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Aristolochic Acid Induces Renal Fibrosis and Senescence in Mice

浦手 進吾 横浜市立大学

2022.03.25

概要

1.序論
近年,人類は長寿命化を背景に高齢者における慢性腎臓病の高い有病率が問題となっている.腎臓は多大なエネルギー消費の場であると同時に,薬剤や低酸素などの外的ストレスに曝露されやすい臓器であるため,加齢に伴って強く影響を受ける臓器のひとつとされる.そこで,老化した腎臓(加齢腎)に対する対策が重要になってきている.加齢腎は腎機能の低下に加えて,腎萎縮や尿細管間質線維化などの構造的変化を伴い,組織修復能低下によって急性腎傷害への感受性がさらに亢進している.老化の分子学的機序が徐々に解明されるにつれて,腎臓の老化も個体老化と共通の分子学的機序によって形成されることが明らかになっている.老化関連機序のうち,細胞老化はその中心的基盤と考えられており(Childsetal.,2015),腎臓においても細胞老化を起こした細胞は加齢に伴い蓄積され,組織修復能低下や慢性炎症を介して線維化を引き起こし加齢腎の病態を形成すると考えられている(Schmittand Melk,2017).分子学的機序に基づいた加齢腎に対する治療が確立されれば,腎臓病の進行予防,さらには個体老化の予防や寿命の延伸につながることが期待される.そこで加齢腎に対する研究の必要性が高まるが,腎臓に特異性があり,かつ簡便に作製可能な加齢腎モデルは現時点で十分ではない.アリストロキア酸(AA)はDNA損傷性を有し,主に腎臓尿細管細胞を標的とする薬物である.AA腎症(AAN)は急速かつ慢性的な腎機能低下を引き起こし,病理学的に顕著な尿細管間質線維化と寡少な尿細管再生像を伴う急性尿細管壊死の所見を特徴とする(Lucianoand Perazella, 2015; Jadotetal., 2017).AANは加齢腎の性質を兼ね備えていると考えられるが,これまでにAANと腎老化の関連性について十分に検証した報告はない.そこで,我々はAANマウスモデルが加齢腎モデルになりえることを検証するために,マウスを用いてAANの老化関連形質について解析することにした.

2.実験材料と方法
今回の実験は「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(日本学術会議)」を遵守した(横浜市立大学動物実験承認番号F-A-20-027).C57BL/6マウス,8週齢,オスをVehicle群とAA群の2群に振り分け,1週間の馴化期間を設けた後,AAを投与開始した.AA投与方法は,AA(3mg/kg),週2回,4週間腹腔内投与し,リモデリングとして投与後期間4週間を設けて解剖を行った.投与観察期間中に体重や血圧などの生理学的データを取得し,解剖時の標本で腎機能,腎病理所見に加え,腎臓における細胞老化,酸化ストレスレベル,抗老化関連遺伝子発現について解析した.

3.結果
まず,Vehicle群と比較し,AA群では体重は有意に低下したが,収縮期血圧と心拍数については両群で差は明らかでなかった.また,AA群では腎重量/体重比は有意に低下したが,心臓/体重比については両群で差は明らかでなかった.AA群では血漿クレアチニン濃度,血漿尿素窒素濃度は有意に上昇し,クレアチニンクリアランスは有意に低下した.腎臓の病理学所見として,AA群において糸球体面積低下と尿細管間質線維化の所見を認めたが,動脈硬化病変や糸球体硬化所見は明らかでなかった.リアルタイム定量RT-PCR解析では,AA群で腎臓におけるcollagen I,collagen ⅢやTGF-βのmRNA発現上昇を認めた.さらにAA群で腎臓における細胞老化指標p16,p53,p21,glutaminaseのmRNA発現上昇とsenescence-associatedβ-galactosidase染色陽性が明らかであった.透過型電子顕微鏡観察では,AA群の近位尿細管細胞においてミトコンドリア異常と,それに付随するオートファジー亢進所見を認めた.また,AA群で腎臓における4-hydroxy-2-nonenalレベルが上昇した.ウエスタンブロットを用いた抗老化遺伝子発現解析では,AA群で腎臓におけるKlotho発現は低下したが,nicotin amidephos phoribosyl transferase(NAMPT)やsirtuin(SIRT)1発現は有意な変動を示さなかった.

4.考察
今回の我々のAANマウスモデルにおいて,腎機能の低下に加え,腎萎縮,糸球体萎縮,尿細管間質線維化などの加齢腎の老化形質を一部惹起した.さらに,腎臓での細胞老化の惹起と,それに付随するミトコンドリア異常や酸化ストレスレベル上昇も示した.この検討から,AANの尿細管間質線維化や尿細管再生能低下などの特徴的な性質は,細胞老化などの老化関連機序が基盤となることが示唆された.また,腎臓におけるKlotho発現低下から,このAANマウスモデルで表出した老化表現型はKlothoと関連する可能性を示唆するが,今回の結果からはSIRT1を介した経路との関連性は示されなかった.本研究の腎病変とこれら老化機序との因果関係については依然として十分に明らかにされていないため,加齢腎モデルとして十分な適性を検証するためには,さらなる介入実験などが必要と考えられる.それにも関わらず,このAANマウスモデルでは簡便な操作で加齢腎形質と細胞老化などの腎老化病態を引き起こした.今回の研究結果はこのAANマウスモデルが加齢腎モデルとして検討される端緒となることを示し,この研究に立脚した腎老化病態に対する新規治療の創出・発展が期待される.

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参考文献

Childs, B.G., Durik, M., Baker, D.J. & van Deursen, J.M. (2015), Cellular senescence in aging and age-related disease: from mechanisms to therapy. Nat Med, 21(12), 1424-35.

Jadot, I., Declèves, A.E., Nortier, J. & Caron, N. (2017), An Integrated View of Aristolochic Acid Nephropathy: Update of the Literature. Int J Mol Sci, 18(2), 297.

López-Otín, C., Blasco, M.A., Partridge, L., Serrano, M. & Kroemer, G. (2013), The hallmarks of aging. Cell, 153(6), 1194-217.

Luciano, R.L. & Perazella, M.A. (2015), Aristolochic acid nephropathy: epidemiology, clinical presentation, and treatment. Drug Saf, 38(1), 55-64.

日本学術会議.動物実験の適正な実施に向けたガイドライン.available at: https://www.scj.go.jp/ja/info/ kohyo/pdf/kohyo-20-k16-2.pdf

O'Sullivan, E.D., Hughes, J. & Ferenbach, D.A. (2017), Renal Aging: Causes and Consequences. J Am Soc Nephrol, 28(2), 407-420.

Schmitt, R. & Melk, A. (2017), Molecular mechanisms of renal aging. Kidney Int, 92(3), 569-579.

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