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大学・研究所にある論文を検索できる 「Taxonomic study on unarmored dinoflagellates in the family Kareniaceae from Asian coasts」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Taxonomic study on unarmored dinoflagellates in the family Kareniaceae from Asian coasts

ガリー アニバン ベニコ 東京大学 DOI:10.15083/0002006388

2023.03.24

概要





の 結













ガリー

アニバン

ベニコ

無殻渦鞭毛藻カレニア科は魚介類の斃死被害を引き起こす有害赤潮原因藻類の一群で,主要な
3 属である Karenia と Karlodinium が 2000 年,
Takayama が 2003 年に記載されて以来,
Gymnodinium
等の無殻渦鞭毛藻類とは系統的位置や上錐溝の形状に基づいて識別されている。一方で,東南ア
ジアでは Karlodinium と Takayama を原因とした赤潮被害が近年頻発するようになり,これらの
種は細胞が小型で同定が困難であることから,原因種が正確に検出されないまま被害対策が遅れ
ていた。そこで申請者は,アジア沿岸域に出現するカレニア科渦鞭毛藻を対象に,
(1)分類学的
位置と形態形質,
(2)細胞と葉緑体の系統関係,
(3)光合成色素組成,
(4)同定に有用な形質,
(5)他の浮遊生物に与える影響,
(6)アジア沿岸域における分布,の把握を目的とした分類学
的研究を行った。博士論文は全 8 章から構成され,1 章でカレニア科による有害赤潮の記録と分
類学的経緯をまとめ,2 章で材料と方法を記述した後,3 章から 8 章で研究目的に沿った以下の
成果について報告した。
カレニア科渦鞭毛藻は日本とフィリピンを中心としたアジア沿岸域より採集し,98 培
養株を確立することで形態形質と系統的位置に基づいて 5 属 20 種の出現を確認した。
3 章では,
Asterodinium1 種,Gertia1 種,Karenia5 種,Karlodinium7 種,Takayama6 種の形態形質をまとめ
た。未記載種 1 種を Karlodinium azanzae として新種記載し,Takayama 属の未記載種 2 種を確認
した。光学顕微鏡と電子顕微鏡観察の結果から,20 種の形態形質を記載した。Asterodinium gracile
の葉緑体がピレノイドを欠くこと,Karlodinium ballantinum が腹孔をもつこと,そして K. azanzae
の鞭毛装置構造の一部(ventral connective)の存在等は本研究で初めて確認された成果である。
4 章では,宿主と葉緑体の系統関係を明らかにした。LSU rDNA と ITS 領域に基づく宿
主の分子系統解析では,系統的位置が不明であった Asterodinium gracile が Karenia 系統群に含ま
れることを明らかにし,天然試料から単細胞 PCR により DNA 配列を決定した 2 種が既記載の
属に含まれないことを発見した。カレニア科内は Karenia を 6 系統群,Karlodinium を 3 系統群,
Takayama を 3 系統群に識別し,形質の評価に使用している。葉緑体コード遺伝子は 16S rDNA
を 14 種 14 株,psbA を 15 種 22 株から明らかにした。カレニア科は渦鞭毛藻の中でも特異的な
ハプト藻由来の葉緑体をもつため,系統解析により葉緑体獲得後の変化を知ることができる。解
析結果では,多くの種の葉緑体はハプト藻に近縁な単系統群を形成したが,Karlodinium の 2 種
はハプト藻の葉緑体に近縁となり,カレニア科内で葉緑体が再置換された可能性が初めて示され

た。
5 章では,高速液体クロマトグラフィーを用いて Asterodinium の 1 種 1 株,Karenia の
4 種 6 株,Karlodinium の 7 種 14 株,Takayama の 6 種 9 株の光合成色素組成を明らかにした。本
科に特異的なフコキサンチンとその類縁体に着目することで,Karenia,Karlodinium,Takayama
の 3 属に特徴的な色素組成を明らかにし,これらが系統的に安定した組成であることを評価して
いる。一方で,Takayama 属の根元で分岐する T. helix は Karlodinium と同様の組成を保持してい
ること,そして Karenia 系統群に含まれる Asterodinium gracile の特異的な組成は生態的に適応す
る上で獲得したものと評価している。
6 章では,観察した形態形質を明らかにしたカレニア科内の系統関係と比較することで,
形態形質の進化的安定性と分類学的な有用性を評価した。核の形状と位置,アンフィエズマルベ
シクル上の顆粒状構造,上錐溝,腹孔,縦溝中の隆起構造とペダンクル,同化産物,葉緑体包膜,
ピレノイド等の形質に着目し,属,種,種内系統群レベルでの安定性について評価している。こ
れらのうち,縦溝と上錐溝の間に位置する一列のアンフィエズマルベシクルは Karlodinium 系統
群 1 のみに見られること,Karenia にはデンプン様貯蔵物質とペダンクルが観察されないこと,
などが新たに得られた知見となる。一方で,Takayama の種の識別に用いられてきた核の形状と,
縦溝の上錐中への侵入は,株内でも変化しうる形態形質であることも指摘している。
7 章では,培養株に植物プランクトンや動物プランクトンを添加することでカレニア科
渦鞭毛藻の細胞変化を観察するとともに Artemia の致死率を見積もっている。本科の一部の種か
ら報告されていた通常の食作用(phagocytosis)とペダンクルを用いた吸収(myzocytosis)を行
う種の確認し,動物プランクトンについては産生する毒物質の影響を評価している。Artemia の
致死は Karlodinium と Takayama から確認し,Karlodinium azanzae は大型の動物プランクトンを
直接捕食することも併せて確認した。
8 章では,本研究から得られた成果のうち有害種同定に有用な形質について議論し,ア
ジア沿岸域におけるカレニア科渦鞭毛藻の地理的分布をまとめるとともに,研究成果の概要を示
した。種同定が特に困難であった小型の Karlodinium と Takayama を識別できる形質と分類に関
して議論した。分布については,本研究で確認した種のうち 6 種がフィリピンで,11 種が日本
における新産種となる。
本研究で明らかにした形態,系統,色素組成等の知見はカレニア科渦鞭毛藻の系統分
類研究に学術的に寄与するもので,アジア沿岸域に出現する小型種の識別形質と分布の現状は,
有害赤潮被害対策への貢献が期待される成果である。これらの研究成果に基づき,審査委員一同
は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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