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大学・研究所にある論文を検索できる 「ZNF384-fusion proteins have high affinity for the transcriptional coactivator EP300 and aberrant transcriptional activities」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ZNF384-fusion proteins have high affinity for the transcriptional coactivator EP300 and aberrant transcriptional activities

Yamamoto, Hideyuki 山本, 秀行 名古屋大学

2020.11.10

概要

【緒言】
 ZNF384 融合遺伝子は、B 細胞前駆急性リンパ性白血病(BCP-ALL)における反復遺伝子異常として近年同定され、フィラデルフィア染色体(Ph)陰性 BCP-ALL の 7-17%に認められる。EP300-ZNF384(E-Z)および SYNRG-ZNF384(S-Z)を含めた 10 種類の ZNF384 融合遺伝子が同定され、成人では E-Z が最も高頻度である。我々はマウスの前駆プロ B 細胞に E-Z を導入することにより B 細胞分化停止を起こし白血病を発症することを示したが、このことは E-Z が白血病原性を有することを強く示唆している。しかし、ZNF384 融合タンパクにより白血病を発症する分子学的機序は未解明のままである。BCP-ALL における反復融合遺伝子として ZNF384 融合遺伝子の重要性が増しており、本研究では分子生物学的手法を用いて ZNF384 融合タンパクによる白血病発症機序の検討を行った。

【方法・結果】
 ZNF384 融合タンパクは、ZNF384 全長の N 末端側に融合パートナーが融合するという共通の構造を有する(Fig. 1A)。「B 細胞分化停止機能をもち、かつ ZNF384 融合タンパク特異的な転写標的遺伝子」を探索するため、15-24 歳の Ph 陰性 BCP-ALL 症例 54 例(ALL202-U コホート)の網羅的 RNA シークエンスの結果を用いて、正常 B細胞と比較して ZNF384 融合遺伝子陽性 ALL で特に高発現している遺伝子を調べた。 B 細胞分化阻害因子として知られる ID ファミリー遺伝子に注目すると、ID2 が ZNF384融合遺伝子陽性 ALL 症例で高発現していた(Fig. 1B)。また最近、シンガポールでの Ma-spore ALL2003 研究に登録された小児 ALL 231 例の網羅的 RNA シークエンス解析において、ZNF384 融合遺伝子陽性 ALL 特異的に高発現している 25 遺伝子が同定されており、この 25 遺伝子の発現について ALL202-U コホートにおいても解析したところ、SALL4 が ZNF384 融合遺伝子陽性 ALL 症例で特に高発現していた(Fig. 1C)。これらのことから SALL4 および ID2 を ZNF384 融合タンパク特異的な標的遺伝子として選出した。次に THP-1(AML 細胞株)および NALM-6(IGH-DUX4 陽性 ALL 細胞株)に野生型 ZNF384(Wild-Z)および ZNF384 融合遺伝子を導入したところ、ZNF384融合遺伝子特異的に SALL4 および ID2 の mRNA 発現誘導を認めたことから(Fig. 2A、 B)、SALL4 および ID2 は ZNF384 融合タンパク特異的な転写標的であることが示唆された。
 SALL4 および ID2 の転写開始点近傍領域をエンハンサー領域として PCR で増幅してルシフェラーゼレポーター遺伝子を作製し(Fig. 3A、B)、Wild-Z および ZNF384 融合タンパクによる転写活性をルシフェラーゼ・アッセイで調べた。SALL4 のエンハンサー領域に対して ZNF384 融合タンパク特異的な転写活性の亢進が認められた(Fig. 3A)。この領域にはコンセンサス ZNF384 結合モチーフ(G/CAAAAA)が 2 か所(Z1サイトおよび Z2 サイト)含まれる。Z1 サイトのみを残したレポーター遺伝子では ZNF384 融合タンパク特異的な転写活性化傾向が増強し(Fig. 3A)、Z1 サイトをタンデムに並べたレポーター遺伝子ではその傾向がより増強したことから、Z1 サイトがSALL4 エンハンサー領域における ZNF384 融合タンパクの結合サイトである可能性が示唆された(Fig. 3D)。同様に、ID2 のエンハンサー領域に対しても ZNF384 融合タンパク特異的な転写活性の亢進が認められた( Fig. 3B)。この領域にはコンセンサス ZNF384 結合モチーフが 5 か所(Z1〜Z5 サイト)含まれる(Fig. 3B)。Z5 サイトのみを残したレポーター遺伝子でも ZNF384 融合タンパク特異的な転写活性化傾向は損なわれず(Fig. 3B)、Z5 サイトをタンデムに並べたレポーター遺伝子ではその傾向がより増強したことから、Z5 サイトが ID2 エンハンサー領域における ZNF384 融合タンパクの結合サイトである可能性が示唆された(Fig. 3D)。
 ZNF384 融合タンパクの転写活性化能亢進の機序を明らかにするため、ヒストンアセチル化酵素である EP300(アミノ酸 1053-1860 領域)、TIP60(アミノ酸 181-482 領域)および GCN5(全長)との結合能を Wild-Z および E-Z との間で比較することを目的として GST-pull down assay を行った。In vitro transcription/translation system で合成し[35S]でラベルした Wild-Z および E-Z タンパクと GST-EP300、GST-TIP60 および GST- GCN5 を使用した。その結果、いずれのヒストンアセチル化酵素に対しても E-Z タンパクは Wild-Z よりも強い結合を示した(Fig. 4A)。一方で、これらのヒストンアセチル化酵素共発現による E-Z タンパク転写活性増強の効果は EP300 が最も強力であった(Fig. 4B)。このことから、E-Z タンパクと EP300 との結合親和性が上昇していることが E-Z の転写活性亢進の機序として考えられた。
 E-Z タンパクにおける EP300 との結合領域を明らかにするため、E-Z から ZNF384領域を欠失させた変異、EP300 領域の一部欠失させた変異を作製し(Fig. 5A)、EP300との結合の変化を GST-pull down assay で調べた。E-Z タンパクの EP300 領域は EP300と結合できなかったことから(Fig. 5B)、ZNF384 領域が EP300 と結合する可能性が高いと考えられた(Fig. 5C)。

【考察】
 SALL4 は胚幹細胞の自己増殖能と多分化能を維持するために必須の転写因子であり、ID2 は B 細胞分化を制御する TCF3 および PAX5 の抑制因子である。これらの機能からも ZNF384 融合タンパクにより誘導される SALL4 および ID2 の高発現は ZNF384 融合遺伝子陽性 ALL の分化障害に重要な役割を担っている可能性があると考えられる。我々はまず SALL4 および ID2 のエンハンサー領域に転写誘導能があることを示し、SALL4 の Z1 サイトおよび ID2 の Z5 サイトが ZNF384 融合タンパク特異的な転写誘導能を有する部位であると同定した(Fig. 3)。次に EP300 と E-Z タンパクとの結合能が上昇していることおよび EP300 共発現が E-Z タンパクの転写活性を増強することを示し(Fig. 4)、その結合領域が E-Z タンパクの ZNF384 領域である可能性が高いことを示した(Fig. 5)。S-Z タンパクにおいても E-Z と同様に EP300 との結合親和性の上昇が確かめられたことから EP300 の結合領域は ZNF384 領域にある可能性が高く、EP300 との結合親和性上昇が ZNF384 融合タンパクに共通した機序になり得ると考えられた。

【結語】
 ZNF384 融合タンパクによる標的遺伝子の転写活性亢進の機序として、ZNF384 融合タンパクと EP300 との結合親和性上昇を示した。

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