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大学・研究所にある論文を検索できる 「ジルコン年代からみた原日本地質構造発達史」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ジルコン年代からみた原日本地質構造発達史

長田 充弘 富山大学

2020.03.24

概要

日本海拡大以前の原日本の地質構造発達史については,様々な議論やモデルが提示されている.本研究では,日本列島のあらゆる地質単元(堆積岩,火成岩,変成岩)を対象に野外調査とジルコン U–Pb 年代測定とジルコン Hf 同位体比測定を行い,日本海拡大以前の原日本地質構造発達史を検討した.具体的には,(1)西南日本内帯の白亜紀火成活動の時代極性の有無,(2)中央構造線の白亜紀活動の評価,(3)三波川変成岩類の原岩形成から変成までの形成進化史,(4)Hf 同位体比を用いた火成活動の起源の推定について総合的に議論した.以下に,本研究で明らかとなった新事実を列挙する.

ジルコン U–Pb 年代測定により明らかになった事
(1) 西南日本の白亜紀火成岩には,東程若くなる年代極性があることが古くから指摘されているが,年代極性はないとする解釈もある.そこで,中部地方北部の白亜紀火山岩類のジルコンU–Pb 年代を測定し,西南日本の白亜紀火成岩のジルコン U–Pb 年代をコンパイルした結果,以下のことが判明した.(a) 中部日本北部の白亜紀火山岩類は前期白亜紀 Albian(約 110–100 Ma)と後期白亜紀 Campanian から Maastrichtian(約 73–66 Ma)に形成された.(b) Albian(約 110–100 Ma)の火山岩類は西南日本広域にみられる.(c) 一方,中部日本北部と同じ Campanian–Maastrichtian の火山岩類は中部地方南部周辺にしか認められず,近畿地方から中国地方には約 95–80 Ma の火山岩類がみられる. (d) 後期白亜紀の火山岩類は前期白亜紀の火山岩類よりも海洋側にまで分布する.(e) また,領家帯の花崗岩についても九州(約 110–100 Ma)から関東(約 60 Ma)へと東方に若くなる.以上より,後期白亜紀の火山岩類には東方へ若くなる年代極性があると見られる.この年代極性は,原日本の下をイザナギ-太平洋海嶺が通過したというモデルで説明される.海嶺は,約 110–100 Ma 頃に九州下部を通過し,約 60 Ma 頃に関東を通過したと見積もられ,海嶺の沈み込みに伴って一時的に火山フロントが海洋側に前進した.

(2) 九州東部に分布する上部白亜系大野川層群は,四国から紀伊半島に主に分布する和泉層群と共に,中央構造線の活動によって形成された一連の横ずれ堆積盆を埋積した地層であるとされる.大野川層群の最下部および最上部の凝灰岩の年代測定を行い,中央構造線の活動時期を評価した.年代測定の結果,大野川層群の堆積期間は約 97–85 Ma であった.従って,東方延長である和泉層群の堆積期間も考慮すると,約 97–66 Ma に中央構造線の左横ずれ運動が起きたと考えられる.中央構造線の変位の最大規模は,大野川-和泉層群が分布する九州から紀伊半島までの距離,約 600 km であったと見積もられる.横ずれ運動の原因は,100 Ma 以降にイザナギプレートが白亜紀の海溝に対して斜めに沈み込んだためである.得られた年代から大野川層群の堆積速度は 0.16–0.22 cm/yr と算出され,和泉層群の 0.5–2.0 cm/yr よりやや遅い.つまり,和泉層群堆積期には,イザナギプレートの運動方向のうち,海溝に平行な成分が増加したと推測される.この時期にイザナギ-ファラロン海嶺からクラプレートが誕生しており,イザナギプレートの運動方向が変化した可能性がある.

(3) 日本各地の三波川変成岩類を,ジルコン U–Pb 年代と白雲母K–Ar 年代測定から次のようにグループ化した.
グループ 1:原岩堆積年代上限値=約 130 Ma,変成作用=約 120–110 Ma(関東山地の御荷鉾ユニット);グループ 2:原岩堆積年代上限値=約 120 Ma,変成作用=約 95 Ma (高知県伊野地域の三波川南縁帯思地ユニット);グループ 3:原岩堆積年代上限値=約 110–90 Ma,変成作用=約 90–80 Ma(大分県佐賀関半島の三波川変成岩類,高知県伊野地域の三波川南縁帯川又ユニット,徳島県高越地域の高越エクロジャイト);グループ 4:原岩堆積年代上限値=約 90–80 Ma,変成作用=約 70 Ma(徳島県池田地域の三縄ユニット);グループ 5:原岩堆積年代上限値=約 75 Ma 以降,変成作用=約 65–60 Ma(徳島県池田地域の小歩危ユニット).

三波川変成岩類は,若いユニットの原岩堆積・沈み込みと古いユニットの変成・上昇が同時に(Two way street model)約 1000 万年間隔で繰り返された複合変成岩類であり,そのことは関東山地から九州まで広域で確認される.

ジルコン Hf 同位体比測定により明らかになった事
(4) 飛驒帯花崗岩のジルコン U–Pb 年代測定とジルコン Hf 同位体比分析から,飛驒帯の帰属について検討した.花崗岩のジルコン U–Pb 年代は,約 200–180 Ma と約 290–220 Ma に集中した.これらと同時代の深成岩類は主に韓半島南東部及び中国東北部で確認されるが, U–Pb 年代だけではそれらを区別できない.そこで,飛驒帯花崗岩のジルコンの Hf 同位体比分析を行った結果,ジュラ紀のU–Pb 年代をもつジルコンの Hf 同位体比(176Hf/177Hf)は 0.282688 ± 0.000021 であり,三畳紀からペルム紀の U–Pb 年代をもつジルコンの Hf 同位体比(176Hf/177Hf)は 0.282869 ± 0.000037 であった.Hf 同位体比とU–Pb 年代から求められる Hf モデル年代は約 1300–600 Ma となった.これらを満たす地域は中国東北部,すなわち中央アジア造山帯(CAOB)であり,飛驒帯のペルム紀~ジュラ紀の火成活動の起源は中央アジア造山帯に求められる.今回の結果から,ジルコン U–Pb 年代測定だけでは制約できなかった火成岩体のより詳細な帰属の検討や,砕屑岩の後背地解析が,ジルコン Hf 同位体比分析により可能になることが明らかとなった。

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