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大学・研究所にある論文を検索できる 「日本産Ectoedemia属(チョウ目・モグリチビガ科)の分類と系統・潜葉習性・寄主利用」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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日本産Ectoedemia属(チョウ目・モグリチビガ科)の分類と系統・潜葉習性・寄主利用

屋宜, 禎央 YAGI, Sadahisa ヤギ, サダヒサ 九州大学

2020.03.23

概要

モグリチビガ科 Nepticulidae は、チョウ目最小の種を含む開張 2.5 ~6.5 mm の潜葉性小蛾類の一群であり、南極を除く全世界から 21 属 900 種以上が知られる。本科は単門類と呼ばれるチョウ目の基部に位置するグループの中で、もっとも種多様性が高く寄主植物も多様な分類群である。したがって、チョウ目における多様化創出機構の解明を行う上で、寄主植物との相互関係の過程で最初に放散したと考えられる本科の研究を行うことは重要である。このような潜葉性小蛾類の幼虫は、一般に亜科や属によって異なる潜葉習性、すなわち特徴的な形状の食痕(潜孔)や潜孔内に糞粒を残すことが、形態および分子系統解析から示されている。

モグリチビガ科の中でも Ectoedemia 属は 9 種群に分類され、91 種が記載されている。他の潜葉性小蛾類ではあまり見られない特徴として、属内で、線状、腸状、斑状といった多様な潜孔の形状を示す。本属は旧北区が最も種数が多く、旧北区西部では多様性の解明や寄主植物といった基礎情報が比較的整備されている。旧北区東部に位置する日本からは 5 種群 12 種が知られているが、幼虫のみが採集されている個体の DNA 塩基配列などから多数の未記載種が確認されている。そこで、日本産 Ectoedemia 属の種多様性の解明と、日本産本属の系統関係の推定、形態・寄主植物・潜葉習性などの生態といった属性の分化パターンの比較から本属内の多様化を生み出した要因の探索を行うことを目的として研究を行った。

材料は、日本各地での野外調査で採集した成虫・幼虫に加えて、北海道大学、国立科学博物館、大阪府立大学、九州大学、鹿児島大学の所蔵標本および個人コレクションを用いた。得られた標本の形態を比較するとともに、DNA 抽出を行った。抽出した DNA からミトコンドリア DNA の COI、 COII 領域、核 DNA の EF1-α、H3、28S、IDH 領域の一部の塩基配列、計 3,593 bp を決定し、Genbankに登録されている海外産本属の配列を加えて、最尤法とベイズ法を用いて系統解析を行なった。得られた系統樹上に寄主植物などの属性をマッピングして、属性の進化パターンと種分化を引き起こした要素について考察を行った。

本研究の結果、日本産 Ectoedemia 属では 1 日本新記録種群、5 日本新記録種、35 未記載種を確認し、合計 6 種群 52 種となった。近年まで、旧北区西部が本属の最も種多様性の高い地域だったが、日本産種のみでその種数を上回り、日本を含む旧北区東部が最も種多様性が高い地域であることが示唆された。その中で、スイカズラ科、ツツジ科、バラ科アズキナシ属 Aria、ブナ科ブナ属 Fagusは、本属の寄主として初めて明らかとなった。また、4 日本新記録種はこれまで生態が明確に示されていなかったが、飼育および、DNA バーコーディングによって寄主が明らかとなり、残りの1新記録種についても系統関係から寄主の推定を行うことができた。

分子系統解析の結果から、先行研究と同様に 1 種群を除く Ectoedemia 属各種群の単系統性が支持された。ツツジ科を寄主とする 2 種は系統的に離れており、それぞれ近縁種に、バラ属 Rosa またはキイチゴ属 Rubus を利用する種が含まれていることが明らかとなった。本科の基部に位置するStigmella 属においても、ツツジ科食者とキイチゴ食者が近縁であることから、本科は潜在的にバラ属またはキイチゴ属食からツツジ科食者への寄主転換か、ツツジ科食者からの寄主転換が起こりやすい可能性が示唆された。

ブナ F. crenata を寄主とする本属は互いに近縁な 5 種に分かれることが明らかとなったが、同所的に分布する 3 種は大きく異なる潜孔を形成し、同様にキイチゴ属を利用する近縁な 4 種についても、同所的に生息する種の潜孔の形状は大きく異なることがわかった。一方で、バラ属を同所的に利用する種はそれぞれ系統的に離れており、潜孔の形状は似ていた。つまり、遠縁の種が寄主転換などにより同所的に同じ寄主を利用するようになる場合は潜孔の形状はあまり変わらず、同所的に寄主を変化させずに種分化する場合は潜孔の形状が変わる傾向があった。このことから、潜孔の形状の多様化は同所的な種分化に関わる重要な要因の 1 つであることが示唆された。さらに、20℃で飼育した各種の羽化時期を比較してみたところ、同所的に同種または近縁な植物を利用する複数種は羽化時期に差異が確認され、本グループの種分化には生理的な違いに起因する時間的な隔離も関わっていることが考えられた。つまり、本属は地理的隔離や寄主転換のほか、ある一群では、潜孔の形状や羽化時期といった様々な生態的要素により多様化が創出されたことが示唆された。

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