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大学・研究所にある論文を検索できる 「Water splitting over metal oxide photocatalysts valence band-controlled with Ag(Ⅰ),Cu(Ⅰ),Pb(Ⅱ),and Bi(Ⅲ)」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Water splitting over metal oxide photocatalysts valence band-controlled with Ag(Ⅰ),Cu(Ⅰ),Pb(Ⅱ),and Bi(Ⅲ)

渡邊 健太 Kenta Watanabe 東京理科大学 DOI:info:doi/10.20604/00003570

2021.06.09

概要

資源・エネルギー・環境問題は,人類が避けて通れない重要な問題である.これらの問題を解決するため,燃やしても水しか出さない水素が,クリーンエネルギーとして近年注目を集めている.しかし,現在の主な水素製造法は,化石燃料を原料に用いる水蒸気改質法である.また,本手法では二酸化炭素が副生成物として生成される.したがって,水素の製造過程での環境負荷が大きい.水素をエネルギー源として用いるためには,製造過程を含めてクリーンなエネルギーである必要がある.光触媒を用いたソーラー水分解は,理想的な水素製造方法の1つである.本手法では,太陽光・水・光触媒があれば,水素を得ることができる.そのため,資源・エネルギー・環境問題を解決するための科学技術として,社会的に注目されている.また,本手法は,光エネルギーを化学エネルギーとして蓄えられることから,人工光合成とも呼ばれ,学術的にも興味深い反応である.

光触媒を用いた水分解では,太陽光の有効利用が前提になっている.太陽光有効利用のための半導体光触媒開発には,主に2つのアプローチがある.1つは「1光子をいかに効率よく水分解に用いるか」,もう1つは「いかに太陽光スペクトルの大部分を用いるか」である.前者は「外部量子収率(AQY)」,後者は「応答波長」あるいは「バンドギャップ(BG)」という指標で判断される.これら2つの性能を両立することで,高い「太陽光-水素エネルギー変換効率(STH)」が達成される.本研究も,基本的にこれらの考えに基づいて行われている.本研究では,Ag(I),Cu(I),Pb(II),Bi(III)で価電子帯制御された金属酸化物光触媒を主な研究対象とし,上記の2つのアプローチから水分解を達成することを目的としている.

本論文では,まず,第1章で水分解光触媒の原理や基本的開発指針などを述べている.その後,第2~4章でAQY向上(=高活性化)に関する成果,第5~8章で応答波長の長波長化(=BG狭窄化)に関する成果を述べている.そして,第9章で全体を総括し,今後の展望を述べている.

光触媒の合成には,固相法,錯体重合法,溶融塩処理によるイオン交換法,フラックス法などを用いた.助触媒担持には,含浸法および光電着法を用いた.キャラクタリゼーションには,XRD,DRS,SEM,TEM,XRF,XPS,XAFS,ESR,PLを用いた.光触媒反応については,閉鎖循環系反応装置を用いて,水分解および犠牲試薬を含む水溶液からの半反応を行った.光源には,300Wキセノンランプ,400W高圧水銀灯,ソーラーシミュレーターを用いた.照射波長の制御には,カットオフフィルターおよびバンドパスフィルターを用いた.生成ガスの定量には,オンラインガスクロマトグラフを用いた.詳細については,各章でそれぞれ述べている.

第2章では,紫外光応答性水分解光触媒であるAgTaO3(BG3.4eV)の表面反応促進による高活性化を行った.光触媒反応では,光触媒表面に担持された助触媒が,活性点として機能することで,表面反応を促進する.そこで本研究では,種々の助触媒担持によるAgTaO3の水分解活性の向上を試みた.その結果,Rh0.5Cr1.5O3を担持したときに,もっとも高い水分解活性を示した.また,最適化されたRh0.5Cr1.5O3(0.2wt%)担持AgTaO3の水分解に対するAQYは,38%(340nm)に達した.また,本光触媒は,疑似太陽光照射下においても水分解に活性を示し,このときのSTHは0.13%となった.以上のように,価電子帯制御型光触媒であるAgTaO3を用いて,高効率な一段階励起型ソーラー水分解を達成した.

第3章では,紫外光応答性ペロブスカイト酸化物光触媒であるNa0.5Bi0.5TiO3のバルク内でのキャリア移動促進による高活性化を行った.光触媒の合成方法は,光触媒自体のバルク特性に大きな影響を与える.そこで,合成方法の検討によるNa0.5Bi0.5TiO3の水分解活性の向上を試みた.合成方法を従来の固相法からフラックス法に変えることで,結晶性の高い粒子が得られた.フラックス法で得られたサンプルは,バルク内でのキャリア移動が促進され,固相法で得られたものより非常に高い活性を示した.フラックス法の条件および助触媒を最適化したRhCr2Ox(0.1mol%)およびCoOOH(0.02mol%)共担持Na0.5Bi0.5TiO3(Flux1273K)では,AQYが5.1%(350nm),STHが0.05%に達した.

第4章では,デラフォサイト構造を有する可視光応答性価電子帯制御型光触媒であるALi1/3Ti2/3O2(A=Ag,Cu)の半導体特性制御による高活性化を行った.光触媒は半導体でできているため,半導体特性と光触媒特性の相関関係に興味が持たれる.そこで,ドーピングによる半導体特性制御を試みた.4価のTiサイトに対して3価のSc,Al,Ga,あるいは5価のNb,Taをドープした.その結果,ドーピングによるp型あるいはn型特性の向上が確認された.そして,p型ドープしたときにCu体の水素生成,n型ドープしたときにAg体の酸素生成が高活性化された.

第5章では,価電子帯制御による新規可視光応答性金属酸化物光触媒の開発を行った.Ag(I)およびCu(I)は,一般的な金属酸化物の価電子帯を形成しているO2p軌道よりも浅い価電子帯を形成し,BGを狭窄化できる.本研究では,層状化合物やトンネル構造化合物を溶融塩中でAg(I)およびCu(I)イオン交換することで,新規可視光応答性金属酸化物光触媒の開発を試みた.その結果,Ti(IV)またはTa(V)が層,K(I)が層間を構成するRuddlesden-Popper型層状ペロブスカイト酸化物をホスト材料として用いたときに,Cu(I)イオン交換体が,可視光照射下における犠牲試薬を含む水溶液からの水素生成に高い活性を示すことがわかった.中でも,Cu(I)-K2SrTa2O7がもっとも高い水素生成活性を示し,600nmまで応答した.

第6章では,バンド構造におけるドーピングによる不純物準位形成と元素置換による価電子帯制御の併用効果について検討した.主なバンドエンジニアリング手法には,ドーピングによる不純物準位形成,元素置換による価電子帯制御,固溶体形成によるBG狭窄化の3つがある.これらの手法は,基本的に単独で用いられる.そこで2手法の併用を試みた.層状化合物であるLi2TiO3(BG4.0eV)をAg(I)イオン交換すると,価電子帯制御型光触媒であるAgLi1/3Ti2/3O2(BG2.8eV)を得られることが報告されている.そこで,可視光応答化に有効なRh,Sb共ドープをLi2TiO3にすることで,Li2TiO3:Rh,Sb(EG3.0-3.2eV)を得た.このLi2TiO3:Rh,SbをAg(I)イオン交換することで,不純物準位形成および価電子帯制御の両方が施されたAgLi1/3Ti2/3O2:Rh,Sb(EG2.2-2.3eV)を得た.AgLi1/3Ti2/3O2:Rh,Sbは,Li2TiO3:Rh,SbおよびAgLi1/3Ti2/3O2のいずれも応答できない480nm以上の光照射下において,硝酸銀水溶液からの酸素生成に活性を示した.

第7章では,バンド構造における価電子帯制御と固溶体形成の併用効果について調べた.第6章でドーピングと価電子帯制御の併用効果が確認された.そこで,価電子帯制御と固溶体形成の併用効果にも興味が持たれる.本研究では価電子帯制御型光触媒であるAgTaO3に,同じく価電子帯制御型光触媒であるMTiO3(M=Na0.5Bi0.5,Pb)を固溶することを試みた.その結果,AgTaO3-MTiO3固溶体では,Ag(I)とBi(III)/Pb(II)の相互作用によって,新たな価電子帯が形成されることがわかった.また,AgTaO3が応答できない380nm以上の光照射下で水分解活性を示した.中でも,もっとも高い水分解活性を示したRh0.5Cr1.5O3(0.2wt%)担持(AgTaO3)0.95(Na0.5Bi0.5TiO3)0.05は,400nmまで応答して水を分解した.また,AQYが7.6%(340nm),STHが0.045%に達した.

第8章では,第7章で得られた知見を用いて,可視光応答性AgNbO3-PbTiO3固溶体光触媒を開発した.AgNbO3(BG2.8eV)およびPbTiO3(BG2.8eV)は,可視光照射下における硝酸銀水溶液からの酸素生成に活性を示す価電子帯制御型金属酸化物光触媒である.これら2つの固溶体AgNbO3-PbTiO3を合成した結果,BGが2.7eVに狭窄化された.また,本固溶体は,440nm以上の光照射下における硝酸銀水溶液からの酸素生成にAgNbO3およびPbTiO3より高い活性を示した.もっとも高い活性を示した(AgNbO3)0.9(PbTiO3)0.1の酸素生成に対するAQYは14%(420nm)に達した.また,(AgNbO3)0.9(PbTiO3)0.1は,Ruを担持したRhドープSrTiO3(Ru/SrTiO3:Rh)水素生成光触媒と組み合わせることで,可視光照射下における種々のZスキーム型水分解にも活性を示した.もっとも高い水分解活性を示したRu/SrTiO3:Rh-Fe3+/2+-(AgNbO3)0.9(PbTiO3)0.1は,疑似太陽光照射下においてもZスキーム型水分解に活性を示し,このときのSTHは0.01%だった.

第9章では,全体を総括し,今後の展望を述べている.

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