リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「片頭痛に対する後頭部C2末梢神経野鍼通電療法の作用機序の研究:Advanced-MRIを用いた検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

片頭痛に対する後頭部C2末梢神経野鍼通電療法の作用機序の研究:Advanced-MRIを用いた検討

石山, すみれ 筑波大学

2021.08.03

概要

I. 背景
本邦において、⽚頭痛の治療は薬物治療が第⼀選択であるが、治療に難渋する例も多く、慢性頭痛の診療ガイドラインでは薬物治療に反応しないものや妊娠の可能性のある患者の治療オプションの⼀つとして鍼治療が勧められている。また、海外では難治性頭痛に対し、後頭神経刺激など外科的治療(ニューロモデュレーション)を⾏う例もあるが、侵襲性があり、リードの感染など副作⽤により再⼿術を⾏う例なども報告されている。

また近年、⽚頭痛に対し脳の機能的障害や中枢性感作との関連が⽰唆されており、そうした機能的障害を評価する⽬的で resting state functional MRI (以下 rsfMRI) や Diffusion Tensor Imaging (以下 DTI) などが使⽤されている。

II. ⽬的
⽚頭痛患者に対し、後頭部 C2 末梢神経野鍼通電療法 (C2 Peripheral nerve field stimulation using electroacupuncture; 以下 EA-C2-PNfS) を⾏い、臨床的有⽤性を検討する。また治療前後及び健常者に対し撮像した DTI、 rsfMRI を解析し、⽚頭痛に対する鍼通電療法の作⽤機序を明らかにする。また健常者群との⽐較を⾏い、⽚頭痛の病態・診断への応⽤についての検討を⾏う。

III. 対象と⽅法
対象は筑波⼤学附属病院⽔⼾地域医療教育センター⽔⼾協同病院脳神経外科頭痛外来を受診し、鍼治療の同意が得られた⽚頭痛患者 26 名とした。健常コントロール群 24 名も同様に解析をおこなった。3.0T MRI を⽤いて⽚頭痛群は鍼治療開始前と3ヶ⽉後、健常者群では 1 回⽬の撮像と3ヶ⽉後の、それぞれ 2 回ずつ DTI と rsfMRI を撮像した。評価は、各治療前に内服前の疼痛強度を Numerical Rating Scale (以下 NRS)を⽤いて評価し、 Headache Impact Test-6 (以下 HIT-6)、⾃⼰評価式抑うつ尺度 (Self-Rating Depression Scale 以下 SDS) は鍼治療開始前、1 ヶ⽉後、2 ヶ⽉後、最終治療⽇に評価を⾏った。治療頻度は原則週に 1 回、期間は約 3 ヶ⽉とした。臨床評価解析は初診時と 3 か⽉後の数値を解析対象とし、Wilcoxon の符号付順位検定を⽤いた。

DTI 画像解析は全脳解析である Tract-based spatial statistics (以下 TBSS)を⾏い、Fractional anisotropy(以下 FA), Mean diffusivity(以下 MD), Axial diffusivity(以下 AD), Radial diffusivity(以下 RD)の変化について検討した。 rsfMRI 解析は Region of interest (以下 ROI)法を使⽤し、左右中⼼後回、視床、視床下部、島、扁桃体、帯状回前部・後部、脳幹の 13 箇所を ROIとして設定し、それぞれの Functional connectivity(以下 FC)について解析を⾏った。また相関解析として罹病期間、治療前後の NRS, HIT-6 と脳梁 FA、それぞれの FC について Pearson の相関解析を⽤いて検討した。

IV. 結果
最終的に、⽚頭痛 20 名(男性 1 名、⼥性 19 名、平均年齢 45.6±14.8 歳)と健常者 23 名(男性 6 名、⼥性 17 名、平均年齢 44.9±12.9 歳)が解析対象となった。

⽚頭痛群では、初診時と治療 3 ヶ⽉後の NRS の⽐較において、初診時の中央値(最⼩値−最⼤値)7(3-10)から 4(0-10)と有意に減少が認められた (p=0.002)。HIT-6 においても 64(49-74)から 61(42-76)、SDS も 43.5(31-59)から 42(26-54)と有意な改善を⽰した。

FC 解析では、⽚頭痛群の鍼治療前後の⽐較では、左視床―左視床下部、左島―右視床下部の FC が治療後有意な低下を⽰した。また、左視床下部―右視床下部、左視床下部―右中⼼後回の FC は治療後有意な増加が認められた。次に、鍼治療前の⽚頭痛群の撮像と健常者群の 1 回⽬の撮像の⽐較では、⽚頭痛群で有意に帯状回後部―右視床の FC が⾼かった。健常者群で有意に⾼い FC は認められなかった。鍼治療 3 ヶ⽉間終了時の⽚頭痛群と健常者群の 2 回⽬の撮像では有意な FC の差は認められなかった。

DTI 画像解析では、⽚頭痛群の治療前後および健常者との⽐較で有意な変化は認められなかった。

相関解析では、脳梁膨⼤部 FA と罹病期間で治療前後ともに有意な正の相関を認めた。FC の相関解析では、鍼治療前の左扁桃体―左視床、左視床―両側中⼼後回の FC 値と鍼治療前の HIT-6 の値に有意な正の相関を認めた。

V. 考察
⽚頭痛群では臨床評価の改善とともに、視床下部、視床、中⼼後回や島において治療後有意な FC の変化を認めた。また扁桃体―視床の FC と治療前の HIT-6 に正の相関がみられた。視床下部は⽚頭痛の前兆を含む病態に深く関連していることが⽰唆されているが、本治療法では両側視床下部に関連した FC を調整することにより⽚頭痛の症状の緩和に繋がっている可能性がある。本治療法において、C2脊髄神経枝の刺激により三叉神経脊髄路核を介して両側視床下部を変化させることで⽚頭痛を改善させた可能性を考察した。

また治療前後の FA と罹病期間に正の相関を認めたことから、FA が⽚頭痛の慢性化の指標となることが⽰唆された。また、FC は治療により変化することから、治療や疾患の経過などによる機能的変化を⽰していることが⽰唆された。

VI. 結語
⽚頭痛に対し EA-C2-PNfS を⾏い、疼痛強度などの臨床評価に加えて治療前後の DTI と FC について検討した。本治療法によって頭痛強度の減少、頭痛による⽇常⽣活⽀障度の改善が認められた。さらに FC 解析では、鍼治療前と⽐較して治療後に視床や島など疼痛関連領域や視床下部の FC の有意な変化が認められた。本治療法の作⽤機序は、C2 脊髄神経枝を介し、三叉神経脊髄路核や視床下部を介して疼痛関連領域の活動性を調整した可能性がある。EA-C2-PNfS は、低侵襲で簡便であり、⽚頭痛の新たな⾮薬物療法として有⽤である。また、MRI が⽚頭痛の診断に有⽤となる可能性がある。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る