リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「膵胆管型膵管内乳頭状粘液性腫瘍には臨床病理学的特徴、遺伝子的特徴において2つの亜型が存在する可能性がある」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

膵胆管型膵管内乳頭状粘液性腫瘍には臨床病理学的特徴、遺伝子的特徴において2つの亜型が存在する可能性がある

Shimizu, Takashi 神戸大学

2021.03.25

概要

【INTRODUCTION】
 膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)は膵管上皮に発生し乳頭状増生を主とする腫瘍である。粘液の過剰産生による膵管の囊胞状拡張、癌化の可能性を特徴とし、画像的に分枝膵管型、主膵管型、混合型に分類される。組織学的には胃型、腸型、膵胆管型(PB-IPMN)の3型に分類されるが、主とする組織型の一部に他の組織型が混在しているのが一般的である。PB-IPMNはIPMNの7〜14%であり、主膵管に発生することが多く、腫瘍内には高度な異型を持つことが多い。しかし、症例数が少ないため、その特徴は完全には明らかにされていない。
 我々はPB-IPMNの病理学的検討において、低異型度の腫瘍が乳頭状増生し、他の組織型が混在する典型的なPB-IPMNと、高度な細胞異型と複雑な乳頭状構造を持つと同時に、他の組織型が混在せず、純粋にPB型のみで構成されるPB-IPMNの2種類が存在するのではないかと考えた。そこで、それぞれのPB-IPMNおよびPDACに関して臨床病理学的特徴、遺伝子変異を検討した。

【MATERIALANDMETHOD】
症例
 2001年から2018年の間に神戸大学で膵切除を施行され、病理学的にPB-IPMNと診断された29例に関連施設で膵切除された2例を追加した計31例を病理学的に2型に分類した。
①polytypic type:低異型度であり他の組織型(胃型、腸型、オンサイト型)が混在するtypeのPB-IPMN
②monotypic type:高度異型性をもち、PB型のみで形成されるtypeのPB-IPMN
 また、2014年から2015年のPDACの切除例24例を対照群として検討した。
臨床的特徴
 臨床的特徴として年齢、性別、腫瘍マーカー、腫瘍部位、内視鏡所見から十二指腸乳頭の開大と粘液産生の有無を検討した。
 病理学的所見は腫瘍径、浸潤度、T因子(UICC分類:第8版)、顕微鏡的リンパ管浸潤、神経周囲浸潤、およびリンパ節転移の頻度を検討した。
画像的特徴
 造影CT画像で結節径、腫瘍の上流膵管の拡張(>5mm)の有無、下流膵管の拡張の有無、背景膵の囊胞の有無に関してpolytypic typeとmonotypic typeで検討した。
 さらに、造影CT画像の所見に基づいてPB-IPMNを
Type A:典型的なIPMNの所見とされる、膵管の囊胞状拡張が存在するもの
Type B:膵管拡張を伴わない充実性腫瘍が存在するもの
Type C:腫瘍閉塞による上流膵管の拡張をもつもの
上記の3種類に分類した。
免疫染色
 全ての症例に対してMUCkMUC2、MUC5AC、MUC6、p53、pl6、SMAD4染色を行った。
1+:1〜5%
2+:6〜50%
3+:50%以上
とし、2+以上をMUC染色陽性、P53は3+で陽性、pl6とSMAD4は1+以上で陽性と定義した。
遣伝子変異
 KRAS変異をDigital PCR、GNAS変異をSanger sequenceを用いて解析した。
統計学的分析
 T検定、Mann-Whitney U検定、Kruskal-Wallis検定を用いて統計学的分析を行った。まず、3群で分析を行い、有意差を認めた場合に2群ずつ分析し、どのグループ間に有意差があるのかを確認した。カプランマイヤー法を用いて無再発生存曲線を作成しログランク検定で比較を行った。
 2群間ではp<0.05を有意差ありとしたが、3群比較ではボンフェローニ法を用いてp<0.01を有意差ありとした。

[RESULT】
臨床的特徴
 PB-IPMN31例のうち19例(61%)がpolytypic type、12例(39%)がmonotypic typeであった。polytypic type、monotypic type、PDACの比較では年齢、性別、腫瘍マーカ一、腫瘍部位で有意差は認めなかった。一方で十二指腸乳頭の開大(74% vs 0% vs 4%, p<0.01)、十二指腸乳頭からの粘液排出はpolytypic typeで有意に多かった(89% vs 17% vs 8%, p<0.01)を認めた。
画像的特徴
 Polytypic typeは膵管の囊胞状拡張を伴う典型的な画像所見を呈する症例が多く、1例を除いてType Aに分類された。また、術前に95%がIPMNと診断された。Monotypic typeでは、ほとんどの症例が膵管の嚢胞状拡張を欠き、充実性腫瘍として描出されるType B、Type Cの画像的特徴を有しており、術前に33%がPDACと診断された。
病理学的特徴
 肉眼的にはpolytypic typeは全例で拡張した膵管内に粘两を含む乳頭状腫瘍を認めた。Monotypic typeでは膵管の拡張や粘液、乳頭状構造は目立たず、膵管内に充実性腫瘍として観察されるものが多かった。
 組織学的にはpolytypic typeは腫瘍細胞が乳頭状に増生し、中程度の多形核と好酸性の細胞質を有していた。細胞外は粘液で満たされ、腫瘍の境界は比較的明瞭であった。
 monotypic typeの全てが浸潤癌であったが、腫瘍細胞が管状、乳頭状に複雑に増生しIPMNとして矛盾しない所見でありPDACとは明らかに異なっていた。
遺伝子変異
 KRAS変異はpolytypic type、monotypic type、PDACでそれぞれ12/19(63%)、10/12(83%)、24/24(100%)で認められた。IPMNのドライバー遺伝子とされるGNAS変異はpolytypic typeでのみ認められた(6/19、32%)が、monotypic typeとPDACでは認められなかった。
予後
 Polytypic typeはmonotypic type、PDACと比べて有意に無再発生存期間が良好であったが、monotypic typeとPDACでは有意差は認めなかった。
 術後3年の無再発生存率はpolytypic typeで84%、monotypic typeで50%、PDACで37%であった。

[DISCUSSION】
 我々の検討では①病理学的にPB-IPMNの約2/3は低異型度の腫瘍であり、胃型や腸型等の組織型を一部に含む典型的なIPMNとしての特徴を有していた(polytypic type)。一方で1/3は高度な異型を持ち胆膵型のみで形成される非典型的なIPMN(monotypic type)であった。②monotypic typeは十二胃腸乳頭の開大や粘液産生がほとんどない。③monotypic typeのほとんどの症例が画像上で膵管の囊胞状拡張を欠く充実性腫瘍として存在し1/3がPDACと診術前断されていた。④monotypic typeは腫瘍細胞が複雑に陴管内に乳頭状増生し病理学的には1PMNの診断基準を満たすものの、全例が浸潤癌だった。⑤monotypic typeはIPMNの最も一般的なドライバー遺伝子とされるGNAS変異を持たなかった。⑥monotypic typeの予後はPDACと同程度であった。
 これらのIPMNとして非典型的な特徴やPDACの類似点からmonotypic typeはIPMNではなく膵管内への乳頭状増生を主するPDACの亜型ではないかと考える。
 病理学的に他の臓器には、胃の乳頭状腺癌や頭頸部の乳頭状扁平上皮癌など、乳頭状癌のカテゴリーが存在する。以前、我々は乳頭状胆管癌と胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)の形態学的分離基準を提唱した。この基準では乳頭状胆管癌とIPNBは腫瘍の位置や免疫組織学的表現型および予後において明確な差がある。さらに、IPNBではAPC、CTNNB1遺伝子の変異が43%で認められるのに対して、乳頭状胆管癌や非乳頭状胆管癌では変異は認められないことを報告した。
 一方で膵臓では乳頭状癌のカテゴリーが存在しない。Monotypic typeは非浸潤部の腫瘍が乳頭状に増生しているものの、画像的、病理的、遺伝子において典型的なIPMNとは異っている。本研究ではmonotypic type PB-IPMNと分類した症例が、IPMNではなく乳頭状腺癌というカテゴリーに当てはまるのではないかという疑問を提起した。
 この研究のlimitationは①PB-IPMNが稀であるため症例数が少ない②2種類の遺伝子のみの検討である。
 Monotypic typeがIPMNよりもPDACに類似していることを決定づけるには、さらに多数の遺伝子検索を行うことが必要である。
 結論として、PB-IPMNと診断される症例のなかには、GNASの変異を欠き、画像的、組織学的にIPMNとして非典型的なものが存在する。それらはPDACとの類似点が多く、IPMNではなく膵乳頭状腺癌として分類するかどうかを、より大規模な症例群を用いて検討する必要がある。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る