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大学・研究所にある論文を検索できる 「Effects of four atypical antipsychotics on autonomic nervous system activity in schizophrenia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Effects of four atypical antipsychotics on autonomic nervous system activity in schizophrenia

服部 早紀 横浜市立大学

2020.03.25

概要

序論:統合失調症患者では,心血管障害による死亡率が一般人口の2~3倍高いと報告されており(Olfson et al., 2015),その背景に,自律神経活動低下の関与が疑われている(Thayer et al., 2010).統合失調症患者の自律神経活動異常に関しては数多くの報告があるが,その要因の一つとして当研究グループでは,抗精神病薬が悪影響を及ぼしている可能性を報告した(Iwamoto et al.,2012).安全な薬剤選択にあたって,非定型抗精神病薬の自律神経活動への影響の違いを明らかにすることが重要と考えられるが,現時点で十分に調査されていない.そこで本研究は,非定型抗精神病薬のリスペリドン(RIS),オランザピン(OLZ),アリピプラゾール(APZ),クエチアピン(QTP)が,自律神経活動へ与える影響を比較した.さらに,同一薬剤を投与されている患者で自律神経活動の個体差を生じうる生物学的要因を検討することとし,薬剤の排泄,分布に関連するP 糖蛋白の ATP-binding cassette transport sub-family B member 1 (以下,ABCB1)遺伝子多型の影響を検討した.加えて,統合失調症患者における自律神経活動と生命予後の関連性を検討することとした.

実験材料と方法:藤沢病院,横浜市立大学附属病院に入院中または通院中で,RIS, OLZ,APZ,QTP のいずれかを単剤で治療中の統合失調症患者を対象とした.対象者は 241 名 (男性 99 名,女性 142 名; 平均年齢 51.7 ± 15.7 歳) で,90 名がRIS,68 名がOLZ,52 名が APZ,31 名が QTP 単剤で治療を受けていた.自律神経活動は心拍変動パワースペクトル解析 (Heart Rate Variability: HRV) を用いて定量化し,各薬剤群で比較した.さらに,同意の得られた 233 名 (男性 94 名,女性 139 名; 平均年齢 51.88 ± 15.49歳) を対象とし,ABCB1 遺伝子の rs1045642, rs1128503, rs2032582, rs2235048 の多型を,TaqMan 法により同定した.薬剤毎に,野生型,多型キャリア群の 2 群で自律神経活動を比較した.また,藤沢病院に入院中の 60 歳から 70 歳の慢性期統合失調症患者 59 名 (平均年齢 64.85 ± 2.95 歳) を対象とし,HRV を用いて自律神経活動を定量化し,10 年間での生存・死亡と自律神経活動の関連性について解析した.

結果:交感神経活動,副交感神経活動,総自律神経活動のいずれも,4 群で有意差があり,QTP 群で,交感神経活動,副交感神経活動が,RIS 群,APZ 群より有意に低下し,また,QTP 群で,交感神経活動が,OLZ 群よりも有意に低下していた(図 1). 重回帰分析で,抗精神病薬の種類が,自律神経活動と有意に関連があった.さらに,ABCB1 遺伝子の rs1045642 と rs2235048 は完全連鎖し,APZ 群おいて,交感神経及び総自律神経活動が,rs1045642 T アレル–rs2235048 C アレル保持者で,非保持者と比較し,有意に低下していた.一方で,RIS 群,OLZ 群,QTP 群においては,ABCB1 遺伝子多型と自律神経活動の関連はみられなかった.重回帰分析の結果,APZ 群で,交感神経活動,総自律神経活動は,ABCB1 rs1045642–rs2235048 遺伝子多型と有意に関連していた. 早期死亡と自律神経活動の関連性についての調査では,調査期間の 10 年間,59 人中 53 人が追跡可能で,そのうち 11 名が死亡し,平均の死亡年齢は 70.55 ± 3.45 歳であった.死亡群で,研究開始時の副交感神経活動,総自律神経活動が生存群より有意に低かった.一方で,臨床的背景は,生存群,死亡群で差がなかった.ロジスティック回帰分析で,副交感神経活動が生存,死亡と有意に関連していた.

考察:RIS,OLZ,APZ,QTP の 4 種の非定型抗精神病薬は,自律神経活動への影響が異なり,QTP が,全ての自律神経活動に最も強い影響を及ぼすこと示唆された.これは, QTP の強いムスカリン受容体親和性が影響していると考えられた.また,APZ で治療中の患者において,ABCB1 遺伝子の rs1045642,rs2235048 の多型が,交感神経活動の個体差に関連する可能性が示唆された.そして,高齢の統合失調症患者では,副交感神経活動低下が,早期死亡のリスクと関連する可能性が推測された.

本研究結果は,より安全な抗精神病薬の選択にあたって,判断の重要な指標となる可能性がある.

参考文献

Iwamoto, Y., Kawanishi, C., Kishida, I., Furuno, T., Fujibayashi, M., Ishii, C., Ishii, N., Moritani, T., Taguri, M., Hirayasu, Y. (2012), “Dose-dependent effect of antipsychotic drugs on autonomic nervous system activity in schizophrenia.”, BMC Psychiatry, 12, 199. (Epub), doi: 10.1186/1471-244X-12-199.

Olfson, M., Gerhard, T., Huang, C., Crystal, S., Stroup, T.S. (2015), Premature Mortality Among Adults With Schizophrenia in the United States, JAMA Psychiatry, 72 (12), 1172-1181.

Thayer, J.F., Yamamoto, S.S., Brosschot, J.F. (2010), The relationship of autonomic imbalance, heart rate variability and cardiovascular disease risk factors. Int J Cardiol, 141 (2), 122-131.

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