATP 局所投与時の血管動態を可視化したところ、ATP 投与により血管収縮が誘発
される様子が観察された。このときの ATPOS の蛍光変化は、偏頭痛・脳梗塞の病態モ
デルにおける蛍光変化より小さかったため、これらの病態における波状の細胞外 ATP
シグナルは血管収縮に十分寄与する可能性があることが示唆された。
以上、本論文は、ハイブリッド型蛍光 ATP センサーを用いて、生きたマウス大脳皮質に
おける細胞外 ATP 動態を高い時空間解像度で可視化することで、偏頭痛や脳梗塞の病態
において、細胞外 ATP シグナルが波状に伝播し、血管収縮に関与することを示した。こ
の研究成果は、様々な生理・病態メカニズムの解明だけでなく、細胞外 ATP シグナルを
標的とした新たな治療戦略開発にも重要な貢献をなすと考えられる。よって本論文は博士
( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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