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大学・研究所にある論文を検索できる 「電界放出源への応用のための炭素ナノウォール上へのダイヤモンドナノ粒子の自己組織化によるシーディング」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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電界放出源への応用のための炭素ナノウォール上へのダイヤモンドナノ粒子の自己組織化によるシーディング

黄, 磊 HUANG, LEI ファン, レイ 九州大学

2022.09.22

概要

電界放出を利用した電子エミッターは、従来の熱電子放出エミッターに比べ、高効率・省電力かつ小型の真空マイクロデバイスを実現可能であり、小型X線源、真空トランジスタ、イオンエンジン等への応用が期待されている。しかし産業応用にはさらなる高い効率と高い経時安定性が求められている。一般に電界放出材料には、局所電界を増幅するための鋭利な表面形状と、トンネル障壁を低減するための低い仕事関数が求められる。炭素ナノウォールは垂直配列した多層グラフェンから構成される構造体であり、鋭利な表面形状を有しているため、有望な電界放出材料である。しかし炭素ナノウォールの仕事関数は大きいため、電子放出の効率がさほど高くないこと、ジュール加熱の影響によって、電子放出の経時安定性が劣化することが課題である。

本論文では、高効率で高安定性の電界放出エミッターの開発を目指し、炭素ナノウォール表面に自己組織化を利用してダイヤモンドナノ粒子をシーディングすることにより、炭素ナノウォール/ナノダイヤモンドハイブリッド構造体を作製し、表面形態、微細構造、電界放出特性などの調査を行った。結果として、ダイヤモンドナノ粒子の凝集を抑制しつつ均一にシーディングする手法の確立と、電界放出の効率と経時安定性の向上に成功した。本論文で得られた主な結果を以下に列挙する。

(1)炭素ナノウォール上へダイヤモンドナノ粒子を均一に分散させるには、炭素ナノウォールに対する濡れ性が高く、ナノ粒子間の凝集が抑制できる分散媒が必要である。炭素ナノウォール上へ表面自由エネルギーや粘性が異なるさまざまな溶剤を滴下した結果、アルコールなどの濡れ性が高いことが分かった。エタノールを分散媒に用いた場合、ダイヤモンドナノ粒子は高い正のゼータ電位をもつため、クーロン反発力によってナノ粒子間の凝集が抑制されるのに対し、炭素ナノウォール表面は負のゼータ電位をもつため、ナノ粒子をナノウォール上へ高い均一性でシーディングできることが示された。結果的に、分散媒中のダイヤモンドナノ粒子の濃度およびシーディング後の化学気相蒸着法による成長処理時間を変化させることで、炭素ナノウォール表面のナノ粒子の数密度および粒径をそれぞれ制御できることが示された。

(2)炭素ナノウォール上へダイヤモンドナノ粒子の数密度を制御してシーディングを行った後、化学気相蒸着法による成長処理を施すことで、ナノ粒子の密着性が増し、炭素ナノウォール/ナノダイヤモンドハイブリッド構造体を作製できることが示された。ダイヤモンドナノ粒子はナノ寸法の厚みをもつアモルファス層を介して、炭素ナノウォール表面に付着していることが分かった。炭素ナノウォール/ナノダイヤモンド構造体の電界放出の効率と経時安定性は、炭素ナノウォール単体よりも高く、ダイヤモンドナノ粒子の数密度に強く依存することが示された。実験結果の解析と電界分布シミュレーションの結果から、電界放出の効率の向上は、ダイヤモンドナノ粒子表面近傍にて局所電界が増幅されることが主な原因であることが示された。一方電界放出の経時安定性の向上は、高い熱伝導率と高い硬度をもつダイヤモンドの被覆率の増加が主な原因であることが示された。

(3)プラズマ化学気相蒸着法による炭素ナノウォールの生成温度範囲は、原料として高次の炭化水素ガスを用いると低下することが分かった。その機構は、高次炭素ラジカル種が生成され易く、低温でもグラファイト化が促進されるためであることが示された。生成温度範囲によらず、炭素ナノウォールのsp2結合性炭素の秩序やクラスターサイズの増加によって、電気伝導性を増加できることが示された。電気伝導性が高い炭素ナノウォールを基に、ダイヤモンドナノ粒子をシーディングすることで、電界放出の効率を一層高められることが示唆された。

以上、本論文では高効率で高安定性の電界放出エミッターの開発を目指し、(ⅰ)炭素ナノウォール上へのダイヤモンドナノ粒子のシーディング、(ⅱ)炭素ナノウォール/ナノダイヤモンドハイブリッド構造体の電界放出の効率と経時安定性、(ⅲ)炭素ナノウォールの生成温度範囲と電気伝導性、を包括的に検討し、ダイヤモンドナノ粒子の凝集を抑制しつつ均一にシーディングする手法の確立と、電界放出の効率と経時安定性の向上に成功した。この成果によって、高性能かつ高信頼性の真空マイクロデバイスの開発が今後大きく進展することが期待できる。

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