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分岐骨格を有するペプチド性天然物およびその誘導体の合成研究

鈴木, 力斗 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24567

2023.03.23

概要

分岐骨格を有するペプチド性天然物および
その誘導体の合成研究

2022

鈴木 力斗

目次

序論........................................................................................................................................................ 1

第一章

Coibamide A の構造活性相関研究 .................................................................................. 8

第一節 研究の背景 ...................................................................................................................... 8
第二節 Coibamide A の大環状構造の構造活性相関研究 ..................................................... 11
第三節 Coibamide A の Tyr(Me)部位の構造最適化による高活性誘導体の創製 ................. 14
第四節 Coibamide A のマクロラクトン部位の構造活性相関研究 ..................................... 17
第五節 Coibamide A 誘導体の生物活性評価 ......................................................................... 24
第六節 小括 ................................................................................................................................ 27

第二章

Vitilevuamide の合成研究 ............................................................................................... 56

第一節 研究の背景 .................................................................................................................... 56
第二節 Vitilevuamide の合成計画 ............................................................................................ 57
第三節 モデルペプチドを用いた vitilevuamide の二環性骨格の構築プロセスの確立 .... 59
第四節 非天然型側鎖を有する保護アミノ酸の合成 ............................................................ 67
第五節 小括 ................................................................................................................................ 70

結論...................................................................................................................................................... 84
謝辞...................................................................................................................................................... 85

序論
環状ペプチドは、高い標的親和性、膜透過性、生体内安定性を有することが可能であり、
細胞内のタンパク質間相互作用を阻害する薬剤のための創薬スキャフォールドとして期待
されている 1-4。また、医薬品の創製の領域では、治療が困難な疾患に対する治療薬開発のた
めのシーズとして利用されるだけでなく、低分子医薬品の設計のためのリード化合物 5、診
断薬 6、キャリア 7 としても応用されている。
これまでに、数多くの環状ペプチド構造からなる天然有機化合物が報告されており、実際
に医薬品として利用されている代表的な例として cyclosporin A (1) が挙げられる(Figure 1)。
真菌から単離された環状ペプチドである cyclosporin A は、細胞内のタンパク質 cyclophilin A
と複合体を形成し、calcineurin を阻害する免疫抑制剤として知られている 8。臨床では経口
剤として使われており、優れた受動膜透過性や良好な経口アベイラビリティを示す 9 ことか
ら、cyclosporin A をモデルとした head-to-tail 型の環状ペプチドの膜透過性に関する研究が数
多く報告されている 10-16。

Figure 1. Structure of Cyclosporin A

天然から単離される環状ペプチドには、cyclosporin A のような head-to-tail 型の環状ペプチ
ドだけでなく、分岐骨格を有する環状ペプチドや二環性の環状ペプチドをはじめとする特徴
的な骨格からなる環状ペプチドが単離されている。このようなユニークな形状からなる環状
ペプチドにも、これまで報告例のない細胞内の標的分子に作用して生物活性を示すものが報
告されている 17。これら分岐型や二環性の環状ペプチドは、cyclosporin A のような head-totail 型の環状ペプチドに比べて物理化学的特性を調べられている例が少ないものの

18



daptomycin (2)19 や romidepsin (3)20 のように医薬品として臨床応用されている環状ペプチド
も知られている(Figure 2)。

1

Figure 2. Approved Pharmaceuticals of Branched Cyclic Peptide Natural Products

魅力的な生物活性を示す環状ペプチドの創薬研究の初期段階において必要となるのは、化
学構造の決定である。ペプチド性化合物の構造決定には、一般的な天然有機化合物の構造決
定で用いられる質量分析や NMR スペクトル解析だけでなく、キラルアミノ酸分析 21 や生合
成遺伝子解析などを組み合わせることが可能である。しかしながら、分子サイズが大きいペ
プチド性化合物の構造決定においては、スペクトルやクロマトグラム上での分離が困難であ
ることなどにより、立体配置を確定できない部分構造が残されている場合や、間違った構造
決定がなされている場合がある 22, 23。こうした局面では、天然由来のサンプルのスペクトル
解析などにより類推した化学構造の妥当性について、全合成研究により得られた化学合成品
との比較により評価することが有効である。
所属研究室では、海洋天然物由来のオーリライド型ペプチド性天然物の一種である
odoamide (4) の化学合成研究に取り組み、スペクトル解析等では判別できなかったポリケチ
ド部分の立体配置を決定した 24, 25(Figure 3)。この全合成経路の確立に向けた研究において
は、合成研究の過程で各種立体異性体や誘導体が得られただけでなく、新たに確立した合成
プロセスなどを活用することにより、天然物には見られない修飾を施した類縁体化合物 5 の
創製に展開することができた 26。

Figure 3. Structures of Odoamide and Its Derivative

2

Figure 4. Structures of Non-immunosuppressive Cyclosporin A Derivatives for Anti-HCV Agents

このような環状ペプチド骨格からなる天然物での創薬研究の例として、前述の cyclosporin
A の大環状骨格を活かした C 型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗ウイルス剤の創製研究が
挙げられる 27。すなわち、cyclosporin A が HCV の複製を抑制するとの知見 28 を端緒として、
免疫抑制活性を示さずに HCV に対する抗ウイルス活性のみを示す cyclosporin A 誘導体が設
計された(Figure 4)。この構造最適化研究では、cyclosporin A 中の cyclophilin A との相互作
用面を維持する一方で、calcineurin との相互作用ができないように環状ペプチドの部分構造
を化学修飾することで、活性の分離に成功している。この創薬研究で得られた

3

alisporivir/DEBIO-025 (6)29、NIM811 (7)30、SCY-635 (8)31 は、いずれも C 型肝炎ウイルス感染
症治療薬への応用を目指した臨床試験が実施されている。また、アステラス製薬の研究グル
ープは、同様のアプローチにより、Stachybotrys chartarum の培養液から単離された cyclosporin
A 類似の天然物 FR901459 (9)32 からの構造展開により、優れた生物活性プロファイルを示す
抗 HCV 活性ペプチド ASP5286 (10) およびその誘導体を見出している 33-35。
このように、特徴的な化学構造からなる環状ペプチドやその誘導体を化学合成して構造活
性相関研究を行うことは、新規医薬品の創製につながる実用的な知見だけでなく、特定の標
的分子との相互作用や膜透過性に有効な部分構造の特定をはじめとする基礎的知見を提供
することから、創薬科学における重要な研究課題である 36。分岐骨格をはじめとする複雑な
化学構造を有する環状ペプチドの誘導体は、翻訳系を用いた生物学的アプローチにより調製
できる場合もあるが、蛍光標識誘導体をはじめとするプローブの創製やこれを用いた標的探
索研究へも展開できるという点で、化学合成・修飾を用いたアプローチが有効である。
こうした背景のもと、著者は、細胞内のタンパク質に作用して生物活性を示すペプチド性
天然物からの創薬研究の一環として、分岐骨格を有する 2 つの環状ペプチドの合成研究を行
った(Figure 5)。

Figure 5. Branched Cyclic Peptide Natural Products Presented in This Thesis

第一章では、投げ縄構造からなる環状デプシペプチド coibamide A (11) の構造活性相関研
究について論述する。著者は、化学合成が容易な coibamide A の簡易構造誘導体をリード化
合物として、複数のアプローチで構造活性相関研究を行った。Coibamide A と同じ標的分子
に作用し共通の部分構造を有する天然物 apratoxin A およびその誘導体の構造活性相関情報
を参考にし、coibamide A に含まれる芳香族アミノ酸の構造活性相関研究を展開した。また、
coibamide A のマクロラクトンを構成するエステル結合周辺の部分構造に関する構造活性相
関研究を実施した。これらの検討を通して、coibamide A の芳香族アミノ酸の側鎖をかさ高
4

い芳香環に置換すると細胞増殖抑制活性が大幅に向上すること、coibamide A のエステル結
合をアミド結合や炭素–炭素二重結合に置換しても活性が維持されること、およびこの部分
構造の 2 つのメチル基が生物活性に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
第二章では、二環性環状ペプチド vitilevuamide (12) の合成研究について論述する。著者
は、vitilevuamide の化学構造の決定、並びに、構造最適化研究や標的分子・相互作用様式の
解明に利用可能なプローブ分子の合成に資する vitilevuamide の化学合成プロセスの確立に
向けた検討を行った。Vitilevuamide に含まれる複数の非天然型側鎖を有するアミノ酸を天然
アミノ酸に置き換えたモデルペプチドを設計し、vitilevuamide の二環性骨格の効率的な構築
を目指した検討を実施した。また、vitilevuamide 中の未決定の立体配置を同定するために必
要となる N-メチルヒドロキシメトキシニンをはじめとする非天然型側鎖を有するアミノ酸
について、固相合成に適用可能な適切な保護基を有するアミノ酸誘導体の合成法を検討した。
これらの検討を通して、すべての非天然型アミノ酸の化学合成プロセスを確立するとともに、
vitilevuamide の合成において鍵となる二環性骨格の構築とデヒドロアラニンへの変換を含
むモデルペプチドの合成プロセスを確立した。

5

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83

結論

著者は、天然から単離された分岐骨格を有する環状ペプチドおよびその誘導体の合成研究

を行った。

第一章では、投げ縄型構造を有する環状ペプチド coibamide A の構造活性相関研究を行っ

た。Coibamide A のマクロラクトン構造周辺の構造の重要性に着目し、各種誘導体を設計・

合成するとともに、細胞増殖抑制活性およびタンパク質分泌阻害活性を評価した。その結果、

coibamide A の Tyr(Me) 部位を Bph に変換することにより、細胞増殖抑制活性が向上するこ

とを明らかにした。また、coibamide A のマクロラクトン部位を形成するエステル結合を炭

素―炭素二重結合やアミド結合に置換しても、天然物と同等の細胞増殖抑制活性を示すこと

を明らかにした。さらに、細胞増殖抑制活性とタンパク質分泌阻害活性を比較することで、

coibamide A およびその誘導体が Sec61α 以外の標的分子にも作用することにより、細胞増殖

抑制活性を示している可能性を示した。

第二章では、二環性骨格からなる環状ペプチド vitilevuamide の合成研究を行った。非天然

型アミノ酸を変換したモデル化合物を用いた検討により、vitilevuamide の 2 つの大環状構造

を固相樹脂上での環化反応を活用することで効率的に構築するプロセスを確立した。また、

このプロセスに適用可能な合成素子となるアミノ酸の適切な保護基を確定させた。このうち、

Dha 前駆体となるアミノ酸について、vitilevuamide の二環性骨格を構築後に Dha へと導くプ

ロセスを確立した。

近年、マクロサイクロ類の医薬への応用が注目を集めており、環状ペプチド類はその代表

的な一翼を担うものとして期待されている。魅力的な生物活性を有するユニークな骨格から

なる環状ペプチド類も多数報告されているものの、これらの創薬展開や基礎研究への応用の

ためには、化学合成上の制約をはじめとして未だに解決するべき課題が残されている。本研

究において取り扱ったペプチド性天然物ならびにその誘導体の合成研究により得られた知

見は、今後新たに見出される環状ペプチド類の構造最適化研究やこれらを活用した創薬研究

においても有益なものとなることが期待される。

84

謝辞

本研究の実施にあたり有益な御指導、御助言をいただきました創薬有機化学分野大野浩章

教授、京都薬科大学薬品化学分野大石真也教授に深く感謝申し上げます。

副査として御助言をいただくとともに本論文の細部にわたり御指導をいただきました生

体機能化学分野二木史朗教授、システムケモセラピー・制御分子学分野掛谷秀昭教授に深く

感謝申し上げます。

研究を進めるにあたって、多くの御助言をいただきました創薬有機化学分野井貫晋輔准教

授、創薬有機化学分野有地法人助教、バイオ医薬品化学分野秋葉宏樹助教に深く感謝致しま

す。

本研究の遂行にあたって、タンパク質分泌阻害試験に御協力いただきました Kerry L.

McPhail 教授(Oregon State University)、Jane E. Ishmael 教授(Oregon State University)、Daphne

R. Mattos 博士(Oregon State University)、高分解能質量測定に御協力いただきました京都薬

科大学共同利用機器センター服部恭尚講師に深く感謝申し上げます。

Coibamide A の構造活性相関研究に関して多大な御協力をいただきました喜多村隆志修士、

辻岡里菜氏、および vitilevuamide の合成研究に関して多大な御協力をいただきました京都薬

科大学薬品化学分野小林数也准教授、横畠綾音氏、三反崎秀真氏、新井拓海氏、新谷越佑氏

に感謝致します。

大学院での研究生活を送る上で、ともに研究に励み協力をいただきました創薬有機化学分

野並びに京都薬科大学薬品化学分野に在籍した諸氏に感謝致します。

最後に、長きにわたる学生生活をサポートしていただいた家族に心より感謝申し上げます。

2023 年 3 月

鈴木力斗

85

...

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