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大学・研究所にある論文を検索できる 「てんかん重積状態発症早期にcryptogenic NORSEを予測する臨床情報に基づいたスコア」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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てんかん重積状態発症早期にcryptogenic NORSEを予測する臨床情報に基づいたスコア

栁田 敦子 北里大学

2021.07.20

概要

【序論】
 newonset refractory status epilepticus (NORSE)は、新規に発症した、発症時には原因が特定できていない難治性てんかん重積状態を示す名称である。十分な検索を行ってもなお、原因が特定されない場合にはCryptogenic NORSE (C-NORSE)と呼ばれている。2015年に報告されたNORSE130例のコホート研究によると、 NORSEの約半数はC-NORSEであったが、残りは二次性であった。二次性の場合は、様々な神経細胞表面(neuronal surface : NS)に対する§己抗体(抗NS抗体)が検出されている。同定されている抗NS抗体の中で最も多いのはTV me thyl-D - asp art ate receptor (NMDAR)に対する抗体である。抗NS抗体陽性のNORSEでは、抗てんかん薬に加え、抗NMDAR脳炎に準じた免疫療法の早期導入が推奨されている。一方、 C-NORSEでは明確な治療指針はないが、病態に神経炎症が関与していることが示されており、炎症や免疫反応を抑制する薬剤も使用されてきている。しかし、現時点では有効性が証明された治療法はなく、機能予後も不良である。C-NORSEと二次性の NORSEの鑑別には、抗NS抗体検査が必須であるが、実臨床上ではてんかん重積状 態発症早期に抗体結果を得ることは難しく、両者の鑑別には時間を要する。当教室では、てんかん重積発症早期にC NORSEと二次性NORSEを鑑別する方法として、C-NORSEと抗NMDAR脳炎の臨床像の違いに基づいて、6項目から構成される簡易な臨床スコア(C-NORSE score ; 0~6点)を考案した。5点以上のhigh scoreの場合には、抗NS抗体が検出される可能性は低いことを少数例で検討し、C-NORSE scoreの第 1 報を幸艮告 した (Iizuka T, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2017;4e:e396)。

【目的】
 てんかん重積状態発症早期に得られる臨床情報に基づいたスコア(C-NORSE score)が、C-NORSEを予測するか否かを明らかにし、C-NORSE scoreの有用性を 検討する。

【方法】
 2007年1月1日から2019年12月31日までの間に診断目的で抗NS抗体を測定した、発症時に原因が不明であった著明な運動症状を伴うてんかん重積状態(status epilepticus with prominent motor symptoms* SE-M) を呈した患者 83 例を対象に、C-NORSE scoreおよび臨床情報を後方視的に検討した。C-NORSE scoreは、①薬剤抵抗性のSE-Mを認める、②発症前は健康である、③SE-Mに先行する原因不明の発熱を認める、④SE-Mに先行する精神•行動異常や記憶障害を認めない、⑤経過中、口部•顔面•四肢に持続するジスキネジアを認めない、⑥左右対称性の頭部MRI異常を認める、の6項目で構成される。各項目は1点であるが、項目①と②は必須項目とし、5点以上をhigh score、4点以下をlow scoreと定義した。抗NS抗体は、バルセロナ大学のDalmau研究室にて、ラット脳凍結切片を用いた immunohistochemistry (IHC)と標的抗原を発現させたcell-based assayを用いて測定した。

【結果】
 83例中31例(37.3%)がhigh scoreで、52例(62.7%)がlow scoreであった。high score群では、low score群と比較し、SE-Mに先行する発熱(28/31 vs 24/52)、人工呼吸器装着(31/31 vs 36/52)、左右対称性の頭部MRI異常(26/31 vs 12/52)の頻度が高かったが、ジスキネジア(2/31 vs 30/52)の頻度は低かった。また、high score群では、SE-Mに先行する精神•行動異常や記憶障害(0/31 vs 27/52)、髄液中の Oligoclonal bands(0/27 vs 11/38)、随伴腫瘍(0/31 vs 13/52)、抗 NS 抗体(0/31 vs 29/52)は1例も認めなかった。最終的に83例中33例(発症年齢中央値:27歳、女性18例[54.5%])がC NORSEと診断された。5点以上のC-NORSE scoreの感度と特異度はそれぞれ、93.9%(95%CI 0.87-0.94)と100%(95%CI 0.95-1.00)であった。

【考察】
 本研究において、C-NORSE scoreは高い感度と特異度をもってC NORSEを予測し得ること、high scoreの場合は抗NS抗体が検出される可能性は低いこと、 C-NORSEは抗NS抗体陽性例とは異なる臨床的特徴を有していることが示された。 C-NORSEの病態は不明であるが、髄液中のInterleukin(IL)-6、1レ8、あるいはCX-C motif chemokine ligand10 (CXCL10)が上昇することが報告されていること から、自然免疫や神経炎症がC-NORSEの病態に関与している可能性がある。一方、 IHCを用いても、抗NS抗体を含めた自己抗体が検出されない点、髄液から oligoclonal bandsが検出されない点、ステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量静注療法など第一選択免疫療法への反応性が不良であることからも、抗NS抗体を介して発症する_己免疫性脳炎とは異なっている。しかし、細胞傷害性T細胞の関与については十分に検討されていない。C-NORSEの治療方針は確立していないが、ケトン食の他、1レ1受容体阻害薬、IL-6受容体阻害薬など炎症抑制効果のある治療薬の有効性が検討されている。SE-M発症早期にC-NORSEを予測して治療方針を立てることは臨床上極めて重要であり、C NORSE scoreは臨床上有用なスコアである。

【結論】
 high C-NORSE scoreを有する患者は、抗NS抗体が検出される可能性は低く、SE-M発症早期にC-NORSEを予測する上で、このC NORSE scoreは有用である。

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