リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Ultrastructural analyses of influenza virus-infected mouse lung to understand the pathogenesis of influenza virus-induced pneumonia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Ultrastructural analyses of influenza virus-infected mouse lung to understand the pathogenesis of influenza virus-induced pneumonia

仲尾(多田), 朋美 東京大学 DOI:10.15083/0002002337

2021.10.13

概要

【背景及び目的】
 冬季に流行する急性呼吸器感染症の原因ウイルスであるA型インフルエンザウイルスは、ヒトの上気道に限局して感染する。しかし、2009年のパンデミックH1N1ウイルスは、肺などの下気道にも感染して急性ウイルス性肺炎を引き起こすことがある。また、H5N1やH7N9といった鳥インフルエンザウイルスに感染した患者の多くは、ウイルス性肺炎による重篤な呼吸器症状を呈する。重篤なウイルス性肺炎を呈した患者には抗インフルエンザ薬の投与に加えて、呼吸器症状や全身症状に応じた対処療法が行われるが、有効な治療法は確立していないのが現状である。
 ウイルス性肺炎を呈した2009年パンデミックインフルエンザ患者や鳥インフルエンザ患者の肺組織を免疫学的および病理組織学的手法で解析すると、感染局所に浸潤した多数の好中球が観察される。免疫応答の最初の段階で動員される好中球は、サイトカイン・ケモカイン産生、活性酸素種の産生、プロテアーゼ分泌、貪食、好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps;NETs)放出などにより病原体を排除する。インフルエンザウイルス感染マウスモデルを用いた先行研究では、マウスから好中球を除去するとウイルスの増殖が促進され、マウスが重症化することが示された。このことはインフルエンザウイルス感染に対する生体防御において好中球が重要な役割を担っていることを示唆している。一方で、好中球から産生される種々の生理活性物質は正常な組織も傷害するため、その過剰な浸潤は肺炎重症化の一因となっている。このように、好中球はインフルエンザウイルス性肺炎の病態形成に関与していることが示されている。したがって、インフルエンザウイルス感染における好中球の役割に関する理解が深まれば、重度のウイルス性肺炎を呈した患者に対する新たな治療法の開発に繋がることが期待される。
 好中球は、貪食やNETs形成などにより病原体を排除する際、その形態を大きく変化させる。従来の病理組織学的手法では、炎症部位に浸潤した免疫細胞の種類や分布を組織・細胞レベルで解析することはできるが、個々の細胞に起きる微細な形態変化を捉えることはできない。そこで本研究では、インフルエンザウイルス性肺炎の病態形成を理解することを目的として、インフルエンザウイルス感染マウス肺に浸潤した好中球の分布、超微形態の変化、および他の細胞との相互作用等を、電子顕微鏡を用いて解析した。

【方法、結果及び考察】
 インフルエンザウイルス性肺炎の病態形成における好中球の役割の一端を明らかにするために、感染マウスの肺胞領域に浸潤した好中球の形態を集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(Focused ion beam-scanning electron microscope;FIB-SEM)を用いて解析した。インフルエンザウイルスは、蛍光タンパク質Venusの遺伝子を組み込んだA/Puerto Rico/8/34(H1N1)のマウス馴化株(MA-Venus-PR8)を用いた。C57BL/6JマウスにMA-Venus-PR8株を経鼻接種し、感染後4日目に肺を採材した。肺組織内の好中球をFIB-SEMで撮影し、個々の細胞について3次元再構築を行ない、その表面構造を観察した。毛細血管内の好中球の表面は、ほぼ平滑であったのに対して、肺胞内に浸潤した一部の好中球の表面には多数の触手様構造(図1)が認められた。また、I型あるいはII型肺胞上皮細胞、単球や死細胞に接着した好中球、さらには好中球同士の接着が観察された。
 ヒトの好中球はインフルエンザウイルスを感染させた培養細胞に接着することが報告されている。マウスの好中球もインフルエンザウイルス感染肺胞上皮細胞に接着するのかどうかを確認するために、in vitroの共培養実験を行った。好中球はカゼインを注入したマウス腹腔から腹腔液を採取し、Percoll法で分離した。比較対照として、マウス脾臓から分離した単球を用いた。マウス肺胞上皮由来細胞株(MLE-12)にA/WSN/33(H1N1; WSN)をmultiplicity of infection(MOI)=10にて感染させ、感染6時間後に好中球または単球を添加して4時間共培養した。感染細胞を洗浄した後、同細胞に接着した好中球または単球を蛍光抗体法で検出した。その結果、感染細胞に接着した好中球の数は、非感染細胞に接着したそれよりも有意に多いことがわかった。次に、生体内においても同様に好中球がインフルエンザウイルス感染細胞に結合するのかどうかを光子・電子相関顕微鏡(Correlative light and electron micros copy;CLEM)法(図2)を用いて解析した。マウスにMA-Venus-PR8株を経鼻接種し、感染後2日目と4日目に肺を採材して、Ly6Gに対する抗体で蛍光免疫染色した。肺組織内のVenus陽性細胞(感染細胞)とLy6G陽性細胞(好中球)を共焦点レーザー顕微鏡で検出した後、同一視野に存在するそれぞれの細胞の形態を走査型電子顕微鏡で観察した。共焦点レーザー顕微鏡で感染マウス肺を観察したところ、感染後2日目では感染細胞と好中球は細気管支とその周囲に限局していた。一方、感染後4日目では多数の感染細胞と好中球が肺胞領域で検出され、一部の好中球は感染細胞に隣接して存在していた。この隣接部位を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、感染細胞を覆うように接着している好中球や、感染細胞を貪食するかのように接着している好中球が見られた(図3)。この好中球が接着した感染細胞表面には、多数のウイルス様粒子が認められた。好中球の感染細胞への接着がウイルス感染肺において、どの程度の頻度で起きているのかを調べた。マウスにMA-Venus-PR8株を経鼻接種し、感染後4日目に肺を採材した。Venus陽性細胞とLy6G陽性細胞を共焦点レーザー顕微鏡で撮影し、そのZスタック像からそれぞれの細胞の3次元像を構築した。その結果、肺胞領域内の広範囲にわたって、好中球が感染細胞に近接している様子が多数観察された。
 インフルエンザウイルス感染マウスの肺組織内の好中球を超微形態学的に解析したところ、細胞表面の形態は個々の好中球間で大きく異なることがわかった。この形態変化は肺胞内における好中球の遊走や貪食活性に関与している可能性が示唆された。また、肺胞内に浸潤した好中球は様々な種類の細胞と相互作用していることが示唆された。さらに、肺胞内に浸潤した好中球は感染細胞に直接接着することが本研究によって初めて明らかにされた。以上の成績は、好中球のウイルス感染細胞への接着が生体防御において重要な役割を担っている可能性を示唆している。本研究の成果を応用することで、正常肺組織の傷害を減らしつつ、好中球の抗ウイルス効果を促進する新規治療法開発に繋がることが期待される。

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る