リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「<判例研究>賃借したマンションの専有部分をグループホームとして使用することは建物区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとされた事例」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

<判例研究>賃借したマンションの専有部分をグループホームとして使用することは建物区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとされた事例

直井, 義典 筑波大学

2023.03.15

概要

判例研究

賃借したマンションの専有部分をグループホームとして
使用することは建物区分所有法 6 条 1 項の「区分所有者の
共同の利益に反する行為」に該当するとされた事例
直井 義典

(共同利益背反行為の停止等請求事件、大阪地裁平成30年(ワ)第5280号、令和 4 年 1 月20日判決、請
求認容(控訴)、金判1647号32頁)
【事実】
 本件マンションは昭和63年に新築された地下 1 階、地上15階建ての区分所有建物であり、1 階の 9 戸の
専有部分は店舗、2 階から15階までの251戸の専有部分はすべて住戸である。X は本件マンションの管理
組合(以下、
「本件管理組合」という)の管理者(建物区分所有法(以下、「法」という)25条 1 項)であ
る。Y は本件マンションの専有部分のうち316号室と708号室の 2 戸(以下、合わせて「本件各住戸」とい
う)を各区分所有者から賃借して、それぞれ遅くとも平成17年と平成15年から障害者グループホームとし
て使用している社会福祉法人である。本判決の時点では、本件各住戸で計 6 名(いずれも、療育手帳の区
分は A 判定(重度の知的障害)
、障害支援区分は 4 または 5(区分は 1 から 6 までであり、数字が大きい
ほど支援の度合いが高い)の者である)が入浴・排せつ・食事等の介護、住居家事援助等の Y の提供す
る福祉サービスを利用している。本件各住戸に入居している利用者は、起床後 Y の職員が調理した食事
をとり、午前 9 時頃に Y の職員の付添いで作業所又はデイサービスへ出発する。利用者は、午後 4 時前
後に各部屋に戻り、Y の職員が調理した食事をとり、入浴等の後に就寝する。Y は、316号室については
宿直者を午前 8 時頃まで常駐させているが、708号室については巡回員による巡回のみで対応している。
Y の職員は、利用者が作業所等に行っている間は本件各住戸には滞在していない。本件各住戸の

はY

の職員が管理しており、Y の職員は計 5、6 名で本件各住戸の担当を交代している。
 本件管理組合の定めた規約(以下、
「本件管理規約」という)12条 1 項は、「区分所有者は、その専有部
分を住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」と規定している。
 本件管理組合は、平成28年、消防署から、本件マンション内の住居のうち福祉施設が運営されている本
件各住戸には自動火災報知設備の設置が必要であるとの指摘を受け、同年 6 月 1 日付書面により、本件管
理組合は、本件各住戸において福祉施設を運営することは本件管理規約12条 1 項に反するとして、平成29
年 5 月31日までに退去するように求めた。Y は、本件管理組合に対し、平成28年 7 月 7 日付書面により、
本件各住戸の使用は本件管理規約に違反しないとして、退去要求に応じない旨を通知した。
 本件管理組合は、平成28年11月19日の通常総会において、専有部分を民泊・シェアハウスに供すること
の禁止と並んで、専有部分をグループホームに供することの禁止(本件管理規約12条の 4 )、専有部分を
特定防火対象物となる用途に供すことの禁止(同12条の 5 )の規定を追加する旨の決議をした。
 本件管理組合は、平成29年 6 月21日付書面により、Y に対して、本件各住戸の使用を速やかに停止する
よう求めたが、Y は、同年 7 月 6 日付書面により、本件各住戸の使用は本件管理規約に違反しないとして、
使用停止要求に応じない旨を通知した。
 民事調停も不調に終わったことから、X が Y に対して本件各住戸をグループホームとして使用する行
為の停止、ならびに、民事調停及び訴訟提起に要した費用の支払を求めて提訴した。X は、Y が本件各住
戸をグループホームとして使用することは、本件管理規約12条 1 項に違反し、法 6 条 3 項が準用する同条
1 項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当する、と主張した。これに対して Y は、これら
131

筑波法政第90号(2023)

の主張を否認するとともに、本件管理規約12条の 4 及び12条の 5 の各規定が公序良俗に反して無効であ
る、また、これらの規定を追加する旨の変更は法31条 1 項後段に該当するにも拘らず本件各住戸の区分所
有者の承諾を得ていないから無効である、本件管理組合の Y に対するグループホーム事業の停止請求及
び提訴等の決議が障害者差別解消法 8 条 1 項の「不当な差別的取扱い」及び障害者基本法 4 条 1 項の「障
害を理由」とする「差別」に該当し無効である、と主張した。
【判旨】
請求認容。
1  Y によるグループホームとしての使用は本件管理規約12条 1 項に違反するか

「本件管理規約……は、区分所有法30条 1 項の「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に
関する区分所有者相互間の事項」として定められた規約であり、区分所有者の共同の利益を増進し、良好
な住環境を確保することを目的とし( 1 条)、区分所有者は、その専有部分を住宅として使用するものと
し、他の用途に供してはならないと定めている(12条 1 項)。本件マンションの専有部分が住宅以外の用
途に供された場合、良好な住環境が確保されなくなるおそれがあるだけでなく、本件マンションの維持管
理の在り方に変動が生じ、建物又は敷地若しくは附属施設の管理に要する負担及び費用が増加するなどし
て、区分所有者の共同の利益が損なわれるおそれがある。
 そうすると、区分所有者又は占有者が専有部分を住宅として使用しているというためには、住宅として
の平穏さが確保される態様、即ち生活の本拠として使用しているとともに、その客観的な使用の態様が、
本件管理規約で予定されている建物又は敷地若しくは附属施設の管理の範囲内であることを要すると解す
るのが相当である。」
 本件において、Y が本件各住戸を生活の本拠として使用しているか否かについては、本件各住戸に出入
りする者が利用者及び被告の担当職員に限られており、不特定多数の者が本件各住戸に出入りしているこ
とを認めるに足りる証拠はないとして、利用者の生活の本拠として本件各住戸を使用しているとする。
 そして、本件各住戸の客観的な使用の態様が、本件管理規約で予定されている建物又は敷地若しくは附
属施設の管理の範囲内であるか否かについては、以下の理由でこれを否定する。本件マンションは、本来、
特定防火対象物としての消防法令上の規制を受けない建物である。しかし、本件グループホームが存在す
ることにより、本件マンション全体が、特定防火対象物としての複合用途防火対象物に該当することにな
る。そのため、新たに上記の防火対象物点検義務を負担しなければならなくなったものと認められる。と
ころが、本件管理規約には、本件マンションが特定防火対象物となる用途に供されることを前提とする火
災の予防等の対策を定めた規定はないから、このような防火対象物点検は、本件管理規約で予定されてい
る建物又は敷地若しくは附属施設の管理の範囲外のものといえる。
 Y は、本件管理組合が消防関係法令に基づき本件マンションに消防用設備等を設置しなければならない
か否かは、Y が本件各住戸を本件管理規約12条 1 項の「住宅」として使用しているか否かとは無関係であ
ると主張する。しかし、
「専有部分が住宅以外の用途に供された場合、良好な住環境が確保されなくなる
おそれがあるだけでなく、管理の在り方に変動が生じ、区分所有者の共同の利益が損なわれるおそれがあ
るため、本件管理規約12条 1 項の規定は、専有部分の使用の用途を住宅に限定したものと解される。本件
マンションの専有部分が同項の「住宅」以外の用途に供されているか否かを判断するに際し、本件管理組
合の業務等に及ぼす影響の有無を考慮することは合理性を有すると解される。」
 以上より、
「Y が本件各住戸をグループホームとして使用することは、本件管理規約12条 1 項の規定に
違反する行為に該当する。」
2  Y によるグループホームとしての使用は法 6 条 1 項の「共同の利益に反する行為」に該当するか
 法 6 条 1 項の「区分所有者の共同の利益に反する行為に該当するかどうかは、当該行為の必要性の程度、
これによって他の区分所有者が被る不利益の態様、程度等の諸般の事情を比較考量して決すべきものであ
ると解するのが相当である。
 これを本件についてみると、……Y が本件各住戸をグループホームとして使用する行為は、本件管理規
132

賃借したマンションの専有部分をグループホームとして使用することは建物区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとされた事例(直井)

約12条 1 項の規定に違反するものである。本件管理規約は、建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又
は使用に関する区分所有者相互の利害調整のための共通規範として制定されたものである(区分所有法30
条参照)から、本件管理規約に違反する行為は、共同の利益に反する行為に該当するか否かの考慮要素と
して重視されるべきである。
 また、……Y が本件各住戸をグループホームとして使用することにより、本件管理組合は、法令に基づ
き、本件マンションにつき防火対象物点検義務を負うとともに、グループホームの用途に供されている本
件各住戸への自動火災報知設備の設置義務を負うこととなり、管理業務の負担を余儀なくされている。」
本件管理組合は、現在に至るまで、共同住宅特例の適用を受けているが、「将来にわたり、本件マンショ
ン内の消防用設備の設置の要否につき、福祉施設等の住戸利用施設の増減にかかわらず、共同住宅特例の
適用において、このような住戸利用施設が存在しない場合と同等の取扱いがされることが確実であること
を認めるに足りる証拠はない。こうした負担が現実化した場合には、本件管理組合の経済的負担等に影響
を及ぼすことは明らかであるし、こうした負担が現実化しない場合であっても、本件管理組合は、福祉施
設等の住戸利用施設が存在する限り、こうした負担が現実化する場合に備えた対応を検討しなければなら
ないから、他の区分所有者が被る不利益の態様や程度を軽視することはできない。」

「これに対し、Y が本件各住戸で営む障害者グループホーム事業は、障害を有する利用者に共同生活の
場所を提供するという公益性の高い事業であることは否定できない。しかしながら、Y が本件管理規約12
条 1 項の規定に違反して本件各住戸において事業を営むことによる利益が、他の区分所有者が被る不利益
よりも優先されるとは認められない。なお、Y は、本件マンション以外のマンション等においてもグルー
プホームを経営していることが認められる……から、Y が本件各住戸以外の建物においてグループホーム
を経営することができないとはいえない。」
 以上より、
「Y が本件各住戸をグループホームとして使用する行為は、区分所有法 6 条 3 項により準用
される同条 1 項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当すると認められる。したがって、X は、
Y に対し、区分所有法57条 4 項により準用される同条 1 項に基づき、本件各部屋をグループホームとして
の使用する行為の停止を求めることができる。」
 本件管理組合が防火対象物点検義務を負い、将来における消防用設備設置に伴う金銭的負担の危険を負
う点については、「本件管理組合と Y との間において Y がそのような費用を負担する旨の合意が成立した
ことを認めるに足りる証拠はないし、グループホームとは無関係の専有部分の区分所有者にそのような費
用を負担させるべき合理的理由を見いだすことはできない。」と判示する。
3  本件管理組合による Y に対するグループホーム事業の停止請求等が、障害者差別解消法 8 条 1 項の
「不当な差別的取扱い」及び障害者基本法 4 条 1 項の「障害を理由」とする「差別」に該当するか

「障害者差別解消法 8 条 1 項及び障害者基本法 4 条 1 項の「差別」とは、いずれも、障害を理由とする
差別の解消を目的とする上記各法律の目的等に鑑み、不利益取扱い一般を指すものと解される。また、障
害者基本法 4 条 1 項の「障害を理由」とする行為かどうかについては、少なくとも、障害ないしこれに随
伴する症状、特性等が存在せず、又は不利益取扱いの行為者がこれらを認識していなかったとすれば、不
利益な取扱いが行われていなかったであろうという関係が認められる場合には、これに当たるものと解す
るのが相当である。」
 本件管理組合による Y に対するグループホーム事業の停止請求が「障害者基本法 4 条 1 項の障害を理
由とする不利益な取扱いに当たるかどうかは、障害を有しない者が本件管理規約12条 1 項の規定に違反し
た場合における本件管理組合の対応と比較して検討するのが相当である。障害を有しない者が本件管理規
約12条 1 項の規定に違反した場合における本件管理組合の対応についてみると、本件全証拠に照らして
も、障害を有しない区分所有者又は占有者が専有部分を住宅以外の用途に供した場合であれば、本件管理
組合が当該区分所有者又は当該占有者に対して当該専有部分を住宅以外の用途に供する行為の停止を求め
なかった事情が存在したとは認められない。そうすると、本件管理組合が被告に対して本件各住戸をグ
ループホームとして使用する行為の停止を求めることは、障害を理由とする不利益な取扱いであるとは認
められない。
」 
133

筑波法政第90号(2023)

【評釈】
1  本判決は、第 1 に、マンション専有部分の賃借人が専有部分をグループホームとして使用することは、
専有部分を住宅以外の用途に供してはならないとする本件管理規約に反する行為であって、法 6 条 1 項の
「共同の利益に反する行為」に該当するから、マンション管理組合は専有部分をグループホームの用に供
する行為の停止を求めることができること、第 2 に、上記行為停止要求等が障害者差別解消法 8 条 1 項の
「不当な差別的取扱い」及び障害者基本法 4 条 1 項の「障害を理由」とする「差別」に該当しないこと、
を判示したものである。
 マンション専有部分のグループホームとしての使用が法 6 条 1 項の「共同の利益に反する行為」に該当
するか否かについての初の判断であり、障害による差別の有無に関する判断を示した点でも注目すべき判
決である。
2⑴ 法30条 1 項は、建物又はその敷地等の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、同法のほ
か規約で定めることができると規定し、多くの区分所有建物において規約中に使用方法に関する定めが置
かれている。
 区分所有者又は区分所有者からの賃借人の行為が規約に違反するものであるかが争われた裁判例は本判
決以前にも存在していた。具体的に問題となったのは、動物の飼育と住戸以外の目的での専有部分の使用
である。
 動物の飼育が問題となったのは次の 2 件である。
 ①東京地判平成 6 年 3 月31日判時1519号101頁は、規約に基づく細則により犬猫の飼育が禁止されてい
たところ、この細則に反して犬猫を飼育する者がいたために妥協策として当時犬猫を飼育している者で構
成するペットクラブを設立させ、新規加入を認めず、現に飼育する犬猫一代限りでの飼育を認めることで
ペットクラブを自然消滅させることとしていたところ、被告らが新たに犬を飼育した事案である。被告ら
の犬の飼育が細則違反である点には争いがなく、ペットクラブ会員による犬猫の飼育との対比で平等原則
に違反するとして細則規定の効力が否定されるかが争われたが、本判決は規定を有効とした。
 ②東京高判平成 6 年 8 月 4 日高民集47巻 2 号141頁は、「具体的な被害の発生する場合に限定しないで動
物を飼育する行為を一律に禁止する管理規約が当然に無効であるとはいえない。」とする。②判決の事案
は、動物飼育を全面的に禁止する規約改正を法31条 1 項に定める被告の承諾なしに行ったというものであ
るが、ペットの飼育に関しては規約変更に承諾は不要とした。ただし、傍論として、「飼い主の身体的障
害を補充する意味を持つ盲導犬の場合のように何らかの理由によりその動物の存在が飼い主の日常生活・
生存にとって不可欠な意味を有する特段の事情がある場合には、たとえ、マンション等の集合住宅におい
ても、右動物の飼育を禁止することは飼い主の生活・生存自体を制約することに帰するものであって、そ
の権利に特段の影響を及ぼすものというべきであろう。」と判示する。そして、改正後の規約について、
例外措置として管理組合総会の議決により個別的に対応することは合理的な対処の方法であるとする。
 ①・②判決の事案のいずれも、被告による動物の飼育が規約・細則に違反することに争いがない、ある
いは明らかであったために、規約・細則違反の有無を判断するにあたっては、これらの文言を形式的に解
釈することのみで足りた。もっとも、②判決が傍論において、動物の飼育であっても盲導犬等の身体的障
害を補充する動物の場合には飼主の生活・生存を制約しないという観点から個別的な対応が求められると
の指摘をしており、規約の文言の形式的解釈を原則としつつそれに例外を認める余地を認めた点が注目さ
れる。
 住戸以外の目的での使用が問題となったのは、以下の各裁判例である。
 ③東京地八王子支判平成 5 年 7 月 9 日判時1480号86頁は、「区分所有者は、その専有部分を専ら住戸は
住戸として又は店舗は店舗として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」との定めが規約で
なされていたところ、専有部分の賃借人が住戸を事務所として利用した事案において、「右事務所使用は、
代表者以下二名が作業しているだけで、特に騒音等を出してはおらず、人の出入りも激しくないこと等を
考慮しても」規約の定める用途に違反するものであるとの形式的判断を示した。
 ④横浜地判平成 6 年 9 月 9 日判時1527号124頁は、被告ら夫婦が、妻の所有する専有部分を、その夫の
134

賃借したマンションの専有部分をグループホームとして使用することは建物区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとされた事例(直井)

経営する病院の看護師等の幼児保育室として使用していることが、住居としての使用に限定している規約
に違反するかが争われた事案である。④判決は、被告らが住居ではなく保育室として使用していることか
ら規約の定める使用方法に形式的に違反するものと認定しつつも、規約の文言の解釈にあたっては、法 6
条 1 項の「区分所有者の共同の利益」該当性の判断と同様に、「単に、一定の行為を禁止する規約がある
からといって、形式的にこれに該当する行為をすべて一律に禁止するということは相当ではなく、その規
約の趣旨、目的を集合住宅の居住者同士という観点から検討して、その当否を判断すべきであり、本件規
約20条も、区分所有者がその建物を住居専用に使用しないことで、組合員共通の利益が侵害され、良好な
居住環境が維持できなくなることを禁じているものと解される。」と判示した。そして具体的には、本件
病院の公共性、人員確保の必要性、本件マンションの住民らの受ける騒音・振動・通行の支障ほかの被害
及びその程度、本件マンションの所在地の環境が比較的閑静であること、被告らの経済的利益、被告らに
代替手段があること等を考慮して、住民らにおいてこのような使用を受忍すべきであるということはでき
ない、とする。
 ⑤東京地判平成17年 6 月23日判タ1205号207頁は、結論としてはカイロプラクティック治療院の使用禁
止請求が否定された事例であるが、
「治療院の使用態様は、その規模、予想される出入りの人数、営業時間、
周囲の環境等を考慮すると、事業・営業等に関する事務を取り扱うところである「事務所」としての使用
態様よりも、居住者の生活の平穏を損なう恐れが高いものといわざるを得ず、到底住戸使用ということは
できない。そうだとすると、「治療院」としての使用は、「住戸使用」には含まれず、住戸部分である本件
居室を治療院として使用する被告の行為は、本件管理規約12条に違反するものと解するのが相当である。」
との判示をしている。
 ⑥東京地判平成23年 3 月31日判タ1375号219頁は、専有部分の税理士事務所としての使用停止が求めら
れた事案につき、
「個々の使用方法が本件管理規約の住居専用規定に違反するか否かは,単に形式的に判
断すべきものではなく,その趣旨に即して,当該区分所有者が専有部分を住居に使用しないことによって
組合員共通の利益が害され,良好な居住環境が維持できなくなっているのかどうかを実質的に検討し,判
断すべきものと解される。
」と判示し、従前、住戸専用規定が厳格には守られていなかったこと、税理士
事務所の存在により騒音等の被害が生じているとは言えないこと等を理由として、請求を棄却した1。
 以上の 4 判決のうち③から⑤の 3 つの判決は、いずれも被告の使用形態が専有部分の用途を住戸に限定
する規約に反すると判示したものである。その際、ただ単に居住実態がないことのみをもって結論を導い
ているわけではない点、3 判決に共通している。もっとも、具体的な判断過程は 3 判決それぞれ異なる様
相を示す。③判決は、事務所使用の態様を考慮しても規約違反の結論は変わらないとするものであり、居
住実態の有無によって形式的に規約違反の有無を判断したのと変わらない。あえて事務所使用の態様に言
及したのは、規約を目的論的に解釈するべきであるとの考え方を否定するためであったものと考えられ
る。④判決は、一応は居住実態の有無による規約違反の有無の形式的判断をした上で、規約の文言の解釈
にあたっては規約の趣旨・目的を加味して法 6 条 1 項と同様の判断基準を持ち込むことで、規約違反の成
立範囲を限定する。⑤判決は、住戸使用と言えない理由を居住者の生活の平穏を損なう恐れに求めており、
居住実態の有無という形式的基準ではなく、規約によって住戸使用以外の使用が禁じられた目的に着目し
た目的論的解釈をするものである。
 それぞれの判決の元となる紛争実態の相違が反映されたという面もあるが、③判決は「住戸」という文
言を形式的に判断したものと変わるところはないのに対して、④判決・⑤判決は「住戸」という文言の形
式的解釈に止まらず、規約の趣旨・目的をも考慮する。この点、規約の趣旨・目的を考慮することは、④
判決においては住戸としての使用以外の用法であっても規約に違反しない可能性を認める方向に作用する
ものである。これに対して、⑤判決においては治療院としての使用を規約違反とする根拠として用いられ
ていることから、規約違反の成立範囲を拡大するものとして用いられているようにも見受けられる。以上
1 ⑥判決の控訴審判決である⑦東京高判平成23年11月24日判タ1375号215頁は、原判決を取り消し、税理士事務所として
営業のために使用することは法57条 1 項の「共同の利益」に反するとしたが、規約をどのように解釈するのかについて
は明言していない。
135

筑波法政第90号(2023)

から、④判決・⑤判決の判断枠組みは似て非なるものと評価することもできそうである。しかし、⑤判決
は治療院としての使用を規約違反と判断するものではあるが、事務所としての使用に比べて規約の目的に
反する程度が高いとされているのであって、住戸としての使用以外の用法のすべてが規約違反であると判
示するものではない。むしろ、事務所としての使用であっても規約の目的に反しないとする解釈を容認す
るものとも見られる。現に、⑤判決は、管理組合は住戸部分を事務所として使用している大多数の用途違
反を長期間放置し、かつ、現在に至るも何ら警告も発しないでおきながら、他方で、事務所と治療院とは
使用態様が多少異なるものとはいえ、特に合理的な理由もなく、しかも、多数の用途違反を行っている区
分所有者である組合員の賛成により治療院としての使用の禁止を求めることは、クリーン・ハンズの原則
に反し権利の濫用にあたるとしているのである。以上より、④判決・⑤判決は、規約違反該当性を判断す
るにあたって規約の文言以外の要素も加味するという共通の枠組みに依拠するものと言える。
 ⑥判決は規約の文言を実質的に解釈すべきであるとし、結論においても規約違反を否定したものであ
る。これは④判決・⑤判決と同様の枠組みに依拠し、かつ、規約違反を否定したものと位置づけられる。
⑵ 以上 6 つの裁判例を分析すると、動物の飼育の場合は住戸以外の目的での使用の場合に比べて規約違
反の有無について形式的な判断がなされる傾向があるともいえるが、規約・細則違反であることについて
争いがないか規約違反であることが明確な事案であったために目的論的解釈の余地がなかったことも影響
しているとも考えられる2。実際、②判決では身体的障害を補充する動物の場合には別個の解釈がなされる
可能性が指摘されている。よって規約違反の内容による判断枠組みの差異は大きくなく、規約違反の内容
がいかなるものであれ文言の形式的な適用をするものと目的論的解釈をするものという 2 つの系統に大き
く分けることができる。前者が①判決・②判決・③判決であり、後者が④判決・⑤判決・⑥判決である。
⑶ 本判決の事案は、社会福祉法人である Y が専有部分をグループホームとして使用しているというも
のである。利用者が専有部分において朝食・夕食をとり、入浴・就寝しているといった共同生活をしてい
るという意味では、グループホームとしての使用は生活の本拠としての使用にあたることから、本件管理
規約を形式的に解釈する限り規約違反はないとも評価できる。他方で、生活の本拠としているのが専有部
分の所有者や賃借人自身ではなく、賃借人である Y は事業を営んで人を住まわせているという点では、
事務所や民泊としての使用とも類似する面がある。さらに、本件においては、グループホームとして使用
することによって消防関連の費用が増加しているという点も無視できない。このようにグループホームと
しての使用には様々な側面があるが、本判決は規約違反の有無に関してどのような判示をしており、それ
は上記の裁判例との関係でどのように位置づけられるのだろうか。
 本判決は、専有部分を住宅として使用しているというためには、(i) 生活の本拠として使用しているこ
ととならんで、(ii) 使用態様が本件管理規約で予定されている建物等の管理の範囲内であることを要する
という。このうち (i) は「住宅」という文言から形式的に導かれる要素である。これに対して (ii) は本判
決に独自の概念である。それでは本判決は (ii) をどこから導き出してきたのだろうか。判旨でも引用した
ように、本判決は「本件マンションの専有部分が住宅以外の用途に供された場合、良好な住環境が確保さ
れなくなるおそれがあるだけでなく、本件マンションの維持管理の在り方に変動が生じ、建物又は敷地若
しくは附属施設の管理に要する負担及び費用が増加するなどして、区分所有者の共同の利益が損なわれる
おそれがある。」という。ここでは (ii) は、区分所有者の共同の利益を損なわないための 1 つの条件とし
て位置づけられている。④判決や⑥判決でも組合員の「共通の利益」への言及が見られ、その意味では本
判決が (ii) を提示したこと自体は特異なことではないとも言える。しかし、④判決・⑥判決はともに、
「共
通の利益」が害され良好な居住環境が維持できなくなるというように、共通の利益の侵害を良好な居住環
境の維持と並立させる。ここでは共通の利益とは静謐さ・セキュリティなどの非金銭的な価値を表すもの
と考えられる。これに対して本判決は共同の利益の侵害を負担・費用の増加といった金銭的価値に求めて
おり、これが (ii) にいう管理の範囲を逸脱するものと位置づけている。規約違反の有無を判断するにあた
り (i) 以外の要素をも加味しているという点では④判決から⑥判決と同様の判断枠組みに立つものと言え
2 もっとも、②判決の事案において被告は、犬の飼育が子の自閉症の治療に効果があるとの主張をしている。
136

賃借したマンションの専有部分をグループホームとして使用することは建物区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとされた事例(直井)

るが、実際の考慮要素には特異なものがあると言えよう3。また、本判決において (ii) は「住宅」概念を縮
小する方向に働く要素であり、④判決から⑥判決の目的論的解釈が「住戸」概念を拡張解釈する方向であっ
たこととは逆方向にはたらくものであって先行裁判例とは異なる方向性を示すものである。
3⑴ ある行為が規約に違反したというだけでは、その行為の停止等を求めることはできない。停止等を
求めるためには、法 6 条 1 項に規定する行為をした場合又はするおそれがある場合でなければならない
(法57条 1 項)4。
 そこで、いかなる行為が法 6 条 1 項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」であるかが問題となる。
 本判決は、
「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するか否かは、当該行為の必要性の程度、
これによって他の区分所有者が被る不利益の態様、程度等の諸般の事情を比較考量して決すべきものであ
ると解するのが相当、と判示する。この判示は、⑧東京高判昭和53年 2 月27日下民集31巻 5 ∼ 8 号658頁
をそのまま踏襲するものである。
 ⑧判決は、専有部分の外壁を開口し、換気装置を設置した行為が問題となったという事案につき、「開
口したままで放置しておいた場合には、壁面強度が弱くなり、延いては建物全体の安全性を弱める結果を
招来するおそれがあることが認められ」るとの認定をしている。
 同様に建物の不当毀損行為が問題となったものとしては、⑨東京地判平成 3 年 3 月 8 日判時1402号55頁
がある。ガス風呂

を設置するため構造上の共用部分である壁柱の部分に穴を開けて配管配線をした行為

が問題となった事例である。この事件の被告は一級建築士であったが、「各区分所有者がたとえ建築の専
門家であったとしても、それぞれ独自の判断により、悪影響を及ぼさないとの結論を下して、共有部分に
変更を加えること自体、現実には建物に有害なことではないとしても、有害となるおそれがあるために、
建物の管理又は使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為ということができる」と判示する。
 ⑧判決・⑨判決のいずれにおいても建物の安全性を損なうあるいは建物に有害である「おそれ」が問題
とされている。しかし、⑨判決の指摘する「おそれ」は⑧判決のそれとは異なり、客観的に安全性を弱め
るおそれを指すものではなく、他の区分所有者が感じるであろう主観的なものにとどまっている点で、こ
れらの判決の内容は必ずしも同一というわけではない。もっとも、⑧判決の事例においては建物の安全性
を損なうおそれが客観的に認められていたためにその旨の判示をしたものであり、建物の安全性を損なう
おそれが主観的なものに止まる場合には共同の利益に反しないと判示するものではない。また、⑧判決は
他の区分所有者が被る不利益の態様、程度を判断要素としており、ここにいう「不利益」が客観的なもの
に止まるのか主観的なものをも含むのかを明言していない。ここで問題となっているのが区分所有者の共
同の利益であることから、他の区分所有者がどのように感じるかという観点を無視することは適切ではな
く、危惧感や不快感といった主観的なものに止まるとしてもそれを加味するのが適切であると考えられ
る 5。
 建物の不当毀損行為以外に問題となるのは、動物の飼育・騒音・用法違反などである。これらの場合に
おいては「共同の利益に反する行為」該当性の判断要素を明確にしない裁判例も多く、また、明確にする
ものであっても判断要素は⑧判決の示したものと大きくは異ならない6。そこで以下では、建物の不当毀損
以外の事例で、本判決の事案との類似点があるものに限定して取り上げる。具体的には、防火・消火設備
3 もっとも、④判決は災害時の安全性も共通の利益に含んでおり、本判決の事案も災害時の安全性を確保するために金銭
を支出しなければならなくなることを共同の利益の侵害としているのであるから、先行裁判例とは全く異なる考慮をし
たものとまで断定するのは適切ではないと考えられる。
4 本件事案は専有部分の賃借人の行為が問題となったものであるから、法 6 条 3 項が準用する同条 1 項の行為の停止請求
が法57条 4 項に基づいてなされた。法 6 条 3 項は同条 1 項を準用していることから、賃借人等の専有部分の占有者の行
為であっても区分所有者自身の行為の場合と全く同様の基準で停止請求の可否が判断されることとなる。
5 建物を直接に毀損するものではないが、著しい管理費の不払いにより改修費用の不足を来した事例として⑩東京地判平
成19年11月14日判タ1288号286頁がある。本件では、全12戸のマンションにおいて、管理費680万円余りが滞納されて遅
延損害金250万円余りに及んでいた。必要とされる改修費用は1500万円余りであるが、管理組合の資産残高は1100万円余
りであることから、被告の管理費滞納により区分所有者に実害が生じていると認定している。
6 例えば、後述する⑬判決は「当該行為の性質、必要性の程度、これによって他の区分所有者が被る不利益の態様、程度
等の諸事情を比較考量して決するのが相当である」とする。
137

筑波法政第90号(2023)

に言及するものと専有部分を区分所有者や賃借人自身が使用するのではなくそれ以外の者に使用させるも
のである。
 ⑪東京地判平成18年 3 月30日判時1949号55頁は、住居目的のマンション専有部分での託児所営業が問題
となった事例であるが、託児所の営業が他の居住者に対して一方的に騒音等の被害や治安悪化・非常時の
危険についての不安感を生じさせ、他の居住者の受忍限度を超えて一方的犠牲を強いる場合には、区分所
有者の共同利益に反する行為に当たるとする。本判決との関係で特に注目されるのは、次の事実が存在す
ることが認定されていることである。
「本件マンションは、……3 階以上は通常の居住用マンションとし
て消防法上の特例により、防火設備等に免除されているものがある。しかし、事業所等が増えて事業用の
建物となれば、自動火災報知設備や非常ホース等の防火・消火設備を設置したり、10階以上にはスプリン
クラーを設置しなければならなくなるなど、新たに 1 億3000万円ほどの出費が必要となる。」⑪判決がこ
の事実に言及したのは、原告が規約違反にもたらす影響として指摘したことによるものであり、「共同の
利益に反する行為」に該当するか否かを判断する際にはこの事実への言及はない。そのため防火・消火設
備への支出の増加が結論に直接の影響を及ぼすものとは評価できず、他の居住者の被る犠牲の一要素とし
て加味しうることを明らかにしたにすぎないものと言える。
 ⑫東京地判平成20年 6 月24日 TKC 文献番号25470539では、区分所有者がガラスや壁の種類・材質を変
更したことは「共同の利益に反する行為」に当たらないとされる。この判決では壁の材質変更が共用部分
の効用を高め、区分所有者にとって有益な結果をもたらすものであること、材質変更がなされた箇所につ
いて他の区分所有者等から苦情が寄せられていないことが認定されている。この事件では争点となってい
ない防火壁の新規設置と合わせて、防火設備の充実を、他の区分所有者の不利益を否定する要素として加
味したものである。
 ⑬東京地判平成31年 2 月26日判タ1478号233頁では、違法な民泊営業が問題とされている。⑬判決は、
違法な営業であること、マンションの他の住民がエレベーターや郵便受けの利用するにあたって支障を来
していること、防犯設備の一部が無力化していることを指摘して、「本件マンションの他の区分所有者ら
の負担の下で,被告のみが経済的利益を得ていることのほか,他の区分所有者らの本件マンションの利用
において一定の不利益が生じている」ものとする。
⑵ 前述のように、法 6 条 1 項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」該当性の判断において本判決
が示す要素は、⑧判決のそれである。⑧判決は建物の不当毀損行為が問題となった事案であるが、それ以
外の種類の行為についても先行裁判例は同様の要素を呈示しており、本判決もそうした傾向の中に位置づ
けられる。法 6 条 1 項は「区分所有者の共同の利益に反する行為」の典型例として「建物の保存に有害な
行為」を呈示するものであることから、建物の不当毀損行為の場合とそれ以外の行為の場合とで同様の判
断要素が示されるのは自然なことである。
 それでは本判決は具体的にどのような事実をもって、グループホームとしての使用を「区分所有者の共
同の利益に反する行為」としたのか。
 他の区分所有者が被る不利益の態様、程度として示されるのは、本件管理規約に違反する行為であるこ
と、管理組合に管理業務の負担が課されること、将来において共同住宅特例が適用されなくなることで経
済的負担に影響する可能性があること、こうした経済的負担が現実化しなくても管理組合はこうした現実
的負担に備えた対応を検討しなければならないことである。
 とりわけ、グループホームとしての利用が本件管理規約に違反する行為であることは、本件管理規約が
「区分所有者相互の利害調整のための共通規範として制定されたものである」ことから、共同の利益に反
する行為に該当するか否かの考慮要素として重視されるべきものとされる。本判決のように明確に述べる
ものではないが、先行裁判例のうち①判決・③判決では、法 6 条 1 項の「共同の利益に反する行為」であ
ると判断するにあたり、規約違反の行為であることが重視されている。
 また、本判決は将来における経済的負担の発生可能性を考慮要素としており、こうした経済的負担は現
実化しなくても良いとする。こうした将来の不確実な可能性は、すでに事業所等が増えて事業用建物と
なった場合を想定して支出が増加しうることに言及する⑪判決においても、周縁的な要素としてではある
138

賃借したマンションの専有部分をグループホームとして使用することは建物区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとされた事例(直井)

が考慮されていた。また⑨判決も、建物の保存に対する有害性が現実化していなくとも他の区分所有者が
危惧感を覚えることを判断要素としていた。
 このように、他の区分所有者が被る不利益の態様、程度の判断要素は先行裁判例にも見られるものであ
り、規約違反であることを特に重視する点も先行裁判例と軌を一にするものと言ってよい。
 他方、当該行為の必要性の程度としては、グループホーム事業の公益性の高さのみが挙げられる。そし
て、当該行為の必要性を否定する要素として、Y が本件マンション以外のマンションでグループホームを
経営していることから、Y が本件各住戸以外の建物においてグループホームを経営することができないと
はいえないことを挙げる。
 ⑬判決は当該事案における民泊が違法であることを指摘しており、行為の必要性の有無については正反
対の判断要素となるものではあるが、事業の性質が考慮される点は本判決と共通している。また、グルー
プホームの移転可能性についてはすでに託児所の事案である④判決が考慮しており7、この点も特異な判断
要素を示すものではない。
4⑴ 以上の分析から、先行裁判例との関係で本判決は以下のように位置付けられる。
 規約の解釈に当たっては、先行裁判例は規約の文言を形式的に解釈するものと、目的論的に解釈するも
のとに分かれており、本判決は後者の流れに位置付けられる。
 また、法 6 条 1 項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」についても先行裁判例に従った解釈を示
すものである。そして、規約に違反する行為であることを重視する点も先行裁判例と同様である。
⑵ 本判決が規約の解釈にあたって文言の形式的解釈に依拠しなかった点は、グループホームが単なる生
活の本拠としてのみならず事業としての側面を有するという事実をも考慮することを可能にするものとし
て適切であったと考えられる。そして、規約が区分所有者団体の自治規範であることからすると、文言の
形式的解釈に加えて加味すべき事柄として区分所有者の共同の利益を挙げたのも、適切である。しかし、
区分所有者の共同の利益を確保するために、使用態様が本件管理規約で予定されている建物等の管理の範
囲内であることを挙げた点は適切ではないものと解する。本判決は、建物等の管理に要する負担及び費用
が増加することをもって区分所有者の共同の利益が害されるとするが、当初予定された建物等の管理の範
囲内でないことが区分所有者の共同の利益を害することは論証されていないからである。本件において
は、負担・費用を Y が引き受けることによって共同の利益を害さないものとする可能性を検討すべきで
あった。先行裁判例の事例で問題となっていたのは良好な居住環境維持という金銭によっては解決が困難
な価値であったのに対して、本件事案で主に問題となっていたのは金銭的な負担の増加であるという差異
を本判決は十分に意識していない。
 本判決は、平成29年 5 月30日の管理組合の臨時総会において、Y は点検費用を負担すればグループホー
ムの使用を継続できるのか質問したこと、議長はいったん持ち帰って検討すると回答するとともに Y に
対して点検費用を負担する考えはあるのかと質問したこと、Y は全く負担できない金額ではないので前向
きに検討している旨回答した、との事実を認定している。仮に管理組合と Y との間で Y が年間50万円余
りの費用負担をする旨が取り決められれば、費用に関しては区分所有者の共同の利益が害されることには
ならないと考えられる。しかしこの点に関して本判決は、「本件管理組合と Y との間において Y がそのよ
うな費用を負担する旨の合意が成立したことを認めるに足りる証拠はない」と判示するに止まっている。
合意が成立しなかったのは事実であるが、臨時総会の後に合意の成立に向けての交渉がなされたのかにつ
いては検討しておらず、また、こうした合意の成立を管理組合が拒絶することが許されるかについても検
討していないのである。
⑶ 法 6 条 1 項に関する本判決の解釈は先行裁判例と同様である。しかし、そこで重視される規約違反の
判断の点に問題があることは前述の通りである。また、将来における経済的負担の発生可能性に言及した
先行裁判例も存在するが、⑪判決においてはこの要素は極めて周縁的なものに止まっており、騒音被害等
7 ④判決が行為の規約違反性と法 6 条 1 項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」該当性とを同一の判断枠組みかつ
一体のものとして判示しているために、この部分の判示が規約違反性についても及ぶものであるかは明確ではないが、
本評釈では規約違反性にも及ぶものと解する。
139

筑波法政第90号(2023)

を重視して判断を下している。⑨判決も将来生じ得る問題点を考慮する点で明示するが、そこで考慮され
たのは、なされた行為が建物に有害なものとなるおそれである。⑨判決の事案のように建物の毀損行為の
場合は建物が修補不能となって居住そのものが不能となる危険があるのに対し、本件事案のように新たな
経済的負担が発生しても居住そのものに直接に影響するものではないとの差異がある。さらに本判決は他
の建物への移転可能性があることをもって、当該行為の必要性を減殺する要素とする。④判決も移転可能
性を指摘するが、④判決の事案は病院の看護師向け託児所であって被告の経営する病院内に託児所を移転
する可能性も示唆されている。ところが本判決は、Y が他のマンションにおいてグループホームを経営し
ていることを理由として他の建物でのグループホーム経営の可能性を認めるものである。しかし④判決の
事案と異なり、Y 自身が移転先たりうる建物を確保しているわけではなく、他のマンションに移転すると
しても本件と同様の紛争が生じる可能性があるため移転先が十分に確保できるのかは明らかではない8。ま
た、本件では事務所の移転ではなくグループホームの移転が問題となるわけであるから、継続的な居住の
ためのスペースが移転することが利用者である障害者にとってどのような影響をもたらすものであるのか
といった観点からも、本件行為の必要性につきより踏み込んだ検討を加えることが必要だったのではない
かと考えられる。
5⑴ Y は、本件管理規約の改正が、障害者差別の意図に基づくものであり公序良俗に反し無効である、
法31条 1 項後段の「特別の影響を及ぼすとき」にあたるにも拘らず本件各住戸の区分所有者の承諾を得て
いないから無効であるとの主張もしているが、本判決がこの点について述べるところはない。本判決は、
改正以前から存する本件管理規約12条 1 項違反の点を判断したものであるから、この点については判断を
示す必要はない。
⑵ また Y は、Y に対するグループホーム事業の停止請求等が障害を理由とする差別にあたると主張す
るが、本判決はこれを否定する。本判決によれば、障害者差別解消法 8 条 1 項及び障害者基本法 4 条 1 項
の「差別」とは、不利益取扱い一般を指すものとされる。そして本判決は、障害を有しない者が本件管理
規約12条 1 項の規定に違反した場合における本件管理組合の対応と比較して、障害を理由とする不利益取
扱いはないとする。
 障害者差別解消法 8 条 1 項及び障害者基本法 4 条 1 項の「差別」を不利益取扱い一般と広く解する点は、
本判決も指摘するように、これらの法律の目的が障害を理由とする差別の解消にあることから、首肯でき
る。また、これらの法律は障害者を有利に扱うことを禁止するものではないことから、障害者と障害を有
しない者との一律の扱いを求めるのではなく、障害者の不利益取扱いのみを「差別」と解する点も適切で
ある。そして本判決は、差別の有無を判断するにあたっての比較対象を、障害を有しない者による管理規
約違反に対する管理組合の対応としているが、障害に基づく不利益取扱いの有無を判断するものであるか
ら、この点も適切な判断であったと考えられる。本件に照らして考えても、本件管理組合が Y に退去を
求めるにあたってはグループホームの利用者に障害があることを理由としておらず、障害を有しない者に
よる専有部分の使用によって防火設備設置の負担が増加する場合にも、本件管理組合は同様の対処をした
ものと考えられる。また、本件管理規約の改正に当たって、グループホームに供することを禁じると同時
にシェアハウスに供することも禁じており、家族以外の者による専有部分での共同居住を禁じるに際して
障害の有無を問題としていない。したがって、本件において障害を理由とする不利益取扱いの存在を認め
ることはできない。
 もっとも、本判決の考え方によれば、同じ障害者が通常の家庭で生活している場合には規約違反となら
ないのに対して、グループホームを利用した場合には設置者が規約違反を問われるために退去を余儀なく
されることとなる。これは障害者によるグループホームの利用を阻害する事になりかねず、特に、通常の

8 もっとも、X が当初は即時退去までは求めておらず、紛争が長期化したために提訴に踏み切ったという事情があり、裁
判所としては Y が早期に対応していれば移転先の確保は困難ではないと判断したのかもしれない。しかし、Y は本件管
理規約に違反しておらず退去の必要はないものと考えていたのであるから、移転先を確保しておくべきであったという
ことはできないだろう。
140

賃借したマンションの専有部分をグループホームとして使用することは建物区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとされた事例(直井)

家庭での生活が困難な障害者の居住権の確保に問題を生じさせる可能性がある9。障害を理由とする障害者
差別がないのは確かであるが、障害者間での差別を生じさせ得るのではないかとの問題提起のみしてお
く。
(ビジネスサイエンス系教授)

9 障害を有しない者についても、改正後の本件管理規約ではシェアハウスとして使用が禁じられていることから、障害の
有無に関わりなく居住形態の選択に制約が加えられているといえる。しかし、障害者、さらにはその家族を含めて考え
た場合、グループホームを利用するという選択肢を失うことは、障害を有しない者がシェアハウスに居住するという選
択肢を失うのとは事の重大性は異なるのではないか。
141

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る