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Glypican-2 defines age-dependent axonal response to chondroitin sulfate

大内田, 隼 名古屋大学

2023.12.01

概要

主論文の要旨

Glypican-2 defines age-dependent axonal response to
chondroitin sulfate
グリピカン2は年齢依存的な神経軸索の
コンドロイチン硫酸への反応を規定する

名古屋大学大学院医学系研究科
運動・形態外科学講座

総合医学専攻

整形外科学分野

(指導:今釜 史郎
大内田 隼

教授)

【緒言】
中枢神経系の成熟した神経細胞の軸索は、損傷を受けると再生することができない。
この軸索再生を困難にするメカニズムの一つとして、損傷部に形成されたグリア性瘢
痕に蓄積するコンドロイチン硫酸(CS)が軸索末端の細胞膜に発現する受容体 PTPσ と
結合しこれを活性化することが挙げられる。これまで、この PTPσ の活性化が細胞内
基質のコータクチンを脱リン酸化しオートファジー流の破綻させる結果、dystrophic
endball と呼ばれる球状構造を呈し軸索の再生が停止することが明らかになっている。
一方、胎生期の神経細胞は CS の豊富な環境でも軸索を旺盛に伸ばすことが可能であ
るが、成体と胎生における CS に対する反応の違いを説明する詳細なメカニズムはま
だ解明されていない。ここで、PTPσとの結合を CS と競合するヘパラン硫酸(HS)に
着 目 し 、 胎 生 期 の 神 経 細 胞 で は 、 HS を 構 造 に 含 む ヘ パ ラ ン 硫 酸 プ ロ テ オ グ リ カ ン
(HSPG)が存在することで、CS 環境下での軸索伸長を可能にしていると仮定した。本
研究では、胎生マウスの後根神経節(DRG)神経細胞を用いて、HSPG プロファイル組
成と CS 環境下での軸索の挙動を調べ、成体神経細胞との比較を行い、胎生神経が力
強い軸索伸長を可能にするメカニズムを明らかにする。
【対象及び方法】
胎生(E15)、成体(8 週)の C57BL/6J マウスの初代 DRG 神経細胞を用いた。ラミニ
ンで処理した glass base dish にコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)であるア
グリカンを滴下し in vitro グリア性瘢痕モデルを作成した。DRG 神経細胞の培養を行
い、CSPG 濃度勾配での神経軸索の挙動を調査した。次に、定量 PCR、免疫細胞化学
染色により成体と胎生の神経細胞の HSPG プロファイルを調査した。
得られたHSPGのプロファイルから、胎生期で発現の高い特定のHSPGを責任因子と
して推定し、これを成体の神経細胞に過剰発現させ、in vitroグリア性瘢痕モデルを用
いて表現型を観察した。HSを検出する10E4抗体を用いてコアタンパクのみならずHS
鎖が発現しているか確認した。
免疫細胞化学染色では、神経細胞を 4%パラホルムアルデヒドで固定し、間接蛍光抗
体法による標識を行った。1 次抗体は神経細胞特異的 β-III チューブリン(Tuj1)、HS を
検出する 10E4 抗体、軸索先端の表現型観察のために Phalloidin を用いてアクチンフィ
ラメントの染色をおこなった。HSPG を過剰発現した神経細胞の PTPσ 活性を調べる
ため、リン酸化コータクチンの抗体を用いた免疫細胞化学染色の解析により、PTPσ の
基質であるコータクチンのリン酸化の程度を調べた。画像取得は共焦点レーザー顕微
鏡 TiEA1R(Nikon)で行い、取得したデジタル画像は、NIS-Elements(Nikon)を用いて解
析した。
【結果】
in vitro グリア瘢痕モデルを用いた培養実験では、培養 3〜5 日後に成体 DRG 神経細
胞の軸索は CSPG 濃度が上昇するスポットの端で伸長を止め(図 1A 左)、CSPG 濃度勾

-1-

配を越えることはなかった。一方、胎生 DRG 神経細胞の軸索の一部は、CSPG 濃度勾
配 を 容 易 に 乗 り 越 え た ( 図 1A 右 お よ び 1B) 。 同 時 に 成 体 神 経 細 胞 の 軸 索 末 端 は
dystrophic endball を示したが、胎生神経細胞では CSPG 濃度勾配上でも、フィロポデ
ィアを伴う成長円錐の形態を保持していた(図 1C および 1D)。
10E4 抗体を用いた免疫染色では CSPG 濃度勾配上の胎生 DRG 神経細胞の軸索先端
の表面に HS が強く発現しており、酵素(ヘパリナーゼⅢ)による HS の消化実験を行
ったところ、HS の除去により健全な成長円錐が阻害されることが示された(図 2A お
よび 2B)。次に、成体および胎生 DRG 組織について、細胞表面に発現する HSPG であ
る シ ンデ カ ン お よび グ リ ピ カン フ ァ ミ リー の 定量 PCR 解 析 を行 っ た と ころ 、 胎 生
(E15)におけるグリピカン 2(GPC-2)の発現量は成体の約 6 倍であることがわかった
(図 3A)。また、ラミニン上で培養した DRG 神経細胞の軸索末端における GPC-2 の免
疫細胞化学染色の解析でも同様の結果が得られた(図 3B)。
胎生と成体神経細胞の CS に対する軸索末端の挙動の違いにおける GPC-2 の関与を
調べるために、GPC-2 をコードしたプラスミドをレンチウイルスで成体 DRG 神経細
胞に導入し過剰発現実験を行った。HS は GPC-2 の発現により増加していた(図 4A お
よび 4B)。CSPG 濃度勾配上の GPC-2 を発現させた成体の神経細胞は CSPG 濃度勾配
上でも dystrophic endball 様の構造を示さず成長円錐を維持していた(図 4C および 4D)。
さらに CSPG 濃度勾配上で dystrophic endball を示したコントロール群の軸索末端は総
コータクチンに対するリン酸化コータクチンのシグナルの比率がラミニン上の軸索末
端よりも低下していた一方で、GPC-2 を過剰発現した成体神経細胞におけるシグナル
の比率は、コントロール群のラミニン上の軸索末端と同程度であった(図 5A および
5B)。
【考察】
成熟した神経細胞では、細胞膜に存在する PTPσ が細胞外に存在する CS 鎖の作用
により活性化され、オートファジー流の破綻を生じ dystrophic endball を形成すること
がわかっている。一方で PTPσ は HS 鎖と結合すると 2 量体化し、軸索伸長を促すこ
とも報告されている。この相反的な PTPσ の働きは、HS と CS という 2 つの糖鎖の競
合作用が同一の受容体を介して軸索再生を制御するメカニズムとして説明され、HSPG
由来の HS が PTPσ に作用して dystrophic endball 形成を阻害するという本研究の結果
を支持するものである。
HSPG は、これまで神経系の発達において、シグナル伝達の調節やシナプスのオー
ガナイザーとして重要な役割を果たすことが実証されている。中でも GPC-2 は中枢神
経系に局在しており、いくつかの研究で軸索伸長に対する促進機能が報告されている。
成長円錐はアクチンフィラメントの重合・脱重合によって駆動されるが、リソソーム
とオートファゴソーム融合時のアクチン重合やアクチンフィラメントの安定化にはリ
ン酸化コータクチンが必須であり、コータクチンを基質に持つ PTPσ が関連している
と考えられている。本研究では、胎生期の神経では PTPσ の活性が内在性の GPC-2 か

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ら供給される HS によって抑制され、フィロポディアの拡大や成長円錐の形態が維持
されていることが示唆された。本研究の結果は軸索末端の CSPG 曝露に対する反応に
おいて胎生神経細胞と成体神経細胞の違いを明確に示すとともに、胎生期神経におけ
る内在性の HSPG による自律的な PTPσ 活性の調節メカニズムの存在を実証した。
【結語】
本研究では、CSPG 濃度勾配に暴露された胎生神経細胞の軸索末端は、成体神経細
胞で観察される dystrophic endball を形成しなかった。胎生 DRG 神経細胞では GPC-2
が強く発現しており、PTPσ が内在的な HS によって不活性化されることで、dystrophic
endball の形成が回避され、成長円錐の形態が保たれることを明らかにした。本研究に
より、発達中の胎生神経細胞と成熟した成体神経細胞が、周囲環境の CS に反応して
異なる挙動を示すことが明らかになり、神経再生時の軸索末端の形態に糖鎖である HS、
CS、およびその受容体である PTPσ による分子機構が関与している可能性が示された。

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