光・電気・磁気機能性有機分子の分子軌道計算
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
光・電気・磁気機能性有機分子の分子軌道計算
Theoretical calculation of photo-, electro-, and magneto-functional organic systems
京都大学 大学院工学研究科 合成・生物化学専攻
松田 建児
研究成果概要
本研究では、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、我々のグルー
プで合成した ペリ位に二重にジフェニレン縮環したテトラアザナフタレンの分子間相互作
用を評価した。この化合物は七員環構造に由来して分子の長軸方向に 98°と大きくねじれた
構造を示すことが X 線構造解析により分かっていた。分子の長さに対するねじれ度合いは
13.0°/Å であり、これまで合成された有機 π 共役化合物の中で最大級の値となるものである。
結晶中では van der Waals 半径の和よりも短い C…N 間距離 3.09 Å で近接した直行型の無
限一次元鎖が形成されていた。結晶構造から抽出した 2 分子についてエネルギー分解解析
(ALMO-EDA/ωB97M-V/)を行った結果、ビフェニレン部位の分散力やピリダジン間の静電
相互作用に加えて、ピリダジンの孤立電子対に由来する軌道(HOMO–1)とテトラアザナ
フタレンの π*軌道(LUMO+1)の間に電荷移動相互作用による安定化が示唆された。これ
はカルボニル化合物以外で lp/π*相互作用による超分子構造が見いだされた珍しい例である。
発表論文(謝辞あり)
M. Hisada, D. Shimizu, K. Matsuda J. Org. Chem. 2022, 87, 9034–9043.
M. Hisada, D. Shimizu, K. Matsuda Org. Lett. 2022, 24, 3707–3711. ...