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大学・研究所にある論文を検索できる 「RECiQ : A Rapid and Easy Method for Determining Cyanide Intoxication by Cyanide and 2-Aminothiazoline-4-carboxylic Acid Quantification in the Human Blood Using Probe Electrospray Ionization Tandem Mass Spectrometry」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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RECiQ : A Rapid and Easy Method for Determining Cyanide Intoxication by Cyanide and 2-Aminothiazoline-4-carboxylic Acid Quantification in the Human Blood Using Probe Electrospray Ionization Tandem Mass Spectrometry

久恒, 一晃 名古屋大学

2023.12.01

概要

主論文の要旨

RECiQ: A Rapid and Easy Method for Determining
Cyanide Intoxication by Cyanide and
2-Aminothiazoline-4-carboxylic Acid Quantification in
the Human Blood Using Probe Electrospray Ionization
Tandem Mass Spectrometry
探針エレクトロスプレーイオン化質量分析による
迅速かつ簡便なヒト血液中シアン化物および
2-アミノチアゾリン-4-カルボン酸の定量分析法の開発

名古屋大学大学院医学系研究科
社会生命科学講座

総合医学専攻

法医・生命倫理学分野

(指導:石井
久恒


一晃

教授)

【緒言】
シアン化物(CN)は古来より毒物として知られるが、その毒性は、CN がチトクロー
ムオキシダーゼの三価鉄と結合し、細胞呼吸を阻害することで発現する。我が国では、
今もなお他殺や自殺に CN の使用が散見されることから、CN 中毒の判定には血液中
CN の分析が不可欠となる。その際、タバコや青酸配糖体などの食品に含まれる CN や、
火災時の燃焼ガスに含まれる CN への曝露など、中毒以外の要因で血液に CN が存在
することがあり、CN による中毒レベルを正確に判定するためには、CN の血中濃度を
測定する必要がある。
しかし、CN は化学的に血液中で不安定であり、低温下で保存しても CN の分解を抑
制できないとの報告があることから(Rużycka et al., Chem. Res. Toxicol., 2017)、CN の
中毒レベルを血液中 CN 濃度から正確に判断することは分析化学的に困難である。そ
こで近年、CN 摂取の新たなバイオマーカーとして 2-アミノチアゾリン-4-カルボ
ン酸(ATCA)が注目されている(Li et al., Forensic Sci. Rev., 2019)。ATCA は CN とシス
チンとの反応により生成される代謝物であり、血液中でも化学的に安定であることが
報告されている(Giebultowicz et al., Talanta, 2016)。
これまでに、血液中の CN および ATCA の分析法としては、ガスクロマトグラフ質
量分析計や液体クロマトグラフ質量分析計などを用いた方法が報告されている。これ
らの方法では、煩雑な試料の前処理操作が必要であることから、1 検体の分析に少な
くとも 1 時間程度を必要とする。しかし、救急救命において CN 急性中毒の判定を目
的とする場合、より迅速かつ簡便な分析法があれば極めて有用である。
探針エレクトロスプレーイオン化質量分析(PESI/MS/MS)は、そのような迅速かつ簡
便な分析を可能とする技術である。PESI/MS/MS は探針を用いて試料から直接、対象
成分を分析することができ、これまでにマウスなどの臓器から直接、内因性成分を分
析した例が報告されている(Zaitsu et al., Anal. Chem., 2016&2020)。
そこで本研究では、PESI/MS/MS を用いた血液中 CN および ATCA の迅速かつ簡便
な新規分析法の開発を行った。
【方法】
分析装置
島津製作所製 PESI イオン源およびトリプル四重極型タンデム質量分析計(LCMS8040)を使用した(Fig. 1)。各対象成分の測定パラメーターを Table 1 に示す。
CN の分析
CN は分子量が 28 と小さいため、質量分析における選択性が低い。そこで本研究で
は既報(Sano et al., Talanta, 1987)を参考に、CN をタウリンおよび 2,3-ナフタレンジア
ルデヒド(NDA)と反応させ、CN 誘導体として分析する方法を採用した。Fig. 2(a)に分
析のフローを示す。ヒト全血 2 μL にタウリン溶液および NDA 溶液を加え、室温下で
10 分間反応させた。この溶液にセコバルビタール-d 5 (CN 用内部標準物質)および 50%

-1-

エタノール水溶液を適量加え、サンプルプレートに少量を分注後、PESI/MS/MS で分
析した。
ATCA の分析
Fig. 2(b)に分析のフローを示す。ヒト全血 2 μL にエタノール、2-アミノチアゾー
ル-4-カルボン酸(ATCA 用内部標準物質)、50%エタノール水溶液を適量加え、サン
プルプレートに少量を分注後、PESI/MS/MS で分析した。測定時間は CN および ATCA
の何れも 0.5 分とし、内部標準法により検量線を作成して分析法バリデーション(精度
や確度などの検証)を実施した。
実試料による検証
火災死者(n=3)の血液を用いて本法を検証した。なお、名古屋大学大学院医学系研究
科に設置の生命倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号:2017-0175)。
【結果および考察】
CN を添加した血液(1000 ng/mL)の分析結果を Fig. 3(a)に示す。血液に CN が含有
される場合には、Fig. 3(a)に示すようなピークが検出され、CN の含有を判定できる。
しかし、本法では CN を CN 誘導体として検出するため、誘導体化に必要な反応時間
を最適化しておく必要がある。そこで、CN を添加した血液について、誘導体化時間を
変えて検出強度を比較した(Fig. 4)。この結果、誘導体化反応は室温下、約 10 分で平
衡に達することが分かった。次に、ATCA を添加した血液(1000 ng/mL)の分析結果を
Fig. 3(b)に示す。CN と同様に、血液に ATCA が含有される場合には、このようなピー
クが検出され、ATCA の含有を判定できる。
次に、分析法バリデーションの結果を Table 2 に示す。CN および ATCA の検量線は
何れも良好な直線性(R 2 > 0.995)を示し、日内および日間の精度と確度は何れも 15%以
下であった。従って、本法が高い定量精度を有することが示された。
また、本法の検出下限値および定量下限値は、CN では 42 および 127 ng/mL、ATCA
では 43 および 131 ng/mL であった。CN 中毒における血液中 CN 濃度は、500-1000
ng/mL とされていることから(Anseeuw et al., Eur. J. Emerg. Med., 2013)、本法を用いれ
ば CN 中毒を迅速に判定することが可能である。
さらに、火災死者(3 名)の血液を本法で分析した結果、何れの検体からも CN およ
び ATCA が検出された(Table 3)。Rużycka ら(Rużyck et al., Chem Res Toxicol., 2017)は
火災死者の血液中 ATCA 濃度は 100-190 ng/mL と報告している。本研究の 3 名の定
量結果は、Rużycka らが示す数値よりも若干高い値を示した。我が国においては、CN
中毒時あるいは火災時の血液中 ATCA の報告例は少なく、今後、実検体を用いたデー
タの蓄積が必要と考えられる。本法は極めて簡便かつ迅速に血液中 CN および ATCA
の分析が可能な技術であることから、このような実検体データの蓄積にも極めて有用
である。

-2-

【結論】
本研究では、PESI/MS/MS を用いた迅速かつ簡便なヒト血液中 CN および ATCA の
新 規 定 量 分 析 法 を 開 発 し た 。 な お 、 開 発 し た 手 法 は 、 ”Rapid and easy method for
determining CN intoxication by CN and ATCA quantification in the human blood using
PESI/MS/MS”から、RECiQ と名付けた。本法は、2 μL の血液を用いて、血液中 CN お
よび ATCA を迅速かつ簡便に分析することが可能である。分析法バリデーションから
示されたように、本法は高い定量精度を有することが示された。さらに、本法を火災
死者の血液に適用した結果、何れの検体からも CN および ATCA を検出することが可
能であった。従って、本法は CN 中毒を判定するための新たな分析手法として、極め
て有用な手法であることが示された。今後、ATCA を CN 摂取のバイオマーカーとし
て使用するためには、我が国におけるデータの蓄積が不可欠である。本法は極めて簡
便かつ迅速な分析が可能であり、そのようなデータの蓄積にも大いに貢献できる。

-3-

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