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大学・研究所にある論文を検索できる 「ブラジル産グリーンプロポリス成分の吸収・代謝・排泄の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ブラジル産グリーンプロポリス成分の吸収・代謝・排泄の解明

山家 雅之 鳥取大学

2022.09.16

概要

プロポリスはミツバチ(Apis mellifera L.)が様々な植物の新芽や樹皮を採取し、作りだす樹脂状の物質で、紀元前300年から伝統療法として利用されてきた。ミツバチたちがプロポリスの原料とする植物(起源植物)は、生産される地域の植生により異なるため、一口にプロポリスと言っても起源植物の違いから、産地によりその含有成分も様々である。

 ブラジル産グリーンプロポリス(BGP)はブラジル南東部で生産され、主な起源植物はBaccharis dracunculifoliaであることが知られており、抗炎症、抗菌、抗腫瘍作用、2型糖尿病や肥満の改善、関節炎、風邪やアレルギー症状の軽減、認知機能の維持等、様々な有効性が報告されている。その特徴成分として起源植物に由来する桂皮酸誘導体(artepillin C、drupanin、baccharin、p-coumaric acid)やフラボノイド(kaempferide、6-methoxykaempferide)を含むことが知られており、BGPの持つ有効性にこれらの成分が寄与すると期待されている。実際に、いくつかの国と地域で生産されたプロポリスを集め、その含有成分を比較したところ、artepillin Cやdrupanin、baccharin等のプレニル化した桂皮酸誘導体は他の産地のプロポリスには含まれておらず、BGPの有効性はこのような成分特徴を反映しているものと思われる。

 生体内で発揮されるBGPの有効性に対するBGPに特徴的な成分の寄与を理解するためには、BGP成分の吸収・代謝を理解する必要がある。しかしながら、BGP成分の吸収・代謝に関する報告は少なく、ラットにおいてartepillin Cおよびp-coumaric acidを単一成分として、それぞれ投与した際の薬物動態学的な知見があるのみである。そこで、BGPを投与した際の、主要なBGP成分の吸収・代謝をヒトで検証することとした。男性6名、女性6名の計12名のボランティアを対象に、360mgのBGPエタノールエキス粉末を含むBGPカプセルを3球投与し、投与前および投与後24時間までの血漿サンプルを採取した。採取した血漿サンプルは脱抱合酵素による処理の有無で分け、LC-MS/MSによる分析に供した。その結果、BGP投与後における、BGP主要14成分中12成分(8つの桂皮酸誘導体と4つのフラボノイド)の薬物動態プロファイルが明らかになった。脱抱合処理後の血漿で、主な血中代謝物として検出されたのはartepillin Cおよびdrupaninであり、その最高血中濃度(Cmax)は共に1µMを超えていた。また、その内の約90%がフェノール性の水酸基にグルクロン酸が結合したartepillin C-4-O-β-D-glucuronideとdrupanin-4-O-β-D-glucuronideにそれぞれ代謝されることが明らかになった。一方で、フェノール性の水酸基を持たないculifolinおよび2,2-dimethylchromen-6-propenoicacidは脱抱合処理の有無でサンプル中濃度が変化しなかったことから、抱合代謝を受けることなしに血中へ取り込まれることが示唆され、それらのCmaxは脱抱合未処理の血漿中において、artepillin CアグリコンのCmaxより高値であった。また、脱抱合処理の有無に関わらず、baccharinとchlorogenic acidはどの時点の血漿においても検出されなかった。

 上記のヒト試験において、BGPの投与によって血中に吸収された各桂皮酸誘導体の量と、BGP中の成分含有量が比例しないことが明らかになった。これは、各桂皮酸誘導体の体内への吸収率が異なる可能性と、いくつかの桂皮酸誘導体が他の化合物に代謝される可能性を示していると考えられる。それを検証するためには、単一成分投与後の代謝物を分析する必要があるが、単一成分としての安全性が確認されていない成分をヒトに投与することは、倫理的に難しい。そこで、次にラットをモデルとして、BGPの主要な桂皮酸誘導体であるartepillin C、drupanin、baccharin、およびp-coumaric acidを単一成分として投与した際の、これらの成分の代謝を調査することとした。オスのWistar/STラット(7-8週齢)にBGP粉末300mg/kgを、artepillin C、drupanin、baccharin、およびp-coumaric acidの各標準品をBGP粉末300mg/kgの含有量に合わせてそれぞれ投与した。BGP粉末をラットに投与した際の、4つの桂皮酸誘導体について、そのCmaxと血中濃度曲線下面積(AUC)を確認した結果、p-coumaric acidのCmaxとAUCが最も高く、次いでdrupanin、artepillin Cの順となり、baccharinはどの時点の血中でも検出されなかった。ヒトでは、Cmax・AUCの値はdrupanin>artepillin C>p-coumaric acidの順であり、baccharinは同様に検出されなかった。このことから、p-coumaric acidの吸収性には種差があるものの、artepillin Cよりもdrupaninの血中濃度が高く、baccharinは血中で検出されない点でラットとヒトは共通していた。次に、各桂皮酸誘導体の標準品を投与した後の血中代謝物を調べた結果、artepillin C投与後では、7化合物が代謝物として検出され、artepillin Cはグルクロン酸抱合体だけでなく、水酸化代謝物(capillartemisin A)に代謝された。Drupanin投与後では、drupaninの硫酸抱合体、グルクロン酸抱合体および水酸化代謝物(3, 4-dihydroxy-5-prenylcinnamic acid)を含む13化合物が代謝物として検出され、その内12化合物がbaccharin投与後の血漿でも共通して検出された。また、p-coumaric acidはグルクロン酸抱合体には代謝されずに、主に硫酸抱合体に代謝されることが示唆された。

 本研究により、ヒトおよびラットから得られたBGP成分、特に桂皮酸誘導体の吸収・代謝に関する知見は、BGP中で含有量の多いartepillin Cやbaccharinよりも、drupaninやculifolin、2,2-dimethylchromene-6-propenoicacidの生体利用性が高く、BGPの有効性に対する寄与が大きい可能性を示唆しており、含有量だけでなく吸収・代謝を踏まえた上で、それぞれの成分の機能性評価を実施していくことの重要性を示していると考えられる。本研究でBGP成分の吸収性や代謝物の構造を明らかにできたことで、実際に体内に存在するBGP成分やその抱合代謝物の生理活性評価、組織への移行性等の検証が大きく進展することが期待でき、BGPの有効性メカニズムや有効成分の解明につながるものと考えられる。

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