アルツハイマー病におけるDNAメチル化量の変化 (第137回成医会総会一般演題)
概要
【目的】
高齢化に伴い,アルツハイマー病(AD)の予防,治療は解決すべき大きな社会問題となっている.しかし,脳内でアミロイドβ,それに遅れてリン酸化タウが沈着することは知られているが,AD 発症の分子メカニズムは不明である.また,診断バイオマーカーは開発されていない.そこで,本研究では,加齢や感染によって変化するDNA メチル化に焦点を当て,DNA メチル化変化が神経変性に及ぼす影響と診断バイオマーカーとしての有用性を検討する.
【方法】
AD 患者とその前段階である軽度認知障害(MCI)の血液からDNA を精製し,Illumina Infinium HD MethylationAssay を用いて,網羅的に血液DNA メチル化レベルを測定した.これらの結果を健常高齢者(NC)と比較することで,変化の大きい遺伝子領域候補を抽出した.解析数を増やし,パイロシーケンス法またはmethylation-sensitive high resolution melting(MS-HRM)法により,候補領域のDNA メチル化量を測定した.また,本研究は東京慈恵会医科大学倫理委員会の承認を得た上で,被験者に対し,本研究の内容を充分に説明し,同意を得て行った.また,疾患群に対しては,介護者による同意を併せて得た.
【結果と結論】
AD,MCI では,NC と比較して,NCAPH2(LMF2),COASY,SPINT1遺伝子プロモーター領域のDNA メチル化量が大きく変化していた.これは,MCI の段階から変化しており,AD の早期診断バイオマーカーとして有用となることが示された.さらに,COASY 遺伝子は補酵素A 合成酵素をコードしており,エネルギー代謝に影響を与えることで,AD 発症に関連することが示唆された.なお,本発表に関連して,共同演者含め開示すべき利益相反に該当する項目はない.