リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Drug-induced hyperglycemia in the Japanese Adverse Drug Event Report database: association of evelolimus use with diabetes」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Drug-induced hyperglycemia in the Japanese Adverse Drug Event Report database: association of evelolimus use with diabetes

小西 裕美 横浜市立大学

2021.03.25

概要

[背景と目的]
耐糖能異常を来す薬剤や化学物質として,ステロイドやインターフェロン,抗精神病薬などが広く知られている.医薬品の副作用のシグナルを検出するためには,有害事象に関する大規模なデータベースが有用であり,本邦では,Japanese Adverse Drug Event Report database (JADER) が国内の有害事象の自発報告データベースとして独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (Pharmaceuticals and Medical Devices Agency: PMDA) より提供されている.高血糖を来しうる薬剤を,JADER データベースを用い報告オッズ比 (Reporting Odds Ratio: ROR) を算出して検討した.

[対象と方法]
2017 年 7 月時点での JADER データベースを用いて,MedDRA 標準検索式 (Standardized MedDRA Queries: SMQ) code 20000041 高血糖/糖尿病の発症に含まれる 112 項目の Preferred Term (PT) のうち,低血糖や脂質異常,体重変化といった項目を除外した 51 項目に限定し解析を行った.JADER の総症例数は 459,250 件であった.高血糖関連有害事象ごとの被疑医薬品の傾向について ROR の 95%信頼区間 (95%CI) の下限値を用いて分析し, 95%CI の下限値が 1 を上回った時にシグナルありと判定した.

[結果]
JADER データベースを用いて ROR を算出したところ 95%CI 下限値が 1 以上の薬剤のうち,インスリン製剤や経口血糖降下薬などの抗糖尿病薬 (58 剤)を除いて,高血糖を引き起こす薬剤として最も多く報告されたのはプレドニゾロン (n = 698)で,ROR は 3.96 (95%CI, 3.66-4.28)であり,次いでタクロリムス (n = 393,ROR = 3.51,95%CI,3.17-3.89) であった.3 番目に多かったのは mTOR 阻害薬のエベロリムスであり,上記 2 剤よりも高い RORを示した (n = 340; ROR = 8.56; 95%CI, 7.65-9.57) .また,オランザピン (n = 270; ROR = 10.91; 95%CI, 9.62-12.38) やクエチアピン (n = 247; ROR = 9.82; 95%CI, 8.61-11.20) を含む抗精神病薬と高血糖症発症リスクとの関連を認めた.他に,リバビリン (n =278; ROR = 1.80; 95%CI, 1.60-2.03) ,アリピプラゾール (n = 213; ROR = 7.48; 95% CI, 6.51-8.61) ,およびアトルバスタチン (n = 104;ROR = 3.80; 95%CI, 3.12-4.62)など,薬物誘発性糖尿病を来す薬剤としてよく知られている薬剤が挙げられた.特筆すべきは,選択的チロシンキナーゼ阻害薬であるニロチニブ (ROR = 4.28; 95%CI, 3.48-5.27)およびヒトプログラム細胞死 1 (Programmed cell Death 1: PD-1) に対するヒト型 IgG4 モノクローナル抗体ニボルマブ (ROR = 3.36; 95%CI, 2.71-4.17) もまた,高血糖の潜在的な原因として同定された.

[考察]
近年 mTOR 阻害薬による耐糖能悪化の報告が散見され,海外では mTOR 阻害薬が抗癌剤として使用されている臨床試験において,高血糖および新規の糖尿病発症率は 13~50%と高率に関連することが報告されている (Baselga et al., 2012; Motzer et al., 2008; Yao et al., 2011).高血糖や糖尿病は,プレドニゾロンやタクロリムスの副作用として広く知られており,自己免疫疾患患者や移植後の患者に多く見られる.しかし,mTOR 阻害薬が比較的最近臨床現場に導入された薬剤であるためか,エベロリムスによる耐糖能異常の有病率は上記 2 剤と比較して日本ではほとんど知られていない.mTOR 阻害薬は,近年動物実験レベルにてインスリン分泌能低下とインスリン抵抗性による耐糖能悪化を来すことが報告されている (Fraenkel et al., 2008; Verges, 2018).ROR は代表的シグナル指標の 1 つであるが (Rothman et al., 2004),JADER データベースを含む自発的な報告システムは,様々なバイアスの存在や,副作用の発現割合を算出する分母が存在せず,対照群を置いたリスクの定量化ができないという点で限界がある.そのため ROR は正確な有病率を反映したものではなく,異なる薬剤間のリスクを比較するには不向きな可能性がある点を考慮しなければならない.JADER データベースの解析にて,本邦におけるエベロリムスによる糖尿病発症,悪化の有害事象は血糖降下薬以外の薬剤の中で 3 番目に多く,有意なシグナルを検出した.移植後の患者や癌患者でエベロリムスを投与されている患者は糖尿病を発症しやすく,特に癌患者では注意が必要であり,高血糖症の合併症を予防するためにも注意深くモニタリングを行うことが推奨される.

参考文献

Baselga, J., Campone, M., Piccart, M., Burris, H. A., 3rd, Rugo, H. S., Sahmoud, T., Noguchi, S., Gnant, M., Pritchard, K. I., Lebrun, F., Beck, J. T., Ito, Y., Yardley, D., Deleu, I., Perez, A., Bachelot, T., Vittori, L., Xu, Z., Mukhopadhyay, P., Lebwohl, D., and Hortobagyi, G. N. (2012), Everolimus in postmenopausal hormone-receptor-positive advanced breast cancer, N Engl J Med, 366, 520-529.

Fraenkel, M., Ketzinel-Gilad, M., Ariav, Y., Pappo, O., Karaca, M., Castel, J., Berthault, M. F., Magnan, C., Cerasi, E., Kaiser, N., and Leibowitz, G. (2008), mTOR inhibition by rapamycin prevents beta-cell adaptation to hyperglycemia and exacerbates the metabolic state in type 2 diabetes, Diabetes, 57, 945-957.

Motzer, R. J., Escudier, B., Oudard, S., Hutson, T. E., Porta, C., Bracarda, S., Grunwald, V., Thompson, J. A., Figlin, R. A., Hollaender, N., Urbanowitz, G., Berg, W. J., Kay, A., Lebwohl, D., and Ravaud, A. (2008), Efficacy of everolimus in advanced renal cell carcinoma: a double-blind, randomised, placebo-controlled phase III trial, Lancet, 372, 449-456.

Rothman, K. J., Lanes, S., and Sacks, S. T. (2004), The reporting odds ratio and its advantages over the proportional reporting ratio, Pharmacoepidemiol Drug Saf, 13, 519-523.

Vergès, B. (2018), mTOR and Cardiovascular Diseases: Diabetes Mellitus, Transplantation,102, S47-49.

Yao, J. C., Shah, M. H., Ito, T., Bohas, C. L., Wolin, E. M., Van Cutsem, E., Hobday, T. J., Okusaka, T., Capdevila, J., de Vries, E. G., Tomassetti, P., Pavel, M. E., Hoosen, S., Haas, T., Lincy, J., Lebwohl, D., and Oberg, K. (2011), Everolimus for advanced pancreatic neuroendocrine tumors, N Engl J Med, 364, 514- 523.

参考文献をもっと見る

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る