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大学・研究所にある論文を検索できる 「Differences in Diagnostic Properties Between Standard and Enrichment Culture Techniques Used in Periprosthetic Joint Infections」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Differences in Diagnostic Properties Between Standard and Enrichment Culture Techniques Used in Periprosthetic Joint Infections

渡部 慎太郎 横浜市立大学

2021.09.21

概要

背景
人工関節周囲感染( periprosthetic joint infection; PJI)は, 人工関節置換 術の 1 - 2% に生じる重要な合併症である(Del Pozo et al., 2009). PJI の診断 は, 培養結果, 血液・生 化学検査, 関節 液検査, 臨床 所見, 病理所見など 様々な項目から診断されるが, 難渋することが多い. PJI の診断に難渋する原因として, 細菌培養で細菌が検出されない培養陰性 PJI が存在することが報告されている(Parvizi et al., 2014). 培養陰性 PJI は, 原因菌や抗菌薬感 受性が不明であり, 抗菌薬や外科的治療の選択に難渋する. よって, PJI において細菌培養検査で原因菌を検出することが重要である.

細菌培養検査には, 通常培養と増菌培養がある. 通常培養は, 血液寒天培 地を用いて培養する方法で, 増菌培養は栄養価の高い培地を用いて培養す る方法である. 増菌培養では, 通常培養で検出されない細菌を増菌させる ことで検出できる可能性がある. 本研究では, (研究 1 ) PJI 診断における 増菌培養の有用性と増菌培養のみで細菌が検出される PJI 症例の臨床的特徴 について,(研究 2 )PJI 症例で, 細菌が検出されない培養陰性 PJI の臨床 的特徴とリスク因子について検討した.

対象と方法
(研究 1 )
対象は, 2013 年 1 月から 2017 年 12 月までに当院で, 通常培養陽性検体で PJI と診断された 68 検体と, 通常培養陰性で増菌培養陽性となった検体で PJI と診断された 83 検体とした. 調査項目は, 血液生化学検査として白血球 数( WBC), C 反応性蛋白( CRP), 血沈( ESR), 細菌学的特徴として, 菌種, コアグラーゼ陽性か陰性か, メチシリン感受性菌か耐性菌かとし, 通常 培養陽性群と増菌培養陽性群に分けて比較検討した.

(研究 2 )
対象は, 2013 年 1 月から 2019 年 10 月までに当院で PJI と診断された 231 検体, 109 症例とした. 調査項目は, 血液生化学検査として WBC, CR P, ESR,臨床的特徴として, 抗菌薬先行投与の有無, 治療成功率, 感染の種類, 合併 症, 治療方法とし, 培養陽性 PJI 群と培養陰性 PJI 群に分けて比較検討した.また培養陰性 PJI のリスク因子をロジスティック回帰分析を用いて検討した.

結果
(研究 1 )
通常培養陽性群の平均年齢は, 67 歳( 18- 87 歳) , 増菌培養陽性群の平均 年齢は, 76 歳( 18- 82 歳)であった. 各群における WBC, CR P, ESR を比較 すると, WBC, CRP は増菌培養群で有意に低値を示した( p< 0.01 ) . 検出さ れた菌種を比較すると, Staphylococcus aureus の割合は通常培養群で高く, Coagulase- negative Staphylococci の割合は, 増菌培養群で高かった( p<0.001 ) . 検出された Staphylococcus 属の中で, 耐性菌である Methicillin- resistant Staphylococcus の 割 合は , 増菌 培養群で 有意 に高かった( p =0.01 ).

(研究 2 )
培養陽性 PJI 群の平均年齢は, 70 歳( 18 -87 歳) , 培養陰性 PJI 群の平均 年齢は, 72 歳( 18 -86 歳)であった. 臨床的特徴として, 合併症, 感染の種 類, 抗菌薬の先行投与の有無, 治療成功率において有意差を認めなかった.各群における WBC, CR P, ESR を比較すると, WBC, CR P, ESR は培養陰性 群で有意に低値を示した( p < 0 . 05 ) . 培養陰性 PJI のリスク因子を, 多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討すると, WBC 低値がリスク因子で あった( odds ratio = 0 . 78 ; 95% confidence interval = 0 .63 –0.97 ; p =0.027 ).

考察
研究 1 より, PJI 症例の 55% は通常培養は陰性で増菌培養のみで陽性であっ た. 増菌培養は, PJI 診断において高い細菌検出率を示し, 有用であると考える. PJI 診断における増菌培養の一種である血液培養ボトルの有用性が報 告されている(Blackmur et al., 2014). 血液培養ボトルは, 液状検体のみを対象にするが, 本研究で使用した増菌培養法では, 少量の液体や組織検体も検査可能である.

増菌培養のみ陽性となる PJI 症例では, CNS や MRS の割合が高かった. CNS は PJI の最も多い原因菌とされている(Cunningham et al., 2017). CNS は弱毒菌であるが, CNS と Staphylococcus aureus による PJI の臨床成績を比較すると, 同等であると報告されている(Murgier et al., 2016). よって, PJI において CNS は重要な菌種である. 増菌培養群において CNS の割合が 多いのは, CNS は弱毒菌であるため通常培養では検出できないが, 増菌培養 で増菌させることで検出できる可能性が考えられ, 増菌培養は CNS による PJI の診断に有用であることが示唆される.

また増菌培養群では, MRS の割合が高かった. MRS による PJI は臨床成績が劣ることが報告されている(Jackson et al., 2000). また MRS による PJI 症例では, 一期的再置換術は禁忌とされている. よって PJI において, MRS を検出することは, 抗菌薬や外科的治療の選択に重要である. 増菌培養は, MRS の検出に優れており, PJI 診断において有用であると考える.

増菌培養陽性群では, WBC や CRP といった炎症反応マーカーの値が低値を 示した. 過去の報告でも血液培養ボトルのみ陽性となる PJI 症例では, 関節 液中の WBC 数や血清 CRP 値が低いことが報告されている(Geller et al., 2016). これは, 通常培養で検出されず増菌培養のみで検出される PJI は,弱毒菌が多く, 感染している菌数が少ない, いわゆる low grade infection の症例が多いことが原因と考えられる. 弱毒菌による感染や感染している菌数 が少ない症例では, 通常培養では検出できない可能性が示唆される. そのような通常培養で検出できない low grade infection 症例において, 増菌培養 は有用な可能性があり, PJI を疑う症例では考慮すべき方法である.

増菌培養は, 細菌検出率が高く, PJI の原因菌として重要な CNS や MRS の検出に優れており, PJI 診断において, 有用であると考える.

また研究 2 より, PJI 症例の 25% は培養陰性 PJI であった. 培養陰性 PJI 症例では, WBC, CR P, ESR といった炎症マーカーが低値を示したが, 抗菌薬の 先行投与, 治療成功率, 感染の種類では両群で有意差を認めなかった. 培養 陰性 PJI のリスク因子は, WBC 低値であった. PJI を疑う症例で, 炎症マーカーが低く, 細菌培養陰性でも培養陰性 PJI の可能性を考慮すべきであると 考える.

参考文献

Blackmur JP, Tang EY, Dave J, Simpson AH. Use of broth cultures peri-operatively to optimise the microbiological diagnosis of musculoskeletal implant infections. The bone & joint journal. 2014;96-b(11):1566-70.

Cunningham DJ, Kavolus JJ, 2nd, Bolognesi MP, Wellman SS, Seyler TM. Specific Infectious Organisms Associated With Poor Outcomes in Treatment for Hip Periprosthetic Infection. The Journal of arthroplasty. 2017;32(6):1984-90.e5.

Del Pozo JL, Patel R. Clinical practice. Infection associated with prosthetic joints. The New England journal of medicine. 2009;361(8):787-94.

Geller JA, MacCallum KP, Murtaugh TS, Patrick DA, Jr., Liabaud B, Jonna VK. Prospective Comparison of Blood Culture Bottles and Conventional Swabs for Microbial Identification of Suspected Periprosthetic Joint Infection. The Journal of arthroplasty. 2016;31(8):1779-83.

Jackson WO, Schmalzried TP. Limited role of direct exchange arthroplasty in the treatment of infected total hip replacements. Clinical orthopaedics and related research. 2000(381):101-5.

Murgier J, Laffosse JM, Cailliez J, Cavaignac E, Murgier P, Bayle-Iniguez X, Chiron P, Bonnevialle P. Is the prognosis the same for periprosthetic joint infections due to Staphylococcus aureus versus coagulase-negative staphylococci? A retrospective study of 101 patients with 2-year minimum follow-up. Archives of orthopaedic and trauma surgery. 2016;136(10):1357-61.

Parvizi J, Erkocak OF, Della Valle CJ. Culture-negative periprosthetic joint infection. The Journal of bone and joint surgery American volume. 2014;96(5):430-6.

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