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大学・研究所にある論文を検索できる 「光干渉断層診断法(Optical frequency domain imaging: OFDI)を用いた高速回転アテレクトミー術の切削効果予測に関する検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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光干渉断層診断法(Optical frequency domain imaging: OFDI)を用いた高速回転アテレクトミー術の切削効果予測に関する検討

Tanimura, Kosuke 神戸大学

2021.03.25

概要

【背景と目的】
近年、高齢化に伴い、重度冠動脈石灰化病変に対する経皮的冠動脈インタ ーベンション (Percutaneous coronary intervention: PCI) は増加傾向にある。重度石灰化病変に対する PCI は、バルーン/ステントの不通過やステントの 拡張不良が起こりやすいため、不成功率の増加や不良な術後転帰と関連する ことが知られている。その一方で、冠動脈石灰化に対して、高圧バルーン拡 張やデバルキングデバイスを使用し、ステントの至適拡張を得ることで、標 的病変の再血行再建率や主要心血管有害事象の発生率を減少させられること も報告されている。

高速回転冠動脈アテレクトミー (Rotational atherectomy: RA) は、Burrの高速回転により石灰化プラークを効果的に切削し、バルーン/ステントの通過とステントの至適拡張を容易にすることができるデバイスで、重度石灰化病変に対する有効な治療選択肢の一つである。一方で、RA には冠動脈穿孔、Slow-flow/No-reflow 現象、冠動脈解離など、その実施に伴う合併症もいくつか存在している。このような合併症を回避し、適切な Burr サイズを決定するために、RA 実施前の血管内画像検査が推奨されている。

光干渉断層診断法 (Optical frequency domain imaging: OFDI) は、現在 臨床使用可能な、最も高解像度の血管内画像診断法で、石灰化の長さや厚み を正確に測定し、石灰化の重症度を評価することが可能である。実臨床では、 RA による切削位置や切削面積は、RA 前の OFDI 画像検査において、OFDI カテーテルの走行経路からある程度予測できると考えられてきたが、その正 確性や関連因子について詳細に検討した報告はない。そこで我々は、石灰化 プラークに対する RA の切削効果(位置及び面積)を RA 前の OFDI を用い て予測できるかどうかを評価し、この予測に関連する因子を明らかにするこ ととした。

【方法】
研究デザインと患者群
本研究は、2010 年 4 月から 2019 年 3 月までに神戸大学医学部附属病院で OFDI 使用下に、石灰化病変に対して RA を行った患者を対象とした後ろ向き観察研究である。RA の前後に OFDI 画像が得られなかった患者や画像解析不能な患者は除外した。患者データはカルテ記録から収集した。

RA の実施手順
RA は、専用のワイヤー (RotaWire™フロッピーガイドワイヤーまたは RotaWire™エクストラサポートガイドワイヤー) と専用の Debulking Burrである Rotalink Plus 回転アテレクトミーシステムを使用し、標準的手法に基づいて実施した。

OFDI 画像解析と RA 効果の分類
画像収集は全例 OFDI システム (LUNAWAVE と Fast View) を使用し、解析は専用のワークステーション (LUNAWAVE Offline Viewer) を用いて行った。解析対象を、石灰化に対する RA の切削効果が確認された断面の始まりから終わりまでとし、1mm 間隔の断面で解析を行った。

まず、RA 前後の OFDI 画像のプラーク内構造物と側枝の位置に基づいて石灰化の分布を完全に一致させた。RA 前の OFDI 画像において、実際に使用された Burr と同サイズの円を OFDI カテーテル中心に描き、この円が血管壁と重なる領域を予測切削領域 (Predicted ablation area: P-area) と定義した。次に、RA前の画像を基に、RA後の画像で実際に切削された領域を測定し、実切削領域 (Actual ablation area: A-area) と定義し、P-area と Aarea が重なった領域を重複領域 (Overlapped ablation area: O-area) と定義した。また、血管壁における切削位置の評価のため、血管の中心を基に、P-、A-、O-Area の角度 (P-、A-、O-angle) を測定した。その他に、RA 前の画像において、各血管内腔面積、カルシウムの角度・厚さ、OFDI カテーテルと血管内膜の最短距離、ワイヤーと血管内膜の最短距離、OFDI カテーテルとワイヤーの最短距離を測定した。更に RA 後の OFDI 画像において、血管内膜の破綻・外膜に及ぶ血管損傷の有無を評価した。

OFDI による RA の切削効果の予測精度は、RA の切削位置と面積の 2 観点から評価した。RA の切削位置については、%Correct-angle (O-angle/Pangle × 100 (%): 予測した位置がどれだけ正しいか) を用いて評価した。RAの切削領域の予測精度は、%Correct-area (O-area / P-area × 100 (%): 予測された領域がどれだけ正しいか)、%Error-area ([A-area - O-area] / A-area × 100 (%): 予想外に切削された領域がどれだけあったか) の 2 つのパラメータを用いて評価した。

さらに、全解析断面を%Correct-area と%Error-area の中央値に基づいて以下の 4 つのグループ に分類し、それぞれのグループの特徴を検討した。
1) Good prediction group [ 高 %Correct-area かつ低 %Error-area]:予測された RA 効果が観察された断面
2) Over ablation group [ 高 %Correct-area か つ 高 %Error-area]:予測よりも大きな RA 効果が観察された断面
3) Insufficient ablation group [低%Correct-area かつ低%Error-area]:予測よりも少ない RA 効果が観察された断面
4) Irrelevant ablation group [ 低%Correct-area かつ高%Error-area]:予測された場所とは異なる場所で RA 効果が観察された断面

【結果】
患者背景 と RA 位置の予測精度
対象期間に 57 例 (58 病変) が OFDI ガイド下に RA を使用した PCI を受け、32 例 (32 病変) が除外され、25 例 (26 病変)・334 断面が解析対象となった。

RA の切削位置の予測精度に関する検討においては、OFDI カテーテルを中心とした P-area がない 23 断面が除外された。解析対象となった 311 断面のうち 105 断面 (33%) が%Correct-angle >80%、185 断面 (59%)が%Correct-angle >50%であった。一方、42 断面 (13%) は%Correct-angle= 0%であり、これらの断面では、RA の切削効果が予測された位置とは全く異なった位置に認められた。

RA の切削面積の OFDI の予測精度と RA 後の所見への影響
P-area は A-area よりも有意に小さく (median, 0.47 [IQR, 0.20-0.74] mm2 vs. 0.54 [IQR, 0.28-0.74] mm2; P <0.001)、%Correct-area と%Errorarea の中央値はそれぞれ 43.1%と 64.2%であった。ワイヤータイプ別にみると、%Correct-area は、フロッピーワイヤー使用とエクストラサポートワイヤー使用の間に有意差を認めなかった (46.4% vs. 52.5%、P = 0.278)が、%Error-area は、エクストラサポートワイヤー使用で有意に高かった (55.6% vs. 65.7%、P = 0.015)。対象血管 (LAD, LCx, RCA) 別にみると、%Correct-area は対照血管間で有意差を認めなかったが、%Error-areaは、LCx で最も高かった (LAD vs. LCx vs. RCA, 53.7% vs. 75.3% vs. 63.4%; P <0.001)。

すべての断面を%Correct-area と%Error-area の中央値に基づいて分類したところ、Over ablation group では外膜に及ぶ血管損傷が、より頻繁に観察される傾向があった。また、Irrelevant ablation group においては血管内膜の破綻が P-area 外に起こる現象が高頻度に観察された (18.1%; P for χ² test < 0.001)。

RA の切削面積の予測精度に関連する因子
多変量回帰分析により、Good prediction group には、フロッピーワイヤーの使用 (Odds ratio [OR], 2.59; 95% CI, 1.45-4.62; P=0.001)、OFDI カテーテルが血管内膜に近いこと (OR, 0.01; 95% CI, 0.00-0.16; P=0.001)、Burr サイズと比較して内腔面積が狭いこと (OR, 4.12; 95% CI, 1.71-10.1; P=0.002)、及びカルシウムの角度が大きいこと (OR, 1.00;95% CI、1.00-1.01;P=0.006) が、それぞれ独立して関連していた。また、Over ablation group には、エクストラサポートワイヤーの使用 (OR, 2.21; 95% CI, 1.17-4.16; P=0.014)が独立して関連していた。さらに、Irrelevant ablation group には、非 LAD 病変 (OR, 0.54; 95% CI, 0.33-0.89; P=0.016)、OFDI カテーテルが血管内膜から離れていること (OR, 30.4; 95% CI, 2.92-316.4; P = 0.004)、ワイヤーが血管内膜から離れていること (OR, 4.05; 95% CI, 2.92-316.4; P=0.004)、及び OFDI カテーテルとワイヤーが離れていること (OR, 44.3; 95% CI, 3.67-534.1; P = 0.003) が、独立して関連していた。

【論考】
RA の実施は重度石灰化病変の治療に有用である一方、時に重度な合併症が生じる可能性がある。しかしながら、現状このような合併症を回避するための効果的な対策は確立していない。これまで血管内画像検査を用いて、石灰化の分布と RA による切削効果(位置・面積)を予測することは有用であると考えられてきたが、RA の切削効果の予測精度と予測に関連する因子を評価した研究はない。

本研究では、まず角度ベースの解析により、87%の断面において、OFDI から予測された位置の少なくとも一部が切除されていることが示された。また、59%の断面では OFDI から予測された位置の 50%以上の部分が実際に切除されていることが明らかになった。このことから、OFDI カテーテル経路に基づいた RA の切削位置予測はある程度可能と考えられた。

一方、面積を考慮した場合、%Correct-area と%Error-area の中央値はそれぞれ 43.1%と 64.2%であり、OFDI カテーテルを用いた切削量の予測精度はそれほど高くないことが示された。

実臨床においては、取得した OFDI 画像に基づいて RA の適応を決定し、RA が安全に施行できるかどうかが検討される。本研究では、RA の切削効果の予測が不十分な場合が存在し、これは外膜に及ぶ血管損傷や予測領域外の内膜破綻などの好ましくない現象と関連していることが明らかとなった。これらの要因が、血腫形成や冠動脈穿孔などといった RA による合併症につながる可能性があることを考えると、RA の切削効果を正確に予測することや、その予測に影響を及ぼす関連要因を明らかにすることは臨床的に重要であると言える。

我々は、OFDI を用いた予測と実際の RA の切削効果によって、対象断面を 4 つのカテゴリーに分類し、それぞれに関連する因子を明らかにした。多変量回帰分析によると、フロッピーワイヤーの使用、Burr のサイズと比較して内腔面積が狭いこと、および OFDI カテーテルが血管内膜に近いことがそれぞれ独立して Good ablation group と関連していた。一般的に、フロッピーワイヤーはエクストラサポートワイヤーよりも柔軟なため、冠動脈の蛇行に追従しやすいとされる。実臨床では、OFDI 撮像時と RA 実施時のワイヤーは異なっているが、フロッピーワイヤーは OFDI 撮像時のワイヤーと剛性が近いため、OFDI カテーテルの走行と似通るため、予測精度がよかったと考えられる。また、Burr はワイヤー上を走行するため、OFDI カテーテルが血管内膜に近い時は、Burr も血管内膜に近いところを走行すると考えられ、予測精度がよかったと考えられる。さらに、Burr サイズと比べ内腔面積が狭いことは、狭窄病変内での Burr の移動が少ないことが想定され、そのことが予測精度の向上につながったと考えられた。これらの条件下では、OFDI カテーテルに基づいた RA の切削効果の予測は正確であると推察される一方、いくつかの条件下では正確な予測が困難であることも明らかになった。例えば、エクストラサポートワイヤーの使用は、Over ablation group と関連していた。エクストラサポートワイヤーはその剛性により動脈を直線化しやすく、病変が蛇行している場合には、深く切削することとなる。このことが、Over ablation groupで、外膜に及ぶ血管損傷の発生率が最も高かった理由ではないかと推察している。対照的に、非LAD病変、OFDI カテーテルが血管内膜から離れていること、および OFDI カテーテルとワイヤーが離れていることは Irrelevant ablation group と関連していた。非LAD病変は蛇行または分岐性病変を含むことが多く、OFDI カテーテルとワイヤーが時折分離される。この時、ワイヤーバイアスと OFDI カテーテルバイアスの位置が別となる。一般的に、Burr はワイヤーに沿って病変を通過するため、OFDI カテーテルを中心とした切削領域の予測精度は低下したと考えられる。このような場合は OFDI カテーテルの位置に基づいた予測よりもワイヤーを中心とした予測の方が有用な可能性がある。

以上のことから、ワイヤーの種類、標的血管、および OFDI カテーテルとワイヤーの位置を考慮することが、RA の切削効果を予測するうえで重要であり、これらのことを考慮することで予測外の切削を予防し、RA による合併症を減少させるのに役立つ可能性があるのではないかと考えている。

本研究の limitation として、まず、単施設、レトロスペクティブの観察研究であり、サンプル数が少ないこと、OFDI カテーテルが RA 前に実施できなかった症例の除外による選択バイアスの存在が挙げられる。また、回転速度、病変通過回数、ガイドカテーテル位置といった RA 手技に関する重要なパラメータは統一されていなかったことも重要な limitation である。最後に本研究では、合併症の発生を認めず、今回の予測精度と合併症の発生頻度の関係性を明らかにすることはできていない。この点を明らかにするためには、今後、より症例数が多く観察期間の長い研究が必要であると考える。

【結論】
本研究では、OFDI カテーテル経路を用いて RA の切削位置を予測することはある程度可能であることが明らかになった。その一方で、切削面積や容積を含んだ正確な予測 をすることは困難である場合が示された。OFDI を用いた RA の実施の際は、ワイヤーの種類、標的血管、および OFDI カテーテルとワイヤーの位置を考慮することが、予測外の切削を未然に防ぐために重要であるといえる。

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