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書き出し

ʟ-アスパラギナーゼは、膵β細胞のTSC2依存性経路を介してmTORC1活性を調節する

清家, 雅子 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

ʟ-Asparaginase regulates mTORC1 activity via a
TSC2-dependent pathway in pancreatic beta cells

清家, 雅子
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8690号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485874
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)
学 位 論 文 の 内 容 要 旨

L -Asparaginase

regulates mTORC1 activity via a TSC2 -dependent
pathway in pancreatic beta cells

L -ア ス パ ラ ギ ナ ー ゼ は 、 膵 β 細 胞 の

TSC2 依 存 性 経 路 を 介 し て

mTORC1 活 性 を 調 節 す る

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
内科学講座糖尿病・内分泌・総合内科学分野糖尿病・内分泌内科学部門
(指導教員:小川渉教授)
清家

雅子

1. 背景・目的
近年 2 型糖尿病患者数は世界的に増加している。2 型糖尿病の病態としてインス
リン分泌能が重要であることはよく知られているが、東アジア人の糖尿病患者
では分泌能が低下していることが報告されている。我々は膵β細胞量の減少が 2
型糖尿病の発症に重要な役割を果たすと考えており、最近 2 型糖尿病感受性遺
伝子 Eif2ak4 遺伝子による膵β細胞不全発症メカニズムを報告した。Eif2ak4 遺
伝子は GCN2 をコードしており、細胞内アミノ酸欠乏によって活性化される分子
である。全身性 GCN2 欠損マウス、膵特異的 GCN2 欠損マウスを解析した結果、高
脂肪食負荷によって膵 β 細胞量の減少が認められた。また膵β細胞の GCN2 が
欠損した状態では、mTORC1 活性亢進を介したインスリンシグナル低下が誘導さ
れることも明らかとなった。GCN2 欠損で mTORC1 活性亢進が起こる機序として、
mTORC1 活性抑制因子である Sestrin2 発現低下によることを我々は以前に報告
している。Sestrin2 は TSC2 非依存的に mTORC1 活性を抑制するが、mTORC1 活性
を最も強力に調節する因子は TSC1/2 であり、これらを介した経路についても確
認が必要と考えられた。そこで今回、GCN2 欠損膵 β 細胞における、TSC2 依存性
mTORC1 活性制御機構を解明することを目的に、研究を開始した。
2.方法
全身性 GCN2 欠損マウスを作製し、通常食または高脂肪食を離乳後からそれぞれ
与え、実験はすべて雄マウスで行った。細胞実験は、上記マウスから単離した膵
島、ラット膵β細胞株 INS-1 細胞、siRNA トランスフェクションにより GCN2、
ATF4、L-アスパラギナーゼなどをノックダウンした INS-1 細胞を用いた。データ
は平均値±SEM で示し、両側 Student の t-test で解析した。P 値が<0.05 の場
合、統計的に有意とした。
3. 結果
我々は以前、高脂肪食負荷 GCN2 欠損マウスの膵島において mTORC1 活性が増強
されていることを報告した。これらの膵島では野生型と比較して、TSC2 の T1462
リン酸化、すなわち TSC2 の不活性化が確認された。mTORC1 活性亢進を確認する
ために、mTORC1 下流の分子を検討したところ、S6K1、S6、4EBP1 のリン酸化の増
強が確認できた。以上より GCN2 欠損は TSC2 不活性化を誘導すること、Sestrin2
発現低下以外の TSC2 経路を介した mTORC1 活性亢進のメカニズムがあることが
示唆された。
TSC2 は PI3K 経路の下流にある Akt によってリン酸化され、リン酸化を維持する
ための 14-3-3 を介したメカニズムが報告されている。14-3-3 は TSC2 の T1462
リン酸化部位に結合してそのリン酸化を安定化、すなわち TSC2 を不活性化する
ことにより mTORC1 を活性化する。既報において、14-3-3 の結合に関して競合的
阻害を担う分子の存在が報告されている。そこで我々は、GCN2 の下流で発現が

調節される分子が 14-3-3 の結合において TSC2 と競合することにより、膵β細
胞における mTORC1 の活性を調節するという仮説をたてた。この仮説を検証する
ために 14-3-3 発現ベクターを生成し、ラット膵β細胞株である INS-1 細胞を使
用して TSC2 リン酸化に対する 14-3-3 発現の影響を調べた。その結果、14-3-3
タンパクを過剰発現させた INS-1 細胞においては TSC2 リン酸化が対照群と比べ
て維持されていることから、14-3-3 が TSC2 のリン酸化に寄与していると考えら
れた。
GCN2 シグナル伝達の下流で発現する分子を特定するために対照群、アミノ酸欠
乏状態、アミノ酸欠乏かつ GCN2 欠損状態の 3 つの条件で実験を行った。
「GCN2
が活性化しているアミノ酸欠乏状態でのみ 14-3-3 に結合する分子」をプロテ
オーム解析により網羅的に解析したところ、ABCC5、RECQL5、L-アスパラギナー
ゼ、HSP90β、SIPA1L2 の 5 つの分子が同定された。さらに INS-1 細胞を用いて
GCN2 活性化条件であるアミノ酸欠乏やグルコース刺激を行ったところ、リアル
タイム PCR でいずれの条件においても発現亢進を示したのは L-アスパラギナー
ゼのみであった。また高脂肪食負荷野生型マウスの膵島では L-アスパラギナー
ゼの発現は亢進しているが、GCN2 が欠損すると発現が低下することも確認され
た。これらの結果は L-アスパラギナーゼが 14-3-3 の結合分子であり、その発
現が GCN2 の下流で調節されることを示唆している。
野生型マウスで内因性 L-アスパラギナーゼの臓器ごとの発現を確認したところ、
膵島での発現は心臓に次いで高かった。GCN2 の下流で L-アスパラギナーゼが発
現していることを確認すべく、GCN2 および GCN2 下流に存在する転写因子 ATF4
をそれぞれ INS-1 細胞でノックダウンすると、L-アスパラギナーゼの発現低下
が確認された。以上より L-アスパラギナーゼは体内で内因性に発現しており、
その発現が膵β細胞の GCN2-ATF4 シグナル伝達下流で調節されることが明らか
となった。
L-アスパラギナーゼが実際に

mTORC1 活性に影響を与えることを確認するため
に、INS-1 細胞で L-アスパラギナーゼをノックダウンし、mTORC1 活性を評価し
た。その結果、mTORC1 下流の分子である S6K1、S6、4EBP1 のリン酸化が亢進し
ており、mTORC1 活性亢進が確認された。以上より 14-3-3 結合分子である L-アス
パラギナーゼの発現が低下すると、mTORC1 活性亢進を認めることが示され、Lアスパラギナーゼが 14-3-3 と TSC2 の T1462 リン酸化部位との結合を競合的に
阻害する可能性が示唆された。
4. 考察
2 型糖尿病患者の膵島で mTORC1 活性が増加することが報告されており、そのこ
とが糖尿病状態における膵β細胞障害の原因である可能性が示唆されている。
以前我々は膵β細胞における GCN2 欠損は mTORC1 を抑制する Sestrin2 発現を低

下させることにより、TSC2 に依存しない経路で mTORC1 活性を増加させることを
報告した。今回は TSC2 の T1462 リン酸化部位が HFD を与えられた GCN2 欠損マ
ウスの膵島でリン酸化されていることを発見し、TSC2 依存性に mTORC1 活性が調
節される経路を調べた。その過程で TSC2 の T1462 のリン酸化部位と 14-3-3 の
結合を競合的に阻害する分子である L-アスパラギナーゼを同定した。GCN2 の下
流に発現している L-アスパラギナーゼは 14-3-3 に結合し、それによって 14-33 と TSC2 の T1462 リン酸化部位の結合を阻害する。その結果、TSC2 の活性化と
TSC2 の脱リン酸化による mTORC1 の不活性化に寄与することが明らかとなった。
L-アスパラギナーゼは急性リンパ球性白血病の抗がん剤として使用されており、
細胞内のアスパラギンをアスパラギン酸に加水分解し、アスパラギンを枯渇さ
せることによって抗腫瘍効果を発揮する酵素である。最近では L-アスパラギナ
ーゼが HeLa 細胞のアスパラギンレベルを低下させることによって mTORC1 活性
を抑制することも示されている。すなわち、L-アスパラギナーゼは、14-3-3 へ
の結合を介した TSC2 依存性経路と、アスパラギン濃度低下を介した TSC2 非依
存的経路を介して mTORC1 を抑制している可能性がある。以上より L-アスパラギ
ナーゼは mTORC1 調節を介して様々な機能を発揮すると予想され、L-アスパラギ
ナーゼによる膵β細胞での mTORC1 活性調節のさらなる研究は抗がん剤使用中の
糖尿病、およびインスリン分泌障害のメカニズムの解明に有意義であると考え
られる。

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
甲 第 3292号



受 付 番号



清家

雅子

L-Asparag
inaseregulat
e
smTORClact
ivi
t
yvi
aa
TSC2-dependentpat
hwayi
npancreat
icbet
ac
e
l
l
s
論文題目

Lーアスパラギナーゼは、膵

B細胞の TSC
2依 存 性 経 路 を 介 し て

Ti
t
l
eo
f
I
mTORC1活 性 を 調 節 す る
Di
s
s
e
r
t
at
i
on

主 査
Ch
i
e
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ner
審査委員

Exam
i
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Vi
c
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e
x
a
mi
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Vi
c
e
e
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mi
ner

田迂入江
摩 オ 砿

汎仔貨刈


要旨は 1,000字∼ 2
, 000字程度)

2型糖尿病の病態としてインスリン分泌能が重要であることはよく知られている。我々は膵f3細胞量の
減少が 2型糖尿病の発症に重要な役割を果たすと考えており、最近 2型糖尿病感受性遺伝子 Ei
f
2
a
k
4遺
伝子による膵f3細胞不全発症メカニズムを報告した。 Ei
f2
a
k
4遺伝子は G
C
N
2をコードしており、全身性

G
C
N
2欠損マウス、膵特異的 G
C
N
2欠損マウスでは、高脂肪食負荷によって膵f3細胞量の減少が認められ
C
N
2が欠損した状態では、 m
T
O
R
C
I活性冗進を介したインスリンシグナル低下が誘
た。また膵 B細胞の G
C
N
2欠損膵f3細胞における、 T
S
C
2依存性 m
T
O
R
C
I活性
導されることも明らかとなった。そこで今回、 G
制御機構を解明することを目指した。
高脂肪食負荷 G
C
N
2欠損マウスの膵島において m
T
O
R
C
I活性が増強し、これらの膵島では野生型と比
較して、 T
S
C
2の 1
1
4
6
2リン酸化、すなわち T
S
C
2の不活性化が確認された。 T
S
C
2は P
I
3
K経路の下流に
ある A
ktによってリン酸化され、調節因子 1
4
3
3は T
S
C
2の T
1
4
6
2リン酸化部位に結合してそのリン酸
化を安定化、すなわち T
S
C
2を不活性化することにより m
T
O
R
C
]を活性化する。そこで我々は、 G
C
N
2の下
流で 1
4
3
3 に結合する新規分子を同定するため、培養細胞で 1
4
3
3 をターゲットにしてpu1
1d
o
w
n

a
s
s
ayおよび網羅的プロテオーム解析を行い、 Lーアスパラギナーゼを同定した。実際、高脂肪食負
荷野生型マウスの膵島では L
ーアスパラギナーゼの発現は冗進していたが、 G
C
N
2が欠損すると発現
が低下することも確認した。 G
C
N
2の下流で L
ーアスパラギナーゼが発現していることを確認すべく、 G
C
N
2
および G
C
N
2下流に存在する転写因子 A
T
F
4をそれぞれ I
N
S
I細胞でノックダウンすると、 L
ーアスパラ
ーアスパラギナーゼの発現が膵f3細胞の G
C
N
2
A
T
F
4シグナ
ギナーゼの発現は低下した。以上より L
ルの下流で調節されることが明らかとなった。さらに L
ーアスパラギナーゼが実際に m
T
O
R
C
l活性に
影響を与えることを確認するために、 I
N
S
I細胞で L
ーアスパラギナーゼをノックダウンし、 m
T
O
R
C
I
活性を評価した。その結果、 m
T
O
R
C
I下流の分子である S
6
K
l、S
6、4
E
B
P
Iのリン酸化が冗進しており、 m
T
O
R
C
I
活性九進が確認された。以上より 1
4
3
3結合分子である L
ーアスパラギナーゼが、 1
4
3
3と T
S
C
2の T
1
4
6
2
リン酸化部位との結合を競合的に阻害する可能性が示唆された。

2型糖尿病患者の膵島で m
T
O
R
C
l活性が増加することが報告されており、そのことが糖尿病状態に
おける膵f3細胞障害の原因である可能性が示唆されている。以前我々は膵f3細胞における G
C
N
2欠損は

m
T
O
R
C
Iを抑制する S
e
stri
n
2発現を低下させることにより、 T
S
C
2に依存しない経路で m
T
O
R
C
I活性を増
加させることを報告した。今回は G
C
N
2の下流に発現している L
ーアスパラギナーゼは 1
4
3
3に結合
し、それによって 1
4
3
3と T
S
C
2の T
1
4
6
2リン酸化部位の結合を阻害し、 T
S
C
2の脱リン酸化による T
S
C
2
の活性化と m
T
O
R
C
I の不活性化に寄与する可能性を明らかとした。 L
ーアスパラギナーゼは急性リン
パ球性白血病の抗がん剤として使用されており、細胞内のアスパラギンをアスパラギン酸に加水分解
ーアスパ
し、アスパラギン酸を枯渇させることによって抗腫瘍効果を発揮する酵素である。最近では L
ラ ギ ナ ー ゼ がH
e
L
a細胞のアスパラギンレベルを低下させることによって m
T
O
R
C
l活性を抑制すること
も示されている。本研究が明らかにした、 L
ーアスパラギナーゼが複数の経路で m
T
O
R
C
l活性を調節
しうるという知見は極めて重要である。よって本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があるものと
認める。

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