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書き出し

慢性特発性蕁麻疹におけるFcεRIを介した好塩基球の低反応性は疾患活動性を反映する

Oda, Yoshiko 神戸大学

2020.03.25

概要

背景
慢性特発性蕁⿇疹(Chronic spontaneous urticaria; CSU)は、直接的原因/誘引なく、または肥満細胞を活性化する⾃⼰抗体などの存在により、⾃発的に膨疹、⾎管性浮腫が出現し、発症してからの期間が6週間以上のものと定義される。活性化した⽪膚肥満細胞からのヒスタミンは、CSU の病態において中⼼的な役割を果たすが、⼀部の患者に認める抗 H1 受容体拮抗薬の不⼗分な効果は、ヒスタミン以外の要因が CSU の病態⽣理に関与していることを⽰唆している。従って、近年では好塩基球を含む肥満細胞以外の炎症性細胞の CSU の病態における関与が注⽬されている。事実、病理組織学的に CSU の⽪膚病変において、⾎管周囲性に好塩基球を含む炎症細胞浸潤が観察されている。また、好塩基球活性化マーカーである CD203c は CSU 患者の定常状態での末梢⾎好塩基球上で⾼発現していること、抗 IgE 抗体に対する好塩基球からのヒスタミン遊離量が健常者(healthy controls; HCs)と⽐較し少ないことが報告されている。

このように、好塩基球は CSU の病態において重要な役割を果たすことが⽰唆されるが、IgE の⾼親和性受容体である FcεRI を介した刺激に対する好塩基球の応答性や、好塩基球上の FcεRI や IgE 発現と CSU 患者の臨床的特徴に焦点を当てた研究報告は少ない。従って、本研究では CSU 患者、対照群として軽症のアトピー性⽪膚炎(atopic dermatitis; AD)患者、HCs において、FcεRI を介した刺激に対する好塩基球応答を好塩基球活性化マーカーである CD203c を⽤いて解析した。CSU 患者においては好塩基球の応答性と疾患活動性との関連についても調査した。さらに、好塩基球上の FcεRI(CRA1、CRA2)発現と IgE発現を解析し、これらについても疾患活動性との関連性を調べた。

⽅法
好塩基球活性化試験
CSU 患者(38 ⼈)、AD 患者(8 ⼈)、および HCs(11 ⼈)から採⾎を⾏った。無刺激時 (PBS)および抗体刺激時の好塩基球上の CD203c 発現を観察した。刺激抗体として、2種類の抗 IgE 抗体(E124-2-8D、MB10-5C4)、2種類の抗 FcεRI 抗体(CRA1、CRA2)を⽤いた。CRA1 抗体は、IgE の存在下でも FcεRI に結合するが、CRA2 抗体は、IgE 結合部位と重複する領域で FcεRI サブユニットと結合するため、CRA1 は好塩基球上の全ての Fcε RI に、CRA2 は IgE ⾮存在下の FcεRI と結合する。

50 µL の EDTA ⾎液を、活性化バッファー中の CRTH2-FITC、CD203c-PE、および CD3- PC7 からなる染⾊試薬 10 µL とインキュベートし、それぞれの 4 種類の刺激抗体または PBS と 37℃15 分間混合し刺激を加えた。次いで、CRA1 または CRA2 に対するビオチン化抗体に対して、APC ストレプトアビジンを 4℃30 分間で結合させた。その後、溶⾎と⽩⾎球の固定を⾏い、フローサイトメトリーで評価した。

抗体刺激に対する結果は CD203c が⾼発現した好塩基球の割合 (CD203chigh basophil (%)) で評価した。PBS と incubate した時の CD203chigh basophil が 5%以下となるようにカットオフを設定した。

IgE と FcεRI 発現の測定
好塩基球を VioBlue 標識抗 IgE 抗体(MB10-5C4)およびビオチン化抗 FcεRI 抗体(CRA1または CRA2)とさらに APC ストレプトアビジンと反応させ、フローサイトメトリーで解析した。解析⼿順は抗 IgE 抗体、抗 FcεRI 抗体を⽤いた好塩基球活性化試験と同⼀である。 IgE および FcεRI レベルは平均蛍光強度(MFI)として評価した。

結果
CSU 患者の好塩基球における FcεRI 刺激後の CD203c 発現の測定
抗体刺激のない定常状態において、CSU 群の末梢⾎好塩基球上の CD203c 発現は HCs 群と同等であった(Fig.E2)。次に末梢⾎好塩基球を抗 IgE 抗体(E124-2-8D、MB10-5C4)で刺激した場合、ほぼすべての HCs において、CD203c が⾼発現した好塩基球の割合 (CD203chighbasophil(%))が上昇した。⼀⽅、CSU 群では CD203chighbasoohil の割合は、HCs群や AD 群と⽐較して有意に低かった(Fig.1A、B)。抗 FcεRI(CRA1)で刺激した場合、 CSU 群の好塩基球は、HCs 群と⽐較して、CD203chighbasophil の割合が低い傾向にあり、AD 群と⽐較して有意に低かった(Fig.1C)。対照的に、抗 FcεRI(CRA2)刺激では、いずれの群においても CD203c 発現の上昇はほとんど認めなかった(Fig.1D)。

次に、CSU 群における抗体刺激に対する好塩基球の CD203c 反応性と疾患活動性との関連について解析した。CSU はurticaria activity score 7(UAS7)に基づき軽症、中等症、重症の3群に分類した(Table 2)。抗 IgE 抗体で刺激した場合、CD203chighbasophi の割合は HCs と⽐較し重症群で有意に低く、軽症群や中等症群では有意差は認めなかった(Fig.2A、 B)。⼀⽅で、抗 FcεRI(CRA1)刺激した場合、HCs 群と⽐較して、重症群で低い傾向にあったが、統計学的な差は得られなかった(Fig.2C)。

CSU 患者における好塩基球上の IgE と FcεRI 値の測定
定常状態での好塩基球上の FcεRI 発現は HCs より CSU 患者で⾼いことが、既に報告されている。CD203c の⾼発現を含む好塩基球の活性化は、好塩基球上の IgE と FcεRI の架橋によって引き起こされるため、我々は CSU 群と HCs 群での好塩基球上の FcεRI と IgE値を解析した。CSU 群における好塩基球上の FcεRI (CRA1)発現は、既報告と同様に、HCsと⽐較して有意に⾼かった(Fig.3B)。⼀⽅で、好塩基球に結合した IgE や FcεRI(CRA2)発現は2群間で差は認めなかった(Fig.3A、C)。

さらに、CSU 群における好塩基球上の FcεRI や IgE 値と CSU の重症度との関連性を解析した。CRA1 発現は、HCs と⽐較し中等症群で有意に⾼く、軽症や重症群では差はなかった(Fig.4B)。さらに好塩基球上に結合した IgE や CRA2 発現(Fig.4A、C)や⾎清総 IgE値(Table 2)も重症度との間に統計学的な差はなかった。

好塩基球の CD203c 反応性に基づいた CSU 患者の分類
我々は、⼀部の CSU 患者に特徴的である、抗体刺激に対する好塩基球の CD203c 低反応性に着⽬し、サブグループ解析を⾏った。抗 IgE 抗体刺激に対する CD203chigh basophil の割合が 10%未満を nonresponder 群、10%以上を responder 群と定義した。興味深いことに、罹病期間は responder 群よりも nonresponder 群の⽅が有意に短かった(Fig. 5A)。さらに、抗 IgE 抗体刺激後の CD203chighbasohil の割合と罹病期間は正の相関を⽰した(Fig. 5D)。また、nonresponder 群は responder 群と⽐較して UAS7 が有意に⾼く、urticaria control test(UCT)が有意に低かった(Fig. 5B、C)。つまり、nonresponder 群の⽅が、疾患活動性が⾼く、蕁⿇疹コントロールが不良であることが判明した。さらに、抗 IgE 抗体に対する nonresponder 群は CRA1 抗体に対する CD203c の反応性も有意に低く、好塩基球上の Fc εR1 発現も有意に低かった(Fig.6A、B)。

考察
本研究では、好塩基球上の FcεRI に対する複数の刺激抗体(抗 IgE (E124-2-8D、MB- 105C4)、抗 FcεRI(CRA1、CRA2))を利⽤した解析を⾏い、CSU 患者で好塩基球上の CD203c 発現上昇が HCs や AD 患者と⽐較して有意に減弱することが観察された。またこの好塩基球の低反応性は CSU の重症群で顕著であった。

既報告と⼀致し、CSU 患者の好塩基球上の FcεRI(CRA1)発現は HCs と⽐較して⾼かった。IgE の存在や IgE - FcεRI 間の相互作⽤は好塩基球上の FcεRI 発現を上昇させることが知られている。我々の研究においても、⾎清総 IgE 値は FcεRI(CRA1)発現と相関しており、⾎清中の単量体 IgE が好塩基球上の FcεRI の発現を誘導している可能性がある(Fig. E5)。⼀⽅、好塩基球上の IgE や FcεRI 発現は FcεRI を介した刺激に対する CD203c反応性と相関は認めなかった(Fig. E7、8)。これらのデータは、単量体 IgE が CSU の好塩基球において CD203c 発現の上昇または活性化を⽣じずに FcεRI の発現を上昇させ、他の活性化因⼦を増強するために“primed”された状態を保っている可能性を⽰唆している。⼀⽅、好塩基球上の IgE や FcεRI 発現は CSU 患者における疾患の重症度とは関連性は認められなかった。

結論として、FcεRI を介した好塩基球の低反応性は、CSU 患者に特徴的な現象であり、疾患の重症度と⽐較的短い罹病期間と関連していた。このように好塩基球の調節不全を⽰す FcεRI を介した好塩基球の反応性によって CSU 患者の分類することは、蕁⿇疹の病態における好塩基球の役割の解明に役⽴つ可能性がある。

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