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大学・研究所にある論文を検索できる 「Ligilactobacillus agilisの動物腸管内での生存における運動性および走化性の役割」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Ligilactobacillus agilisの動物腸管内での生存における運動性および走化性の役割

鈴木 駿也 東京農業大学

2022.09.01

概要

乳酸菌は一般的にヒトや動物の腸管内に生息し,宿主の健康に寄与する共生細菌として知られている。これら乳酸菌の大部分は非運動性であるが,一部はべん毛を持ち運動性を示す。しかし,運動性乳酸菌に関する知見は少なく,どういった動物種の腸管に共生するのか,なぜ運動性を示すのか,さらにはどのような物質を感知し,遊走するのか(走化性)など,生態については不明な点が多い。本研究では運動性乳酸菌の検出・分離法を検討し,その宿主域を調査した。また,多様な動物種の腸管に生息することが判明した運動性乳酸菌Ligilactobacillus agilisにおいて,運動性・走化性が腸管内で果たす役割を明らかにすることを試みた。

 まず多様な動物由来の糞便を対象に運動性乳酸菌の選択的な検出・分離を試みた。運動性乳酸菌15菌株の運動性関連遺伝子群を対象に相同性比較及びアライメント解析を行い,保存性が高かったfliGを標的遺伝子としてプライマーを作製した。このプライマーを用いて糞便試料から抽出したDNAを鋳型にPCRを行ったところ,44/120の試料でfliG遺伝子の増幅が確認された。次に,45の糞便試料を軟寒天MRS培地に穿刺・培養後,運動性により培地中に拡散した菌体の分離を試みた。その結果,七面鳥やリスザルなど新規の分離源を含む8つの試料からL.agilisを,1つの試料からLigilactobacillus ruminisを分離した。これらの結果から,L.agilisが広く恒温動物の腸管内に共生していることが明らかとなった。

 L.agilisにおいて運動性が宿主腸管への定着に寄与するという仮説に基づき,その検証を行った。べん毛のモータータンパク質MotBのアミノ酸置換により,運動性を欠失したL.agilis変異株を作製した。ストレプトマイシンの投与により競合する腸内細菌の生育を抑制させたBalb/cマウスへ,運動性と非運性L.agilisをそれぞれ経口投与し,糞便中の各L.agilisの菌数を経日的に測定した。その結果,運動性を保持する方が糞便中の菌数は高い傾向にあった。また,無菌マウスにおいても同様の腸管定着性試験を行ったところ,運動性の有無で糞便中の菌数に変化は無かった。一方,腸管における各L.agilisの局在を調べた結果,回腸の粘液層でより多くの運動性L.agilisが検出された。これらのことから,他の腸内細菌が存在する腸管内で,L.agilisは運動性により粘液層へと移動し,定着性を向上させていることが推察された。

 L.agilisの腸管定着に運動性の関与が示唆されたため,走化性試験によりL.agilisの腸管由来物質に対する走化性を調べた。その結果,L.agilisは細胞傷害性を示す胆汁酸の構成成分や低pH,腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸から忌避する一方で,粘液の主成分であるムチンへ遊走することが分かった。また,腸管由来の非運動性乳酸菌3菌種とL.agilisの酸や胆汁酸に対する耐性を調べたところ,非運動性乳酸菌と比べてL.agilisの酸・胆汁酸耐性は低かった。これらのことから,L.agilisは走化性により他の腸内細菌や酸・胆汁酸から逃れて粘液層へと向かうことで,腸管内での生存・定着性を向上させていることが示唆された。続いて,走化性物質を認識する受容体の同定を試みた。L.agilisゲノム上には推定走化性受容体遺伝子が5つ(mcp1~mcp5)存在し,これらをそれぞれもしくは全て欠失させたL.agilisを用いて走化性試験を行った。その結果,胆汁酸構成成分に対する走化性はMcp1またはMcp2欠損株で減弱した一方で,その他の物質に対する走化性は何れのMcp欠損株でも野生株と同程度であった。また,5つのMCP遺伝子を欠失した株では何れの物質に対しても走化性を示さなかった。これらの結果から,少なくともMcp1とMcp2が胆汁酸構成成分への走化性に関与し,その他の走化性にはMcp1からMcp5の複数のMcpが補完的に関与することが示唆された。

 これまでの研究より,非運動性乳酸菌は酸や胆汁酸には耐性を示し,腸粘膜に接着することで腸管内に定着すると考えられている。一方,本研究では運動性乳酸菌L.agilisが運動性・走化性を利用し,酸や胆汁酸からは逃れ,粘膜深部へと遊走することで定着性を高めていることが推察された。本研究を通じて,運動性乳酸菌が多様な動物腸管内に生息していること,さらには非運動性乳酸菌とは異なり運動性を駆使した生態をもつであろうことが示された。

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