母子医療センターにおけるCOVID-19への取り組み (第137回成医会総会一般演題)
概要
Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-COV-2)の感染により引き起こされるCoronavirus disease 2019(COVID-19)の世界的大流行により,その感染者数が指数関数的に急速に増加している.COVID-19患者の中には無症候性患者が存在することが知られており,無症候性妊婦がSARS-COV-2の感染に気がつかないまま分娩となった場合,サポートを行う医療者や入院中の妊産婦,新生児まで感染の危険性が及ぶことになるため,SARS-COV-2の医療現場への侵入を防ぐことは極めて重要である.また,妊婦へのSARS-COV-2感染は,妊婦や胎児,新生児に影響を与える可能性が指摘されているが,現在のところどのような対応をすれば母児への悪影響を最小限にできるか,ということに関する科学的根拠はほとんど無く,その対応は各施設毎に手探りの状態で実施されているのが実情である.東京慈恵会医科大学附属病院母子医療センターは東京都の中心部に位置し年間約800分娩を取り扱う周産期センターである.また特定機能病院の認定を受けた大学附属病院に併設する周産期センターのため,様々な合併症を有したハイリスク妊婦の割合が非常に高く,周産期センター内でCOVID-19のクラスターが発生した場合の影響は極めて深刻となる.また,大学附属病院は東京都の要請を受け,多くのCOVID-19患者の診療を行っているが,その中には妊婦も含まれており,その特殊性から非妊婦とは異なった対応が要求される.我々はSARS-COV-2のパンデミックが発生して以降,分娩前の全ての妊婦に対してPCR 検査を導入し,当周産期センター内へのSARS-COV-2の侵入を防止する取り組みを行っている.また東京都の受け入れ要請に従い,他施設でCOVID-19と診断された妊婦症例を多数受け入れ治療を行っている.今回我々が行っている周産期医療の現場でのCOVID-19に対する様々な取り組みに関して報告する.