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書き出し

飯田下伊那地域の働き盛り世代の肥満症の改善に向けて

沢柳, 由美子 古川, 善行 西澤, 良斉 信州大学

2023.08.22

概要

信州公衆衛生雑誌(抄録)投稿テンプレート
Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023

飯田下伊那地域の働き盛り世代の肥満症の改善に向けて
沢柳由美子、古川善行、西澤良斉((一財)中部公衆医学研究所)

   飯田下伊那地域の働き盛り世代の肥満症の改善に向けて
01-2
キーワード:職域健診、高度肥満、合併症予防、連携

沢柳由美子、古川善行、西澤良斉((一財)中部公衆医学研究所)

要旨:働き盛り世代いわゆる職域における定期健康診断の結果、高度肥満者が散見した。BMI35 以
キーワード:職域健診、高度肥満、合併症予防、連携
上の高度肥満者は、放置すると耐糖能障害、動脈硬化性疾患、腎障害等の合併症へと進行する。こ
要旨:働き盛り世代いわゆる職域における定期健康診断の結果、高度肥満者が散見した。BMI35 以上
のため、肥満症に対する保健指導の意義は大きい。しかし、個人的な知識不足や志向、偏見などに
の高度肥満者は、放置すると耐糖能障害、動脈硬化性疾患、腎障害等の合併症へと進行する。このた
よって改善が難しいのが現状である。そこで保健師・看護師・栄養士など保健指導に係る職種の役
め、肥満症に対する保健指導の意義は大きい。しかし、個人的な知識不足や志向、偏見などによって
割が重要と考えた。地域の関係者の連携を図り、職域における肥満症の改善に向けた有効的な対策
改善が難しいのが現状である。そこで保健師・看護師・栄養士など保健指導に係る職種の役割が重要
を図ったのでそれらの現状について報告する。
と考えた。地域の関係者の連携を図り、職域における肥満症の改善に向けた有効的な対策を図ったの
でそれらの現状について報告する。

A.背景及び目的

保健指導の関わりのあった事例の中では、若年

その企業の看護職や健康保険組合の事業により
 いわゆる職域健診の結果に基づく保健指導は、
行われている。実際はこうした保健指導はほんの
その企業の看護職や健康保険組合の事業により
一部の企業に限られており、多くの企業では保健
行われている。実際はこうした保健指導はほん
指導体制が整っていないと思われる。当所では健
の一部の企業に限られており、多くの企業では
康診断結果によって健康障害が懸念される対象
保健指導体制が整っていないと思われる。当所

のうちに重症糖尿病・腎不全・脳出血・死亡等の
来健康障害に繋がってしまわないか懸念してい
事例を散見した。こういった事例の背景には肥満
る。
があり、長年かけて進行してきた予防可能な病態
 保健指導の関わりのあった事例の中では、若
であったと感じた。今後このような事例を少しで
年のうちに重症糖尿病・腎不全・脳出血・死亡
も防ぐためには、健診担当者のみでなく地域等と
等の事例を散見した。こういった事例の背景に
の連携が必要であり、
本研究はその取り組みにつ
は肥満があり、長年かけて進行してきた予防可

については企業担当者へ報告し、
保健指導体制の
では健康診断結果によって健康障害が懸念され
ない企業では個別に保健指導の機会を提供して
る対象については企業担当者へ報告し、保健指

いて検討することを目的とした。
能な病態であったと感じた。今後このような事
B.方法
例を少しでも防ぐためには、健診担当者のみで

いる。
実際には経営者に加えて労務担当者の姿勢
導体制のない企業では個別に保健指導の機会を

定期的に研修会を行っている飯伊地区の保健
なく地域等との連携が必要であり、本研究はそ

により個人への対応ができないことも多く、
関わ
提供している。実際には経営者に加えて労務担

師の集まりにて、2019
年の飯伊地域の職域健診
の取り組みについて検討することを目的とした。

当者の姿勢により個人への対応ができないこと
りが持てたとしても年に
1 回程度と限られてい

B.方法
等の結果、及び若年者の肥満症事例を共有し、ま

理の重要性と困難さを感じる。
そこで飯田下伊那地域における肥満者の経年

等の結果、及び若年者の肥満症事例を共有し、ま
C.結果
た肥満症診療ガイドライン
2022 によって肥満症
症例①:33
歳 男性 脳出血

いわゆる職域健診の結果に基づく保健指導は、

A.背景及び目的

も多く、関わりが持てたとしても年に
1 回程度
る。
働き盛り世代に対する健康管理の重要性と困
と限られている。働き盛り世代に対する健康管
難さを感じる。

 定期的に研修会を行っている飯伊地区の保健
た肥満症診療ガイドライン
2022 によって肥満症
師の集まりにて、2019 年の飯伊地域の職域健診
の概念や治療について学び、意見交換を行った。

 そこで飯田下伊那地域における肥満者の経年
変化を明らかにした。
男女ともに増加傾向にある。
変化を明らかにした。男女ともに増加傾向にあ
より健康障害を起こしやすい BMI35 以上の高度
る。より健康障害を起こしやすい BMI35 以上の
肥満は若い年齢に多い傾向があり、近い将来健康
高度肥満は若い年齢に多い傾向があり、近い将
障害に繋がってしまわないか懸念している。
図1:年代別肥満者の推移

30%

29歳以下
30歳代

20%

40歳代
50歳代

10%
0%

60歳以上

2019年

製造業の変則勤務。友人が経営する飲食店の常

C.結果

連であった。毎年血圧上昇や肥満を指摘され健康
症例①:33 歳 男性 脳出血
相談を受けていたが、改善につながらなかった。
 製造業の変則勤務。友人が経営する飲食店の
麻痺が残り退職となる。
常連であった。毎年血圧上昇や肥満を指摘され
症例②:44 歳 男性 HbA1c20.2
健康相談を受けていたが、改善につながらなか
学童期は標準的体格だったが、18~29 歳長距
った。麻痺が残り退職となる。
離ドライバーとなり体重は 100kg になった。30
症例②:44 歳 男性 HbA1c20.2
代は営業や人材派遣会社に勤務し、
製造スタッフ
学童期は標準的体格だったが、18 ~
29 歳長距離
(年中無休変則勤務)
を経て製造管理の立場とな
ドライバーとなり体重は
100kg になった。30 代
った。その頃体重は全く測らず不明。自己血圧測
は営業や人材派遣会社に勤務し、製造スタッフ

全体

2016年

の概念や治療について学び、意見交換を行った。

2022年

(年中無休変則勤務)を経て製造管理の立場と

図 1 年代別肥満者の推移

なった。その頃体重は全く測らず不明。自己血
24

信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. 1, August 2023

Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023

圧測定では 140/90。H28 年 100 ㎏にまで増えた

 今後も肥満症診療ガイドライン等で学習を続

ことをきっかけに夕食(コンビニ外食)を減ら

け、以下の取り組みを行いたいと考えている。

した。口渇があり、スポーツドリンクを 1 日 2

① BMI35 以上で一定の健康障害のある方へは職

ℓ以上飲んでいた。間食の習慣あり。健康診断

域健診結果に基づく保健指導で必ず関わりを持

結果で HbA1c20.2 と判明。精密検査を実施し、3

ち、肥満症の理解につながる対応を行う。また

日間の教育入院となった。

肥満台帳を作成して継続的な支援を行う。

 これら健康障害を起こした症例からは、肥満

②本人の了解を得て地域の保健師・栄養士へつ

に加えて高血圧や高血糖、尿蛋白陽性所見等を

なげる等、地域と連携して個人に継続した関わ

併せ持っていること、食事のリズムや内容の偏

りを行える仕組みづくりを行う。

りがみられた。

③近隣の医療機関と肥満の問題を共有し、肥満

 肥満症者と面談すると、多くは「肥満はよくな

外来の周知と新たな設立等を促進し、医療連携

い、できるなら痩せたいが難しい」等々の認識

ができる仕組みづくりを始める。

である。肥満の背景には、変則勤務や遅い時間

D.課題及び考察

までの業務といった働き方による食事時間の変

①個人への対応が実施できるためには、企業の健

化や、共働き世帯が増え家事のあり方の変化に

康管理担当者等に肥満症の問題性を理解してもらう

よる市販の総菜利用の増加、コンビニやファミ

ことが大切であり、まずは私たち保健師・栄養士自

レスなどの外食産業の利用増加等、社会背景の

身が肥満・肥満症の理解を深め、対象に正しく伝え

変化に伴う食習慣の変化が大きいと感じた。ま

ることが重要である。

た、減量への取り組みについては、
「やっても続

②継続した支援につなげるためには、地域の保健

かないのであきらめた、食事量を減らそうと思っ

師・栄養士等と連携することが大切である。自治体

ていても食べてしまう、困ることがないので今

での生涯を通じた関わりや、学童期は養護教諭との

すぐに痩せる必要性は感じていない。」といった

情報交換等、事例を通して必要な連携を図りたい。

考えもよく耳にする。肥満の問題について正し

③肥満症の治療が確立されつつあるため、地域の

い認識がないため、自分自身の意志の弱さを責

医療情報を収集し必要な連携体制を整えたい。

めたり、問題意識を持てないのだと感じた。また、

 今後も地域と連携し、継続して取り組んでいくこ

減量には継続した生活習慣の改善が必要であり、

とが重要と考えている。

対象自身の問題だけではなく、置かれた環境に

E.利益相反 

よって改善効果が大きく影響されると感じる。

 利益相反なし。

 地域の保健師・栄養士との意見交換後、「この

F.文献

地域に見たこともない BMI や HbA1c の値の人

日本肥満学会:肥満症診療ガイドライン 2022.
1)

がいることに驚いた」「重症の若年者がそのまま

2)
中央労働災害防止協会:労働衛生のしおり(令
和 4 年度版).

放置されがちであるという現状を知り、若年か
らの介入の重要性を感じた」「子供の頃からの肥

3)
斉藤功、山内加奈子、山泉雅光他:メタボリッ

満予防が大切であり、妊娠期から関われるのは

クシンドロームと脳卒中罹患:18.6 年間のコホー

地域の強みだと感じた」「肥満症治療の現状を知

ト研究:日本公衆衛生雑誌第 69 巻・第 5 号p

りたい」「もっとガイドラインを学習して保健指

394-401.

導に活かしたい」等の意見が出た。地域の保健
師・栄養士と情報共有できたことで、地域で一
丸となって肥満症の改善に向けて取り組んでい
く下地ができたように感じる。
25

信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. ...

参考文献

地域に見たこともない BMI や HbA1c の値の人

日本肥満学会:肥満症診療ガイドライン 2022.

1)

がいることに驚いた」「重症の若年者がそのまま

2)

中央労働災害防止協会:労働衛生のしおり(令

和 4 年度版).

放置されがちであるという現状を知り、若年か

らの介入の重要性を感じた」「子供の頃からの肥

3)

斉藤功、山内加奈子、山泉雅光他:メタボリッ

満予防が大切であり、妊娠期から関われるのは

クシンドロームと脳卒中罹患:18.6 年間のコホー

地域の強みだと感じた」「肥満症治療の現状を知

ト研究:日本公衆衛生雑誌第 69 巻・第 5 号p

りたい」「もっとガイドラインを学習して保健指

394-401.

導に活かしたい」等の意見が出た。地域の保健

師・栄養士と情報共有できたことで、地域で一

丸となって肥満症の改善に向けて取り組んでい

く下地ができたように感じる。

25

信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. 1, August 2023

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