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<論説>国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

直井, 義典 筑波大学

2023.07.31

概要

論 説

国外で設定された動産上の約定担保物権の
効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

直 井 義 典
はじめに
第 1 章 2006 年改正前のフランスの判例
第 2 章 担保法改正による影響
 第 1 節 非占有移転型質権
 第 2 節 フィデュシー
 第 3 節 公示の問題
 第 4 節 小括
第 3 章 国内法改正の限界
 第 1 節 準拠法の選択
 第 2 節 担保法制の統一化
 第 3 節 小括
第 4 章 わが国への示唆

はじめに
(1)
 従来、
民法学においては担保物権の国内的な効力、すなわち担保目的物・
担保権設定者・ 担保権者のいずれもが国内に所在する場合の効力について議
論がなされてきた。民法が国内で効力を持つ法律である以上、このこと自体は
きわめて自然なことである。しかし、担保物権も国際的な関係と無縁なわけで
はない。
[1]国内所在の不動産に国外所在の債権者が国内法に基づいて担保権
を設定するケース、
[2]国内所在の動産に国内法に基づいて約定担保権が設定
され、その後にこの動産が国外に移動されたケース、[3]国外所在の動産に動
産所在地法に基づいて約定担保権が設定され、その後この動産が国内に移動さ
れたケース、
[4]国内で成立した債権が国外所在の債権者に質入れされたケー
89

論説(直井)

スのそれぞれにおける担保権の効力の如何の問題が想定される。
このうち[1]については、担保目的物の所在に変動はなく、不動産所在地
法に基づいて担保権が設定されるわけであるから、不動産所在地法が適用され
ることに問題はない 1)。ここでの問題は、国外所在の債権者による不動産所在
地法に基づく担保権の公示方法、わが国に即していえば不動産登記簿へのアク
セスのしやすさに尽きる 2)。
むしろ大きな問題をもたらすのは[2]や[3]である。
[2]と[3]とは表
裏の関係にあり、いずれも、動産が国境を超えることによって、従前設定され
ていた担保の効力がどうなるかという問題を生じさせる。[2]において、仮に
担保の効力が消滅するとした場合、移転先の国において動産を取得する者の保
護が図られる反面、担保権者には大きな損害が生じることとなる 3)。そしてこ
うした損害を避けるべく与信を控えるようになるから、結局は動産を担保に供
することが困難となり、与信を受ける者にとっても不利益が生じる。この問題
は、当初から国外への移転を想定した動産にのみ関わるものではない。担保権
の負担を免れさせるために設定者が担保権者に無断で動産を国外に移転するよ
1)

M. Farge, La réception en France des sûretés constituées à l étranger, in N. Borga = O.

Gout(dir.)
, L attractivité du droit français des sûretés réelles, 2016, p.73, no5 は、こうした事
例として、担保目的のためにイングランドで設定されたトラストがフランスの不動産を含
んでいるケースや、イングランドのフローティングチャージがフランスの財産に設定され
たケースを挙げるが、これらがフランスの裁判所で問題となることはほとんどないとする。
2)

もっとも、問題が全くないというわけではない(Farge, op.cit., nos12 et 13.)。

 フランスでは、民法 2416 条が抵当権の設定にあたり公署証書の作成を要求しており、さ
らには 2417 条が 2006 年改正前の旧 2128 条をそのまま維持して、条約や強行規定のない限
り外国で締結された契約そのものによってフランス所在の財産に抵当権を設定することは
できないとしていることから、抵当権設定契約へのフランスの公証人による関与が避けら
れない。もっとも、2417 条は比較的厳格に解釈されており、船舶抵当・航空機抵当の設定、
フランス所在の不動産に抵当権を設定する旨の契約自体、抵当権によって担保される消費
貸借契約自体、すでに設定された抵当権についての譲渡・ 代位・ 放棄については適用され
ないものと解されている。また、Cass. civ1, 14 avr. 2016, B.Ⅰ.no92 は、抵当権を設定する
ことの委任は、真正な外国の機関によってもなされ得るものであるとする(ただし、事案
の解決としてはオーストラリアの公証人は真正な外国の機関に該当しないとする)。

90

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

うな事態は、当初から国外への移転を想定している動産以外の動産についても
起こり得る。そうだとすると、国内での信用供与にも悪影響を及ぼすことにな
りかねない。他方で、
[3]において、国外で設定された担保権の効力が認めら
れることとなると、国内に移転された動産の所有権を取得した者は、国外で設
定された担保の制約を受けることとなる。こうした担保の公示がなされていれ
ばよいが、そうでない場合、取引の安全を大きく害する。確かに、当該動産が
国外から国内に移転されたものか否かを知ることは不可能ではない。しかし、
そのような動産であることが判明したとしても、その動産上に課されている可
(前頁からつづき)
 もっとも、船舶抵当・航空機抵当の場合や真正な外国の機関が関与した場合を除いては、
当該契約の前または後にフランス公証人の関与によるフランス国内での抵当権設定手続を
回避することはできないのであるから、厳格な解釈によっても外国において抵当権を設定
するのが極めて困難であることに変わりはない。こうした状態は不便でありかつ信用供与
にかかる費用を増大させるものである。そこでこうした制約を回避するために、不動産の
取得に際して信用供与がなされる場合については、不動産購入資金提供者の先取特権によ
ることができないかが問題となる(この先取特権については、直井義典「不動産購入資金
提供者の先取特権」筑波ロー・ ジャーナル 29 号(令和 2 年)185 頁以下で紹介した。)。し
かし、不動産所在地であるフランス法と消費貸借契約に適用される外国法の双方において
この種の先取特権が認められていなければならないと解されていることから、抵当権の代
用とはならない(この種の先取特権を認めるのは、ルクセンブルク・ モナコ・ モーリシャ
スのみとされる。なお、第 3 章第 2 節で取り上げるアンシトラル動産担保モデル法 38 条は
財産取得担保権の規定を置く。同法における財産取得担保権の定義は、同法 2 条(b)。)。
このほか、不動産フィデュシー・不動産質・トラストのような外国担保を利用することで、
フランス公証人の排除を図ることも考えられるが、これらの担保の効力がフランス国内で
認められるのかは大いに疑問である。
 また、2011 年に改正された 710 条 1 第 1 項は「あらゆる証書又は権利は、不動産公示の
形式を与えるためには、フランスにおいて公証人がなした公署の形式のある証書によるの
でなければならない。」と規定する。その結果、外国の公署行為は、フランス公証人に委
託されなければならないこととなる。これによって、従前と異なり、非居住者はフランス
の不動産に抵当権を設定することを委託することもできなくなったとされ、この点も強く
批判される。
3)

Farge, op.cit., no17 は、後述する破毀院判決を評して、第三者保護のために債権者の予

測を犠牲にするものという。

91

論説(直井)

能性のある担保物権の有無を確認することは、国内での公示が要求されている
のでもない限り極めて困難である。
したがって、国内外を問わず動産の流通を促進するという観点からは、国境
を越えたという一事をもって動産上の約定担保物権の効力を全面的に失わせる
ことも適当でなく、逆に移転先国において公示を要求することのないままに効
力を全面的に認めることも適当ではない。
[4]も重要な問題ではあるが、所在地を観念できない点で有体動産とは異な
る考慮を要する 4)ことから、本稿では扱わない。
(2) 国外で設定された担保の目的動産が国内に移転した場合に、この担保
権の効力がどうなるかについては従来、国際私法において議論の蓄積がある 5)。
そこでは、いずれの国の法律によって担保権の成否が決せられるのかという形
で問題となる。法定担保物権と約定担保物権とを分け、動産上の約定担保物権
については、法の適用に関する通則法 13 条と同様に、物所在地法によって規
律されるとするのが通説的見解である 6)。そして成立した担保物権の内容およ
び効力についても、もっぱら物所在地法によって決定される 7)。しかし、物所
在地法主義の不都合も指摘されており、担保の設定地法によるとの考え方、仕

4)

澤木敬郎=道垣内正人『国際私法入門 第 8 版』
(平成 30 年)249 頁。

5)

ドイツにおける議論を詳細に検討したものとして、

崎みどり「ドイツ国際物権法に

おける非占有動産担保権の渉外的効力について」法学新報 105 巻 6 = 7 号(平成 11 年)317
頁以下。
6)

山田鐐一『国際私法 第 3 版』
( 有斐閣・ 平成 16 年)296 頁、溜池良夫『国際私法講義 

第 3 版』
(有斐閣・ 平成 17 年)337 頁。動産上の約定担保物権は物所在地法によって規律さ
れるという点は同様であるが、石黒一憲「いわゆる法定担保物権の準拠法について」
『金融
取引と国際訴訟』
(有斐閣・ 昭和 58 年)314 頁以下、道垣内正人『ポイント国際私法 各論 
第 2 版』
(有斐閣・ 平成 26 年)290 頁以下、澤木=道垣内・ 前掲 249 頁は、法定担保物権と
約定担保物権の区別は不要であると解する。
 物権一般について論じるものではあるが(もっとも、国際私法上、物権一般と別個に担
保物権法について論ずべきかについても議論がある(石黒・前掲 323 頁)。)、物所在地法主
義の根拠については、原田央「物権準拠法再検討のための準備報告」千葉大学法学論集 27
巻 4 号(平成 25 年)396 頁

92

8 に詳しい。

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

向地法によるとの考え方、当事者自治による準拠法選択を認めるとの考え方な
ども主張される 8)。
他方、民法学においてはこの問題はあまり注目されてこなかった。しかし、
国内における担保物権の効力をいかに定めるか、特に他国の担保物権法との協
調をどこまで追求するかによって、国外における担保物権の効力は変わってく
る。このことは、前述のように[2]のケースにおける与信の得やすさにも影
響する。ある国の民法典が国外で設定された担保権の効力の維持を認めるもの
であれば、その法律は担保権者の有する期待を保護することのできるものとさ
れる。そして、担保権者にとっては、その国の民法典は国際取引において魅力
的なものとして理解され、その国の民法典のもとで与信が促進されることとな
る 9)。したがって、民法学にとっても無視できる問題ではない。
⑶ そこで本稿では、国内法における担保物権の効力の定め方がこの問題に
いかに影響しうるのかをフランス法を題材として検討することとする 10)。フラ
ンス法を取り上げるのは、以下の理由による。第 1 に、後述のように、フラン
スの通説ならびに破毀院判例が物所在地法主義に立っており、この点でわが国
(前頁からつづき)
 なお、「約定担保物権の成立について、主たる債権の準拠法を累積的に適用することは、
債権者、債務者および第三者の利害関係からみて無用の考慮をするものである」ことから、
主たる債権の準拠法上そのような担保物権の成立が認められる必要はないとされる(山田・
前掲 299 頁

3)。

7)

山田・前掲 296 頁。

8)

物権一般につき物所在地法主義の再検討を図るものとして、原田・ 前掲 366 頁以下。

9)

とりわけ、物所在地法主義に立つ場合に与信の得やすさへの影響が大きくなる。Farge,

op.cit., no6 は、フランス法に魅力があるか否かは、外国で設定された担保のフランスにお
ける効力について、外国の銀行や投資家をフランスのシステムが安心させることができる
かにかかっているとする。
 担保法においては自国民の与信の受けやすさ、債権法においては契約準拠法としての選
択のされやすさという点で現れ方がやや異なるものの、国際社会における自国法の魅力の
程度について軽視しえないことは、わが国においてもいわゆる債権法改正に関して「日本
の国際的プレゼンスのかかった国家戦略の問題でもある」
(内田貴『債権法の新時代』
(商事
法務・平成 21 年)34 頁)との指摘がなされたことによっても示されていたところである。

93

論説(直井)

の見解と同様であると評価できることによる。第 2 に、その結果として、従前、
フランスでは、外国において設定された担保物権の効力を認めることに消極的
な姿勢が見られたところ、2006 年の担保法改正による占有非移転型質権の導
入や 2007 年フィデュシー導入によって、民法典が担保の種類を多様化させて
おり、このことが譲渡担保やフローティングチャージのフランス国内での効力
を肯定する手がかりとなり得る。そしてわが国での担保法改正においてもこう
したフランスの経験は参照するに値するものと考えられることによる 11)。
以下、第 1 章では 2006 年改正前のフランスの判例を紹介し、物所在地法主
義の下で外国で設定された担保の効力が認められることが少なかったことを示
す。そして、第 2 章では 2006 年以降の担保法改正によって、こうした状況に
いかなる変化が生じ得るものと考えられているのか、ファルジュの見解を中心
に紹介する。第 3 章では、第 2 章で紹介した見解を受けて、国内法の改正によ
る問題解決の限界への対処法として、当事者自治による準拠法決定による問題
解決の試みと担保法制の国際的統一化についてごく簡単に検討を加える。最後
に第 4 章で、わが国の担保法改正にあたっての示唆を得ることとする。
第 1 章 2006 年改正前のフランスの判例
破毀院は、準拠法については物所在地主義に立ち 12)、外国で設定された担保
物権はフランス国内で認められる担保物権に転換しうる限りでのみ認められる
との見解を示す。そのため、以下の 3 つの判例に見られるように、多くの場合
において、外国の担保の効力は否定されていた 13)。
10) 設定者に倒産手続が開始された場合には、担保権の効力が平時から変容させられるこ
ととなって平時とは別段の考慮を要する。担保権が最もその効用を発揮する局面ではある
が、こうした事情から、本稿では考察の対象としない。
11) Farge, op.cit., no3 も、外国で設定された担保のフランスにおける受容のための調整方法
を探求することが、2006 年担保法改正のなした貢献の本質を検討することになるとする。
12) G. Khairallah, Les sûretés mobilières en droit international privé, 1984, no208 は、フラン
ス法が動産の占有に重きを置いているためとする。また、物権法定主義も根拠とされてき
たが異論もある(Khairallah, op.cit., no358; Farge, op.cit., no24.)。

94

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

【1】Cass. req., 24 mai 1933, S.1935.1.257.
ロッテルダム所在の法人がブザンソン所在の組合に金銭を貸与するにあた
り、契約に適用される法として当事者はドイツ法を選択した。契約締結地はド
イツ国内のマインツである。担保として、借主は貸主に対して 5 台の自動車の
所有権を移転し、これらの自動車に相応する価額が弁済されたときに、借主は
自動車の取戻ができるものと定められた。契約締結時点での自動車の所在は明
確ではないが、フランス国内にあったものと思われる。その後借主は破産し、
貸主は破産管財人に対して、フランス所在の第三者のもとにある 3 台の自動車
の引渡しを所有権に基づいて要求したが否定された。原審が請求を棄却したた
め、貸主が上告した。
破毀院は、以下の理由で上告を棄却した。フランス国内所在の動産を目的と
する物権についてはもっぱらフランス法が適用される。外国において外国法に
基づきフランス所在の動産について外国人とフランス人との間で締結された合
意においても、フランスで禁じられた流担保契約(pacte commissoire)を含
むものは無効である。
本判決は物所在地法主義に立ちつつ、譲渡担保の実行方法としての流担保契
約を無効としたものである。
【2】Cass.civ1, 8 juill. 1969, JCP G 1970,Ⅱ,16182 14)
ドイツで登録された自動車の購入資金融資の事案であり、貸主・ 借主とも
ドイツの会社である。契約時には自動車はドイツ所在であり、この自動車につ
いて貸主のために所有権留保付き 15)の非占有移転質の設定がなされた。その後、
この自動車はフランス国内に移動した。修理業者が、買主に設備を供給したと
13) Farge, op.cit., no18 は、こうした態度がドイツとは対照的であることを指摘し、誤った
性質決定がなされているとして破毀院の態度を批判する。
14) 本判決を紹介するものとして、相澤吉晴「所有権留保の準拠法について」富大経済論
集 35 巻 3 号(平成 2 年)3 頁以下、藤澤尚江「動産担保取引の発展と国際私法(上)」筑波ロー・
ジャーナル 8 号(平成 22 年)66 頁以下。

95

論説(直井)

し て、 自 己 が フ ラ ン ス 国 内 で 所 持 す る 自 動 車 を 保 全 差 押 え(saisie
consevatoire)した。そこで、
貸主が差押え解除を求めた。これに対して原審は、
流担保契約はフランスの公序に反するとして却下したために、貸主が上告した。
破毀院は、ドイツの会社間で締結された契約によって担保権が設定された場
合であっても、フランス所在の動産にはフランス法が適用されるとした上で、
公序には言及せず、流担保契約はフランスでは禁じられているとして上告を棄
却した。
本判決は、外国人同士の締結した所有権留保においても【1】判決と同様に
流担保契約は無効と解されることを明らかにしている。
【3】Cass. civ1, 3 mai 1973, Rev. crit. DIP 1974,100 16)
オランダの銀行がオランダの会社との間でアムステルダムにおいて締結した
契約によって工業設備を 9 万ギルダーの現金で購入した。そして、同様にアム
ステルダムで締結された買取選択権付賃貸借(location vente)とされる第 2 の
契約によって、銀行は、この工業設備を現金 4 万ギルダーと 5 万ギルダーの 12
か月の分割払いで売主たる会社に譲渡した。これらの設備は元の売主とは別の
オランダの会社が自由に使用することが認められ、この会社がフランスに持ち
込んだ。そして、この会社の振り出した手形 3 通が未払であることから、債権
者と手形のうち 1 通の被裏書人によって工業設備が差し押さえられて売却命令
が出されたため、銀行が第三者異議を提起した。原判決が第三者異議を認めな
かったため、銀行が上告した。上告理由 17)は、第 1 に、契約は当事者の選択し
た法律に従うものであり、本件契約はオランダ人の間でオランダにおいて締結
された契約であるからフランス法に依拠することはできない、第 2 に、本件契
15) 判決文ではこのように記載されているが、売主ではなく融資者に所有権を帰属させる
ものであるから真正の所有権留保ではない。所有権が一旦は買主に帰属するのか、それと
も売主から直接に融資者に移転するものであるのかは判決文からは明らかではない。
16) 本判決を紹介するものとして、相澤・前掲 4 頁以下、藤澤・ 前掲 67 頁

134。

17) 相澤・前掲 4 頁は以下の部分を破毀院の判示事項と理解しているようである。

96

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

約を所有権留保付きの信用売買であると同時に占有非移転型質権付きの貸付で
あると判断することはできない、第 3 に、フランス法においては、売買契約の
中に所有権留保条項を挿入することは禁じられておらず、占有非移転型質権付
きの貸付であるならばこの契約はフランスでの公示の欠如について論じるまで
もなく私署証書によって工業設備の購入が確認されたことで有効なのであり、
契約はオランダで締結されているがオランダ法は公示を要求しておらず公示も
なされていないことは、本件訴訟にいかなる影響を及ぼすものでもない、とい
うものである。
これに対して破毀院は、以下のように判示して、上告を棄却した。当事者間
の契約準拠法はともかく、物権の目的となる動産がフランスに所在する場合に
はフランス法のみが適用される。証書には「代金未払いのうちは売主のために
所有権を留保する条項の付いた信用売買である」と表示されているとしても、
実際には「銀行による 5 万ギルダーの貸付であり、銀行のために設備上に占有
非移転型の質権が設定された」ものであるとの事実認定の下、質権の要物性を
定める旧 2076 条に依拠して、銀行はフランス所在の工業設備については第三
者に対抗できる権利を立証していない、とした原判決は正当である。
本判決は、当事者間での契約の効力を規律する法律とは別に物権に対して適
用される法律を観念し、従来の判決と同様に、フランス所在の動産については
フランス法が適用されるとしたものである。そして、証書に所有権留保との記
載があるとしてもそれは占有非移転型質権を偽装したものにすぎないと解し、
フランスにおける効力を否定する 18)。フランス法の下での所有権留保の効力に
ついては明確には論じていないが、契約の性質決定を入念に行った原判決を正
当としていることからは、所有権留保の効力自体は認容するものと考えられ
18) Farge, op.cit., no20 は、フィデュシー譲渡が占有非移転型質権と解釈されてフランス国
内での効力が否定された事例であると整理する。銀行による現金での購入が単に形式的に
所有権を移転するのみであることに着目してフィデュシー譲渡であると解しているのであ
るが、破毀院もまた所有権留保であることは否定しており、破毀院判決の理解としては正
当な整理であると考えられる。

97

論説(直井)

る 19)。仮に、所有権留保と占有非移転型質権のいずれもがフランス法の下では
効力を認められないということであれば、契約の性質決定はごく簡単に済ませ
ることもできたはずだからである。
以上のように、破毀院は物所在地主義に立ちつつ、フランス国内所在の動産
についてはフランス法の下において担保権の効力が認容されるかを検討する。
その結果、外国の担保の効力が多くの場合に否定されていたのである 20)。
国内法の改正がこうした状況にどれほどの変化をもたらすのか。2006 年以
降の担保法改正の影響を検討するのが次章の課題である。
第 2 章 担保法改正による影響
フランス民法の担保法分野は 2006 年以後、大幅な改正を受けている。この
ことが国外で設定された動産上の約定担保の効力にいかなる影響を与えている
のか。ファルジュは、非占有移転型質権の創出とフィデュシーの認容の 2 点に
着目する。
以下、ファルジュにしたがって、これら 2 点及び公示の問題について順に検
討する。

19) 相澤・ 前掲 5 頁は、「オランダ法上の「所有権留保」に相当する所有権留保の制度がフ
ランス法上存在しないためか「占有移転を伴わない質権」の設定のみが問題とされ」たと
するが、本件において所有権留保としての性質決定が否定されたために判示の必要がな
かったにすぎないのではないか。
20) こうした態度が、外国で設定された担保権であっても公序良俗に反しない限り国内で
の対応する担保の効力を以て認めるドイツの態度とは対照的であることはしばしば指摘さ
れている。その理由としては、国際取引を活発化させるという政策だけでなく、ドイツに
おいては動産担保が公示なしに当事者の合意のみによって設定されることから説明されて
いる(K. Kreuzer, La reconnaissance des sûretés mobilières conventionnelles étrangères, Rev.
crit. DIP, 1995.479.)。

98

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

第 1 節 非占有移転型質権
占有非移転型質権は、2006 年の担保法改正によって認められた。
改正前の 2076 条と異なり、2333 条は動産質設定者からの占有移転を質権の
成立要件としていない。同条は、質権は設定者と債権者との間の合意であると
定め、2336 条が、動産質は被担保債権、質権が設定される財産の数量・ 種類・
性質を記載した書面の作成により成立するという。
質権の目的は、単体動産、現在ないし将来の 21)有体動産の集合である(2333
条 1 項)。
2337 条は、2 種類の第三者対抗要件を定める。第 1 は、コンセイユ・ デタの
デクレに定められた方式の特別の登録簿への登録による(2338 条)公示であ
る(2337 条 1 項)
。この場合、設定者の特定承継人による即時取得が排除され
る(同条 3 項)
。第 2 は、質物の債権者または合意された第三者への引渡しで
ある(同条 2 項)

このように、引渡しは動産質の成立要件から対抗要件へと位置づけが変化し
たのである。
また、質権の実行方法として、旧 2078 条 2 項が廃止されて流質が認められ
た(2348 条 1 項)22)。ただし、市場における公定価格がある場合を除いては、
所有権移転時点における質権の設定された財産の価値が鑑定人によって決定さ
れるものとされている(同条 2 項)

以上の結果、外国で設定された非占有移転型質権がフランス国内で効力を認
められる道が開け 23)、また、担保権者が担保の目的物を自己のものとして引き
揚げることも可能となった。
しかしながら、いかなる動産質であってもフランスで効力を認められるとい
うわけではない。
その例としてファルジュが挙げるのが、フローティングチャー
21) 将来物が質権の目的となったのも、占有移転が質権の成立要件ではなくなったことに
よる。
22) 流質禁止規定の廃止については、直井義典「フランスにおける動産質権の実行」筑波
ロー・ジャーナル 19 号(平成 27 年)44 頁以下で論じた。

99

論説(直井)

ジである 24)。フローティングチャージでは、債務者企業の現在または将来有す
る一切の不動産・ 動産が担保の目的とされる。
ファルジュは、以下の 2 つの理由から、改正法の下でもフローティングチャー
ジはフランス国内での効力が否定されるものと解する 25)。
第 1 は、フローティングチャージの目的の包括性である。前述のように、
2333 条 1 項は有体動産の集合を質権の目的とすることは認めるものの、質物の
数量・種類・性質が示されていること、すなわち特定性が要求されている(2336
条)。そこでファルジュは、
目的の包括性の点でフランス法のもとでフローティ
ングチャージに引照しうる制度として、裁判費用の先取特権(2331 条 1 号・
2375 条 1 号)や給与の先取特権(2331 条 4 号・2375 条 2 号)といった一般先取
特権を持ち出す 26)。しかしこれらは法定担保である。また、フローティング
チャージを営業財産(fonds de commerce)質と引照する試みも不十分とされる。
営業財産質においても、質権は不特定の財の集合に課されるのではなく、営業
という特定の財に課されるからである。
第 2 は、特定の財に結晶化する以前の段階におけるフローティングチャージ
の性質に関わる。ファルジュによれば、この段階では物権あるいは物的担保と
23) もちろん、2006 年担保法改正以前にも航空機抵当・ 自動車質・ 各種ワラントのように
占有非移転型の動産担保は存在していたことから、航空機や自動車については外国で設定
された占有非移転型担保がフランス国内で認められる可能性は従前から存在していた。し
かし、いずれの客体も登録を要するものであることから、外国で設定された非占有移転型
担保がフランスで認められるためにはフランス国内での公示を要するものと解されていた
(M. Cabrillac, La reconnaissance en France des sûretés réelles sans dépossession constituées
à l étranger, Rev. crit. DIP, 1979,487, no20.)
24) Farge, op.cit., no20.
25) Id. 2006 年 改 正 以 前 の 論 考 で あ る が、Cabrillac, op.cit., no17; Ch. Mouly, Efficacité en
France des sûretés anglaises, RD bancaire et bourse, 1992, p.160 も、フローティングチャー
ジの目的の包括性を根拠にフランス国内での効力を否定していた。
26) わが国の一般先取特権が債務者の総財産上の担保権として 306 条という単体の規定で定
められているのに対し、フランス法では、2328 条が先取特権が動産・ 不動産に成立しうる
ことを定めるものの包括的な規定というわけではなく、動産一般先取特権(2331 条)と不
動産一般先取特権(2375 条以下)に規定が分かれている。

100

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

みなすことは困難であるとされる。物権が成立するためには客体の特定性が要
求されるから、包括財産上の権利は物権に当たらないというのである。
以上のように、非占有移転型質権が認められることによって、外国で設定さ
れた担保であってもその目的が特定し得るものである限りは、フランス国内で
効力を認められる可能性が格段に広がった。しかしながら、フローティング
チャージのような包括担保については、依然として、フランス国内では効力が
否定されるものと解されている。
第 2 節 フィデュシー
フィデュシーは、2007 年の改正により、2011 条以下で認められた。
フィデュシーとは、1 人または複数人の設定者が、現在または将来の財産・
権利・ 担保の単体または集合体を、1 人または複数人の受託者に移転し、受託
者はそれを自己の固有財産から分離して、1 人または複数人の受益者のために
定められた目的に供する制度である(2011 条)

ファルジュが問題とするのは、セキュリティトラストをフランスにおいて
フィデュシーと読み替えることの可否である。そして、フィデュシーにおける
受託者と受益者の権利の性質が問題となるとする 27)。これは、わが国における、
受益権の性質に関する物権説と債権説の対立 28)に対応する。
フィデュシー受託者が有するのは 544 条の定める伝統的な所有権とは異なる
フィデュシー所有権であってフィデュシー受益者にも所有権が分属するものと
考えると、セキュリティートラストをフィデュシーとして扱うことが可能であ
る 29)。これに対して、フィデュシー受益者はフィデュシー財産に対して物権を
有しておらずもっぱらフィデュシー受託者に対する債権しか有していないと解
27) Farge, op.cit., no21.
28) この問題につき、能見善久『現代信託法』
(有斐閣・平成 16 年)は、「現在でも重要な問
題ではあるが、信託法の規定で解決されている範囲ではあえて議論する必要はなくなっ
た。」とする。この指摘は、フランスにおいてもフィデュシーに関する規定が補充される
ことによって問題が解消される可能性を示唆する。

101

論説(直井)

する場合には、セキュリティートラストはフィデュシーとは異なる制度という
ことになる。
このように、フィデュシーの導入によっても、トラストがフランスにおいて
効力を認められるか否かは明確とはならない 30、31)。
第 3 節 公示の問題
外国で設定された動産担保権の効力がフランス国内で認められうるとして
も、担保権者は、フランス法の定める方式により、フランス国内で公示をしな
ければならない 32)。外国での公示ではフランス国内の第三者を保護するには不
十分だからである。

29) ファルジュはグリマルディの見解を引用して、次のように説明する(Farge, op.cit.,
no21.)。担保フィデュシーにおいて、受託者は「権限所有権」
(propriété pouvoir)を有して
いるのに対し、受益者が被担保債権の弁済を確保するためにフィデュシーの目的物処分に
よって得られた収益に排他的な権利行使ができるとすれば、受益者は「収益所有権」
(propriété richesse)を有することとなる。トラストにおいては、受託者が法的所有権を、
受益者が経済的所有権を有するものと解される。このように所有権が分割される点で、フィ
デュシーはトラストと類似する。
 なお、Farge, op.cit., no7 では、フランスのフィデュシーはアングロサクソンのトラスト
と血縁関係にあるとされており、ファルジュ自身もこの見解を支持しているように見受け
られる。
30) Khairallah, op.cit., no236 では、古いものではあるがフランスにおいてトラストの効力を
認める裁判例が複数存在していたことが指摘されている。
31) もっとも、ファルジュによれば、ハーグ信託条約(同条約につき簡単には、三菱 UFJ
信託銀行編著『信託の法務と実務 7 訂版』
(きんざい・ 令和 4 年)831 頁以下。)が批准さ
れることにより、フランスにおけるトラストの効力に関する議論は意義を失うとされる。
同条約 6 条は、「トラストは設定者の選択した法律によって規定される」と定めており、設
定者がイングランド法を準拠法とすれば問題は解消されると主張するのである(Farge,
op.cit., no21.)。しかし、設定者が信託準拠法を決定することができるとしても、同条約に
おいては設定者の決定した信託準拠法の適用範囲は限定されており(8 条)、信託財産準拠
法上の所有権の移転や担保物権に関わる規定による制限のもとに置かれる(15 条 1 項 d)
から、必ずしも問題が解消されるわけではないのではないか(田中美穂「信託準拠法と信
託財産準拠法の適用関係について」近大法学 58 巻 4 号(平成 23 年)12 頁以下。)。

102

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

ファルジュによれば、公示に関して 2 つの点で問題がある 33)。第 1 に、外国
の担保権の内容を知らない登記官が登記を留保する可能性がある。そして第 2
に、登記官に登記してもらえたとしても、公示の方法はフランスにおける対応
する担保権を反映したものによらねばならない。この第 2 の問題により、例え
ば、フランスの登記を探索してもフローティングチャージ 34)であるとはわから
ないこととなる。元の担保権の内容が、フランスで認められる担保権の内容に
変性してしまうのである。
また、仮に外国で設定された担保権がフランスにおける担保権に対応するも
のを見つけ出せるとしても、問題がないわけではない。自動車質の場合、登録
は自動車登録証が交付された県でなされるものとされる。しかし、自動車が外
国で登録されている場合には、この方式によることができない。
以上のように公示についての問題点の解決もまた 2006 年担保法改正に際し
ては望まれたわけであるが、2006 年 12 月 23 日のデクレ 2006 1804 号による登
記方法の改正は、期待外れのものであったとされる。ファルジュは、このほか、
外国で設定された担保権をフランス国内で登記するための猶予期間制度を設け
なかった点も、立法者の怠慢であると非難する 35)。
第 4 節 小括
以上のように、担保法改正によって、外国で設定された占有非移転型質権や

32) Farge, op.cit., no15. フランスに限った記述ではなく、担保成立地において公示を欠く場
合についてであるが、Kreuzer, op.cit., p.472 は、公示なしに設定された動産担保は、目的
物が外国に移転された場合には効力を生じ得ないのがルールであるとする。
33) Farge, op.cit., no15.
34) 前述のように、ファルジュは 2006 年改正法の下でもフローティングチャージがフラン
ス国内で効力を認められることはないと解しているから、ここでフローティングチャージ
を例とするのは適切ではないように思われる。
35) Farge, op.cit., no28. 猶予期間を認める例としては、外国で有効に設定された所有権留保
は 3 か月間効力を妨げられないとする 1987 年のスイス連邦国際私法典 102 条 2 項がある
(Kreuzer, op. cit., p.477 は、これがヨーロッパでは初の制度であるとする。)。

103

論説(直井)

フィデュシー譲渡がフランス法の下でも一定の範囲で効力を認められ、流担保
契約も可能となった 36)。ファルジュは、2006 年の担保法改正によってフラン
ス法の魅力が増したと評価する 37)。国内法の改正による諸外国との統一化 38)が、
外国で設定された担保権の効力を安定的なものとするのに有用であることがこ
こには示されている。
もっとも、改正によってもフローティングチャージの効力はフランスにおい
て否定されるものと考えられ、また、トラストの認否も明確ではない。このよ
うに国内法の改正のみでは、外国で設定された担保権を受容するには限界があ
る。
このほか、公示制度の改革が不十分であるために、外国で設定された担保権
の効力がフランス国内で認められるとしても、フランス法で認められた担保類
型での公示が要求されるなどの問題点が残っている。
こうした限界の根源は、物所在地法主義ならびに各国の担保法制の不統一に
ある。物所在地法主義の再考 39)や担保法制の統一による限界の克服は可能なの
だろうか。そこで次章では、こうした限界を克服する方法について検討す
る 40)。

36) もっとも、流担保を実行するには鑑定人による評価が求められており、しかもこれは
強行規定である(2348 条 2 項)。担保権者が自ら担保目的物の価値を決定して自己に所有
権を帰属させることができないのはもちろん、第三者との間で契約を締結して処分価格を
担保目的物の価値とすることもできない。こうした手続に外国の担保権者が拘束され、な
おかつ鑑定人がフランス国内所在でなければならないとされると、清算手続は煩雑なもの
となる可能性が否定できない。残債務の額が担保目的物の価額を上回っていることが明白
であり、かつ、債権者が流担保の実行により残りの債権をすべて放棄する場合でもない限
り、フランス所在の動産に対する担保権の実行は容易ではないと考えられる。
37) Farge, op.cit., no19.
38) Farge, op.cit., no7 は、1992 年に著された「フランスの担保物権法はここ 10 年の間外国
から借用することよってしか進展していない。」とのムリーの記述(Mouly, op.cit., p.162.)
を引用し、また、2006 年の担保法改正は外国法の後追いであるとする。
39) Farge, op.cit., no5 は、物所在地法主義による破毀院判例が果たして永続的なものである
のか、再検討の余地があるとする。

104

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

第 3 章 国内法改正の限界
本章では、国内法の改正による解決の限界を克服する方法として準拠法の選
択と担保法制の統一化を取り上げる。もっとも、本稿の目的が国外で設定され
た動産上の約定担保に国内法の改正が与える影響を検討することにあることか
ら、これらの方法によっては限界の克服としては十分ではないことを示すに止
める。これだけでも、国内法改正の意義を無視することができないことは十分
に示すことができると考えられるからである。
第 1 節 準拠法の選択
前掲の破毀院判決に見られるように、フランスでは伝統的に物所在地法主義
がとられてきた。このことは、フランス国内での動産取得者の保護には資する
ものであった。他方で、外国で設定された担保権の効力を弱めることがありう
ることは、前章で見たとおりである。
そこで、物所在地法主義に代わり、当事者自治による準拠法決定が試みられ
る。これによって、国外で担保の設定を受けた担保権者と国内で動産を取得し
た者の利益の双方が十分に保護されることとなるのだろうか。
当事者自治による準拠法決定のメリットとしては、動産についての抵触法の
問題を除去することで国際協調に資すること 41)と、担保の物的・ 人的効果の
40) このほか、外国で設定された動産担保を一律に最も後の順位とするといった解決が提
案される(Kreuzer, op.cit., p.493 et s.)。ところが、論者自身も、この考え方は「時におい
て勝る者は権利において勝る」との原則に反し、最も後の順位とされることによってとり
わけ留保所有権者の保護がなくなる(担保が機能する債務者の倒産局面では、最も後の順
位の担保権者にまで配当が回らないことを前提とするものであろう。)ことから解決策と
しては不十分であるとする。
 また、EU 加盟国に限定した議論であるが、コーイングは、EU 加盟国がそれぞれ登録所
を作り、占有非移転型担保を債権者が登録することを提案する。これに対しては、費用が
掛かる点、ならびに、各加盟国に登録制度のある占有非移転型担保が存在するという前提
が満たされない点が批判されている(Kreuzer, op.cit., p.496.)。結局のところ、担保法制の
統一化が問題となるということである。

105

論説(直井)

区別の問題 42)が除去されることが挙げられる 43、44)。また、2006 年以降の担保法
改正により担保の非物質化が進んだ 45)ことで、責任財産の範囲に関する外観に
対する信頼保護は後退した。このことも、当事者自治による準拠法に優位には
たらく 46)。なぜなら、外観に対する信頼保護が後退した以上、物所在地法主義
を採って、即時取得によって物所在地における取引の安全を図る必要性が薄れ
たものと言えるからである。
しかし、そもそも当事者が準拠法を決定していないこともある 47)。また。当
41) 物所在地法主義と異なり、外国で設定された担保権の効力を貫徹することが可能とな
ることによって、国による担保法制の差異が相対化されるということである。
42) 約定担保物権の設定行為は、主債務に対する付随的な物権を設定するものであるとの
物権法的な側面を有すると同時に、権利を創出するという債権的な側面を有する。前者の
物的効果の問題については物所在地法主義によるのに対して、後者の債権的効果の問題に
ついては当事者自治によって準拠法が決定されるものとされる(Farge, op.cit., no9.)。
43) Farge, op.cit., no22.
44) また、2006 年の担保法改正によってフランス法に留置権の規定(2286 条)が置かれ、
流質の禁止が廃止され、充填式抵当(旧 2422 条 1 項)やフィデュシーが認められたように、
法定の担保の種類が増え担保の実行方法が自由化されることが当事者自治による準拠法決
定に優位に働くのではないかとも考えられる。確かに、物所在地主義が物権法定主義と結
びついたものであることの反対に、物権法定主義が緩和されることで物所在地主義が否定
されるものと考えることも不可能というわけではない。しかし、これらの担保の柔軟化が
なされたからといって、物権法定主義の範囲内で物権のリストが拡充されたにすぎないと
解することもできるのであるから、準拠法の決定には直接の関係はないものと言うべきで
ある(Farge, op.cit., no23 も同様。)。
 なお、破毀院は物権法定主義を堅持しているが、フィデュシーや所有権留保は所有権と
いう既存の物権を担保目的で使用しているのみであるから、物権法定主義に抵触するもの
ではないと解される。そして破毀院は、債権のフィデュシー譲渡につき、2011 条以下のフィ
デュシー規定や 2372 1 条以下の担保目的での債権譲渡の規定が挿入される以前において、
法律に定められた場合以外で債務者が債権者に担保のために債権を譲渡する行為は債権質
であると性質決定している(Cass. com., 19 déc. 2006, B. Ⅳ .no250.)。
45) 具体的には、占有非移転型質権への擬制留置権の付与(2008 年の法律による 2286 条 1
項 4 号の追加)
・antichrèse bail(不動産質−賃貸)の認容(2390 条)
・処分合意のあるフィ
デュシーの導入を指す。
46) Farge, op.cit., no24. 原著では校正ミスにより、no24 が 2 つ連続してあらわれているが、
こちらは 2 番目の no24 を指す。

106

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

事者自治による準拠法が担保権者にとって一方的に有利なものであって、仮に
この準拠法選択が担保権を設定した当事者以外の第三者に対しても効力を生じ
るものとすると、物所在地における取引の安全を害するものであることは否定
できない。そこで個別の事案ごとに外観理論などを用いて第三者の利益を保護
するといった利益衡量論的な手法が考えられるが、ファルジュは、法的安定を
害するものとしてこうした見解を退ける 48)。そこでファルジュは、当事者自治
による準拠法を基調としつつ、第三者保護に不可欠な規定を強行規定と性質決
定するとの見解を示す 49)。
このように、当事者自治による準拠法決定がなされても、それは担保権者の
利益保護には資するものの第三者の保護を欠くこととなる。そのため、第三者
保護の方策として利益衡量的な処理がなされたり、第三者保護が強行規定化さ
れたり、準拠法選択の効力は当事者間に止まると解したり 50)する必要がある。
準拠法の決定のみでは十分な解決が図れないということである。
第 2 節 担保法制の統一化
それでは担保法制の統一化による解決は有用だろうか。
カブリラックは、担保法制を統一的なものとする条約締結に対しては、第 1
に各国の占有非移転型動産担保法制が一致していないこと、第 2 に担保権を公
示する必要があることが障害となるという 51)。そして、結局は刑事罰によって、
担保権者に無断での後続の担保設定を禁じるのが最も一般的かつ伝統的な手法
であると結論付ける 52)。
47) Khairallah, op.cit., no206. わが国の法の適用に関する通則法 8 条 1 項もこうした事態を想
定するものである。
48) Farge, op.cit., no25.
49) Id.
50) Kreuzer, op.cit., p.491 は、このように解すると担保設定者の債権者が目的物上に権利行
使をしてきた場合には、準拠法選択に意味がなくなるとする。
51) Cabrillac, op.cit., no28.
52) Cabrillac, op.cit., no29.

107

論説(直井)

クロイツァーもまた、動産担保法制が各国の法的伝統ならびに商慣習に根差
したものであることを理由に、担保法制の世界的統一に対して悲観的な見通し
を示す。もっともクロイツァーは、EU 加盟国限りでは、単純な所有権留保が
売主の担保手段として認められることが多いことから、担保法制統一の可能性
があるかもしれないとする 53)。
確かに、物権法については各国間の相違が強調され、契約法に比べても国際
的な統一化は遅れていることからも、これらの論者の見通しは妥当なものと言
えそうである。しかしそうした中で、2016 年にアンシトラル動産担保モデル
法が採択された点は注目に値する 54)。ただし、これはあくまでもモデル法に止
まり国際条約の形式を採るには至っていない。これは、担保手段として用いら
れる法的な手法と利害衝突の実質的な解決方法が国によって大きく異なるこ
と、国際条約とした場合には国内取引に適用される法と国際取引に適用される
法との調整の問題が生じること、国際条約が締結国全体の連邦法であるかのよ
うに位置づけられるのに対してモデル法であれば対等の国家間の関係が維持さ
れることによる 55)。
このように担保法制の統一化に向けた動きはあるものの、統一的な条約締結
の見通しは立っておらず、また、国際条約締結による担保法制の統一化が望ま
しいとも考えられていない。
第 3 節 小括
フランスでは物所在地主義に代わる当事者自治による準拠法決定も主張され
ている。しかしながら、物所在地法とは反対に、物所在地における取引の安全
53) Kreuzer, op.cit., p.500.
54) このモデル法の内容については、小梁吉章「アンシトラルの動産担保モデル法とビジ
ネス」国際商事法務 45 巻 8 号(平成 29 年)1175 頁、伊達竜太郎「アンシトラル動産担保
モデル法の概要と実務的課題」沖縄法学 47 号(平成 29 年)81 頁参照。翻訳としては、曽
野裕夫=山中仁美「担保取引に関する UNCITRAL モデル法の対訳(1)・(2・ 完)」北大法
学論集 68 巻 1 号 268 頁・2 号 508 頁(いずれも平成 29 年)がある。
55) United Nations General Assembly A/CN.9/475 of 27 April 2000, No.46 and 48.

108

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

を害することは否定できない。そこで、第三者保護規定の強行法規化が主張さ
れることとなる。
他方で担保法制の国際的統一化は、
動産担保法制の内容が国によって異なり、
担保権の公示の必要があることもあって、必ずしも順調に進んでいるとは言え
ない。
以上のように、国内法改正以外の方法での対応も、それだけでは十分なもの
とはなりえないのである。
第 4 章 わが国への示唆
(1) ここまで見てきたフランスの議論からは、わが国にいかなる示唆が得
られるだろうか。
わが国では、
担保目的のものも含めて信託が認められている(信託法 3 条 1 号・
2 号)ものの、占有非移転型質権が認められない(345 条)点や流質が認めら
れない(349 条)点は、2006 年改正前のフランス法と似ている。もっとも、す
でに非典型担保物権として譲渡担保や所有権留保が認められており、そこでは
債務者が担保目的物を占有することが認められ、帰属清算型の担保権実行が認
められている点は従前のフランス法とは異なる。しかし、非典型担保物権に止
まることから、法改正によって明文化を図る際にはフランス法の経験は参照に
値する。
フランスにおいては 2006 年以降に担保法改正がなされたことによって、外
国で設定された担保権の効力がフランス国内でも認められ、担保権の効力に安
定性が増したと評価できる。また、こうした担保権についてもフランス国内で
の公示が求められることから、国内での取引の安全は害されていないようであ
る。他方、外国所在の担保権者によるフランス国内での公示について猶予期間
が与えられなかったために、公示以前に国内で即時取得がなされる可能性があ
る。また、公示手続についてもフランスでは特段の措置が取られていないこと
から、公示自体が登記官の下で拒絶されたり担保権の内容が変性されたりする
といった問題がある 56)。わが国では非占有移転型質権が認められておらず、動
109

論説(直井)

産担保を公示する登記・ 登録制度がない。わが国には一般的な動産登録簿が
ないことから、今後動産登録簿を制度化するのであれば、いかなる権利が登録
可能とされるのか、慎重に検討する必要がある。不動産登記法 3 条は登記可能
な権利を限定列挙しているが、こうした限定列挙主義を採ると、フランスと同
様に担保権の内容が変性されるといった問題が生じる可能性が高い。
また、わが国では現在でも流質が禁止されている一方で、動産抵当に相当す
る制度として譲渡担保が認められている。外国で動産に占有非移転型質権が設
定された場合に、わが国ではこれを質権と譲渡担保のどちらに類するものとし
て考えるのか。現行法の下では、明文規定のない譲渡担保ではなく質権に類す
るものと考え、わが国では非占有移転型質権が認められないことから効力を否
定することとなろうか。新規立法によって譲渡担保の規定を置く場合、占有非
移転型質権を質権として扱うのか譲渡担保として扱うのかは難しい問題とな
る。当事者は国外において占有移転型担保と占有非移転型担保とを自由に選択
したのであり、なおかつ、所有権は移転していないという点に着目すれば質権
として扱うこととなる。これに対して、占有非移転型担保としての実質に着目
すれば譲渡担保として扱うことになる。占有非移転型質権に関する規定を置く
のでない限り、質権と譲渡担保のいずれとして扱うのかによって、わが国での
効力の認否が変わってくる。占有非移転型質権の効力を認めようというのであ
れば、わが国でも占有非移転型質権の規定を置くか、譲渡担保として扱うか、
いずれかの道を選択する必要があるだろう。
(2) 国外に移転されることが想定される動産上の担保権の効力を安定的な
ものにするためには、各国内法で認められた担保権の種類・ 内容ができる限
り統一化されることが望ましい。そして、その際には権利の内容を定める実体
法のみならず公示に関する法規の内容にも気を配る必要がある。ところが実体
法の内容の統一が容易ではないことはすでに見たところである。

56) このほかフランスでは外国からの公証人へのアクセスの問題も生じうるが、公証人の
位置づけが大きく異なるわが国では同様の問題は生じないであろう。

110

国外で設定された動産上の約定担保物権の効力に対して国内法の改正が及ぼす影響

かといって、準拠法の選択のみで解決できる問題ではないことは、国際私法
分野におけるさまざまな努力によっても問題が完全に解決されているわけでは
ないことからも明らかである。
国際私法による処理と民法による処理のいずれにも限界があり、当然の指摘
ではあるが、国際私法と民法の協働が求められる問題である。
*本稿は、2022 年度科学研究費補助金・ 基盤研究(C)による研究成果の一部
である。
(なおい・よしのり 筑波大学ビジネスサイエンス系教授)

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