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大学・研究所にある論文を検索できる 「労働者の「いじめ」被害がメンタルヘルスに及ぼす影響に関する予防医学研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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労働者の「いじめ」被害がメンタルヘルスに及ぼす影響に関する予防医学研究

池田, 朝彦 筑波大学

2022.11.22

概要

【背景】
 労働者のメンタルヘルス対策が社会的課題となっている。また、多くの労働者が職場の⼈間関係についてストレスを訴えている。本研究では、労働者のメンタルヘルスに影響を及ぼす⼈間関係ストレスを捉える概念として、海外先⾏研究の蓄積されている「いじめ」に着⽬した。まず、⽂献的考察として、いじめの実態について概観し、先⾏研究や政策動向を総説した。そして、研究1では労働者の過去(学齢期)のいじめ被害と現在の⼼理的苦痛との関連を明らかにすること、研究2では現在(職場及びネット)のいじめ被害と現在の⼼理的苦痛との関連を明らかにすることを⽬的とし、調査解析を⾏なった。⼈間関係における問題である「いじめ」の実態と影響を検証した本研究は、労働者のメンタルヘルスの維持向上に資するものと考えた。

【研究1】
〇⽬的
 労働者の現在の⼼理的苦痛と学齢期のいじめ被害との関連について、以下の仮説を⽴て解析を⾏なった。
 仮説:学齢期にいじめ被害の経験を持つ労働者は、現在の⼼理的苦痛の程度が⾼い。
〇対象と⽅法
 筑波研究学園都市交流協議会に所属している機関の労働者19,481名を対象として2017年に実施されたWEBアンケートのデータを解析した。解析項⽬として、性別、年齢、婚姻状況、最終学歴、職位、世帯収⼊、喫煙習慣、職業性ストレス、⼼理的苦痛、学齢期のいじめ被害を⽤いた。職業性ストレスを評価するために、職業性ストレス簡易質問紙(Brief Scales for Job Stress, BSJS)を⽤いた。⼼理的苦痛を評価するために、Kesslerの⼼理的苦痛測定指標(K6)を⽤いた。⼼理的苦痛を従属変数とするロジスティック回帰分析を⾏った。
〇結果
 解析対象者6,015名のうち学齢期のいじめ被害がある者は53.3%で、学齢期のいじめ被害は現在の⼼理的苦痛と有意な関連を認めた。性別、年齢、婚姻状況、最終学歴、職位、世帯年収、喫煙習慣、職業性ストレスによる調整後の⼼理的苦痛のオッズ⽐は1.46(95%信頼区間:1.31-1.64)だった。
〇考察
 本研究は仮説「学齢期にいじめ被害の経験を持つ労働者は、現在の⼼理的苦痛の程度が⾼い」を⽀持する結果を得た。⼼理的苦痛を訴える労働者の健康管理において、現在の職業上のストレスだけでなく、いじめ経験など過去の対⼈関係についても念頭に置くことの有⽤性が⽰唆された。

【研究2】
〇⽬的
 労働者の職場いじめ被害・ネットいじめ被害と⼼理的苦痛との関連について、以下の仮説を⽴て横断調査研究を実施した。
 仮説:職場いじめ・ネットいじめの形態によって、⼼理的苦痛の起こりやすさは異なる。
〇対象と⽅法
 2021年1⽉現在、休職中ではない正社員1,200名(男性800名、⼥性400名)を対象とし、無記名の⾃記式アンケートによる横断調査を実施した。性別、年齢、婚姻状況、最終学歴、職位、世帯年収、ICT機器使⽤頻度、SNS等利⽤状況、テレワークの頻度、パーソナリティ特性、職業性ストレス、⼼理的苦痛、職場いじめ被害、ネットいじめ被害に関して調査した。職業性ストレスを評価するためにBSJSを、⼼理的苦痛を評価するためにK6を⽤いた。職場いじめ被害を評価するためにShort-Negative Acts Questionnaire(S-NAQ)、ネットいじめ被害を評価するためにInventory of Cyberbullying Acts at Work(ICA-W)を⽤いた。S-NAQとICA-Wの各質問項⽬に対して主因⼦法による因⼦分析を⾏った。3因⼦を仮定して主因⼦法・Promax回転による因⼦分析を⾏い、下位尺度間の相関を算出した。S-NAQとICA-Wの下位尺度「なし」「あり」を独⽴変数、⼼理的苦痛を従属変数とするロジスティック回帰分析を⾏った。
〇結果
 回答者1,200名のうち、過去半年間に何らかの職場いじめを受けている労働者は46.7%、何らかのネットいじめを受けている労働者は22.9%であり、職場いじめ被害・ネットいじめ被害が現在の⼼理的苦痛と有意な関連を認めた。特に、のけものにされたり陰⼝や噂を広められたりといった「職場での疎外」タイプ、悪質ないたずらをされたり敵意を持った反応をされたりといった「職場での敵視」タイプの職場いじめ被害のある者の⼼理的苦痛は、性別、年齢、婚姻状況、最終学歴、職位、世帯年収、ICT機器使⽤頻度、SNS等利⽤状況、テレワークの頻度、職業性ストレス、パーソナリティ特性による調整後も有意な正の関連を認めた(「職場での疎外」オッズ⽐:1.47、95%信頼区間:1.03-2.09、「職場での敵視」オッズ⽐:2.92、95%信頼区間:1.69-5.03)。
〇考察
 本研究は仮説「職場いじめ・ネットいじめの形態によって、⼼理的苦痛の起こりやすさが異なる」を⽀持する結果を得た。いじめの発⽣予防、早期発⾒、再発防⽌といった予防医学的観点を取り⼊れた職場いじめ・ネットいじめ対策を、職場全体で検討し取り組むことが有効であると考えた。

【結語】
 良好な⼈間関係形成は、良好なメンタルヘルスに必要不可⽋である。本研究で得た知⾒をもとに、労働者個⼈への⽀援と職場全体の対策の双⽅からメンタルヘルスの維持向上に尽くしていきたい。

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