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ヒストンO-GlcNAc修飾研究ツールの確立およびヒストンO-GlcNAc修飾の特性解析

奈良, 大輔 東京大学 DOI:10.15083/0002006903

2023.03.24

概要



査 の















奈良

大輔

O-GlcNAc 修飾は、タンパク質のセリンまたはスレオニン残基に、N-アセチルグルコサミン
(GlcNAc)が O-結合型に付加するタンパク質翻訳後修飾の 1 つである。ヒストンにおいてもこの修
飾が複数発見されているが、多くの場合、修飾を特異的に認識する抗体が得られていないことなど
の理由で、その機能や特性はほとんど明らかにされていない。3章からなる本論文では、新規ヒスト
ン O-GlcNAc 修飾の研究ツールの確立と、それを用いたヒストン O-GlcNAc 修飾の特性、および機
能解析の進展を目的とした研究が行われた。
第1章では、先行研究で発見されていた、ヒストン H2A の N 末端から 40 番目のアミノ酸である
セリン(Ser40)の O-GlcNAc 修飾(H2AS40Gc)の、ヌクレオソーム構造への影響が解析された。ま
ず、人工合成された、H2AS40Gc を有する H2A タンパク質(S40Gc-H2A)を用い、この修飾を持つ
ヒストンもヌクレオソーム構造を取り得ることを明らかにした。S40Gc-H2A を含むヌクレオソームと、
非修飾ヌクレオソームを比較したところ、DNA の「巻きつき状態」に顕著な差は見られなかったもの
の、H2AS40Gc の存在によりヌクレオソーム構造の安定性が低下し、H2A-H2B ダイマーが1つ欠
けたヌクレオソーム構造(ヘキサソーム)をとりやすくなることが強く示唆された。
第2章では、新たなヒストン O-GlcNAc 修飾の同定を目的に、新規特異抗体の樹立と、その特
性解析が行われた。予備的な分析の結果、未報告の 4 ヵ所の O-GlcNAc 修飾の存在が示唆され
ていた。そこで、これら 4 ヵ所の新規ヒストン O-GlcNAc 修飾候補に相当する O-GlcNAc 化ペプチ
ドを合成し、それらを抗原としてマウスに免疫し、複数のハイブリドーマクローンを得た。得られたハ
イブリドーマが産生するモノクローナル抗体をスクリーニングした結果、少なくともイムノブロッティン
グに使用可能な、新たな特異抗体(20H3 抗体)を獲得した。さらに、ELISA や組換えヒストン変異体
を供したイムノブロッティングなどから、20H3 抗体は、これまでに報告の無かった H4T71Gc を特異
的に認識する抗体であることが判明した。また、種々の条件検討で、20H3 抗体がクロマチン免疫
沈降(ChIP)や免疫染色にも使用可能であることが確認された。
第3章では、20H3 抗体を利用し、H4T71Gc の局在ゲノム領域と細胞外グルコース濃度に対す
る応答性の解析が行われた。まず、mES 細胞とヒト ES(hES)細胞、ヒト iPS(hiPS)細胞より抽出・固定
したクロマチンに対する ChIP-seq が行われ、RNA-seq データとの比較で、ゲノム DNA 上の
H4T71Gc の存在領域の特徴が解析された。その結果、H4T71Gc は転写活性の比較的高い遺伝
子領域に偏在することが判明した。また、mES 細胞における DNase-seq などとの比較解析の結果、

クロマチン構造が緩んだ領域に H4T71Gc が存在する傾向が強いことも明らかとされた。さらに、
H4T71Gc は、H3K36me3 や H3K4me1、H3K27ac、H3K9ac、H3.3 といった転写の促進に関わるエ
ピジェネティクス因子と共局在する傾向にあることがわかった。H4Thr71 が H4-H2B 会合面に存在
することも加味し、H4T71Gc は、ヌクレオソーム構造に直接影響を与えることで遺伝子転写活性の
促進、または維持に寄与する、新たなエピジェネティクス修飾である可能性が考えられた。
第3章ではまた、異なるグルコース濃度下で培養した細胞における H4T71Gc 修飾量が解析さ
れ、mES 細胞においては、通常の 25 mM 条件と比較し、低濃度(1 mM)のグルコース濃度下で有
意に H4T71Gc 修飾量が増加することが判明した。ChIP-seq の結果、低グルコース濃度条件にお
いても、H4T71Gc は比較的転写活性の高い遺伝子領域に偏在する傾向があることが示された。
以上、H2AS40Gc はヌクレオソーム構造の安定性に影響を与え、特殊なヘキサソームの構造へ
の変化を促す新たなエピジェネティクス因子であることが示唆された。また、新たなヒストン

O-GlcNAc 修飾の研究ツールである 20H3 抗体の獲得に成功し、H4T71Gc の発見に至った。今後、
本研究より得られたツールを活用することによって、ヒストン O-GlcNAc 修飾を介したクロマチン構
造の制御機構をはじめとした、糖類に依拠したエピジェネティクス制御のさらなる研究解析の進展
が期待される。これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、審査委
員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

この論文で使われている画像

参考文献

Yang, X., and Qian, K. (2017). Protein O-GlcNAcylation: emerging mechanisms and

functions. Nat Rev Mol Cell Biol 18, 452-465.

Yoshioka, H., McCarrey, J.R., and Yamazaki, Y. (2009). Dynamic nuclear organization of

constitutive heterochromatin during fetal male germ cell development in mice. Biol

Reprod 80, 804-812.

Zentner, G.E., and Henikoff, S. (2013). Regulation of nucleosome dynamics by histone

modifications. Nat Struct Mol Biol 20, 259-266.

Zhang, S., Roche, K., Nasheuer, H.P., and Lowndes, N.F. (2011). Modification of histones

by sugar β-N-acetylglucosamine (GlcNAc) occurs on multiple residues, including histone

H3 serine 10, and is cell cycle-regulated. J Biol Chem 286, 37483-37495.

Zhu, B., Zheng, Y., Pham, A.D., Mandal, S.S., Erdjument-Bromage, H., Tempst, P., and

Reinberg, D. (2005). Monoubiquitination of human histone H2B: the factors involved and

their roles in HOX gene regulation. Mol Cell 20, 601-611.

大山 邦夫・渡来 仁・保田 立二 (1991). 糖タンパク質糖鎖に対するモノクローナル抗体作

製のための基礎的研究. 環境病態研報告 62, 38-45.

(参照した学位論文)

米田智佳子. マウス胚性幹細胞におけるグルコース感受性エピジェネティクスに関する研

究. 修士論文. 2014.

西谷健汰. 細胞外グルコース環境がマウス栄養膜幹細胞に及ぼす影響. 修士論文. 2015.

奈良大輔. 新規ヒストン O-GlcNAc 修飾 (H4#Gc)の発見とその特性解析. 修士論文. 2016.

204

論文内容の要旨

論文内容の要旨

東京大学大学院 農学生命科学研究科

応用動物科学専攻

平成 30 年度博士課程進学

氏名

奈良 大輔

指導教員名

田中 智

論文題目:

ヒストン O-GlcNAc 修飾研究ツールの確立およびヒストン O-GlcNAc 修飾の特性解析

序論

O-GlcNAc 修飾は、タンパク質のセリンあるいはスレオニン残基に単糖の一種

である GlcNAc が、O-結合型に付加するタンパク質翻訳後修飾の 1 つである。O-GlcNAc 修

飾の基質である UDP-GlcNAc が 2~5%のグルコースが代謝されるヘキソサミン合成経路の

代謝産物であることから、O-GlcNAc 修飾はグルコースをはじめとした栄養因子に応答性を

持つ栄養センサーとしての働きが期待されている。比較的近年にヒストンにおいても OGlcNAc 修飾が発見され、現在までに 16 種類のヒストン O-GlcNAc 修飾が報告されている。

特異抗体が獲得された、H2A の N 末端から 40 番目のアミノ酸であるセリン(Ser40)の OGlcNAc 修飾(H2AS40Gc、以下同様に略す)および H2BS112Gc については特性および機能

解析が進展しつつある。しかしながら、特異抗体などのヒストン O-GlcNAc 修飾の研究ツー

ルがほとんど存在しないことから、その他のヒストン O-GlcNAc 修飾については発見のみの

報告に留まり、その機能はおろか特性すらもほとんど明らかにされていない。そこで、本研

究は新規ヒストン O-GlcNAc 修飾の研究ツールを確立すること、およびその確立されたツー

ルを用いてヒストン O-GlcNAc 修飾の特性および機能解析を進展させることを目的とした。

第 1 章において、共同研究グループへ Ser40 が O-GlcNAc 化されたヒストン H2A(S40GcH2A)の合成を委託し、合成された S40Gc-H2A を活用した生化学的な解析を行った。第 2

章において、新たなヒストン O-GlcNAc 修飾特異的モノクローナル抗体を樹立し、第 3 章に

おいて、その抗体を用いた新規ヒストン O-GlcNAc 修飾の特性解析を行った。

206

論文内容の要旨

本文

第 1 章 合成 S40Gc 化 H2A を用いたヌクレオソーム再構成と H2AS40Gc 含有ヌクレオソ

ームを用いた生化学的解析

当研究室の先行研究によって発見された H2AS40Gc は、ヌクレオソーム内に

おいて H2A 同士が接する領域に位置することから、ヌクレオソーム構造に直接的な影響を

与えることが期待されていた。そこで、本章では H2AS40Gc のヌクレオソーム構造に与え

る影響を実際に評価することを目的とした解析を行った。特定のアミノ酸残基のみ OGlcNAc 化されたタンパク質の新規人工合成法によって大阪大学の共同研究グループにより

(※当文章は、学術論文として発表予定の内容に抵触するので、本要約中では削除した。)

第 2 章 新規ヒストン O-GlcNAc 修飾 H4#Gc の特異抗体の樹立と当該抗体の特性解析

H2AS40Gc の特異抗体である 20B2 抗体は、当研究室の先行研究により獲得さ

れた。20B2 抗体を用いた解析の結果、H2AS40Gc は転写の促進に寄与する因子である可能

性があることやゲノム修復にも寄与する因子であることが明らかにされた。このように、ヒ

ストン O-GlcNAc 修飾を特異的に認識する新たなモノクローナル抗体は、ヒストン OGlcNAc 修飾の特性および機能解析に非常に有用である。

20B2 抗体作製時に行った、マウス ES(mES)細胞から精製したヒストンを供

した予備的なアミノ酸分析および質量分析の結果、分析した当時において O-GlcNAc 修飾の

付加が報告されていない、ヒストン上の 4 ヵ所のセリンあるいはスレオニン残基の OGlcNAc 修飾の存在が示唆されていた。そこで、新規ヒストン O-GlcNAc 修飾を特異的に認

識する新たなモノクローナル抗体の獲得を目的として、これら 4 ヵ所の新規ヒストン O-

(※当文章は、学術論文として発表予定の内容に抵触するので、本要約中では削除した。)

207

論文内容の要旨

本文

20H3 抗体が、Western Blotting 以外の抗体を用いた主要な解析法(免疫沈降、

免疫染色)にも使用可能か、また使用可能であればその反応条件などを定めるため、両解析

における 20H3 抗体の使用条件検討を行った。免疫沈降における条件検討の結果、イオン性

界面活性剤を除いた buffer 系であれば 20H3 抗体は免疫沈降およびクロマチン免疫沈降

(ChIP)に使用可能であることが判明した。また、免疫染色における条件検討の結果、20H3

抗体が使用可能となる、細胞の固定条件、透過処理条件および使用時の抗体濃度を特定した。

(※当文章は、学術論文として発表予定の内容に抵触するので、本要約中では削除した。)

第 3 章 新規ヒストン O-GlcNAc 修飾 H4#Gc の局在ゲノム領域と細胞外グルコース濃度に

対する応答性の解析

本章前半においては、H4#Gc のゲノム上の局在領域を明らかにすることを目

的として、20H3 抗体を用いて、mES 細胞とヒト ES(hES)細胞、ヒト iPS(hiPS)細胞よ

り抽出・固定したクロマチンに対する ChIP-seq を行い、H4#Gc のゲノム DNA 上の局在

(※当文章は、学術論文として発表予定の内容に抵触するので、本要約中では削除した。)

本章後半においては、H4#Gc のグルコース応答性を検証するために、通常培

養条件である 25 mM に加えて、10、5 あるいは 1 mM のグルコース濃度に調整した培地中

で培養した mES 細胞それぞれにおける H4#Gc 修飾量を、20H3 抗体を用いた Western Blotting

によって比較した。その結果、少なくとも mES 細胞においては、培地中のグルコー

(※当文章は、学術論文として発表予定の内容に抵触するので、本要約中では削除した。)

208

論文内容の要旨

本文

結論

(※当文章は、学術論文として発表予定の内容に抵触するので、本要約中では削除した。)

2020 年 12 月 初版提出

2021 年 3 月 一部修正

209

論文内容の要旨

各章のまとめ

各章のまとめ

第1章

本章の内容は、学術論文として刊行される計画がある、

あるいは刊行内容に関わるため公表できない。

(5 年以内に出版予定)

第2章

本章の内容は、学術論文として刊行される計画がある、

あるいは刊行内容に関わるため公表できない。

(5 年以内に出版予定)

210

論文内容の要旨

各章のまとめ

第3章

本章の内容は、学術論文として刊行される計画がある、

あるいは刊行内容に関わるため公表できない。

(5 年以内に出版予定)

211

論文内容の要旨

(空白のページ)

212

謝辞

謝辞

実験の遂行方針の決定や本論文の作製にあたり、優しく諭すように的確な助

言を授けて下さり、終始多くのご指導を頂きました。また、外部の研究室への出向も快く承

諾下さり、結果として途中で戻ってくることになった際にも温かく受け入れ下さりました

指導教員の田中智教授に心から感謝いたします。

実験の遂行や本論文の作製のみならず、研究室内外様々なことに相談に乗っ

て下さるだけでなく、ご自身の体調が優れておられない現在におきましても、未だ多くの面

で未熟な筆者を学部生の頃より支え、優しく丁寧に指導してくださいました、廣澤瑞子前助

教に誠に感謝いたします。

本研究の遂行において陰ながらご支援下さり、お会いした際やお電話におい

て激励の言葉をかけてくださいました、塩田邦郎前教授に心より感謝致します。

第 1 章におけます S40Gc-H2A を使用した解析を進めるにあたりまして、筆者

の実験遂行や考察を手厚く支えて下さりました上に、構造解析を実際に行って下さりまし

た東京大学 定量生命科学研究所の胡桃坂仁志教授、小山昌子前助教、野澤佳世助教、並び

に胡桃坂研究室の皆さまに深謝申し上げます。

第 1 章において使用しました S40Gc-H2A を大量に合成し、快く幾度とお送り

下さりました大阪大学 蛋白質研究所 蛋白質有機化学研究室の北條裕信教授、川上徹准教

授、朝比奈雄也助教、並びに研究室の皆さまに深謝申し上げます。

第 1 章の研究の立ち上げにおきましてご尽力頂きました、中村学園大学 栄養

科学部 栄養科学科の末武勲教授に深く感謝致します。

214

謝辞

第 2 章、および第 3 章の実験の遂行において、サンプルの分与や助言を下さり

ました上に、何度伺っても快く相談に乗って下さりました、早川晃司前特任助教に深く感謝

いたします。

第 3 章におけるインフォマティクス解析などにおきまして筆者の補助や助言

を下さりました、細胞生化学研究室の先輩であります松本翔馬博士に心より感謝申し上げ

ます

MS/MS 解析を行ってくださいました、理化学研究所環境資源科学研究センタ

ー 生命分子解析ユニットの堂前直ユニットリーダーはじめ生命分子解析ユニットの皆さ

まに感謝致します。

短い間ではありましたが、お会いしました際にはいつも気さくにご挨拶下さ

り、ゼミなどを通じて助言を与えて下さいました、片岡直行准教授に深く感謝致します。

研究に関わる話からとりとめのない話まで様々な相談に乗って下さり、支え

て下さりました細胞生化学研究室の先輩であります西谷健汰博士に深く感謝致します。

実験の面でも、またそれ以外の面でも、研究室生活を充実した楽しいものにし

てくださいました、細胞生化学研究室のその他先輩方や後輩の皆様に心より感謝致します。

最後に、今日に至るまで私を温かく見守り、常に気にかけ、味方となって支え

てくださいました、両親をはじめとした家族・親族、友人、並びに婚約者であります松山佳

織さんに心から感謝致します。

令和 3 年 (2021 年) 1 月 奈良大輔

215

謝辞

(追記)

本論文の査読をして下さり、令和 2 年 11 月 4 日の予備審査会および令和 3 年

1 月 28 日の本審査会を通じて、貴重なご意見やご指摘を賜り下さいました審査委員の先生

方のお力添えの下、本論文を完成させることができました。博士論文審査の副査を務めて

下さいました、農学生命科学研究科応用動物科学専攻・応用遺伝学研究室の内藤邦彦教

授、同・動物細胞制御学研究室の高橋伸一郎教授、同・細胞生化学研究室の片岡直行准教

授および東京大学定量生命科学研究所の胡桃坂仁志教授、そして主査を務めて下さいまし

た、指導教員でもあります田中智教授に改めて厚く御礼申し上げます。

令和 3 年 (2021 年) 3 月 奈良大輔

216

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