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大学・研究所にある論文を検索できる 「マグノン-フォノン-ポラリトンの時間分解イメージング」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マグノン-フォノン-ポラリトンの時間分解イメージング

松本, 慧大 MATSUMOTO, Keita マツモト, ケイタ 九州大学

2022.03.23

概要

マグノン (スピン波)やフォノンなどの準粒子同士や電磁波などが結合することで,準粒子単体よりも多くの特性を持ち操作性に富むことが知られている.準粒子単体であっても電磁波と結合して物質内を長距離伝播することができ,空気中や異なる媒質間も伝播する.これら準粒子やその結合はすべて光でコヒーレントにアクセス可能であるため,多くの準粒子結合に関する研究が光を用いて行われている.しかしながら,マグノンとフォノンと電磁波が結合したような,複数の準粒子の相互作用は基礎・応用物理的に興味深いにもかかわらず,研究の数は少ない.そこで本研究では,光を用いて複数の準粒子結合の存在と物理を明らかにすることを最終目的として,それに必要な準粒子同士が結合した際の物理的特性や伝播特性を調べた.

はじめに、光で誘起したスピン波が電磁波と結合することを確かめて,物理を明らかにするために,空気中を乗り越えて伝播するスピン波を実験的に観測し理論的な裏付けを行った.実験では磁性体薄膜試料 2 枚を,ギャップを空けて配置することで空気ギャップを人工的に作成した.片方の試料の端で光励起されたスピン波が空気ギャップを乗り越えてもう一方の試料端まで伝播することを,カメラを用いた時間分解ポンプ・プローブイメージングすることにより実証した.このスピン波の伝播ダイナミクスは理論計算とシミュレーションによって再現することができ,スピン波が双極子相互作用を通して電磁波と結合していることがわかった.さらに,空気ギャップを乗り越える物理的起源を明らかにするため,理論計算を用いて空気ギャップを透過するスピン波の透過率と位相シフトを得た.その結果,磁性体外の空気ギャップ中では,スピン波の振幅が指数関数的に減衰するという,光のエヴァネッセント波との類推で説明できることがわかった.

次に、マグノンとの相互作用の議論だけでなく,フォノンと電磁波との相互作用の理解を深めるために,伝播ダイナミクスをイメージングし,数値シミュレーションを行った.フォノンが電磁波と結合した素励起 (フォノン-ポラリトン)は,主に強誘電体や半導体で観測され,光速の数 10%程度の伝播速度と数 cm もの伝播距離をもつことが知られている.我々はプローブ光のストークスパラメータをカメラでポンプ・プローブ測定するという独自の手法を用いることで,フォノン-ポラリトンに伴う電磁波波形のイメージングと理論的な裏付けに成功した.これにより,フォノン-ポラリトンの電磁波が異常波と正常波とで直交しており,それぞれが異なる伝播速度を持つことが明らかになった.

最後に,上記すべての要素を取り入れた,マグノンとフォノン-ポラリトンの結合の検証を行った.両者を同時に励起・観測するために,強誘電体かつ反強磁性体であるマルチフェロイック物質を対象とした.まず,局在したマグノンとフォノンが独立に励起されることを実験的に明らかにした.次に,この物質においてフォノン-ポラリトンが励起されていることを確かめ,そのフォノン-ポラリトンの電場と磁場成分の両方がマグノンと結合していることを,ポンプ・プローブイメージング測定した波形と理論的考察から示した.この測定により,単一物質におけるマグノン-フォノン-ポラリトンが初めて確認された.さらに,マグノンとフォノン-ポラリトンが結合した素励起の温度依存性を測定したところ,マグノンの温度依存性と一致していることがわかった.

以上のように,本研究では磁性体や強誘電体,マルチフェロイック物質において,マグノンやフォノンや電磁波がそれぞれ結合しながら伝播する現象の物理を明らかにした.この研究は,電場・磁場・温度などの外部パラメータによる操作性に富んだ,省電力・高速な情報伝達へ向けた研究の一助となると期待される.

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