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障害者のエンパワメントとしてのパラリンピックムーブメントの射程

秋本, 成晴 筑波大学

2023.09.04

概要

〔博士論文概要〕
障害者のエンパワメントとしてのパラリンピックムーブメントの射程
令和4年度
秋本成晴
筑波大学大学院 人間総合科学研究科 体育科学専攻
第1章:序論

1964 年の東京大会、1998 年の長野大会に続き、我が国で3度目のパラリンピック大会が 2021
年に東京で開催された。もともと脊髄損傷者のリハビリテーションの一貫として始まったスポーツ活
動は、時代とともに規模を拡大し、肢体不自由者だけでなく視覚障害者や切断・脳性麻痺・知的障
害者の選手等も参加する障害者スポーツ最大の祭典へと発展し、今や「障害者のための社会変革」
を目的とする世界的なムーブメントとしての地位を確立するに至った。しかし、パラリンピックの大会
だけに注目すると、大会に出場できる「パラリンピアン」の数は非常に限定的であり、我が国でも
900 万人以上いると言われている障害者のうち、大会に出場できる選手の数は大会ごとにわずか
数 100 名程度となっている。故に、パラリンピック大会自体は障害者にとっても非常に排他性の高
い大会であることが分かる。このことから、パラリンピックはパラリンピック大会に出場する選手(=
「パラリンピアン」)だけでなく、パラリンピアン以外の障害者を積極的に「エンパワメント」することが
期待されている。
「エンパワメント」とは、概して従属的な立場に置かれた個人が、主体性を獲得するプロセスのこ
と(あるいは、当該個人をそうした方向性へと誘うこと)であり、近年のパラリンピック研究の一大テー
マとなっている。ところが、パラリンピックムーブメントにおけるパラリンピアン以外の障害者のエンパ
ワメントの様相については、先行研究において明らかになっていない点も多い。例えば、「パラリン
ピアン以外の障害者」のうち、「一般の障害者」については、パラリンピアンとの同一化を通してエン
パワメントされることが期待されているものの、パラリンピアンと異なる障害を有する一般の障害者に
対しては、上記がどこまで有効に機能するのかは明らかになっていない。あるいは、パラリンピック
大会にこそ出場しないものの、高い競技力を有する障害者アスリート(以下、「非パラリンピックアス
リート」)については、これまで議論の中で見過ごされてきた部分も多く、彼らがパラリンピックにおい
てどのように(ディス)エンパワメントされているのかは明らかでないところが多い。
つまりパラリンピックは、「パラリンピアン以外の障害者」をエンパワメントしていく必要があるにも
関わらず、実際には彼らのうち誰がパラリンピックからエンパワメントされているのか(パラリンピック
がエンパワメントし得る対象(=射程範囲))が、十分に明らかになっていないのが現状である。

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第2章:本論文の目的と各研究課題の構成

そこで上記問題を踏まえ、本研究では「障害者のエンパワメントとしてのパラリンピックムーブメント
の射程範囲を明らかにすること」を目的とした。そして本目的を達成するために、以下3つの研究課
題を設定した。
第3章:研究Ⅰ

先述の通り、パラリンピアンとの同一化がもたらす「一般の障害者」へのエンパワメント作用につ
いては、障害種を超えてどこまで有効に機能するのかが先行研究において十分に検討されてこな
かった。そこで研究Ⅰでは、パラリンピアンとの同一化がもたらす一般の障害者へのエンパワメント
作用が、障害種を超えてどこまで有効に機能するのかを明らかにすることを目的とした。
上記目的を達成するため、肢体不自由特別支援学校の中学部に在籍する者 44 人、聴覚障害
特別支援学校の中学部に在籍する者 119 人、対照群として地域の中学校の通常学級に在籍する
生徒 145 人を対象に質問紙調査を実施し、統計的な分析を行なった。
その結果、聴覚障害群は肢体不自由群と比べて十分にエンパワメントされていないことが明らか
になった。これは、聴覚障害者に対してパラリンピアンとの同一化作用が機能しなかったことによる
ものと考えられる。故に、一般の障害者のエンパワメントを考えた際に、パラリンピアンとの同一化作
用を通してのエンパワメントが期待できるのは、あくまで「パラリンピアンと同じ障害」を有する者のみ
であると結論付けられた。
今後は、現在パラリンピアンと異なる障害を有するが故にパラリンピックからエンパワメントされ難
い状態に置かれている障害者に対しても、パラリンピックに代わる大会を発展させることで、アスリ
ートとの同一化とそれに伴うエンパワメントの機会を担保していくことが求められるだろう。
第4章:研究Ⅱ

これまでの研究では、「非パラリンピックアスリート」がパラリンピックからどのような形で(ディス)エ
ンパワメントされ得るのか十分な議論が行われてこなかったが故に、パラリンピックがエンパワメント
し得る対象(=射程範囲)もまた明らかになっていないのが現状である。そこで本研究では、パラリ
ンピックがもたらす非パラリンピックアスリートへのエンパワメント作用の射程範囲を見極めるために、
パラリンピックが非パラリンピックアスリートをどのように(ディス)エンパワメントしているのか、その現
状を明らかにすることを試みた。
上記目的を達成するため、本研究ではロービジョンフットサルのトップ選手にインタビュー調査を
行なった。ロービジョンフットサルとは、弱視の選手を中心に親しまれているスポーツで、現在パラリ
ンピックの競技種目としては採用されていない。なお、分析方法としてはテーマティックアナリシス
法を用いた。
その結果、パラリンピックムーブメントによってもたらされる障害(者スポーツ)への漠然とした認知
や理解の向上等が、対象者を少なからずエンパワメントしていることが明らかになった。一方で、ブ
ラインドサッカー等のパラリンピック競技種目との各種格差等が、対象者をディスエンパワメントして

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いることも明らかになった。また、コンテクスト性の低い競技を中心に構成されたパラリンピック大会
が障害者スポーツのスタンダードとして存在するが故に、障害者スポーツのコンテクストを丁寧に汲
み取る文化が社会の中で形成されづらくなっていることが示された。その結果、シンボルを有さな
い(=コンテクスト性の高い)競技に従事する対象者は、コンテクストを丁寧に読み取ってもらえず、
彼らはその卓越性に関して適切な評価を受けられていないことが明らかになった。こうした点に関
して、今後は、障害者スポーツのコンテクストを丁寧に汲み取るという社会的な態度の形成、あるい
はシンボルの創出に関する議論が活発化していくことが望まれる。
第5章:研究Ⅲ
第6章:総括

※ 第5章および第6章については、学術ジャーナルへの投稿を予定しているため非公開。 ...

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