p57陽性静止がん幹細胞の焼灼は腸管腫瘍の化学療法後再発を抑制する
概要
九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Ablation of p57+ Quiescent Cancer Stem Cells
Suppresses Recurrence after Chemotherapy of
Intestinal Tumors
岡, 毅寛
https://hdl.handle.net/2324/7157304
出版情報:Kyushu University, 2023, 博士(医学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)
氏 名:
岡 毅寛
論文名:
Ablation of p57+ Quiescent Cancer Stem Cells Suppresses Recurrence after
Chemotherapy of Intestinal Tumors
(p57陽性静止がん幹細胞の焼灼は腸管腫瘍の化学療法後再発を抑制する)
区 分:
甲
論 文 内 容 の 要 旨
静止がん幹細胞(cancer stem cell:CSC)は、従来の抗がん剤治療に対して抵抗性を示し、いくつ
かのがん種では治療後の疾患再発に寄与することが示されている。静止CSCの同定と特性解析は、この
細胞集団を標的とし、再発を阻止する戦略の開発を促進することが期待される。
今回我々は、腸管腫瘍オルガノイドを用いたマウスの同種同所移植モデルを確立し、静止CSCのプロ
ファイリングを行った。生体で形成された原発腫瘍の1細胞トランスクリプトーム解析によって、Lgr5
高発現の腸管CSCは、活発に増殖する集団と緩徐に増殖する集団の両方から構成され、後者はサイクリ
ン依存性キナーゼ阻害剤因子p57を特異的に発現していることが明らかとなった。腫瘍形成試験と系統
追跡実験から、p57陽性静止CSCは定常状態の腫瘍増殖に限定的にしか寄与しないが、化学療法に抵抗
性で、治療後の腫瘍再発を促すことが示された。p57陽性静止CSCを焼灼すると、化学療法後の腸管腫
瘍の再増殖が抑制された。
これらの結果は、腸管CSCの不均一性に光を当て、p57陽性静止CSCが腸管悪性腫瘍の有望な治療標的
であることを明らかにした。