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味覚嫌悪学習の想起に関与する中枢神経機序の解明

菊池, 媛美 北海道大学

2023.03.23

概要

Title

Author(s)

Citation

Issue Date

DOI

Doc URL

味覚嫌悪学習の想起に関与する中枢神経機序の解明

菊池, 媛美

北海道大学. 博士(歯学) 甲第15486号

2023-03-23

10.14943/doctoral.k15486

http://hdl.handle.net/2115/89682

Type

theses (doctoral)

File Information

Emi_Kikuchi.pdf

Instructions for use

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

博 士 論 文

味覚嫌悪学習の想起に関与する中枢神経機序の解明

令和

5年

3 月申請

北海道大学
大学院歯学院口腔医学専攻



池 媛



目次
第 1 章 序論

1

第 2 章 実験 1:分界条床核の神経活動抑制

8

味覚嫌悪学習の想起時における条件刺激摂取行動への影響
水および味溶液摂取行動への影響

第 3 章 実験 2:分界条床核の神経活動抑制

27

味覚嫌悪学習の想起時における条件刺激に対する反応への影響

第 4 章 実験 3:分界条床核の神経活動促進

44

味覚嫌悪学習の想起時における条件刺激に対する反応への影響
―分界条床核の尾側および吻側での行動表出の違い―

第 5 章 総合論議

53

第 6 章 結論

57

引用・参考文献

58

第1章 序論
1. 現代における食の問題点
食には 5 つの大きな機能があるといわれている(渋川, 2011).栄養機能,食欲を満た
すための精神的な機能,生活リズムの調整機能,コミュニケーション機能,食文化の継
承である.なかでも,栄養機能はヒトや動物にとって生命維持のために重要である.現
代の日本では経済発展により食べられることは当たり前となり,「飽食の時代」とも言わ
れている(濵口 et al., 2010).そのため,食べ過ぎによる肥満の増加,食の欧米化など
による栄養バランスの悪化などといった食に起因する健康問題が深刻化している.一
方で,日本特有の問題として,この飽食の時代にありながらも若年女性のエネルギー
摂取量が非常に低レベルであり,栄養不足が指摘されている(今井, 久保, 2019).第
二次世界大戦以降の日本では痩せていることが美しいとされる価値観が継承されて
おり,近年ではソーシャル・ネットワーキング・サービス(social networking service,
SNS)の発達が痩せ願望や食行動異常に影響していることが示唆されている(Wilksch
et al., 2020).小学 6 年生から大学生までの女子生徒を対象とした調査では,全ての
学校段階の生徒が平均して 2.0〜2.5kg 痩せることを望んでおり,メディアにより得られ
る情報が影響していると報告されている.また,同調査よって,高校生では自らの体型
に対する他者からの評価に関心が強く,摂食障害傾向に関連していることが明らかと
なっている.

2. 摂食障害
摂食障害は摂食行動に異常を呈する疾患の一つであり,神経性食欲不振症
(anorexia nervosa, AN)と神経性過食症(bulimia nervosa, BN)に代表される.AN は
ダイエットや食欲不振を契機に発症する.極端な痩せ願望や肥満への恐怖から極度
な食事制限を自らに課すことで体重が減少する.痩せているにも関わらず,太ってい
ると感じるなど自分の体型に対する認知が歪むことが特徴である.AN 患者の中には
1

空腹に耐えかねてむちゃ喰いをはじめ,代償行動として自己誘発性嘔吐や下剤の乱
用などを繰り返す BN へ移行する者もいる.AN の治療方法は数多く存在するが,治
療を受けた患者の 71%は回復せず,15%は自殺や疾患の進行で死亡したという報告
がある(Hotta et al., 2015).また,2010 年 4 月から 2016 年 3 月の間に日本国内の医
療機関で神経性食欲不振症と診断された患者のうち,多くが 50 代以下の女性であっ
たことが報告されている(Edakubo and Fushimi, 2020).摂食障害は近年になって急増
し,日本の若年女性においても深刻な問題である.

3. 神経性食欲不振症と脳内報酬系
神経性食欲不振症に罹患した者は痩せたことに対する社会的賞賛が報酬となり,食
事制限がさらに助長される.このように報酬を期待して対象物を得ようとする意欲の高
まりや行動の発現は脳内報酬系という神経回路の働きによるものであり,神経性食欲
不振症への関与が示唆されている(図 1)(O’Hara et al., 2015).Olds & Milner(1954
年)は,ラットの脳内に刺激電極を埋め込み,レバーを押すことで通電するようにする
と,電気刺激を得るために頻繁にレバーを押すようになるという現象を発見した(Olds
and Milner, 1954).これは脳内自己刺激行動と呼ばれ,視床下部,側坐核(nucleus
accumbens, NAc)などの大脳辺縁系,中脳の黒質や腹側被蓋野などの刺激によって
快情動が惹起されるために生じると考えられている.脳内報酬系は腹側被蓋野
(ventral tegmental area, VTA)から NAc,腹側淡蒼球(ventral pallidum, VP)を経て視
床下部外側野へ投射する神経回路により構成される.また,脳内報酬系は大脳皮質
前頭野や扁桃体など多くの脳部位との入出力がある(Saper et al., 2002).

2

図 1 神経性食欲不振症の形成機序
食事制限による体重低下・痩身に対して社会的称賛が得られる.その称賛に対して快情動を
感じ,それが報酬となって脳内でドーパミンが増加する.それによって食事制限という行動が
強化される.これを繰り返すことで拒食や過食後の嘔吐といった異常な摂食行動を示すよう
になり,神経性食欲不振症が進行する.(O’Hara et al., 2015 Fig.1 を改変)

4. 味覚嫌悪学習
味覚嫌悪学習(conditioned taste aversion, CTA)は,新奇な味の飲食物を摂取した後
に腹痛や吐き気などの不快感を経験すると,以後その味を呈する飲食物を忌避し,摂
取量が減少する現象である(図 2).嫌悪と恐怖によって摂取が抑制されるという点で
AN と共通している(図 3).CTA には神経性食欲不振症と同じく脳内報酬系が深く関
与する(Mark et al., 1991, 1995; Fenu et al., 2001; Inui et al., 2007, 2009)(図 4).CTA
は条件刺激(conditioned stimulus. CS)である食べ物の味と無条件刺激
(unconditioned stimulus, US)ある不快感の結びつきによって成立する連合学習の一
つと考えられている.CTA の記憶を想起することで,ヒトや動物は毒物に汚染された飲
食物を避けることが可能になるため,この学習能力は生存に不可欠である.
CTA の想起に関わる神経機構として扁桃体基底外側核(basolateral amygdala,
BLA)の関与が明らかにされている.BLA の神経活動を抑制すると,CTA によって嫌
悪性となった味溶液(CS)の摂取量が増加する(Inui et al., 2019).BLA から NAc,分
界条床核(bed nucleus of the stria terminalis, BNST),扁桃体中心核(central
3

amygdala, CeA)へ投射する遠心性神経の活動が,CS の呈示によって増強される
(Inui et al., 2013).これらの 3 つの脳部位のうち,NAc(Mark et al., 1991, 1995; Fenu
et al., 2001; Inui et al., 2011)と CeA(Buresová et al., 1979; Gallo et al., 1992;
Yasoshima et al., 1995; Tucci et al., 1998; Navarro et al., 2000)が CTA の想起に関わ
ることが先行研究によって示されているが,BNST の関与については不明である.

図 2 味覚嫌悪学習(conditioned taste aversion, CTA)の
獲得(a)および想起(b)の模式図
条件づけの際,条件刺激(CS)として動物に味溶液を呈示する.その
後,無条件刺激(US) として,倦怠感を誘発する塩化リチウム(LiCl)
を腹腔内投与する.この CS-US のペアリングにより CTA 獲得を誘発
する.条件づけの後,CS を呈示すると,CTA の記憶が呼び起こされ
ることにより嫌悪反応や接近恐怖が生じ,CS の摂取が抑制される.こ
の過程を想起という.

4

図 3 神経性食欲不振症と味覚嫌悪学習の比較

本来は美味や幸福感などの快要因が摂食量を増加させる.しかし,AN あるいは CTA の形成後はさま
ざまな不快要因によって摂食量が低下する.AN と CTA で不快要因が異なるが,味に対する嫌悪(不
味)と動機づけの抑制という点では共通している.

図 4 味覚嫌悪学習の想起過程の中枢神経回路

緑色に着色した脳領域と経路が CTA の想起に関与していることが先行研究により明らかと
なっている(1-7).青色で着色した領域は,味覚の情報伝達経路で,CTA の想起に関与する
ことが知られている(8-10).1-2,Inui et al.,(2007,2009):3-4,Inui & Shimura(2014,
2017);5,Inui et al., (2011);6,Inui et al., (2013);7,Inui et al., (2019); 8,Chang &
Scott(1984);9,Yamamoto et al., (1993);10,Yamamoto & Fujimoto (1991)

5

5. 分界条床核(図 5)
分界条床核(BNST)のニューロンは,結合腕傍核(parabrachial nucleus, PBN)のニュ
ーロンから投射を受けている (Norgren, 1976; Alden et al., 1994).PBN は,味覚情報
を孤束核(nucleus tractus solitarius, NTS)から受け取っている(Travers and Hu, 2000;
Cho et al., 2002; Karimnamazi et al., 2002; Cho and Li, 2008).PBN 内側部の両側性
破壊は,ショ糖溶液の偽飲(経口摂取させるが胃カニューレで排出)によって誘発され
る BNST ニューロンの c-Fos 発現を減少させることから,PBN ニューロンは BNST に
味覚情報を送っていると考えられる(Mungarndee et al., 2008).一方,BNST のニュー
ロンは NTS と PBN に投射し(Whitehead et al., 2000; Dong et al., 2001; Dong and
Swanson, 2003, 2004a; Kang and Lundy, 2009),ソマトスタチンとコルチコトロピン放出
因子を発現している(Panguluri et al., 2009; Magableh and Lundy, 2014).電気生理学
的実験によって,BNST ニューロンは PBN ニューロンの味覚反応を修飾することが示
されている(Smith et al., 2005; Li and Cho, 2006).BNST ニューロンの GABA 作動性
ニューロンは,軸索を青斑核吻側部に送り,ナトリウム欠乏下の動物では NaCl に対す
る反応を変化させる(Lee et al., 2019).これらの知見は,BNST ニューロンが味覚情報
を媒介することを示唆している.
BNST ニューロンは内臓感覚にも関与している可能性がある(St Andre et al.,
2007).内臓感覚を受け取る尾側 NTS の神経細胞は,BNST に密に投射している
(Ter Horst et al., 1989).内臓不快感を誘発する塩化リチウムを腹腔内投与すると
BNST ニューロンで c-Fos 発現が誘導され,不安惹起作用のあるヨヒンビンを投与する
と,NTS や PBN から BNST に投射するニューロンで c-Fos が発現する(Myers et al.,
2005).また,BNST は PBN のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin generelated peptide, CGRP)陽性ニューロンの投射を受けている(Shimada et al., 1985).ス
クロース溶液摂取後にこの CGRP 陽性 PBN ニューロンを刺激すると,スクロースに対

6

する CTA が成立する(Chen et al., 2018).このように,BNST は CTA の重要な連合要
素である味覚情報と内臓感覚情報の両方を受け取っている.

6. 本研究の目的
先行研究から,BNST が CTA 想起の神経基盤の一部であるという仮説がたてられ
た.そこで本研究では,BNST の神経活動操作が CS に対する行動へ及ぼす影響を
調べ,BNST の役割を明らかにすることを目的とした.

図 5 脳図譜における分界条床核の位置
(a)冠状断および(b)矢状断

7

第2章 実験 1
1.

背景

いくつかの先行研究では,CTA 獲得への BNST の関与について否定的な証拠が示
されている(Yamamoto and Fujimoto, 1991; Roldan and Bures, 1994; Brownson et al.,
2002; Roman et al., 2006).また,BNST が CTA の想起に関与していることを示した報
告はない.そこで本実験では,BNST の神経活動抑制が CTA 想起時の CS 摂取に
およぼす影響について調べ,BNST が CTA に関与する可能性を検証することを目的
とした.
CTA を獲得した動物は CS に対して嫌悪反応を示すようになるため,CTA は嗜好
性の低下を引き起こすと考えられている(Berridge et al., 1981).また,動物(特に,嘔
吐できない種)に危険を知らせるため,CTA によって CS に対する恐怖条件づけが成
立する(Parker, 2003;Inui et al., 2019).BNST は恐怖や不安に深く関与している
(Davis et al., 2010).したがって,BNST の神経活動を制御することで,CS に対する嫌
悪感や恐怖感に影響を与えることが期待される.新奇環境において,未知の刺激に
晒されると,不安や恐怖の反応が誘導される(Misslin and Cigrang, 1986).以上のこと
から,動物が慣れ親しんだ環境(ホームケージ環境)とは異なる環境で条件づけ手順
(CS と US の対呈示)を経験した場合,BNST ニューロンが CTA に関与する可能性が
あると考えた.そこで本実験では,マウスを被験体としてホームケージとは異なるテスト
チャンバーで呈示した味溶液または水の摂取量を測定した.

2. 材料と方法
2.1. 被験体
飼養開始時 8-9 週齢の雄性 C57BL/6 マウス 20 匹(日本クレア株式会社,大阪)を用
いた.標準的な環境条件(23±2℃,12 時間明暗サイクル,7 時点灯)のもと,動物室内
の透明ケージに個別収容した.水と標準飼料(日本クレア株式会社,大阪)を,指定さ
8

れた制限スケジュールを除いて,自由に摂取させた.すべての実験について,北海道
大学動物実験委員会(#17-0045)および北海道大学遺伝子組換え実験安全委員会
(#2019-008)の承認を受け,実験動物飼養ガイド(National Institutes of Health Guide)
の下で実施した.

2.2. 手術
動物にメデトミジン(Meiji Seika ファルマ株式会社,東京;0.75 mg/kg),ミダゾラム(サ
ンド株式会社,東京;4 mg/kg)および酒石酸ブトルファノール(Meiji Seika ファルマ株
式会社,東京;5 mg/kg)の混合物を腹腔内投与して麻酔を施した.マウスの頭部を脳
定位固定装置(SR-5M1-HT,ナリシゲ科学器械研究所,東京)に固定した.両側
BNST 上部の頭蓋骨に開けた穴に,アデノ随伴ウイルスを充填したガラスピペット(先
端内径 20-40 μm)をゆっくりと刺入した(図 6).BNST の座標は,bregma から尾側に
0.25 mm,左右外側に 0.8 mm,腹側に 4.1 mm であった.注入したアデノ随伴ウイル
スは pAAV8-hSyn-hM4D(Gi)-mCherry(50475-AAV8,Addgene,Watertown,MA,
USA)であった.ガラスピペットを,ポリエチレンチューブ(BD INTRAMEDIC™
Polyethylene Tubing; PE #10; 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社,東京)および
バイトンチューブ(JB-10, エイコム株式会社,京都) を介してガスタイトシリンジ(10-µl;
1701N, ハミルトン・カンパニー・ジャパン株式会社,東京) へ接続した.シリンジポン

図 6 ウイルスベクター注入時の写真と冠状断の模式図
ウイルスベクターを分界条床核へ注入.
AP = +0.25mm,ML = ±0.8mm,DV = -4.1mm from the bregma

9

プ(Legato® 130, KD Scientific Inc., Holliston, MA, USA)により,片側につき 500 nl
のウイルスを 100 nl/min の速度で注入した.注入終了後,ガラスピペットをその場に
15 分間留置してウイルスを拡散させた後,ゆっくりと引き抜いた.頭蓋骨の穴にゼラチ
ンスポンジ(スポンゲル,LTL ファーマ株式会社,東京)の小片を充填し,光硬化型流
動性コンポジット(クリアフィル・マジェスティ ES フロー,クラレノリタケデンタル株式会
社,東京)で被覆した.切開した皮膚をナイロン縫合糸(4-0;秋山メディカル株式会
社,東京)で閉じた.アミノグリコシド系抗生物質(ゲンタマイシン,日本全薬工業株式
会社,福島;8mg/kg,皮下),鎮痛剤カルプロフェン(リマダイル,ゾエティス・ジャパン
株式会社,東京;5 mg/kg,皮下),塩酸アチパメゾール(Meiji Seika ファルマ株式会
社,東京; 0.75 mg/kg, 腹腔内),および滅菌生理食塩水(0.9%,体重の 1%量,腹腔
内) を投与した.

2.3.1. CTA 実験
手術から少なくとも 2 週間の回復期間をおいてから行動実験を開始した.マウスを 15
分間テストチャンバーに入れて馴化させた(Day 1).ホームケージと同じ透明プラスチ
ックケージとステンレスワイヤー製の蓋で構成されたものをテストチャンバーとして使用
した(図 7).一個体毎にこのテストチャンバーを用意した. ホームケージには敷材(日

図 7 実験環境
(a)ホームケージ.プラスチックケージに敷材とエンリッチメントを設置した.(b)テストチャ
ンバー.ホームケージと同じ規格のケージと蓋を使用し,ケージの底に金網を敷いた.

10

本エスエルシー株式会社,静岡)とエンリッチメント(Enviro-dri®と Shepherd Shack®,
EP トレーディング株式会社,東京)を設置したが,テストチャンバーにはマウスケージ
用フロアーメッシュ(トキワ科学器械株式会社,東京)を設置した.マウスをこのテストチ
ャンバーに入れ,飼養時と同じ場所に置いた.脱イオン水(deionized water, DW)を入
れたスパウトを 15 分間呈示した.呈示終了から 3 時間 45 分後にマウスをホームケー
ジに戻し,2 時間給水ビンを呈示して補給を行った.この飲水トレーニングを 6 日間行
った(表 1).条件づけでは,DW の代わりに 0.2%サッカリン溶液を CS として呈示し
た.呈示直後に US として 0.3 M 塩化リチウム(体重の 2%量,腹腔内)を投与した.3
時間 45 分後にマウスをホームケージに戻し,水と飼料を自由に摂取させた.条件づ
けの 3 日後,飲水トレーニング時と同様にテストチャンバーでマウスに DW を呈示し,
飲水行動に異常がないことを確認した.その後,1 日おきに 3 回のテスト(Test 1-3)で
マウスに CS を呈示した.

テスト 1(Acq.)は,CTA の成立を調べることを目的として実施した.CS の摂取量が
減少したことから,全てのマウスが CTA を獲得したことが示された(図 9a).ここで半数
のマウスを実験群,もう半数を対照群に群分けした.テスト1における CS 摂取量の群
間差が可能な限り小さくなるようにした.テスト 2 において,BNST の神経活動を抑制
するために,実験群に clozapine N-oxide (CNO; Enzo Life Sciences, Inc, NY, USA; 1
mg/kg; 体重の 0.5%量)を腹腔内投与した.一方,対照群には溶媒(0.9%滅菌生理

11

食塩水;体重の 0.5%量)を腹腔内投与した.投与 30 分後から CS を 15 分間呈示し
た.テスト 2 における CS 摂取量の変化が CNO 投与によるものであることを確認する
ために,2 日後に再び CS を呈示した(テスト 3).トレーニング,条件づけ,テストにお
いてすべての水および味溶液呈示は,18 時間の給水制限後の正午に開始した.
テスト 3 から 1 週間水と飼料を自由に摂取させて十分に休息させた後,CNO 投与
が水摂取量におよぼす影響を調べた.テストを 2 回行った.半数のマウスには,1 回
目に CNO を,2 日後の 2 回目に溶媒を腹腔内投与した.残りのマウスには,1 回目に
溶媒を,2 回目に CNO を投与し,投与順のカウンターバランスをとった.投与 30 分後
に DW を呈示した.CTA 試験と同様に 18 時間給水制限した状態で実験を行った.

2.3.2. ...

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