東京慈恵会医科大学附属病院における硬性気管支鏡の導入 (第137回成医会総会一般演題)
概要
鉗子など複数の器具を同時に使用し処置ができるものである.その歴史はKillian が1897異物除去に硬性鏡を用いたことが始まりであり,その後軟性気管支鏡が開発され衰退したが,近年気管内治療の発展に伴い有用性が見直されてきた.呼吸器外科では2019年末にEFER 社の硬性気管支鏡セットを導入した.適応疾患は大量喀血や気管狭窄,気管内腫瘍などで腫瘍減量やステント留置などを行う.これまでに3症例に対し硬性鏡による処置を行ったので報告する.症例1:72歳男性.右肺腺癌Stage IVB にて化学療法中.2ndline 開始前に気管支内浸潤に対し閉塞予防目的で硬性鏡下に処置を施行.腫瘍は中間気管支幹から上葉枝分岐手前までポリープ状に発育しておりスネア,コアリングしながら腫瘍減量し閉塞解除.上葉枝,中葉枝,B7の開通が得られた.症例2:53歳女性.胸腺腫術後再発に対し化学療法施行後.腫瘍が右気管支に浸潤し右肺の広範な無気肺認めていた.硬性鏡下に処置施行.右気管支入口の腫瘍をスネアで減量し末梢へ進んだ.中間幹は中葉枝の分岐まで,上葉枝はB1, B2入口部が見えるまで減量できた.処置後右上葉の含気が得られた.その後後中間気管支幹に再び腫瘍が突出してきたため5 ヵ月後に再度硬性鏡下に減量を行った.症例3:68歳男性.進行食道癌(cT4N3M0cStageIVb)に対し化学放射線療法後PR であった.4 ヵ月後に呼吸苦を主訴に救急外来受診し多発肺転移と声門より10 ㎝末梢に気管狭窄(最狭窄径4mm)を認めた.入院し硬性鏡にて狭窄部を切削し20% 程の拡張が得られ症状軽快し退院.生検結果で悪性所見を認めず放射線治療による瘢痕性狭窄と考えた.1 ヵ月後さらなる症状改善目的で気管ステント留置術を施行.X 線透視下にUltraflex 気管気管支用ステントを留置.翌日には胸部X 線検査にてステントの完全拡張を認め,気道狭窄音は消失.呼吸困難症状も著名に改善した.