Validation of masticatory function and related factors in maxillectomy patients based on the concept of “oral hypofunction": A retrospective cross-sectional study
概要
目的:上顎切除患者の口腔機能はさまざまな方法で評価されてきたが、その評価は、基準が存在せず依然として困難である。本研究の目的は、「口腔機能低下症」の概念に従って、上顎切除患者の咀嚼機能、最大咬合力(MOF)、および最大舌圧(MTP)を客観的に評価し、咀嚼機能と関連する因子を検証することとした。
方法:顎義歯を使用している上顎切除患者50人(男性23人、女性27人:年齢の中央値=72歳、四分位範囲(IQR)=63.75〜77歳)を対象とし、「口腔機能低下症」の診断基準に従い、咀嚼機能、MOF、およびMTPの検査値と患者因子(年齢、咬合支持数、および上顎欠損の分布)を診療情報記録より抽出した。「口腔機能低下症」の基準値を超えた患者数と、咀嚼機能、MOF、およびMTPに対する咬合支持数および上顎欠損の分布の影響を解析した。また、咀嚼機能と他の因子との関連を評価するために、重回帰分析を行なった。
結果:咀嚼機能の中央値(114mg/dL、IQR:73–167.5)は「口腔機能低下症」の基準値を超えたが、MOF(229.2N、IQR:110.2–419.6)およびMTP(25.9kPa、IQR:21.4–29.0)は超えなかった。各口腔機能の基準値を超えた患者数は、それぞれ27人(咀嚼機能)、8人(MOF)、12人(MTP)であった。それぞれの口腔機能において、咬合支持数は統計的に有意に影響していたが、上顎欠損の分布は影響しなかった。さらに重回帰分析により、MOFは咀嚼機能と強く関連していることが明らかになった(P=0.042)。
結論:本研究では、患者数が少数であるためにその結果には制限があるものの、上顎切除患者の咀嚼機能の中央値は「口腔機能低下症」の基準値を上回ることができ、MOFは咀嚼機能に影響する因子である可能性が明らかとなった。